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さいたま市の自治会で回覧――拉致署名を事実上強要か

2013年7月31日9:32PM

六月上旬、自宅のあるさいたま市の自治会の回覧で、「北朝鮮による拉致問題解決のための署名用紙」とお願い文が回ってきた。すでに回覧を終えた世帯が家族分の署名をしていた。署名した家族構成や名前はもちろん、署名しなかった世帯も容易にわかった。

署名活動の主体はいわゆる「家族会」(北朝鮮による拉致被害者家族連絡会)と「救う会」(北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会)だが、回覧のお願い文にある問い合わせ先はさいたま市の総務課となっており、市が実施しているようにも見えた。

これは、北朝鮮による「拉致被害者を救出する知事の会」会長を務める上田清司埼玉県知事の肝いりで、県が今年二月に公文書で各市町村に依頼文書を送ったことが発端だった。文書には、県が署名活動を推進していること、署名は県に提出することが明記してあった。そのため、県の推進する署名活動に非協力的と思われないよう多くの自治体が協力した。

「家族会」代表の地元上尾市でも島村穰市長が積極的に協力し、四月の区町会長会で市の担当者が回覧の要請をした。約九四〇世帯の区長をしている北村千代樹さん(六七歳)は、行政が特定の団体の活動を推進することに違和感を持ったことや、在日外国人もいることから、回覧での活動に異議を唱えたという。北村さんは区の班長とも話し合い、回覧で集めるのではなく、署名した人は自分で役所に届けることにした。ところが、今年の同地区の運動会に市長が初めて欠席したという。北村さんは「メッセージも代理出席もないのだから、署名と関係あるのは明らか」と怒りをあらわにした。

小島延夫弁護士は、「署名した場合はもちろん、しなくても、誰が署名しなかったかという、容易に識別可能な情報が、多くの人の目に触れる状態に置いたわけだから、プライバシー権の侵害にあたるのではないか」と話す。

(坂本洋子・フリージャーナリスト、7月19日号)

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