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山城博治氏釈放へ会見「同情でなく連帯を」

山城博治氏の釈放を求める会見。左から佐高氏、落合氏。(ほかに鎌田氏が出席)(写真/斉藤円華)

山城博治氏の釈放を求める会見。左から佐高氏、落合氏。(ほかに鎌田氏が出席)(写真/斉藤円華)

沖縄の辺野古や高江での米軍基地建設反対運動を中心的に担い、逮捕勾留されている山城博治氏らの釈放を求める会見が1月12日、東京都内で行なわれた。

呼びかけたのは小山内美江子、落合恵子、鎌田慧、澤地久枝、佐高信の各氏。山城氏は昨年10月に器物損壊容疑で逮捕され、その後も公務執行妨害等の疑いで再逮捕が重なった。2015年には悪性リンパ腫を患い入院。その後退院したが、長期勾留で健康状態が危ぶまれる状況だ。

山城氏への接見を重ねてきた照屋寛徳衆議院議員は、「今後も週1回は接見に行こうと思う」と述べた上で「同情ではなく連帯を。みなさんの力を貸してほしい」と呼びかけた。

落合氏は、国が沖縄の民意を無視して工事を強行する中、山城氏が長期にわたり勾留されている状況を「琉球処分と同じことが形を変えて行なわれようとしている」と表現。「(基地建設工事の警備に動員された)警察官の『土人発言』も国の沖縄への姿勢の表れだ」と訴えた。

山城氏が微罪容疑で勾留が3カ月にわたる一方、抗議する住民側には警備により多くのけが人が生じている。国の暴力は「野放し状態」だが、抗議の現場を撮影した動画が「反対派による暴力の証拠」としてネット上に公開。落合氏は「市民を分裂させたい、との意図がある。それで得をするのは誰か」と話した。

(斉藤円華・ジャーナリスト、1月20日号)

安住民進党代表代行も参加、度量と決意が試される――共産党大会、「野党共闘」促す

野党の党首級が共産党大会に招かれるのは結党95年の歴史のなかで初めてだ。(撮影/野中大樹)

野党の党首級が共産党大会に招かれるのは結党95年の歴史のなかで初めてだ。(撮影/野中大樹)

「この舞台に立っていることに歴史的使命を感じています」――。 1月15日、静岡県熱海市ではじまった第27回日本共産党大会に招かれた安住淳民進党代表代行は来賓あいさつでこう述べた。

国会では自民、公明、日本維新の会ら改憲勢力が3分の2以上の議席を占める。こうした状況に、当日、やはり来賓で招かれた小沢一郎自由党代表は「このままいけば本当に取り返しのつかない事態に日本社会、日本の国民は陥ってしまう」と危機感をあらわにした。

共産党の結党は1922年。「長い党の歴史のなかで、党大会に他の政党の方をお招きしてご挨拶いただくのは今回が初めて」(志位和夫委員長)で、志位氏は今回の党大会を「歴史的意義を持つ大会」と位置づける。

3年前の党大会では「『自共対決』時代の始まり」と謳った。その路線に今回は明らかな変化が生じている。安保法制に反対する学生団体シールズが「野党と市民の共闘」を呼びかけたことも大きい。

近年の共産党は「ゆるキャラ」で政策を訴えたり、天皇が出席する国会開会式に党幹部が初めて出席したり、綱領で「解消」を明記している自衛隊について「独自の立場を持ちこまない」とするなど、硬直的な党イメージの刷新をはかっている。根強い共産党アレルギーを払拭し、市民に受け入れられる政党への脱皮が狙いだ。

志位氏はこの日、「大会の主題を一言で述べるなら、開始された日本の政治の新しい時代をいかにして、さらに前に動かすか。日本の政治の新しい時代を前に動かすために、(略)野党と市民の共闘をどうやって前進させていくかだ」と述べた。

【「大局観に立って」】

民進党の安住氏は安全保障や原発再稼働、消費税増税の是非などについて「わが党と日本共産党との間には今なお、考え方に隔たりのある政策があることは事実」としながら「これらの政策について完全に一致することは難しいかもしれないが、一つひとつのテーマについて両党が真摯に話し合い、それぞれの考えを尊重しながら、ある一定の幅の中にこれらの政策を寄せ合うことは可能だ」と述べ、次のように語った。

