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原発事故避難者を路頭に迷わせるな(宇都宮健児)

東日本大震災・福島原発事故から6年が経とうとしている。復興庁によれば、2017年1月16日現在、全国の避難者数は12万6943人に上り、そのうち福島県・宮城県・岩手県外への避難者数は4万6645人に上っているということである。また、福島県内外への避難者数は8万846人で、うち県外への避難者数は3万9818人に上る。

ところで、原発事故避難者のうち、国が決めた避難指示区域からの避難者に対しては、東京電力から不動産賠償や精神的慰謝料の支払いなどが行なわれてきたが、避難指示区域外からの避難者、いわゆる「自主避難者」に対しては、災害救助法に基づく「みなし仮設住宅」の無償提供が唯一の支援であった。ところが、自主避難者にとって唯一の支援である住宅の無償提供が、今年の3月いっぱいで打ち切られようとしている。

福島県の発表によると、自主避難者は16年10月現在、1万524世帯、2万6601人(うち県外避難5230世帯、1万3844人)に上っており、自主避難者の約7割が4月以降の住居が決まっていないということである。

『読売新聞』の調べでは、自主避難者が生活している46都道府県では、24都道府県が何らかの独自支援を行なうことを決める一方で、19県が独自支援を見送ることを決めており、3県が検討中ということである。

ところで、東京都内の自主避難者数は16年9月現在、717世帯、約2000人といわれている。東京都は独自支援策として都営住宅の優先入居枠を300戸提供することにしているが、収入要件・世帯条件が厳しいため大半の避難者が応募資格に満たず、現段階での斡旋世帯数は196世帯にとどまっている。

自主避難者の多くは、子どもを被ばくから守るために避難をしている人たちである。自主避難者の中には、夫を福島に残し、母子で避難している人も多く、そのため、二重の生活費の負担で経済的に困窮している人が多い。また、都内であっても住宅を転居することになれば、子どもの通う学校を転校せざるを得なくなり、いじめを受けることを再び心配する自主避難者も多い。避難者の中には、このままでは4月以降、ホームレスとなるしかない、路頭に迷ってしまうと訴える人も少なくない。4月以降も現在の住宅に無償で住まわせてもらいたい、というのが多くの自主避難者の切実な願いである。

自主避難者に対する住宅の無償提供の打ち切りは、自主避難者に対し、事実上強制的な帰還による「被ばく」か、避難を継続することによる「貧困」かの究極の選択を強いるものであり、政治の責任を放棄する冷酷・無慈悲な政策と言わねばならない。

自主避難者は、原発事故さえなければ、子どもの被ばくを心配して避難することもなかったのである。その意味では福島原発事故に責任のある国と東京電力は、責任をもって自主避難者に対する住宅の無償提供を継続すべきであるし、避難先の都道府県も最大限支援の手をさしのべるべきである。

震災からの復興は、何よりも「被災者自身の復興」「人間の復興」でなければならないからである。

(うつのみや けんじ・弁護士、2月17日号)

デマ放送問題――MXテレビ「ニュース女子」がついにBPO審議入りへ

2月9日『東京新聞』に申し入れ書を提出した市民有志が同日都内で開いた記者会見。(写真/内原英聡)

地域テレビ局TOKYO MX(本社千代田区)が沖縄の米軍基地問題に関するデマや人権侵害含む番組を地上波などで放送した問題を受け、「沖縄への偏見をあおる放送を許さない市民有志」は2月9日、同番組司会の長谷川幸洋氏が論説副主幹を務める『東京新聞』に対し、同氏の解任などを求める申し入れ書を提出した。

問題視されているのは(株)DHCシアターと(株)ボーイズが制作し、TOKYO MXの枠内で1月2日に放送した番組「ニュース女子」だ。「沖縄・高江ヘリパッドの“いま”」などとして基地問題を取り上げ、抗議する人びとを「テロリスト」にたとえるなどデマを助長した。また辛淑玉氏(反レイシズムの市民団体「のりこえねっと」共同代表)を個人攻撃。辛氏は人権が侵害されたとして1月27日、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送人権委員会に申し立てをしたと発表した。

