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『朝日』記事は「誤報」ではない──約650人の原発作業員の福島第二原発への退避を吉田所長は知らなかった(2)

2014年11月13日2:33PM

 東電本店の報道資料

15日午前6時すぎ、2号機で大きな衝撃音が起きた。吉田所長から政府などにあてた通報内容(異常事態連絡様式)は「対策要員の一部一時避難」「対策本部を福島第二へ移すこととし、避難」などと混乱している。

実は衝撃音後も放射線量が上昇していない(図参照)。ここがポイントだ。事故を取材してきたベテラン記者はこう語る。「放射線量が上昇していないということは、格納容器が破損したわけではない、という可能性が出てきたことを意味しています。深刻な事態でなければ、わざわざ福島第二まで所員が退避する必要はありません。だから吉田所長は現場付近でと、指示を変更したようです」

原発と東電本店を結んで対策を話し合ったテレビ会議の、この時の音声記録は「録音ミス」で残っていないとされるが、柏崎刈羽原発(新潟県)で筆記されたメモが東電内部に残されている。吉田所長が「福島第二への移動」から「現場近くでの一時待機」に判断を変えた、15日午前6時42分の記述だ。〈構内の線量の低いエリアで退避すること〉

だが、実際には所員の大半が福島第二に移動してしまった。一方、東京電力は3月15日午前8時30分過ぎから本店で開いた記者会見で、実態とは符合しない次のような発表をしている。

「午前6時14分頃、福島第一原子力発電所2号機の圧力抑制室付近で異音が発生するとともに、同室内の圧力が低下したことから、同室で何らかの異常が発生した可能性があると判断しました。今後とも、原子炉圧力容器への注水作業を全力で継続してまいりますが、同作業に直接関わりのない協力企業作業員および当社職員を一時的に同発電所の安全な場所などへ移動開始しました」

「同発電所」とは福島第一を指している。この時間はすでに所員が福島第二に到着している時間だ。東電はなぜ福島第二に所員が行ってしまったことを会見で発表しなかったのだろうか。
(つづく、伊田浩之・編集部、2014年10月10日号)

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