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東京・江東区が竪川河川敷公園で代執行手続き――近く野宿者排除か

2012年11月9日5:50PM

追い出しの一環として、江東区は野宿者の居住エリアをフェンスで覆った。(撮影/杭迫隆太)

 首都高速七号小松川線の真下に二・五キロにわたり細長く延びる竪川河川敷公園(東京都江東区)。ここで早ければ一一月半ばにも江東区の行政代執行による野宿者強制排除が行なわれようとしている。

 同公園“多目的広場”に暮らす野宿者の小屋・テント一五軒に対して、江東区長名義の弁明機会付与通知書が届いたのは今月一一日。通知の趣旨は「あなたたちに不利益な処分をする可能性があるので、言い分があるなら今のうちに文書で提出しなさい」。江東区が行政手続法に則って強制排除の前段手続きに着手したことを意味する。

 同公園に野宿者が激増したのは、一九九〇年代前半。バブル崩壊の影響で職を失った日雇い労働者などが、小屋やテントでの生活を選ばざるを得なかったケースが多い。つまり、二〇年以上ここで暮らす人たちもいるのだが、区の福祉行政は野宿生活を余儀なくされている人たちに対して、長きにわたって“見て見ぬふり”を続けてきた。

 東京スカイツリーに象徴される再開発とジェントリフィケーション(都市で貧困層が多く住む地域を“浄化”すること)の流れは、区に“放置”から“排除”への方針転換を選択させた。三年前から始まった同公園のリニューアル工事によって移動を強いられ、他の寝場所を探さざるを得なくなった野宿者は数え切れない。

 現在、代執行の対象地に暮らす人たちは、着工前から区との話し合いを重ねながら工事の邪魔にならないよう移動を繰り返し、明治通りの五之橋直下にたどり着いた。ところが昨夏に区側が一方的に態度を硬化させ、話し合いを求める野宿者や支援者の申し入れを無視して、一二月に今回同様の弁明機会付与通知書を送りつけた。今年二月には移転に手間どっていた高齢のSさんの小屋一軒を、代執行によって強制撤去した。今回対象地にされた“多目的広場”には、二月の代執行に先がけて移転できた野宿者たちとともに、Sさんも暮らしている。このままではSさんは、一〇カ月の間に二度の撤去処分を受けることになる。

 今回も区は、六月以降三回積み重ねてきた話し合いの枠組みを一方的に破棄。野宿者の人権を軽視したやり方に、国内外から非難が集中している。

(杭迫隆太・レイバーネット日本、10月26日号)

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