週刊金曜日公式ブログ 週刊金曜日ニュース

アパホテル、南京虐殺否定本の撤去は拒否(岩本太郎)

南京大虐殺を否定する書籍が客室内に置かれていることを指摘する動画がインターネットで流れ、国内外から批判を浴びるアパホテル。一企業の信用問題ですむはずもなく……。

ホテルチェーンのアパホテル(本社・東京)に宿泊した米国人と中国人の大学生2人が、東京都内の同ホテルに宿泊した際の経験から「このホテルのCEOが執筆した、南京事件を否定する内容を含む内容の本が全客室に置かれている」と報じる動画を「KatAndSid」のハンドルネームで中国のSNS「微博」に投稿したのは1月15日の夕刻のことだった。

英語と中国語でレポートされたこの動画は猛烈な勢いで広まっていった。微博をチェックしていたユーザーによると、動画の再生数は翌1月16日の昼過ぎには2000万回を突破したという。同日午後には中国共産党機関紙『人民日報』の国際版『環球時報(the Global Times)』もこの問題を取り上げた。

日本のネット媒体の「IT mediaニュース」によると《動画は17日午前11時半までに6800万再生を超えた。「いいね」は32万以上、コメントは2万9000以上投稿されており、「客観的なリポートをありがとう」「このホテルには泊まらない」などの声が寄せられている》という凄絶な規模にまで拡散された。

アパグループといえば、代表の元谷外志雄氏が安倍晋三首相の後援会の副会長を務めたり、公益財団法人アパ日本再興財団主催の懸賞論文に田母神俊雄氏が受賞して航空幕僚長更迭のきっかけになったことでも有名。また、妻であるアパホテル社長の元谷芙美子氏の独特なキャラクターもネット、あるいはCMなどマスメディアでもおなじみだ。

そうした意味では、同ホテルの客室に置かれた外志雄氏の著作が外国人宿泊客の目に触れたことをきっかけに起こった今回の問題を「起こるべくしてついに起きたか」と受け止めた日本のネットユーザーも多かったのではなかろうか。 アパグループ側は今後も同書を客室に置き続ける旨の見解を公式サイトで発表したが、同ホテルを応援する書き込みがネット上に溢れている今の風潮からすれば、むしろアパグループの対応は予想通りの展開といった感すら受ける。

     海外メディアも大々的に

とはいえ、そこはあくまでも日本国内における話である。海外では先の『環球時報』のような中国語のメディアに限らず、BBCなど欧米発の国際ニュースネットワークも、この問題については当初から連日大々的に報道している。

たとえば英国に拠点を置く『ザ・ガーディアン(the Guardian)』は1月18日の記事「Japan hotel chain angers China over book’s denial of Nanjing massacre(日本のホテルチェーンが南京虐殺否定本で中国を怒らせる)」の中で、昨年10月に国連の教育科学文化機関(ユネスコ)が南京事件に関する資料を世界記憶遺産に登録した際、日本がユネスコへの拠出金(3400万ポンド以上)の支出を留保した(ユネスコが審査過程見直しを発表した後の12月になって一転支払いを了承)件も併せて報じている。

すなわち海外ではこの問題をきっかけに「やはり日本は過去の戦争責任を認めない国なのだ」といった見方を強めかねない報道が出ているのだ。

一方、来月に札幌で開幕する冬季アジア大会の組織委員会が、選手団の宿泊先となっているアパホテルに対し、当該本の撤去などの対応を打診するという具体的な影響もすでに出てきている。しかし、ネット上で「アパホテル、がんばれ」と意気盛んな一部のネットユーザーたちにはそれが日本の国際的立場を悪くすることへの想像力が働かないらしい。

ネットの普及により情報が国境を超え瞬時に世界に広まるようになった反面、こうした日本の内と外とでの意識の乖離には何とも歯がゆさを禁じえない。
(いわもと たろう・ライター。1月27日号)

小池都知事、ブレーン・直系都議と意見相違か――豊洲移転、都議選の争点へ

1月14日の専門家会議。正面に平田健正座長。小島敏郎顧問(左上で腕を組む男性)もオブザーバーとして同席。(撮影/横田一)