2月9日に『東京新聞』へ申し入れ書を提出した市民有志は、(1)「ニュース女子」(♯91)の放送内容について、司会を行なった長谷川幸洋氏が訂正と謝罪を行なうこと。(2)長谷川幸洋氏が該当番組の内容について訂正と謝罪をしない場合、「論説副主幹」から解任すること、などを求めている。一方でBPO放送倫理検証委員会(川端和治委員長)は2月10日、同番組の審議入りを表明。今後放送倫理上の問題の有無など検討するとしている。

(内原英聡・編集部、2月17日号)

「慣行」無視の最高裁人事(西川伸一)

今年1月13日午前の官房長官記者会見で、菅義偉内閣官房長官はこう述べた。

「本日の閣議で決定した最高裁判事の人事について申し上げます。最高裁判所判事、櫻井龍子及び大橋正春の両名が定年退官をされることに伴い、その後任として、弁護士・早稲田大学大学院教授、山口厚氏及び元英国駐箚特命全権大使、林景一氏を最高裁判事に任命することを決定をいたしました」

15名の最高裁裁判官の出身枠は、職業裁判官6、弁護士4、学識経験者5と慣例的に決まっている。櫻井氏は学識経験者枠(行政官出身)、大橋氏は弁護士出身なので、この2件の人事で出身枠比率は維持されたように見える。

最高裁裁判官の定年退官日は70歳の誕生日1日前である。そこから逆算して、後任人事は進められる。弁護士枠の場合、日本弁護士連合会(以下、日弁連)は「日本弁護士連合会が推薦する最高裁判所裁判官候補者の選考に関する運用基準」を定めている。日弁連は昨年11月に、これに従って選ばれた7名の候補者を順位を決めて最高裁に推薦している。最高裁はそれを内閣に伝えたはずである。

もちろん、憲法により最高裁裁判官の指名・任命権は内閣にあるので、内閣は最高裁や日弁連の意向に縛られる法的根拠はない。ただし、泉徳治元最高裁判事によれば、「歴代内閣は、最高裁長官の意見を尊重してきたと思います。内閣の任命権と司法の独立を調和させるという考えから、こういう慣行ができてきたのだと思います」(『一歩前へ出る司法』日本評論社、2017年)。

実は山口氏はこの7名には含まれていなかった。「調和」の「慣行」を無視して「官邸主導」で山口氏を充てたのだろう。この異例の人事は、13年8月の内閣法制局長官人事を思い起こさせる。

菅官房長官は上記のとおり、山口氏を紹介するにあたって「弁護士」を先に出している。だが、山口氏は著名な刑法学者で、昨年8月に弁護士登録をしたばかりである。開業の経験はない。菅氏は弁護士枠での起用を強調し、日弁連に気を使ったのかもしれない。一方、弁護士出身者が実質的に減らされたことについて、日弁連から問題視する声は聞かれない。弁護士枠は保たれたと安堵しているのか。だとしたら楽観的すぎよう。人事権を用いて介入してくるのは、この政権の「手口」だ。

その意味で、竹﨑博允前最高裁長官が定年日より3カ月前の14年3月に「健康上の理由」で依願退官したのは示唆的である。当時、内閣法制局長官人事で政権の「手口」を学習した最高裁が、後任人事で政権につけこまれないように機先を制したのではとの観測がなされた。それは正しい見立てだったと思えてくる。

また、櫻井氏の後任に男性を就けたことで、女性最高裁裁判官は3名から2名に減った。13年2月に鬼丸かおる氏が任命されて以降、三つある小法廷に女性判事が1名ずつ配属されていた。ジェンダーバランスの点で後退である。

アメリカでは、トランプ大統領の強引な政策に司法が立ちはだかっている。司法の独立こそ権力の暴走を食い止める最後の安全弁だ。政権による「慣行」無視の最高裁人事は、それを脅かす布石としてゆるがせにはできない。

(にしかわ しんいち・明治大学教授、2月17日号)

“愛国学校”法人・森友学園を取り巻く「日本会議」人脈とは?

