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「地に堕ちた」財務省のプライド(佐藤甲一)

学校法人「森友学園」をめぐる疑惑は、安倍晋三首相の「100万円寄付」を受け取ったという発言が理事長の籠池泰典氏から飛び出し、国会での証人喚問に発展した。加えて、南スーダンPKOの「日報隠蔽」事案によって、稲田朋美防衛大臣の進退もくすぶっており、第2次安倍政権にとって初めてにして最大の「危機」を迎えている。

「寄付」問題の真偽も含め疑惑究明はなお続くが、同時にこの問題は、「金権政治」からの脱却を目指したはずの現下の政治システムが生み出した「必然」であることにも気が付かなければならない。

ここでは森友側が小学校認可申請と国有地の払い下げを同時並行的に進め、さらに8億円以上の値引きで交渉が成立したという、この問題の原点に立ち返ってみる。

ことの発端はどこかといえば、まず籠池氏が安倍首相や妻の昭恵氏と接点を持ち、さらに安倍首相が政治家として育ててきた稲田朋美防衛大臣とは、弁護士時代も含め、一定の交流があったことである。かつての「利益誘導型」の自民党政治であれば、ここで巨額の献金や不正利得が疑われるが、リクルート事件から30年近く経た今は、そのような安直な金品の「授受」は避けるだろうし、政治家が不用意に官僚に働きかけることも考えにくい。

だが、疑惑は起きた。そこに小学校設置の認可、国有地払い下げを決めた官僚の側に、「森友学園」に対する行き過ぎた配慮、すなわち不公平な扱いがなかったか。その動機の中に、籠池理事長の向こうに見える、昭恵氏や稲田防衛相、そして安倍首相の姿がなかったか、である。

財務当局は「不正はない」という。だが、8億円を超える値下げが妥当かどうか、算定の根拠や国有地賃貸から売却へ移る手続きなど、異例づくしの対応は不自然極まりない。なにより、9億5600万円の土地が1億3400万円に値引きされ、しかしその価格による交渉相手が「森友学園」にのみ限定され、結果契約に至ったことが、極めつけの「不公平」である。

財務当局はいったい誰のために不用意な配慮をしたのか。答えは自明である。申請者の向こうに見える安倍首相への「配慮」にほかならない。勝手に配慮されるのならば、された安倍首相に罪はないし、迷惑な話かもしれない。だが、看過できないのはそうした「空気」が、自民党内だけでなく、公僕たる官僚の中にも蔓延しているのではないか、という点である。

つまりは「安倍一強政治」のもとでは、「安倍首相」という実体のない「権威」をちらつかせる人物が生まれ、一方、自民党議員のみならず官僚さえ、実体なき「首相の意向」を勝手にうかがうようになっている構図が浮かび上がる。もし安倍首相の寄付が事実なら、こうした「空気」を醸成する有力な事象になっていただろう。ゆえに、「安倍一強政治」の下でなければ、籠池氏もこのような強引な学校開設を進めえなかったはずである。

そんな人物に左右されたとは、政治とは一線を画す、つまりは「天下国家」を旨としてきた官僚の中の官僚が集う財務省のプライドが「地に堕ちた」ことに他ならない。

安倍首相の前に沈黙してきた自民政治家、政権打倒の青写真すらない民進党、気迫なき政治家たちにも責任の一端はある。

(さとう こういち・ジャーナリスト。3月24日号)

南西諸島の自衛隊配備問題、性暴力への懸念表明した
沖縄の宮古島市議に脅迫的な攻撃も

沖縄県宮古島市の石嶺香織市議が3月9日フェイスブックに投稿した発言(注1)をめぐり、同市議会は3月21日、辞職勧告決議を賛成多数で可決した。この騒動に乗じて、南西諸島への陸上自衛隊配備問題もうやむやにするつもりか。(『週刊金曜日』取材班)

 

今年1月22日投開票の宮古島市議補欠選挙(欠員2)で、石嶺香織氏は初当選した。一昨年頃から陸自配備計画に反対する市民グループ「てぃだぬふぁ 島の子の平和な未来をつくる会」の共同代表として、この問題に取り組んできた背景がある。

南西諸島の軍事問題は米軍関連にとどまらない。奄美大島や宮古島、石垣島、与那国島では、不安を抱える住民の声を無視する形で配備計画が強行されているのだ。問題は山積みであり、住民間ではずさんな計画への危機意識が次第に共有されつつある。

南西諸島への自衛隊配備問題

2016年12月、在日米軍がSNSで公開した画像。(在日米海兵隊のFacebook公式アカウントより)

