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温かく“肉体的な”ツノ──カナダ=エスキモー8(本多勝一)

イスマタがカリブーの大腸を手づかみにして食べると、中の糞が外へ大量にこぼれ出た。

これまでの自分の知識とまるで違っていたことの第一は、カリブーのツノがふさふさとした毛皮でおおわれている点だ。やわらかくて、ビロードの縫いぐるみを撫でているみたい。

第二は、ツノが胴体と同じように温かいことだ。血液がかよい、まさに生き生きとしている。とりわけ成長中の先端は、まだグニャグニャである。ツノというものは、ツメや毛などよりも〝肉体的〟なのですね。よく飾りものにしてあるシカやトナカイのツノ。あれはツノの骸骨と言うべきものだろう。

この見事なツノに私はほれこんで、剝製にできないものかと思った。ともかく藤木さんに写真をまずとってもらおうと、イスマタに「ピオヨ(立派だね)」と声をかけたとたん、彼は「イー、ママクト(うん、うまいぞ)」と答えるなり、ツノの先端をナイフで切り落としてしまった。

あきれて見ていると、イスマタはバナナの皮をむくようにしてその毛皮を剝ぎ、ツノの中身をかじっている。「ネリヨマプンガ(俺も食いたいね)」と言って、私も別のツノを切って食べてみる。いくらか桃色がかった白い中身は、ナマコみたいにコリコリしていて、かなり甘味もある。生臭さはほとんどない。味はカリブーの脚骨の髄とよく似ている。
(一部敬称略)

(ほんだ かついち・『週刊金曜日』編集委員)

※この記事は現在、本多編集委員がかつての取材をもとに『週刊金曜日』に毎週連載しているものです。カナダ=エスキモーの連載は1963年に『朝日新聞』に掲載され、後に単行本や文庫本にまとめられています。

石垣島で「慰安婦」・南京事件を記述した中学生向け副読本の配布が中止に

日本軍「慰安婦」や南京事件の記述がある沖縄県石垣市の中学生副読本『八重山の歴史と文化・自然』がこのほど、一部市議の抗議に端を発した市教委の方針転換で、2017年度から配布が中止される。

石垣市議会では昨年6月、以前から地元の『琉球新報』や『沖縄タイムス』を「偏向」と批判している友寄永三議員(無所属)が、副読本を取り上げて攻撃。「朝鮮から連行されてきた女性たちが慰安婦として人権無視の状態に置かれていた」という記述について「軍や官憲が『慰安婦』を強制連行したという証拠は全くなかった」として、「人権無視という記述も含め訂正すべき」と要求した。さらに、南京事件の「一般市民への無差別の虐殺や略奪を行いました」という記述も、「虐殺の証拠は全くないというのが政府の見解」と質した。

これを受けて、中山義隆市長と石垣安志教育長が副読本の「見直し」を表明。1月になって市教委側が、15年と16年度に配布されていた副読本の17年度配布中止を執筆者側に通知した。

だが、副読本編集委員会の田本由美子委員長ら執筆者9人が2月21日、市教委に対し「意見書」を提出。(1)「慰安婦」については、1993年の「河野談話」や、2015年の岸田文雄外相記者会見でも「軍の関与」と人権侵害の事実を認めている(2)南京事件についても、外務省のHPでは「日本軍の南京入城(1937年)後、非戦闘員の殺害や略奪行為があったことは否定できない」と明記されている――などと反論した。

今回の決定について市教委は本誌に、「16年度で副読本配布事業は終了したから」と説明している。だが、「自国に都合の悪い歴史事象が、教育の現場から削除される傾向」にあり、「政府の公式見解ですら教科書で扱われず、今度は副読本がその対象にされようとしています」という「意見書」の懸念が増す結果になったのは、間違いない。

(成澤宗男・編集部、3月10日号)