財務省近畿財務局が、大阪府豊中市野田町の国有地を“いわくつき”の学校法人に安価で払い下げていたことが発覚し、問題となっている。発端は、豊中の木村真市議が2月8日、「適正な価格で売却した」として売却額を非公開にしていた財務局を相手取り、売買契約書の開示を求めて大阪地裁に提訴したことだ。木村市議に話を聞くと、国有地払い下げをめぐっては不可解な点がいくつもあった。

まず、憲法の改正を目指す「日本会議」役員である籠池泰典氏が理事長を務める「森友学園」が売却先ということだ。森友学園は、園児に教育勅語を暗唱させ、軍歌を歌わせることで有名な塚本幼稚園幼児教育学園(大阪市)を経営する。売却された国有地では現在、「日本で初めてで唯一の神道の小学校」との謳い文句で「瑞穂の國記念小學院」の建設が進められている。木村市議によると、同小学校の建設現場に貼られていた生徒募集のポスターには、教育勅語が書かれていたという。塚本幼稚園のように小学校でも、軍国時代の教育がなされる懸念がある。

日本会議とのつながりはこれだけではない。豊中市の淺利敬一郎市長は籠池理事長から過去に少額ではあるものの献金を受けている。豊中の市議には、塚本幼稚園出身の喜多正顕氏や、日本会議地方議員連盟の設立代表発起人・北川悟司氏もいる。問題の国有地はもともと、豊中市が公園建設のために取得を希望していた。近畿財務局が借地契約は認めなかったため、買い取りを諦めたのだが、背景にはそれ以上のものがあったのではないかとの疑いも払拭できない。

また、財務省が10日に民進党などに提出した資料によると、売却額を非開示にしたのは、工事の段階で発見された地下埋設物の「風評リスク」を懸念した学校側が非公開を要請したためだという。だが、地下埋設物が見つかったのは2015年8月で、3カ月前に交わされた有償貸し付け合意書も、金額など詳細は墨塗りだった。木村市議は、「貸し付け合意の時点では地下埋設物は見つかっていなかったのに、非公開だった。何を隠そうとしていたのか」といぶかる。資料では売却額も判明したが、木村市議は自身に対する正式な開示や払い下げの経緯を明らかにするため、訴訟は取り下げない意向だ。

(渡部睦美・編集部、2月17日号)

ローハイ!(小室等)

映画音楽の巨匠ディミトリー・ティオムキン、といっても今の若い人たちは知らないよね。僕たちの世代だと、まずは一九五九年から六五年にかけて放送されたアメリカのテレビ西部劇「ローハイド」、そうカントリー・シンガーのフランキー・レインが歌う、♪ローレン ローレン ローレン ローハイ! 日本では「伊藤素道とリリオ・リズム・エアーズ」が歌っていた。日本中知らない人はいないほどヒットしたんだけどな。

余談だが、準主役のクリント・イーストウッドは直後に出演したマカロニ・ウェスタンの映画『荒野の用心棒』が当たってスター街道をはしっていくことになる。

話を戻そう。ティオムキンは、作曲家として三〇年代から六〇年代にかけてハリウッド映画音楽の一翼を担った大巨匠である。アカデミー賞は、五三年に『真昼の決闘』(監督:フレッド・ジンネマン、出演:ゲイリー・クーパー、グレイス・ケリー。このときは歌曲賞も)、五五年に『紅の翼』(監督:ウィリアム・A・ウェルマン、主演:ジョン・ウェイン)、五九年に『老人と海』(監督:ジョン・スタージェス、主演:スペンサー・トレイシー)の三つ。そのほかノミネートは無数。

それらの中で三九年の『スミス都へ行く』(主演:ジェームズ・スチュアート)など、社会派の映画をいくつも担当していてそれはよいのだが、問題は六〇年の『アラモ』だ。

総指揮、監督、主演のタカ派俳優ジョン・ウェインが求める、あるべきアメリカの姿を示す映画で、五七年後の今日、それを地で行くのがトランプだとすれば、『アラモ』は長~い時間をかけたトランプ・プロパガンダ映画だったとも言える。