「多くの国民は、強者の論理を振りかざし、右傾化の流れを強め、立憲主義を無視する安倍政権に代わり、弱い立場の人々に寄り添い、ともに助け合うしなやかな社会の構築を目指す、もうひとつの政治勢力が結集することを強く望んでいる。私たちはその期待に応えなければなりません」

「違いをことさらに強調するのではなく、大局観に立って一致できる点を見出すこと、その度量と決意で、共通の敵に立ち向かう時にはじめて、今の政治を動かすことができる」

小沢氏は「憲政史上の大きな転換期」において、野党と市民の共闘の芽が出ていることに「大きな転換をうながした最大の原動力は日本共産党」とヨイショ。

「昨年夏の参院選は、共産党の皆さんが方針を大きく転換させ、国民のため、安倍政権を打倒するために1人区の候補者を野党で1本化する、そういう英断を下された。国民の生活を第一に考えた英断であり、高く高く評価する」と言いつつ、こう指摘することも忘れなかった。

「自公に3分の2の議席を取られてしまった。私からすれば勝利とは言えない、敗北の選挙。11議席取ったからといって喜んでられる結果ではなかった、と、お互いに肝に銘じたい」

政権を目指さなければ意味がないという、この人らしい政治観を披瀝したと言える。小沢氏にとり、野党と市民の共闘はあくまでも自公政権を打倒し、新しい政権を樹立するためにやるということだ。

社民党の吉田忠智党首と会派「沖縄の風」代表の糸数慶子氏もあいさつした。糸数氏は「元祖野党共闘」である「オール沖縄」が翁長雄志沖縄県知事、伊波洋一参議院議員を生んだと成果を示し、野党と市民の共闘が実現できれば結果が出せると強調した。

度量と決意が試される。

(野中大樹・編集部、1月20日号)

大阪市の女児焼死事件――再審無罪で国賠訴訟へ

青木惠子さん(右)。昨年8月、大阪司法記者クラブで。(撮影/粟野仁雄)

青木惠子さん(右)。昨年8月、大阪司法記者クラブで。(撮影/粟野仁雄)

「なぜ刑務所に20年も繋ぎ止められたのか、真実を明らかにしたい」。1995年7月に大阪市東住吉区の民家で11歳だった青木めぐみさんが焼死した火事。その事件で、殺人罪などに問われ無期懲役が確定し服役したが2015年10月に釈放されて昨年8月に再審無罪となった母親の青木惠子さん(52歳)が12月20日、国と大阪府を相手どり計約1億5000万円の国家賠償を求めて提訴した。

訴状によれば、娘を助けられなかった失意のあまり自殺まで考えていた青木さんに対して取り調べの警察官は「(当時の事実婚の夫は)お前と共謀した保険金殺人を自供している」「長男(当時8歳)は夫が火をつけるのを見ているぞ」などと嘘を伝えた。さらに、死亡しためぐみさんの写真を見せて「謝らないのか」などと迫って虚偽自白に追い込んだことは違法な取り調べとした。また、青木さんを取り調べた大阪地検の検察官については「内縁の夫の自白の裏付けも不十分で起訴したことは違法」とした。提訴について大阪府警も大阪地検もコメントしていない。

この事件では、めぐみさんが入浴中に自宅に放火した実行犯とされて、青木さんとともに無期懲役が確定後再審無罪になった元事実婚の夫(50歳)が、当時めぐみさんに性的な虐待をしていたとされる。元事実婚の夫は逮捕後の取り調べでそこに付け込まれ「あんなことしていた上、放火殺人をしらばっくれても有罪になったら間違いなく死刑になるぞ」などと脅され、虚偽の自白をさせられた。

青木さんはそうした事実を後に知ったが、「娘の名誉のため」として釈放後も元事実婚の夫の非行を明らかにしていなかった。しかし、国賠訴訟提訴の日に奈良県でめぐみさんの墓参りをした際に「めぐみには申し訳ないけれど、真実を明らかにするために、性的虐待のことを隠さないことにします」などと報道陣に打ち明けて決意を新たにしていた。

(粟野仁雄・ジャーナリスト、1月13日号)

突出する京都府警外事の捜索、昨年末も――総聯中央本部解体が狙いか

京都府警本部。(撮影/成田俊一)

京都府警本部。(撮影/成田俊一)

