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国が結婚・出産を強要?
「だから結婚できない」「お持ち帰り」指導……
「官製婚活」の現場はセクハラ三昧(斉藤正美)

地縁を活かした縁結びの取り組みに賛同する企業を、「縁結び企業さん」として展示する福井県庁。(撮影/斉藤正美)

地縁を活かした縁結びの取り組みに賛同する企業を、「縁結び企業さん」として展示する福井県庁。(撮影/斉藤正美)

近年、安倍政権が膨大な国家予算を投入し、お見合いや婚活セミナー、婚活パーティーなどの「官製婚活」を全国で繰り広げている。「官製婚活」の現場で何が起きているのか、取材した。

「プロポーズ。イイエと答えちゃいけないの?」

「プロポーズ。ハイかYESで、答えてね」。福井県庁を訪れると、1階の入り口には、ブーケを持って微笑む女性の横にこのフレーズが書かれたポスターが、パネルになって飾られていた。「ふくい結婚応援企業が100社到達!」という言葉とともに、ポスターの周りを企業名が取り囲み、ハートの折り紙も散りばめられている。

福井県は、安倍政権が2013年度以降から毎年全国の県や市町村にばらまいてきた「地域少子化対策強化交付金」(以下、「交付金」)の“恩恵”を受け、「職場の縁結びさん」と称する「婚活メンター」(サポーター)の企業・団体内への設置を15年度から推進してきた。全国に先駆けて、10年度から自治体主導の「地域縁結び」を導入してきた県なのだ。

しかし、自治体主導のもとで職場を挙げて結婚を後押しするような環境が醸成されれば、結婚したくない人や、子どもをほしくない人、子どもができない人、LGBTなどの性的少数者は追い詰められるだろう。「個人の自由」の侵害にもつながる。だが福井県庁女性活躍推進課の担当者は、そうした点には頓着せず、「合コンによって、社員のコミュニケーション力を上げることになる。結婚すると会社に対する忠誠心というか、真剣度が上がる。人口減少に歯止めをかけることで社会貢献ができる」ことをメリットだとして語った。

セクハラ的指導の実態

これは福井県に限ったことではない。現在、高知県、愛媛県などをはじめ全国で「官製婚活」事業は進められている。たとえば富山県は「交付金」を受けて、14年10月から「とやまマリッジサポートセンター」(以下、「センター」)という結婚支援事業をスタートさせた。「センター」は、富山県庁の地方創生推進室が富山県法人会連合会に運営を委託。コンピュータによるマッチングシステムを導入し、会員制のお見合いや婚活セミナーを実施している。この事業には15年10月から総計4000万円の税金が投入されているが、今年1月現在、成婚数は総計でたったの19組である。

さらに、複数のセンター利用者に取材すると、利用者がセンターの運営に改善を要求した際に「そんなことだから、あなたは結婚できない」と言われたり、婚活セミナーで(女性を)お持ち帰りしてください」とセクハラ的指導をされたという証言が出てきた。行政の関わる事業として疑問を持たざるを得ない実態が浮かび上がってくる。

また、民間の婚活業者では考えられないような、個人情報の杜撰な扱いがうかがわれる証言もあり、センター側もその事実を認めた。

算出法不明の不可解な「企業子宝率」

福井県や富山県は、全国に先駆けて「企業子宝率」調査を導入したことでも知られる。企業子宝率は、従業員(男女問わず)が企業在職中にもつことが見込まれる子どもの数で、少子化対策やワークライフバランスの研究者、渥美由喜(あつみ なおき)氏が04年に考案した。 現在、福井や富山をはじめ、静岡や山形、佐賀、鳥取など10以上の自治体が企業子宝率を利用している。

しかし、この指標は従業員のプライバシーの侵害の恐れが指摘されており、肝心の算出方法の核心部分もわかっていない。外部からの専門的な検証ができないのであれば、数値の再現性は担保できず、これほど広範囲の自治体が使う指標としては、信頼性を損なう。

渥美氏や自治体は「知的財産」だとしてこの算出方法を開示しないが、筆者が調査したところ、「知的財産」に登録されていなかったことが判明した。
(さいとう まさみ・富山大学非常勤講師。専門は、社会学、社会運動研究、メディア研究)

※その驚くべき実態の詳細は、『週刊金曜日』2017年1月27日号に掲載されています。電子版ご希望の場合は、下記のアプリ

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「トモダチ作戦」訴訟、米政府が日本の見解に反論――被曝兵士の裁判は米国で実施か