なんとわれらがフォークグループ「ブラザース・フォア」も、主題歌「遥かなるアラモ」の歌唱でそのお先棒を担いでいる。僕はと言えば、映画館の暗闇の中でスクリーンを食い入るように見つめ、ブラフォーのその主題歌を好きで口ずさんでいたのだから文句を言えた立場ではないのですがね。

そのあとの六三年、これもタカ派俳優チャールトン・ヘストン主演の『北京の55日』。義和団事件を扱っているが、史実を都合よく脚色し結局アメリカは偉かったという映画で、ここでもブラフォーがちゃっかりティオムキン作曲の主題歌担当。

さてさて、強いアメリカン・メッセージのお手伝いをしたティオムキンはといえば、ロシア帝国領ウクライナで一八九五年に生まれ、一九二五年にアメリカに移住。アメリカ国民の多くがそうであるように、ティオムキンも移民だ。トランプも移民の血筋だよね。

(こむろ ひとし・シンガーソングライター、2月10日号)

文科省、教科書編集をがんじ搦め――指導要領との対応を明示

文部科学省が1月23日開催した、教科用図書検定調査審議会(検定審)の第3回総括部会で、教科書の「主要な内容」と学習指導要領(以下、指導要領)の「内容・項目」との対応までも、教科書上に明示させる“改善”策を出した。

文科省教科書課(望月禎課長)が検定審に出した「教科書の改善について(論点整理)(案)」は、(1)教科書の主要な内容が指導要領の示す内容・項目とどう対応しているか教科書上に明示し、(2)指導要領『解説』を「より踏まえ」教科書記述に適切に反映することが、「求められる」と明記(傍点筆者)。

文科省は2014年1月、各出版社が検定申請した教科書に添付を求めている「編修趣意書」に、教科書の構成・内容(第1・2章など)と教育基本法第2条各号とを対照させるよう、教科書検定規則実施細則を改定し、「指導要領との対照表」の提出も義務化した。

今回の(1)は、それを教科書にも明示するよう求めたもの。改定教育基本法に盛った“国を愛する態度”に加え、小学校6年や中学社会の指導要領が明記している「国歌尊重」「天皇への敬愛の念」「我が国の防衛、(自衛隊の)国際貢献」等で、一層政府の政策や見解に沿う記述を強制する意図が明白だ。

また、(2)の『解説』は、文科省が「大綱的基準として法的拘束力がある」とする指導要領とは異なり、参考資料にすぎないのに、「より踏まえ」と強化。いきすぎだ。

このため複数の傍聴者が閉会後、「(1)の追記により(指導要領を読んでいるわけではない)子どもたちが教科書を読む際、煩雑になる恐れ」などを質すと、教科書課の担当者は「(1)は教師にとっては指導要領との関係がより分かり易くなる。また、文末を『求められる』と表現したのは、今回は検定基準の改正まではせず、出版社側に期待するということだ」と答えた。

“改善”策は教科書の編集を一層、がんじ搦めにするものだ。

(永野厚男・教育ジャーナリスト、2月10日号)

辛淑玉さん、闘いは続きますね(佐高信)

拝啓 辛淑玉様

新年早々、『東京新聞』論説副主幹とかいう長谷川幸洋らとの闘い、お疲れさまです。長谷川ら中傷主義者を見ると、私はいつもコウモリを連想します。「昼は暗所に潜み、日暮に活動する」(『広辞苑』)というコウモリは「獣なのに鳥のように飛ぶところから、情勢の変化を見て優勢な側に味方する者をののしっていう」時にも、その代名詞として使われます。

私は公明党をコウモリ党と呼んでいますが、彼の党にもピッタリですね。

“鳥なき里のコウモリ”という言葉がありますが、少しはマシな新聞の『東京』の長谷川や元『朝日』の永栄潔らを指すのでしょう。『産経』や『読売』にいれば、数の中の1人にすぎない彼らも、“鳥なき里”では目立つということです。しかし、愚かなる彼らはそれを自覚していません。