日本政府の北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)制裁がますます強化されている。昨年、12月19日と20日の2日間、京都府警警備部外事課を中心とした神奈川県警、山口県警、島根県警、新潟県警の合同捜査本部は、新潟市内のM社ほか約16カ所を外国為替及び外国貿易法違反(以下、外為法違反)容疑で一斉に家宅捜索に入った。マスコミに伏せてまで密かに行なわれた大がかりな捜索だったが、突然の捜索に踏み込まれて被疑者扱いされた複数の証言から、今回の捜索の狙いが、在日本朝鮮人総聯合会中央本部を標的にした捜索だったことが浮上してきた。

京都府警は今回の捜索を経て近々、数人逮捕するものと思われる。その数人が関わっているとされている容疑は、どうやら、日本の日用品などをシンガポール→大連(中国)→北朝鮮への不正輸出疑惑。すでに京都府警外事はその不正輸出の証拠を押さえているとも言われているだけに間違いなく逮捕は必至だろう。

日本政府が北朝鮮との貿易を全面的に禁止したのが2009年。以後、在日朝鮮商工人が関係した外為法違反事件が多発した。その事件化の中で、なぜか警視庁公安外事を尻目に、京都府警外事の摘発だけが突出している。

14年5月にはマツタケ不正輸入と日用品不正輸出を摘発。15年3月にはマツタケ不正輸入事件に絡んだ貿易会社「東方」の社長と役員を逮捕。同時に、朝鮮総聯中央本部の許宗萬議長と南昇祐副議長の自宅を捜索。その2カ月後の5月には、許宗萬議長の二男と貿易会社「朝鮮特産物販売」の社長らを逮捕。16年2月には、日本の日用品等を北朝鮮に不正輸出したとして貿易会社「聖亮商事」の社長逮捕と朝鮮商工会館を捜索した。

ある県警公安担当は、「われわれの中では『京都方式』といって有名ですよ。ガサで資料を集めるだけ集めて、組み合わせて、次々と事件化する。エンドレスなやり方をしますよ」と答えているが、京都府警が次々と摘発を続けられる理由はもう一つある。ある弁護士によれば「東京や大阪などでは違法捜査や冤罪捜査を厳しく批判する弁護士が多いが京都はそうした弁護士が少ないからだろう」というのだ。

【近々、数人を逮捕か】

そうした指摘からもわかるように、京都府警外事の捜索と摘発が本当に合法的かどうかはきちんと検証しなければならないだろう。捜査権の濫用は常にあるからだ。12月19日と20日の捜索にしても、捜査員から「総聯中央本部とのかかわりをしつこく聞かれた……」という。今回の捜索は、昨年2月の「聖亮商事」捜索で押収された資料の中に、日本→シンガポール→大連→北朝鮮の貿易ルートを示す記録が判明したからとも言われている。

近く、京都府警外事は外為法違反容疑で数人の逮捕に赴くだろうが、すでに一部のマスコミは当局からリークされた情報をそのまま「北朝鮮工作員が日本から長期不正輸出」(「産経ニュース」1月4日付)とかなり刺激的な記事を流している。逮捕が現実になれば、いつものように、総聯中央本部と在日朝鮮人を侮蔑的に扱い、北朝鮮批判を大々的に繰り返すに違いない。捜索を受けた関係者の話では「総聯中央本部の関与」をしつこく質されたという。京都府警外事は、在日朝鮮人同士の人間関係のつながりと不正貿易行為当事者とを区別することなく、捜索先の個人すべてを共謀関係者としてみている危険性がある。

都内のある弁護士は「憲法35条1項に定める令状主義に違反している可能性がある」と指摘する。令状があれば対象者を裸にすらできる警察権力だが、今回の家宅捜索の実態は後日の検証記事で明らかにする。朝鮮総聯中央本部の捜索ないし捜査を狙う今回の動きは、言うまでもなく安倍官邸がひたすら願う“総聯中央本部解体”の意に沿う、北朝鮮制裁の“日本国内版”である在日朝鮮人弾圧の現実を見せつける。京都府警外事が恣意的な事件化に及ぶのかどうか注視する必要がある。

(成田俊一・ジャーナリスト、1月13日号)

陸自配備で「受け入れ」表明――住民裏切りの石垣市長

陸上自衛隊の配備「受け入れ」をめぐり首長判断に注目が集まっていた沖縄の石垣島。中山義隆市長は昨年12月26日の会見で突然、配備に向けた各種手続きの開始を「了承する」と発表した。このことに市民間では「許せない裏切り行為」との不信感が高まっている。

