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兵庫県小野市で生活保護受給者の通報条例が成立――給付金の使い道は誰が決める?

2013年4月22日5:19PM

条例案を発表後、兵庫県小野市役所には多くの意見が寄せられた。写真は蓬莱務市長。(撮影/粟野仁雄)

 生活保護費や児童扶養手当の受給者がパチンコや競馬で浪費していることを知った市民に通報を促す条例案が三月二七日、兵庫県小野市議会で共産党以外の賛成多数で可決された。

 条例は、生活困窮者の存在の情報提供を市民に求める一方、「市民及び地域社会の構成員は、受給者に係る偽りその他不正な手段による受給に関する疑い又は給付された金銭をパチンコ、競輪、競馬その他の遊技、遊興、賭博等に費消してしまい、その後の生活の維持、安定向上を図ることに支障が生じる状況を常習的に引き起こしていると認めるときは、速やかに市にその情報を提供するものとする」との一文がある。義務や強制ではなく、通報を元に警察OBなどの適正化推進員が調査し、有識者らの適正化協議会が指導、指示などを行なうが、兵庫県弁護士会は「福祉制度による給付金の使い道は受給者自らが決定すべき。監視・干渉することは憲法や生活保護法の趣旨に反する」と反対する会長声明を出した。

 不正受給と浪費は別問題だが、条文ではワンセンテンスで書かれており、同会は「賭博等」という曖昧な条文が拡大解釈される恐れも危惧する。兵庫県保険医療協会も「常習的なギャンブルで生活を維持できないのはギャンブル依存症」と抗議した。

 こうした抗議の声に対し、提案者の蓬莱務市長は「作文の世界で勝負するのではない。憲法に違反するのなら提訴すればいい。依存症なら生活保護者は医療費もタダなのだから医者に診てもらえばいい。条例は『お金は大事に使いなさいよ』と自立支援を促すもので監視ではない。小都市だからできる見守りですよ」と強調。「まずはやってみなはれ、の先手管理です。問題なら修正すればいい。憲法とかではない、条例なんですから」と意に介さないが、悪意の通報者がいれば取り返しのつかない人権侵害が起きる可能性も消えない。

(粟野仁雄・ジャーナリスト、4月5日号)

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