敵対する『朝日』の禄を食んだことのある花田紀凱もコウモリ族に入るでしょう。どこか卑しい感じがするのはそのためです。

旧制一高の校長をやった安倍能成さんは「教養とは何か」と問われて、「教養とは相手の立場を理解しようと努力することに始まる。教養のない者とは自己主張するだけの者だ。どんなに知識があっても、教養があるかないかは相手の立場を理解する態度を示すかどうかによって決まるのだ」と答えています。

安倍さんは「心」グループに属した保守派の人ですが、その通りですよね。この定義に従えば、長谷川らは無教養極まりない人間だということになるでしょう。

痛みがわからない『東京新聞』長谷川ら

私はいつも、極限まで「相手の立場を理解しようと努力する」辛さんに敬意を払っていますが、上野千鶴子著『ニッポンが変わる、女が変える』(中公文庫)の辛さんの発言に打たれました。

辛さんは東日本大震災の後、早くに被災地に入り、在日だけではなく、外国籍住民の救援活動に取り組んできましたが、上野さんが、
「『子どもに障がいがあって、奇声を上げたり、周りに迷惑をかけたりするから避難所にはとてもいられない』と、傾いた家に戻った人もいたそうです。認知症の高齢者を抱えた家族も、避難者のコミュニティに入ることを自主規制してしまったり」
と言うと、辛さんはこう答えています。

「人からケアしてもらう必要がある人は、避難所にはいられません。それは、外国籍住民も同じようなものです。『従軍慰安婦』として名乗りをあげて、国と裁判を起こした宋神道さんも、避難所でやっと見つけた時には、日本名で入っていました。胸が痛かった」

私も胸が痛みますが、前記の長谷川らにはまったく理解できないでしょうね。痛む胸がないからです。

「国と闘った人でも、非常時の日本では外国名でいることが恐怖だったのでしょう。つらい話です」
と続ける上野さんに、辛さんは、
「避難コミュニティに入らない在日の家族にも会いました。半壊した家で、家族を支えて疲弊しきっている女性がいた。彼女に、『手続きをとって義援金をもらいましょう』と提案したとたん、『絶対嫌だ!』と。『そんなことで今までの差別をなかったことにされたくない』といいました」
と述懐しています。

「復興の過程で『がんばろう日本』とか、ニッポン・コールが起きました。朝日新聞が作った復興を考える委員会の名前が『ニッポン前へ』。本当にキモチ悪い」
と語る上野さんに辛さんは「その言葉がどれだけ怖かったか」
と答えていますね。

(さたか まこと・『週刊金曜日』編集委員、2月10日号)

NHK「クローズアップ現代プラス」――「少女像」報道に抗議

記者会見する梁澄子氏(左)と醍醐聰氏。2月2日、東京・千代田区。(撮影/西中誠一郎)

2月2日、衆議院第二議員会館で、NHK「クローズアップ現代プラス」が1月24日に放送した「韓国・過熱する“少女像”問題・初めて語った元慰安婦」の内容に抗議する記者会見が行なわれた(共催:日本軍「慰安婦」問題解決全国行動、「戦争と女性への暴力」リサーチ・アクション・センター)。

同番組は、一昨年末の「日韓合意」を受け、34人が日本政府の「支援金」受け入れの意向を示し、既に31人へ支給されたにもかかわらず、その声が韓国内では報道されず、「合意」破棄を求めて「少女像」設置問題が過熱し、韓国社会の中で自分たちの思いは理解されないのではないか、と悩む元「慰安婦」と家族の声を紹介する内容。記者会見した2団体は1月31日にNHK会長と番組制作者に抗議文と公開質問状をそれぞれ提出した。

