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不透明さ残す電気事業法改正案――電力自由化「骨抜き」の危機

2015年3月17日10:18AM

大手電力会社の地域独占を撤廃し、低料金で多様なサービスを消費者に提供することを目的とした電力自由化のプロセスが、最終段階で暗礁に乗り上げる可能性が出てきた。今通常国会に提出される電気事業法改正案では自由化の総仕上げとなる「発送電分離」を2020年4月に実施すると明記している。だが、この実施を延期可能にする規定が付則に盛り込まれた。完全自由化に抵抗する電力業界の“法案骨抜き”工作が功を奏した格好だ。

電力自由化の本格的な議論は東日本大震災後に始まった。東京電力管内が計画停電に追い込まれるなど、大手電力による地域独占体制の脆さが露呈したのが背景にある。その結果13年、電気事業法を今後3段階にわけて改正することが決まった。概要は、(1)今年4月に強制力を持って全国規模で電力の需給を調整する機関を設置、(2)16年4月、電力小売りの全面自由化を実施、(3)電力会社の発電事業と送電事業を分社化する発送電分離を実施――というものだ。

発送電分離の狙いは、電力の販売に必要な全国の送配電網を大手電力会社と新規参入社が公平に使えるようにし、電力会社間の健全な競争を促すことだ。しかし大手電力は原発停止による経営悪化を訴えており、本格的な原発再稼働が見通せない中で発送電分離が実施されれば、一層の経営弱体化を招くとの懸念を抱いている。

発送電分離の実施前に原発の再稼働を進め、競争力を回復しておきたい大手電力は、自民党に働きかけて実施前に電力の需給状況などを検証し「必要な措置を講ずる」との一文を付則に盛り込ませた。

宮沢洋一経済産業相は「(発送電分離の実施が)遅れる懸念はない」と話すが、電気事業連合会の八木誠会長は「時期の見直しを含め、柔軟に改革を進める必要がある」と主張しており、電力自由化の行方は不透明さを残している。

(北方農夫人・ジャーナリスト、3月6日号)

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