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2017年度予算案は綻びだらけ(鷲尾香一)

今国会の重要テーマの一つ、2017年度予算案には、大きな綻びがある。

一般会計の歳出額は97兆4547億円と5年連続で過去最大を更新。原資となる歳入は、税収を16年度当初予算よりも1080億円多い57兆7120億円と見込んでいる。

問題は税収見込み額だ。実は、16年度予算では円高要因から法人税収が伸び悩み、税収不足に陥った。このため、政府は16年度第3次補正予算で、税収を1兆7440億円減額修正、税収不足分は1兆7512億円の赤字国債の追加発行を決めた。

16年度予算で税収不足に陥ったにもかかわらず、17年度予算案は税収増加を前提とした。これでいいのだろうか。

金利低下と円安ドル高効果で企業収益に貢献した「アベノミクス」が、税収を見る限り“曲がり角”を迎えていることは明らかだ。そこに、日本の金融政策を「通貨安誘導」だと批判し、米国企業保護のためドル高をやり玉にあげるトランプ大統領が、文字通り、暴れはじめている。日本企業の収益力は低下するだろう。17年度の税収が16年度を上回るなどというのは「とらぬ狸の皮算用」なのだ。

綻びはまだある。国債関係だ。新規国債発行額は34兆3698億円と16年度を622億円下回り、当初予算では7年連続減少した。また、歳入に占める国債の割合を示す国債依存度は16年度の35.6%から35.3%へ低下する見込みで、財政健全化の建前は何とか取り繕った恰好だ。国債費は16年度より800億円超少ない23兆5285億円に抑制した。

だが、新規国債発行額の減少と国債費の抑制には“カラクリ”がある。

新規国債発行額の減少は、外国為替資金特別会計(以下、外為特会)の運用益を全額、一般会計の歳入に繰り入れたことで実現した。結果、歳入の「その他収入」は16年度を6871億円上回る5兆3729億円が計上されている。

一方、国債費の抑制は、日本銀行が長期金利をゼロ%程度に誘導する金融緩和を実施していることで、財務省が16年度に1.6%と想定していた国債の金利を17年度は1.1%に引き下げたことがある。つまり、金利は上昇せず、国債の利払い費が減少するという「皮算用」が働いているのだ。

しかし従来、財務省は金利の急上昇により国債の利払い財源に不足が発生しないように保守的な金利設定を行ない、国債費に余裕を持たせて予算を計上してきた。

その結果、多額の国債費の余剰が毎年度発生し、これが補正予算の財源に充当されていた。だが、17年度予算案では想定金利を引き下げたことで、国債費の余剰は望めなくなった。むしろ、金利が急上昇した場合には国債の利払い財源が不足する可能性すらある。補正予算に使えるだけの国債費の余剰が発生する可能性は潰えた。

さらに、外為特会の剰余金(いわゆる埋蔵金)も当初予算に吐き出してしまったため、補正予算には使えない。もし、年度途中に補正予算を組まなければならないような不測の事態に陥った場合、またぞろ「赤字国債」で資金調達するしかなくなったわけだ。17年度予算案は綻びだらけだ。

(わしお こういち・経済ジャーナリスト、2月17日号)

北朝鮮がミサイル発射――米朝で第2次朝鮮戦争の可能性は?

北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)は2月12日午前(日本時間)、訪米中の安倍晋三首相がトランプ大統領と懇親を深めているタイミングで弾道ミサイルを発射した。前日の日米首脳会談で北朝鮮の核・弾道ミサイル計画の放棄と挑発行為をしないよう求めた直後であり、両首脳は共同記者会見を開き、ミサイル発射を強く非難した。北朝鮮にとって、また日米両国にとっても危険なカケが始まりつつある。

トランプ氏は大統領選挙前の昨年5月、「対話することに何ら問題はない」と金正恩委員長との首脳会談に意欲を示す発言をしていた。だが、当選後、北朝鮮への働きかけは一切なかった。

焦れたのだろうか。金正恩委員長は元旦の朝鮮中央テレビで「大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発が締めくくりの段階にある」と主張した。注目を集めることにより、“金王朝”の安定を図ってきた若い指導者にとって「危険なラブコール」が今回のミサイル発射だったようだ。

ミサイルは、12日午前、西部の平安北道・亀城から発射され、500km以上飛行して日本海に落下した。韓国軍は中距離弾道ミサイル「ムスダン」の改良型の可能性が高いとしている。

注目されるのはトランプ政権の出方だ。共同記者会見で「断じて容認できない」と強く非難する安倍首相の後、登壇したトランプ大統領は「米国は100%、同盟国の日本とともにある」と述べただけ。質問には答えなかった。

かつて米国は北朝鮮を攻撃する計画を立てたことがある。1993年、北朝鮮は核開発を進めるため核拡散防止条約(NPT)脱退を宣言した。米国は核開発施設のある寧辺を空爆する計画をたて、第2次朝鮮戦争に発展した場合の損害を見積もった。その結果、米軍と韓国内に甚大な人的損害が出るとわかり、攻撃を断念した。

攻撃断念にはもうひとつの要素がある。米政府から日本政府に対し、米軍への後方支援や米艦艇の港湾使用など1059項目の支援要請があり、日本政府はいずれも「憲法上、武力行使は認められていない」と断ったことだ。

自衛隊の支援や日本列島の使用が認められなければ、朝鮮半島での戦争遂行は不可能に近い。1950年の朝鮮戦争当時、日本は独立しておらず、米軍は思うがまま日本を出撃基地および後方支援基地として活用した。

【切り札を切るのはどっち?】

米国の要請を断ったことで日米関係は極端に悪化した。これを修復するため、日本は周辺事態法を制定、朝鮮半島有事の対米支援を可能にした。安倍政権下の2015年には日米ガイドラインを改定し、日本の「存立危機事態」や国民の生命に重大な影響がある場合には集団的自衛権行使を解禁し、米軍への後方支援もほぼ全面解禁した。この年、安全保障関連法が制定され、日米ガイドラインに息が吹き込まれたのである。

一方、北朝鮮は03年に再びNPT脱退を宣言、5回の核実験を成功させ、ICBM同様の技術が必要な「人工衛星」の発射に2回成功した。昨年は20回を超えるミサイル試射を行ない、核・ミサイル技術を着実に進展させている。

93年の朝鮮半島危機の頃とは状況が違うのだ。北朝鮮は事実上の核保有国となり、日本は憲法解釈を変更して米国とともに戦争できる国に変わり、米国は日米ガイドラインにより、自衛隊を活用できるお墨付きを得た。

防衛省関係者はこういう。「論理的にはトランプ政権の選択肢は、(1)北朝鮮の出方次第で武力行使に出る、(2)米朝対話の窓を開く、(3)何もしないの三つだ」。当面、何もしなくても核・ミサイル開発がこれ以上進めば、(1)と同じ結論になりかねない。

トランプ大統領は首脳会談直後の共同記者会見で「北の核・ミサイル脅威は優先順位が非常に高い」と「very」を2回使って強調した。切り札を切るのは、ともに予測不能の米国、北朝鮮、どちらの指導者だろうか。

(半田滋・『東京新聞』論説兼編集委員、2月17日号)