週刊金曜日公式ブログ 週刊金曜日ニュース

ヘイトスピーチに対抗して、80人が結集――「差別らくがき消し隊」始動

らくがきを黙々と消す「差別らくがき消し隊」のメンバーら(撮影/写真・岩崎眞美子)。

らくがきを黙々と消す「差別らくがき消し隊」のメンバーら(撮影/写真・岩崎眞美子)。

 コリアンタウンとして知られる東京都の新宿・大久保一帯では近年、在日韓国・朝鮮人への憎しみを扇動するヘイトスピーチデモが数多くなされてきた。昨年の9月以降はこの町での排外デモは行なわれていないが、一方で差別的ならくがきが、町のあちこちで見られるようになった。

 このらくがきを消そうと3月2日、排外デモへの対抗活動をしてきた有志が呼びかける形でボランティアが結集。ヘイトスピーチとレイシズム(差別主義)を乗り越える国際ネットワーク「のりこえねっと」の協力を得て、「差別らくがき消し隊」として活動した。

 2月に有志で町を歩いて行なった調査では、大久保周辺でのらくがきの数は約50カ所に上った。「チョン死ね」「チョン帰れ」といったものが多く、ナチスの鉤十字のらくがきもみられた。多くは油性マジックやスプレーなどで、壁や電柱、ガード下などに描かれたものだった。中には韓国料理店のシャッターに描かれたものもあった。それらの場所と写真を入れ込んだ地図をインターネット上にアップし、ツイッターなどで参加者を募ったのが2月26日。わずか4日で当日80人ものボランティアが集まった。

 主催者かららくがきの場所を印刷した地図とゴム手袋、マスク、薬剤などが配られ、9チームに分かれて消去活動を行なった。当日は小雨が降る寒い日だったが、多くの参加者によって午前中にはほぼすべてのらくがきが消去された。

 主催者のひとり、石野雅之さんはこう語る。「この活動が逆に差別者たちを刺激して、ますますらくがきが増えるのではないか、という意見もあるが、また描かれるならまた消せばいい。そういう運動がある、ということを多くの人に知ってもらうことが重要」。

 自ら右派を名乗る22歳の男性も参加。「オリンピックを前にこのような下劣ならくがきがあることは国際社会に対する日本の恥。反日的物言いは許せないが、コリアンタウンには親日的な人も多い。その人たちとの関係を悪くしたくない」とした。

 差別らくがきは新宿のほかにも都内各地、地方都市でも多く見られるようになっている。「差別らくがき消し隊」はさらなるネットワークを広げ、流動的な形で活動を続けていく予定だ。

 一方、ヘイトスピーチに関しては米国務省が2月27日、2013年版の人権報告書を公表。その中で、「在日特権を許さない市民の会」(在特会)によるヘイトスピーチを取り上げ、懸念を示した。

 反ヘイト行動に取り組んできた梁英聖・在日コリアン青年連合(KEY)東京代表は、「100人、200人規模でヘイトをすることはなくなっているとしても、それで問題解決ではない。むしろ、らくがきというものは、差別する側が安全圏にいながら、相手にダメージを与える陰湿なもの。こういうものがいたちごっこのように増えると、これは暴力、差別の扇動以外の何ものでもない」と、ヘイトスピーチが分散していることに警鐘を鳴らした。

(岩崎眞美子・ライター、3月7日号)