記者会見で「全国行動」共同代表の梁澄子さんは「支援金が被害者に支給されたことは報道され、韓国人は知っています。しかし番組で危惧するようなバッシングは起きていません。番組内容は多数の被害者が受け取ったのだから、納得しない被害者や市民が黙れば問題解決すると言っているのと同じです。なぜ『合意』に反対する被害者がいるのか、新たな少女像の設置が続くのか掘り下げた報道になっていません」と指摘し、「日韓合意の最大の罪は、歴史事実を10億円で売り飛ばしたこと」という元「慰安婦」の金福童さんの発言を紹介した。

東京大学名誉教授の醍醐聰さんは「『放送法第4条』で定めた政治的公平性に著しく欠け、事実を歪曲し、多様な論点も取り上げていない」と批判し、NHK自身の「放送ガイドライン2015」にも違反していると指摘した。会見では「『慰安婦』だった方々の長年の闘いや願い、韓国以外にも多くの被害者がいるという事実も無視されている」「抗議する人の声を冷笑する報道姿勢に強い危機感を感じる」といった発言も相次いだ。

(西中誠一郎・ジャーナリスト、2月10日号)

「残業代ゼロ法案」に「首切り法案」(高橋伸彰)

経済3団体が共催する今年の新年祝賀会で、安倍晋三首相は「今年は働き方改革断行の年だ。正規と非正規労働者の不合理な待遇の差は認めない」と挨拶した(1月6日付『日本経済新聞』)。しかし首相の挨拶とは裏腹に『日経』が行なった働き方改革に関する調査では、非正規の処遇改善を優先課題とする企業の割合は1割未満。7割以上は、むしろ長時間労働の是正を優先課題に挙げている(1月10日付『日経』)。

そもそも非正規の処遇改善や同一労働同一賃金が働き方改革の重要課題に浮上したのは、昨年1月27日の衆議院本会議で安倍首相が「働き方改革の重要な柱が、同一労働同一賃金です。たとえば、女性では、結婚、子育てなどもあり、三十代半ば以降、みずから非正規雇用を選択している方が多い(中略)こうした方々のためにも、非正規雇用で働く方の待遇改善は不可欠です」と答弁したのが嚆矢である。これを受けて昨年3月には「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会」が厚生労働省内に設置された。

同検討会の報告が出る前から、というより、出る前だからこそ安倍首相は畳むつもりもない風呂敷をところ構わず広げた。昨年6月1日の通常国会閉会時の会見では「『非正規』という言葉を日本国内から一掃する」と豪語し、同9月には外遊先で「どのような賃金差が正当じゃないと認められるのかをガイドラインを作って明らかにします」と公言したのだ。

こうした一連の発言がいかに実効性のない空虚なものだったかは、その後に公表された同検討会の中間報告やガイドライン案を見れば明らかである。

昨年12月20日に公表された中間報告では「同一労働同一賃金の考え方あるいは原則を、厳密に定義することはなかなか難しい」と断ったうえで、賃金の決定は本来「当事者である労使の決定に委ねるべきもの」と突き放し、正規と非正規の格差是正に向けて積極的に取り組むと言っていた国(政府)の姿勢は大幅に後退した。

また、非正規の一掃についても「正規・非正規という呼称格差を改め、すべて様々な雇用期間や労働時間の社員という考え方に整理されていく必要がある」と述べるだけで、非正規の呼称はなくすが、待遇は雇用期間に定めがある社員とか、労働時間が短い社員とか、あるいは勤務地や職務が限定された社員というように、社員の概念を細かく分類し、その労働に見合った処遇をすれば問題ないという。さらに中間報告と同時に公表されたガイドライン案でも、どのような賃金差がルール違反になるかよりも、どのような格差なら違反にならないかという企業寄りの事例ばかりが提示された。まさに非正規という言葉は、この国からではなく、働き方改革から一掃されてしまったのである。

非正規の一掃に代わり今国会で再び醜悪な鎌首をもたげているのが、長時間労働是正という名の「残業代ゼロ法案」と金銭解雇の合法化を図る「首切り法案」だ。

非正規をなくすと直前まで訴えながら、国会が始まると大企業が望む法案の成立に奔走するのは国民には想定外でも、安倍内閣には想定通りの流れなのである。

(たかはし のぶあき・立命館大学国際関係学部教授、2月10日号)