石垣島への陸自配備計画については2015年11月、若宮健嗣防衛副大臣が同市を訪れ、中山市長に配備方針を伝達した。概要は、島のほぼ中心に位置する平得大俣地区を候補地とし、地対空・地対艦ミサイルの運用部隊や警備部隊(500~600人規模)を配置するというものだ。

防衛省はこれまで二度(昨年4月、5月)住民説明会を開いたが、市民から事前に受け付けた質問への対応もおざなりで抽象論に終始したため、「説明不足」との批判が相次いだ。昨年10月の公開討論会(同市主催)では、会場で実施された市民アンケートの結果、反対(46%)が賛成(27%)を上回っている。さらに見逃せないのは、候補地に近接する4地区の住民が計画への「反対」を表明している事実だ。陸自配備は生活や生態系を破壊する危険性があるとし、中山市長も12月14日の市議会では、4地区の代表と早期に面会し、意見聴取した上で判断したい、との旨を答弁していた。ところが26日には態度が一変。市長は「防衛省の説明会、市の公開討論会、新聞投書、市への要請などをみて、賛成反対双方の意見はほぼ出尽くしている」などと豪語したのだ。

太平洋戦争時、少年兵の鉄血勤皇隊に動員された潮平正道さん(84歳、陸自配備撤回を求める八重山大地会共同代表)は、こう憤る。「市長は戦争体験者をはじめ地元住民の意見も聴かず、個人プレー甚だしい。防衛省の発想も島嶼の地理や歴史にうとく、素人かと疑ってしまう。戦時は島も食糧難に陥り、軍隊は収奪を繰り返しました。あの恐怖が蘇ります」。

(内原英聡・編集部、1月13日号)

ようやく実現した東電トップとの初会談で“再稼働バトル”――米山知事「検証には数年」明言

右手前が米山隆一知事。左手奥から東電・廣瀬直己社長と數土文夫会長。(撮影/横田一)

右手前が米山隆一知事。左手奥から東電・廣瀬直己社長と數土文夫会長。(撮影/横田一)

新潟県の米山隆一知事は1月5日、県庁を訪れた東電の數土文夫会長と廣瀬直己社長らと初めて面談した。鳥インフルエンザなどの影響で延期になっていたのがようやく実現したものだ。數土会長は知事選当選祝いから切り出し、福島第一原発事故の県の検証への協力を申し出るなど友好関係を築こうとする姿勢が透けて見えた。

これに対し米山知事は、知事選で訴えた「三つの検証が終わらない限り、再稼働の議論はできない」を繰り返し、「検証には数年かかる」と明言した。この瞬間、柏崎刈羽原発の再稼働は最低でも数年は困難となったのだ。

12月19日の世耕弘成経済産業大臣との初面談でも米山知事は、「三つの検証終了が再稼働の議論開始の前提条件」と発言。早期再稼働を目指す経産省に釘を刺していた。

前提条件となる三つの検証項目は、「一・福島原発事故の原因解明」と「二・事故による住民の健康と生活への影響」と「三・柏崎刈羽原発で事故が起きた時の避難計画」。泉田裕彦知事時代に設置された「県技術委員会」や「(東電と県の)合同検証委員会」が1番目の事故原因解明の検証を進めてきたが、残り二つの検証については手薄なため、体制拡充する方針も米山知事は東電トップに伝えた。

こうした県の姿勢に廣瀬社長も「(事故の検証で)私共も事故を起こした責任者として、一番多くを学ばなければいけない」と強調した。しかし東電の本音も早期再稼働。同社の再建計画は、柏崎刈羽原発6号機と7号機の再稼働が前提で、年間1000億円程度の収益改善効果があるとされるからだ。「友好的関係を築いた上で米山知事を懐柔する」という東電の作戦は失敗したが、反転攻勢に出る可能性は十分にある。初面談後の囲み取材で數土会長は、「知事の同意が得られるまでは柏崎刈羽原発は動かさないという理解でいいのか」との質問に「そうなると思います」と答えつつ、「我々は世論がどうなるのかは分かりません。地球温暖化とか、化石燃料の状況だとか、東南海地震の襲来があった時にどうするのか」と言い出した。

東電の次なる手段が見えてきた。それは、「原発は地球温暖化対策に有効」「化石燃料輸入で国富流出」「地震時の予備電源になる」といった情報を流して世論誘導、米山知事批判が噴出するように仕掛けるというものだ。実際、米山知事の囲み取材では『産経新聞』がこんな質問をした。「(東電が福島原発)事故処理費用を捻出して税金とか電気料金値上げを通じての国民負担を最小化するという意味で『一定程度の再稼働も必要』という意見もあるが、検証の長期化と国民負担の兼ね合いについてどうお考えですか」。