冷戦体制の終焉にともない自衛隊が新たに見出した大義が、対中国を念頭におく「南西シフト」の構想だった。他方、昨年末は在日米軍がSNSで公開した画像が波紋を広げた。説明には〈海兵隊と自衛隊による日米共同方面隊指揮所演習の戦闘予行〉などとあり、床一面に広げられた地図中の宮古島の一端を、指揮棒を持つ米兵が踏みつけている写真だった。

2015年4月に発表された新「日米防衛協力のための指針」には、〈施設・区域の共同使用を強化〉することなどが盛り込まれている。こうした点を考慮すれば、今後自衛隊施設を米軍が共同使用する可能性もある。宮古島ではこのほか陸自配備計画により、住民の生活水源が汚染される危険性も浮上した。

国境の与那国島は16年3月末に160人規模の陸自沿岸監視隊が配置されたが、急ピッチで強行された施設建設の工事により生態系破壊が進んだ。人口1500人ほどの住民は誘致推進派と計画撤回派に分断され、溝はいまも埋まっていない。陸自配備にともなう “経済効果”については「思っていたほどではないというのが実感」といった声も漏れる。

そもそも自衛隊の主な任務は、有事における武力攻撃の排除にある。市民の救助、救難、避難といった根本的な対策(つまり国民保護計画の整備など)は各自治体に“丸投げ”されているのだ(注2)。石嶺市議のみならず島々の住民は、初期段階からこうした諸問題を追及してきた。

一方、「友人や身内が自衛官という人もいる。気軽に政治的発言はできない」(30代男性)というのも各島を取りまく実情だ。自衛隊批判はタブー視される傾向にあり、コミュニティで話題にすることにも緊張が走るという。

南西諸島で陸自配備に抗う人びとを描いた映画『標的の島 風かたか』(現在公開中)の三上智恵監督は、〈自衛隊にいる人たちを否定したくないという気持ちがありながら、配備計画撤回を求めていく島の人たちの葛藤を伝えたかった〉と本誌に語った(3月24日号インタビューより)。宮古島の住民の1人は、「島の人たちには言葉では言い表しがたい葛藤がある」とした。“軍隊と性暴力”の関係について石嶺市議が懸念を表明したことは、こうした文脈上での出来事だった。

「市議の発言は妥当だ」

宮古島市議会事務局には、3月21日までに計523件の電話やメールが届き、約7割が石嶺市議に対する批判だったという(『琉球新報』3月22日配信記事より)。

支援者によると誹謗中傷が多数あり、「死ね」「市議を見つけだせ」「晒し首に」との暴言や、「電気棒」といった物で家族への危害を示唆する文書もある。地元関係者はこう証言する。「しかし市議会事務局は当初、石嶺市議に無断で、事務局側に届いた文書を意見対立する議員らにも回覧していたのです」

島内外からは「(自衛隊への)職業差別だ」「根拠なき断定」などの非難が殺到しているというが、一方では「自衛隊という組織の過去と現在を見つめるかぎり、発言内容は妥当だ」との声もある。筆頭は元「反戦自衛官」の小西誠氏だ。

小西氏は「自衛隊内部はさまざまな問題を抱えている」とした上で、「営内班居住義務のある自衛官は24時間監視下で、内部では私的制裁やパワハラ、いじめが横行。基本的人権も事実上適用されない状態です。抑圧的環境では組織内外の弱者が暴力の対象になる。自衛官自身やその周囲では、泣き寝入りを強いられる人も少なくありません」と指摘する。

16年12月に『オキナワ島嶼戦争 自衛隊の海峡封鎖作戦』(社会批評社)を上梓した小西氏は、「東日本大震災等を通じて、自衛隊の災害救助面が評価されるようになった半面、武力を伴う組織であるということも、無批判のまま正当化、タブー視されつつある。この状況下で進んでいるのが南西諸島への陸自配備」だと警鐘を鳴らす。

離席した議員に問題あり

石嶺市議が脅迫を含む暴言や物理的な嫌がらせを受けていることについて、識者からは「市議に対するバッシングは、それ自体が人権侵害にあたる」「実際に被害者が出たとき、声を出しづらくなるおそれがある」といった指摘もある。

だがこうした点さえ議論することなく、宮古島市議会は3月21日、石嶺市議に対する辞職勧告決議を20対3の賛成多数で可決した。石嶺市議は弁明文(注3)を読み上げこの決議を「拒否」したが、22日一般質問で同市議が登壇した際、「反省の色が見えない」などとして15人の男性市議(注4)が無断で離席し、流会という事態に陥った。

沖縄の基地問題に詳しい宮平真弥氏(流通経済大学法学部教授)はこう批判する。
「石嶺市議は自身が不適切だったと認めた発言部分をすでに撤回・削除した上で謝罪しています。しかし22日の市議会では無断で離席した市議が多数いました。根本的な議会制民主主義の否定であり、こうした態度こそ本来は責任が問われるものです。有権者に対する背信的行為とみることもできるでしょう」
(3月31日号記事を一部修正)