1月14日の専門家会議。正面に平田健正座長。小島敏郎顧問(左上で腕を組む男性)もオブザーバーとして同席。(撮影/横田一)

「基準値79倍のベンゼン」「猛毒シアン検出」という第9回地下水モニタリング結果が専門家会議で公表された1月14日、小池百合子東京都知事は第4回「希望の塾」挨拶後の囲み取材で、築地市場の豊洲移転問題を都議選の争点にする考えを明らかにした。

「一度は都議会も認められた案件ですが、都議選の争点の一つになっていくのか」という質問に小池知事はこう強調した。

「これまでの(豊洲移転の)流れに関わってこられたのも都議会。争点になることも避けられないのではないか」

翌15日の第1回都議選選考委員会にも出席した小池知事は、より踏み込んだ言い方をした。

「豊洲(移転問題)は都議会でどれだけ審議が行なわれてきたのかも改めて見直す必要があろうかと思います。今後の豊洲のあり方は一つの大きな争点になるべきだと思います」

今回の結果について14日の囲み取材で「築地再整備存続の可能性が高まったと考えていいのか」と聞くと、小池知事はこう答えた。「いずれにしましても今日の結果を受けて専門家の方に議論をしていただいて、それを参考にさせていただきたいと思っています」

築地存続を選択肢として残しているという回答だが、今回の結果が出てもなお早期豊洲移転を求める声は少なくない。築地市場協会の伊藤康裕協会長は14日の専門家会議を途中退席をした後の囲み取材で、こう訴えた。

「先生方が今日はっきり言っているように、地上部分はまったく問題なく、綺麗だ。地下水は飲むわけではないし、魚を泳がしているわけでもない」「移転先として不適切だとは考えない」と強調。「知事が年度内に判断することを求める」という従来の主張を繰り返した。

同じ考えなのが橋下徹・大阪前市長だ。ツイッターで「飲むわけではなく、使うわけでもない地下水に環境基準を設定したことが全ての混乱の原因」などと連続発信。地下水モニタリングの結果に左右されるべきではないと主張した。

橋下氏が大阪府知事時代と市長時代にブレーンをしていた東京都特別顧問の上山信一・慶應大学教授も「豊洲新市場が出来てしまったから当然豊洲移転」との立場だという。知事側近の音喜多駿都議はこう話す。「私も豊洲移転止む無しと考えていますが、市場問題プロジェクトチーム座長の小島敏郎顧問(青山学院大学教授)は『築地存続可能』という立場です」。

すでに小池知事は都議選で候補者擁立を表明、15日には第1回選考委員会が開かれて小島氏と上山氏らを含む顧問も出席しているが、争点の豊洲移転問題について意見統一がなされていないのだ。

【都が石原元知事訴えに対応】

20日の知事定例会見では、豊洲移転問題の立場に影響を与える住民訴訟の方針変更の発表もあった。2012年5月24日付で東京地方裁判所に訴状が提出された住民訴訟は、600億円を超える土壌汚染対策費が必要な土地購入をした石原慎太郎元都知事の責任を問うもの。原告の住民は11年3月の東京都と東京瓦斯(株)および東京ガス豊洲開発(株)との間の売買契約に関し、「東京都は石原慎太郎元都知事に対し、約578億円を請求せよ」と被告の東京都に求めてきたが、都は「元知事の責任はない」と主張。ところが、一転して都は訴訟対応特別チームを編成し、豊洲の土地購入の事実関係を明らかにし、住民訴訟への対応を、改めて検討するというのだ。

理由は、(1)住民訴訟では、石原元都知事売買契約における責任が問われている、(2)用地選定、土地購入契約の経過が不透明であり、かつ、不適正ではないかとの疑惑が多く指摘されている、(3)その事実関係、それをもたらした責任を明らかにすることは、都政を改革することにもつながる、ということをあげた。

事実関係の解明に都が全面協力、石原元都知事の損害賠償責任の有無を明らかにするということだ。今後の展開が注目される。

(横田一・ジャーナリスト、1月27日号)