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自衛隊「訓練」中の死亡事故が多発――10年で69人、「人命軽視」か

陸上自衛隊真駒内駐屯地(札幌市)でのスキーの光景。訓練中の急死が多発している。(撮影/三宅勝久)

陸上自衛隊真駒内駐屯地(札幌市)でのスキーの光景。訓練中の急死が多発している。(撮影/三宅勝久)

教育訓練中に死亡した自衛官の数が、過去10年間に少なくとも69人を数え、警察官や消防士の6倍にも達することがわかった。照屋寛徳衆議院議員(社民)の質問主意書に対して安倍内閣が6月27日付で答弁した。

他省庁と比べて突出して高い自殺率(10万人あたり35~40人)とあわせて、隊員の人命が軽く扱われている実態があらためて浮き彫りとなった。

答弁書によれば、2004年度から14年度までの約10年について、訓練中の死亡と認定された件数は、陸上自衛隊が47件(49人)、海上自衛隊9件(11人)、航空自衛隊6件(9人)の計62件で、69人が死亡している。

警察官(9件)や消防士(10件、ただし12年度までの8年間)と比較して6倍以上の高率だ。

【“不要な危険”を強要か】

訓練の種類別にみると、陸自は「持続走訓練」や「体力検定」「スキー訓練」中に心筋梗塞などを起こした例がもっとも多く、47件中26件。レンジャー訓練や登山、「武装走訓練」「徒歩行進」といった肉体的に過酷な訓練中に起きた同様の事故を含めると30件と大半を占める。このほか、車の横転や接触、転落など車両事故によるものが8件(10人)、テントやシェルターでの野営や、有毒ガスの出る壕内での窒息死が2件、落下傘降下中の墜落死が2件、燃料補給中の事故が1件、「格闘訓練」中に死亡に至る事故が1件起きている。

格闘訓練の事故は06年11月に真駒内駐屯地(北海道札幌市)で起きた。格闘技経験がない素人同然の1等陸士を、「試合」のための訓練だと称して先輩隊員と取り組ませ、繰り返し転倒させられた結果、激しい脳出血によって死亡した。隊員の体力の許容範囲を軽く考えた、とても訓練とは言いがたいものだ。

遺族が起こした国賠訴訟で札幌地裁は13年3月、国の責任を全面的に認める遺族勝訴の判決を言い渡している。

海上自衛隊の訓練中の死亡者11件の内訳は、潜水訓練中の死亡4人、ヘリコプターの墜落による死亡が3人。航海中の行方不明が3人。格闘訓練中が1人。

12年4月に起きたヘリの事故は、幹部を乗せた護衛艦を見送る“儀式”として、艦船側すれすれの位置を低空飛行しようとして接触、墜落したという“不要な危険”を冒したことによるものだった。

行方不明の3人は「事故」とされているが、自殺の可能性は否定できない。行方不明者を出した護衛艦「しらゆき」は、新人2等海士が先輩から日常的に虐待を受け、精神疾患を発症する事件が起きた。(1)当直を終えてベッドで寝ていたら突然引きずり落とされ、殴られたり蹴られたりする暴行を受けた、(2)金属製の大型懐中電灯で殴られた、(3)暴力はあまりにも日常的だったのでいちいち覚えられないほどだった――などという陰惨な実態が、本人が起こした国賠訴訟で明らかになった。札幌地裁は12年9月、150万円の賠償を命じる原告側勝訴の判決を下し、確定している。格闘訓練でも無謀なやり方で1人が死亡している。

航空自衛隊は、訓練事故の死亡者9人中4人が「持久走」や「3キロメートル走」中に意識を失って死亡した。墜落事故は、05年に起きた新潟救難隊の救難機MU-2Aの墜落、11年7月のF-15戦闘機の2件で、計5人が死亡している。

このほかにも、トラックのタイヤに空気を入れていた女性陸自1士がタイヤの破裂で死亡した事故(13年)、潜水艦「そうりゅう」で行方不明になった3曹が、艦橋の水没部分で死亡していた事件(12年)、ダンプカーの周囲を点検していた2曹が、突然動き出したダンプカーにひかれて死亡した事件(11年)。さらにソマリア沖に出動中の護衛艦「ゆうぎり」のトイレ内で3曹が有毒ガスの発生により倒れ、死亡した事件(10年)など、「教育訓練」以外の死亡事故も多数あり、事故死の実数はこれよりも多いものとみられる。

(三宅勝久・ジャーナリスト、7月18日号)