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借り上げ住宅追い出しに矛盾――強硬姿勢の神戸市

2013年1月23日6:40PM

 一九九五年一月の発生から一八年を迎える阪神・淡路大震災。被災者向け借り上げ復興住宅からの追い出しを許さず、住み続ける権利を守ろうという住民運動が高揚する中、兵庫県や神戸市などの自治体が矛盾を深めている。

 筆頭は神戸市。神戸市借上住宅入居者連絡協議会からの公開質問状に、回答期限の一二月二五日になっても回答を出さず、ついに越年に至った。神戸市は、“住み替え斡旋”と称して、「二〇年の期限満了で退去」と強硬姿勢だが、住民は入居時にその説明を聞いておらず、大半が「寝耳に水」状態。当局が二〇〇〇年に発行した阪神・淡路大震災「神戸復興誌」にも、「全戸長期借上方式」が明記されている。

 〇八年の神戸市すまい審議会・安心な住生活部会の議事録でも「期間延長その他の方法を検討せざるを得ない」などの幹部答弁が随所に登場し、当局の基本姿勢が、ここ数年で急転換したことを自己暴露している。

 これらの矛盾は、第二次マネジメント計画で市営住宅の七〇〇〇戸削減方針を打ち出し、市営住宅扱いである借り上げ住宅の住民追い出しを軸に乗り切ろうとしたことが根本原因。弁護士団体の自由法曹団兵庫県支部も、「法的に問題あり」とする見解を発表し、関係方面に送付している。

 借り上げ公営住宅は、神戸市営で約三〇〇〇戸、兵庫県営で約一九〇〇戸。一五年度から順次、二〇年の「期限」を迎えるが、貸主側のUR(旧住宅公団)や民間オーナーの多数が契約延長・再契約を望み、国も補助金の継続を表明していることも、大きな特徴だ。

 高齢化率は五割をはるかに超え、目の不自由な方をはじめ障がい者も多く、「転居は、今さら無理」の声が大半。継続入居を求める住民組織は、神戸市の灘、長田、兵庫、東灘の各区に広がり、西宮、尼崎などの周辺都市にも波及している。

 議会への請願、陳情も相次ぎ、兵庫県知事は昨年末、継続入居の一部容認を表明、詳細は検討協議会(非公開)の答申を待つ考えだが、自治体間の矛盾も表面化した。

(たどころあきはる・ジャーナリスト、1月11日号)

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