<注1>
在日米海兵隊が公式サイトに掲載した2月23日のニュース(「陸上自衛隊がカリフォルニアでの演習に参加」)をシェア(共有)する形で、石嶺香織市議は3月9日、自身のフェイスブックにコメント付きの投稿をした。内容は以下の通り。〈海兵隊からこのような訓練を受けた陸上自衛隊が宮古島にきたら、米軍が来なくても絶対に婦女暴行事件が起こる。軍隊とはそういうもの。沖縄本島で起こった数々の事件がそれを証明している。宮古島に来る自衛隊は今までの自衛隊ではない。米軍の海兵隊から訓練を受けた自衛隊なのだ。私は娘を危険な目に合わせたくない。宮古島に暮らす女性たち、女の子たちも。〉――投稿した直後からネット上での“炎上”が始まった。

<注2>
南西諸島での“国民保護”は二の次のズサンさ──陸上自衛隊の配備に前のめりな安倍政権の無責任」(内原英聡)小誌2016年9月23日配信

<注3>
石嶺市議が21日議会で読み上げた弁明文。〈私の3月9日と10日のFacebookの投稿文に関して、私はすでに3月12日に謝罪文を出しています。これは私の個人的なFacebook上での発言ですので、Facebookで謝罪し、マスコミにも謝罪文を出しました。(中略)また、私の発言により議会事務局や当局の業務に支障をきたし、ご迷惑をおかけしたことを加えてお詫びいたします。今回の件について、議会が辞職勧告決議案を出すということは、不当であると考えます。(中略)私は7637人の市民が選んでくださった議員であると自覚しています。決して議会が選んだ議員ではありません。私は、「平和な未来といのちの水を子どもたちに手渡したい ミサイル新基地建設反対」という政策を掲げて、今回、市民の負託を受けました。平和な未来をつくるため、ミサイル新基地建設を止めるために、これから精一杯頑張りたいと思います。よって、私石嶺かおりは、辞職勧告を拒否いたします。〉

<注4>
3月21日に途中議会退席した宮古島市議は、前里光健、下地勇徳、粟国恒広、平良敏夫、上地廣敏、仲間則人、西里芳明、富永元順、嵩原弘、下地明、佐久本洋介、平良隆、前里光惠、垣花健志、新里聰――の15人。

山城博治議長、長期勾留から保釈――「運動つぶしの不当弾圧だ。闘いは不滅」

那覇地裁前に集まった山城博治さんらの支援者たち。(撮影/浅野健一)

辺野古と東村高江の米軍基地反対行動を巡り、威力業務妨害などの罪で起訴された沖縄平和運動センターの山城博治議長ら3人の初公判が3月17日、沖縄・那覇地裁(潮海二郎裁判長)であった。

筆者は3月8日、那覇地裁総務課に「記者席」での取材を要請したが、新盛誠広報係長は13日、「記者クラブ(13社)以外は認めない」と通告。22席の傍聴券に379人が並び、筆者は抽選に外れた。

弁護団や傍聴した支援者によると、山城さんは罪状認否に先立ち、「5カ月に及ぶ勾留と被告人の権利を奪う不当な処遇に、強い憤りを表明したい」「これはまごうことなき不当弾圧だ。闘いは不滅だ」と表明。起訴事実について、有刺鉄線一本をペンチで切断した以外は否認、「政府の横暴への抗議行動で、正当な表現行為」と訴えた。

『沖縄タイムス』は18日の社説で、「辺野古新基地反対の民意が無視される中、政治的表現として抵抗権を行使した」と指摘。『琉球新報』は「新基地建設の強行を眼前にし、やむにやまれぬ思いで及んだ山城議長らの行為は正当防衛に等しい」と論じた。

約500人の支援者が終日「裁判所は人権を守れ」などと訴えた。地裁入口は職員らが鉄柵のバリケードで市民を遮断し、多数の制服警察官が警備。「防犯カメラ作動中」の貼り紙があり、警察官がビデオカメラを支援者に向けた。

弁護人の池宮城紀夫弁護士によると、検察側は、地元の2紙が山城氏に書面インタビューした記事について、「接見禁止中の被告への取材は問題だ」と通告しているという。池宮城弁護士は「山城さんは少しやせたが、精神的には元気いっぱい。接見が禁止されている中、2紙に載る支援者の声が大きな励みになっている」と話した。

弁護側は閉廷後に保釈請求し、地裁は17日夜、保釈を認め、福岡高裁那覇支部も保釈を決定、山城さんは18日、保釈された。

(浅野健一・ジャーナリスト、3月24日号)