考えるタネがここにある

週刊金曜日オンライン

  • YouTube
  • Twitter
  • Facebook

イスラエル軍の攻撃が続くパレスチナ自治区・ガザ――行き場を失った避難民の家族

2014年9月2日7:03PM

ファウラ一家の子どもと女性たち。(撮影/土井敏邦)

ファウラ一家の子どもと女性たち。(撮影/土井敏邦)

パレスチナ自治区・ガザ市内の西部地区の一角にあるビルの1階。かつて商店だったその場所は、今は一つの家族が暮らす“避難所”になっている。

室内は10畳ほどの部屋が二つあるだけ。奥の部屋には窓もない。猛暑の昼間、中に入ると汗が噴き出してくる。

ここに、ファウラ一家47人が暮らしている。

7月15日、イスラエル軍の激しい砲爆撃を受けたガザ市東部から徒歩で1時間以上をかけて、この地区に逃れてきた。

しかし、避難所の国連学校はすでに避難民で埋め尽くされており、一家は行き場を失った。

寝る場所がなく、女性たちは怖がって泣いた。見かねた主人が商店のスペースを提供してくれたという。とはいえ、部屋には台所もトイレもシャワー室もない。

男性たちは近くのモスクでトイレを使い、女性たちは、近所の家のトイレを借りる。

もっとも辛いのは、シャワーを浴びる水も場所もないことだ。避難生活が始まり27日が経ったが、家族全員、ほとんど入浴していないという。

一家の長であるフセイン・ファウラ(73歳)の話によれば、かつては4階建ての家に4人の息子やその家族、合わせて47人で暮らしていた。ところが、攻撃が激しくなり、全員で家を出た。

それから、3日後に戻ってみると、家は、がれきと化していた。フセインはショックを受け、その場で意識を失ったというが、無理はない。30年かけてやっとできた家だった。

国連学校と違い、“避難民”として国連から食料や水の支援を受けられない。ある組織の支援で豆類の缶詰やチーズ、パンなどをもらい、食いつないでいる。

家族47人のうち、30人近くが18歳以下の子どもだ。劣悪な環境が彼らの身体と精神に悪影響を及ぼすことを、フセインは何よりも恐れている。

パレスチナ人権センターによれば、現在、こうした避難民は50万人近くいるという。

ガザ史上最大の惨事――。

イスラエル軍の攻撃が弱まり、たとえ「戦争」が終結したとしても、家を破壊された一家に帰る場所はない。避難民の苦悩は、今後もずっと続くこととなる。

(土井敏邦・ジャーナリスト、8月22日号)

●この記事をシェアする

  • facebook
  • twitter
  • Hatena
  • google+
  • Line

電子版をアプリで読む

  • Download on the App Store
  • Google Playで手に入れよう

金曜日ちゃんねる

おすすめ書籍

書影

黒沼ユリ子の「おんじゅく日記」

ヴァイオリンの家から

黒沼ユリ子

発売日:2022/12/06

定価:1000円+税

書影

エシカルに暮らすための12条 地球市民として生きる知恵

古沢広祐(ふるさわ・こうゆう)

発売日:2019/07/29

上へ