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国会でも追及された朝鮮総聯中央本部の競売落札問題__日朝交渉再開の障壁となった東京地裁の独断(成田 俊一)

2014年5月7日11:50AM

 3月20日、東京地裁は朝鮮総聯(在日本朝鮮人総聯合会)中央本部の落札者を持株会社マルナカホールディングス(香川県高松市)と決定したが、朝鮮総聯はこの決定の取り消しを求める執行抗告を高裁に申し立てた。

 入札保証金を返還したことで入札権が消失しているはずのマルナカを落札者とした地裁の判断には、重大な恣意性があることを筆者は指摘した(3月28日号「朝鮮総聯ビルを召し上げた東京地裁の誘導疑惑」参照)。案の定、国会では、4月1日の衆議院法務委員会で鈴木貴子衆院議員から最高裁は追及をされた。

鈴木議員 「債権者であるRCC、整理回収機構をはじめ民間不動産の鑑定士の皆さんの中でも、この建物の評価額というのは往々にして40億から50億、こういった評価がついております。しかし、今回、本来であれば三度目の入札をするのかと思っていたところ、それがされずに開札という制度をとられ、マルナカホールディングスという会社が23億1000万円という1回目、2回目の半値以下の価格で売却が決定された。そもそも論として債務の回収額が著しく減るということがわかっているのであれば、より多くの債務を回収するためにも、三度目の入札をするというのが妥当ではないのか」

 この質問に対し、永野厚郎最高裁判所長官代理補は「事務当局としては、個別の事案について回答は厳に差し控えさせていただきたい」と平行線の答えを繰り返すのみだった。

 地裁の決定に、北朝鮮政府は強烈に反駁している。4月1日、北京で日朝政府間交渉の再開を前提にした二日間の外務省局長級協議を終えた北朝鮮代表の宋日昊(ソンイルホ)・朝日国交正常化交渉担当大使は、北京空港で「朝鮮総聯の建物に関する東京地方裁判所の不当な判決について強い憂慮を表明する。総聯中央会館問題は単純な実務的問題ではなく、朝日関係の進展の中で基礎となる問題であり、この問題の解決なしに、朝日関係の進展の必要はない」と、取り囲む各国記者団を前に言い放った。拉致問題をはじめとする協議のゆくえに、あえてクギを刺したのだ。

 22億1000万円で落札したマルナカの代理人弁護士はテレビ番組で、「活用法はまだ決めていないが朝鮮総聯には出ていってもらう」と強気の発言をしていたが、暗礁にのり上げている拉致問題解決と日朝交渉打開という国家間の課題を押しのけられるのか。その結末は、ほどなく判明するだろう。

官邸も「反社」情報に反応か

 本誌記事の影響かどうかは定かではないが、ある情報筋から官邸の反応が入ってきた。その要点は
(1)裁判所が勝手に進めたこと、
(2)マルナカが「反社会的」企業か否か調査する、
(3)5億円の入札保証金を返しているのにマルナカに資格があるのか
__の3点だ。

 企業および経営者が暴力団と金のやり取りをしていることを「反社」企業と指摘するならば、暴力団排除条例施行前のマルナカは完全に「反社」である。

 前回の記事で触れたマルナカと暴力団との関係について追加しておく情報がある。マルナカは六代目山口組の地元直参W組のほかに、地元独立組織S会とも因縁の関係があった。「マルナカの会長がS会の博打場に顔を出すほど両者の関係はベタベタだったんだよ。今さらヤクザとは関係ないといったところで、過去を知っている者の記憶は消せない。マルナカに対しては今でももの言えるヤクザは多い」とは地元の関係者だ。

 さらに、この都内一等地を資産管理会社にすぎないマルナカHDが応札した疑問は残るが、資本提携関係のイオングループへの転売説が根強い。総聯本部のある千代田区富士見界隈の実勢価格は坪700万円を超える都内有数の未開発地。ある不動産鑑定業者は「マルナカは坪280万円で入手したことになるからぼろ儲けになる。周辺の土地と合わせて再開発すれば最終的には投資額の100倍を生む可能性がある」と話す。

 地裁の売却決定は日朝関係をさらに悪化させる種となっている。

(なりた しゅんいち・ジャーナリスト。4月11日号)

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