「トモダチ作戦」の被曝兵士(右側2人)と、話を聴いて後に基金を設立した小泉純一郎元首相。2016年5月、米国・サンディエゴ。(撮影/エィミー・ツジモト)

「トモダチ作戦」の被曝兵士(右側2人)と、話を聴いて後に基金を設立した小泉純一郎元首相。2016年5月、米国・サンディエゴ。(撮影/エィミー・ツジモト)

東日本大震災の「トモダチ作戦」に従事した兵士たちが、東京電力、およびGE(ゼネラル・エレクトリック)などの原発メーカーを米国において訴えた「原発訴訟」。この間、日米間の「裁判管轄権」をめぐる争いが繰り広げられてきたが、一つの山を越えつつある。

米国カリフォルニア州サンディエゴ連邦地裁による、「米国での裁判進行」という判決を不服とする東電は、同州パサデナ連邦巡回高等裁判所に上告。それを受けた日本政府は、「法廷助言人(amicus curiae)」として見解を提出、米国での裁判進行を阻止する立場で、「東電の地裁に対する不服を支持する」との意見陳述を展開した。これに対し日本で多くの原発裁判にかかわる河合弘之・海渡雄一両弁護士は、日本で裁判が行なわれた場合には裁判制度の違いから原告団がいかに不利になるかという問題点を、直ちに米国原告弁護団に提出した(本誌2016年10月14日号参照)。

だが、日米間の「親善関係」などの政治基盤に亀裂が入ることを憂慮した高裁の裁判官たちは、米国政府にこの難問への「見解」を求めた。これまで米国政府は、中立の立場をとることで、事実上、日本側の主張を「黙認」し続けてきたのであるが――。

そしてついに、米国政府は昨年12月19日、「見解」を発表。そこには、以下の重大な4項目の所見が表明されていたのである。

(1)サンディエゴ地裁が米国での裁判進行を認めたのは、東電が異議を申し立てるところの「自由裁量権」の濫用ではない。裁判が米国で行なわれるとしても、高裁が危惧する日米の「親善関係」に亀裂が生じるものではない。

(2)日本政府および東電が主張する「日本でも正当な裁判が受けられる」という点についても、地裁の判決が「自由裁量権」の濫用とは認められない。

(3)「適用される法律選択」による便益分析のない初期の段階で、政治原理を取り上げ主張するのは避けるべきである。

(4)「適用される法律選択」の分析がない現段階で、「ファイアーファイターズ(消防士の損害に火元は賠償しないとする)・ルール」の適用を持ち出すべきではない。

こうした理由を以て、米国政府は全面的に地裁の判決を支持する見解を発表。これによって、高裁は日本政府はじめ東電の不服申し立てを却下すべしという結論に達すると考えられる。高裁の判決は未だ下されていないが、日本政府や東電などが回避を切望していた「米国での裁判続行」に追い込まれることは間違いない。

【フクシマの「真相」解明へ】

米国で裁判が開廷した暁には、訴訟手続きの「ディスカバリー」(証拠及び情報開示制度)によって、未だ明らかにされていない事実が見えてくるだろう。これまで、「真相」を公表せずに逃げ切れると考えていた東電や日本政府は、ついに米国で幾多の情報開示を迫られることになる。

いかなる国民も、自分の国において起きた「未曽有」の大惨事について、その原因を知る権利があるはずだ。だが、フクシマをはじめ日本の人々は事故当時からの詳しい経緯などを未だに知らされていない。当初わずかに伝えられた事実も、今や人々の記憶から霞のように消えてしまっている。

皮肉にも、米国兵士の被曝によって、フクシマ事故から6年にして、当時の「真相」がようやく明らかになろうとしている。同時に、万が一、兵士たちの様々な病状が「トモダチ作戦」の参加によってもたらされた結果と認められた場合、今なお低線量被曝による健康被害を認めない日本政府の立場も大きく崩れていくだろう。

米国政府の「見解」によって、今後の裁判の展開は非常に意義深く、フクシマに心を寄せる世界の人々が注視するところとなろう。

フクシマの事故後6年を前に、日本の人々にも大いに関心を持ってもらいたいところである。

近々、出される予定の高裁における「裁判管轄権」をめぐる判決については、いずれ報告したい。

(エィミー・ツジモト・米国在住ジャーナリスト、1月20日号)