増田元総務相に杉並区が異常な高額報酬――出勤2~3日で月額35万円か

昨年7月の東京都知事選で落選した自民党の増田寛也元総務大臣を、東京都杉並区(田中良区長)が非常勤「顧問」として採用、毎月35万円、時給7万円から8万円(後述)にもなる破格の高額報酬を税金から支給している。田中区長は都知事選で増田氏を公然と応援していたことから、田中区長は「お友だち」に公金で「落選手当」を払っているようなものではないか、と区民から批判の声が上がっている。

増田氏の顧問採用は、区議会にも事前に知らされないまま区長部局内部の“密室”で行なわれた。都知事選で増田氏が落選したのが7月31日。そのちょうど1カ月後の8月31日に、杉並区は非常勤顧問職を新設した。顧問職新設は、条例ではなく規則の変更という議決を不要とする方法で行なった。そして、翌9月1日付で増田氏をこの顧問職に採用した。

公募などの手続きはいっさいなく、はじめから増田氏だけのための顧問職新設だった。

勤務条件は、勤怠管理なしにもかかわらず、報酬だけは毎月35万円が払われるという超好待遇。そして、事実9月の出勤は2日で、拘束時間は4時間半にすぎなかった。時給に換算すると7万円から8万円もの高額に達する。10月以降もこれと同様に、月2~3回の出勤が続いている。

仕事内容は、「地方創生に係る支援及び助言」。特に重要な責任はない。この気楽で簡単な仕事に対して月35万円は払いすぎではないか。筆者の指摘に対して、区側はこう反論する。

「増田氏の(岩手県)知事3期及び総務大臣を務めたこれまでの経歴及び地方自治、地方創生に関しての深い知見等を総合的に判断すれば(中略)月額35万円の報酬は妥当である」

しかし、その説明を疑わざるを得ない事実が情報公開請求で発覚した。区が作成した顧問職新設の起案文書のなかに、報酬を月額35万円とした根拠としてこんなことが書いてある。

〈週3日×4週=月12日×3万円=36万円〉

週3日、月12日の出勤を想定し、日額3万円として計算して月35万円という金額を算出したと明記している(計算上36万円だが杉並区は条例で上限35万円と定める)。

月12日の出勤を想定していたのにじっさいには2日~3日しか出勤していない。おかしいではないかとの疑問に、区側は説明ともつかない奇妙な言いわけをする。

「……規則を改正するに当たり、担当課である人事課が一般的な月額報酬の算定根拠を出すために作成した検討段階の内部メモであり(正式なものではない)……」

【杉並区は過去二度敗訴】

非常勤職員の報酬をめぐって、杉並区は過去二度にわたって裁判で敗訴している。最初は、月末の土日2日間だけ在籍した非常勤監査委員2人(自民党議員と民主党議員、当時)に月額報酬15万円を満額支給したことの違法性を問う訴訟。次は、半年間病欠した非常勤選挙管理委員(元自民党議員)に月額24万円の報酬を満額支給したことの違法性を問う訴訟だ。

非常勤の報酬は純粋に仕事の対価であって、名誉に対する支給でもなければ「生活給」でもないというのが地方自治法の趣旨。その立法趣旨を逸脱した支給は違法で無効だということがこれらの裁判の判決で明示された。

選管委員をめぐる裁判で杉並区の敗訴が確定した2015年11月。田中区長は「判決を真摯に受け止める」と委員会で答弁した。しかし、今回の件をみればその言葉は疑わしい。

筆者は区民のひとりとして増田氏の報酬返還を求める住民監査請求を11月に起こしたが、元会計室長や自民・民進系与党議員ら身内で固めた杉並区監査委員は棄却した。このため、これを不服として1月27日、住民訴訟を東京地裁に起こした。3月23日午前10時45分から東京地裁703号法廷で第1回口頭弁論が開かれる。事件番号は平成29年(行ウ)第45号。

(三宅勝久・ジャーナリスト、2月10日号)