米山知事は「知事の責務は県民の命と暮らしを守ること。基本的には私が第一に考えることではない」と答えたが、「国民負担最小化を阻害する新潟県」との批判狙いは明らかだ。

【「地震説」なら再稼働困難】

一方、新潟県の徹底検証で、全国の原発再稼働にブレーキがかかり、安倍政権の原発推進政策を根底から揺るがすことも考えられる。柏崎刈羽原発の立地場所は地震の揺れが大きくなる軟弱地盤。しかも米山知事は福島原発事故原因として「地震説」を排除しておらず(東電や経産省は「津波説」を主張)、新潟県がさらなる検証を進めた結果、「地震説が有力」との結論になる場合も考えられる。その場合、津波説前提の今の対策では不十分で、新たな配管補強などで天文学的な費用が必要になり、再稼働は極めて困難で廃炉を余儀なくされる事態に陥るのだ。

筆者がこの点を聞くと、米山知事は一般論と断りつつも、「合理的に(原発の)安全が確保できないのであれば、(再稼働は認められない)私の現状の認識が続くわけですから、再稼働は認められないことに必然的になる」と答えた。新潟県の地震説採用で原発の安全確保のハードルが上がり、柏崎刈羽原発はもちろん全国の原発再稼働が困難となる波及効果も考えられるのだ。今後も新潟県と東電の“バトル”から目が離せない。

(横田一・ジャーナリスト、1月13日号)

ブラック企業大賞受賞の電通、書類送検へ

ブラック企業大賞を受賞した電通には賞状とトロフィーが贈られた。(写真/斉藤円華)

ブラック企業大賞を受賞した電通には賞状とトロフィーが贈られた。(写真/斉藤円華)

ブラック企業大賞2016(同実行委員会主催)の授賞式が昨年12月23日に都内で開かれ、大賞に広告代理店最大手の電通が選ばれた。授賞式に受賞各社の姿はなかった。

同社は2015年12月、入社わずか1年目の高橋まつりさんが過労自殺。ところが同社は1991年にも入社2年目の男性社員が過労自殺し、さらに13年6月には30代男性社員が過労死を遂げている。しかし「鬼十則」に代表的な社内風土、過酷で人権侵害的な労働環境を放置し続けたことが授賞理由とされた。

日本郵便は正規職員と非正規職員との著しい待遇格差に加え、職場に年賀はがきの自爆営業やパワハラなどが蔓延しているとして特別賞を受賞。同社は2位にダブルスコアを付ける5967票を獲得し、ウェブ投票賞も受賞した。

続くシンポジウムでジャーナリストの水島宏明氏は、「電通事件のテレビ報道ではNHKを除いて怯んでいるのでは」「ブラック企業が民放のスポンサーだったり、メディアも電通と似た労働環境だったりする」と指摘した。

電通の同大賞受賞はニュースサイトに加えて大手メディアではNHK、『産経新聞』も報道。12月28日になり東京労働局は電通と幹部社員を労基法違反で書類送検し、これらを受けて石井直社長は引責辞任する意向を表明した。

(斉藤円華・ジャーナリスト、1月13日号)

パリ協定第1回会議報告――日本への批判高まる

今年、北極の氷が過去最少となり、地球温暖化の進行は明らかだ。史上初すべての国が参加する地球温暖化に対する国際的枠組みを決めるパリ協定の第1回会議が11月モロッコで行なわれた。日本は先進国で唯一のオブザーバー参加。一体現地ではどんな話がされていたのか。日本の外交、企業の経営活動にどんな影響をもたらすのか。ワールドウォッチ研究所と市民団体との共催で、パリ協定の意味を問う院内集会が、12月8日衆議院第2議員会館で行なわれ、福山哲郎(民進)、吉川はじめ(社民)議員のほか、現地を訪ねた武田良介(共産)秘書など超党派の議員やメディア関係者が集まった。

現地取材した井田徹治共同通信編集委員は、「ジャパンパッシング(無視)が深刻」として「私は90年代から環境の国際会議に参加していますが、今回は日本の代表団の発表を聞いていたのは数人。中国の発表団には黒山の人だかりですから、いかに日本への注目が下がっているかがわかります。日本に対しては環境NPO団体から化石燃料に依存する国という不名誉な賞をもらったぐらいしか話題がありませんでした」と語った。

パリ協定で決めた産業革命以降平均気温上昇2度未満を目標にする合意を実現するためには、石炭石油の8割は燃やせないが、日本は脱炭素化の流れに逆行。安倍政権は石炭火力発電所を原発20基分建設計画する。世界的に石炭事業に対する投融資の撤退(ダイベストメント)が進む中、丸紅が765億円で買収したカナダの石炭鉱山を110円で売却するなど、大手商社が損失を出している。

90年から環境問題に取り組み、欧米9都市を取材した環境ジャーナリストの村田佳壽子さんは「パリでは2020年までにすべてのディーゼル車を廃止し、イタリアのロンバルディア州では公共バスの4分の3が天然ガスにするなどの転換が行なわれている。地球温暖化は経済の問題でもある。日本社会も転換しなければ」と語った。

(増山麗奈・ジャーナリスト、12月23日号)

平和・協同ジャーナリスト基金賞大賞は『毎日』

第22回平和・協同ジャーナリスト基金賞の受賞者。(写真/斉藤円華)

第22回平和・協同ジャーナリスト基金賞の受賞者。(写真/斉藤円華)

第22回平和・協同ジャーナリスト基金賞の贈呈式が12月10日、日本記者クラブ(東京)で行なわれた。大賞には、憲法や沖縄米軍基地、原発などの問題を精力的に取り上げたとして、『毎日新聞』夕刊編集部の「特集ワイド」が選ばれた。

同記事はジャンルを問わず「人だかりのしている話題」を扱うのが特徴。事件ネタや、SMAP解散報道に落胆したファンの「スマロス」克服法といった芸能ネタなども取り上げる。その一方で、昨年から今年にかけては安保法制や復古色の強い自民党改憲草案、原発再稼働といった硬派な話題にも紙面を割き、「政治の暴走」に物申す姿勢を貫いた。

受賞スピーチで、『毎日新聞』夕刊編集部の平野幸治部長は「私は戦闘的ジャーナリストではないが、最近の社会情勢には記事の量を傾斜せざるを得ない。夕刊離れが進む中、どう書けば読者に届くか、工夫を常に考えている」と述べた。

奨励賞に選ばれた7点の内、漫才コンビのおしどりマコ・ケンさんは、原発問題での情報発信が評価された。登壇したマコさんは、本番の漫才さながらに相方のケンさんの合いの手を交えて笑いを取りつつ「(市民の寄付で運営される本賞は)私たちに似ている所がある。私たちもご祝儀をいただいて5年、6年と取材しているが、一番ご祝儀を下さるのは(原発事故)被災地の方々だ」と話した。

(斉藤円華・ジャーナリスト、12月23日号)

貧困による子どもの健康格差、数字で明示

シンポの討論に臨む、左から和田、近藤、五十嵐の3医師。(写真/小宮純一)

シンポの討論に臨む、左から和田、近藤、五十嵐の3医師。(写真/小宮純一)

12月4日、第2回「貧困と子どもの健康シンポジウム」が東京・文京区の東京大学医学部で開かれ、医師、学生、市民ら約180人が参加した。健和会病院(長野県・飯田市)副院長で小児科医の和田浩さん(60歳)が中心となって企画している。

午後からのシンポジウム「小児科学は子どもの貧困にどう取り組むか」では、五十嵐隆さん(前小児科学会会長)、近藤克則さん(千葉大学予防医学センター教授)ら3氏が、貧困が子どもの健康に及ぼす影響や、それが数十年後の高齢期にも影響することをさまざまなデータで「根拠」として実証的に示した。

特に、今年9月にNHKスペシャル「健康格差」に出演、大きな反響を呼んだ近藤さんは、閉じこもり高齢者、男性の糖尿病罹患率、新生児の低出生時体重、妊婦の疾病率、うつ症状の発症相対リスクなどの指標と貧困状態には明らかな相関関係があることを数字で明示した。

その上で、近藤さんは、「疾患の研究と同様に、貧困と健康格差、社会的排除の研究も、症候学→病理診断→治療というプロセスで進む。さらに研究を進め、治療方法=解決・援助のための提言、施策につなげる戦略を、いわば“処方箋”として社会的に示す責任が医学にはある」と訴えた。

(小宮純一・ジャーナリスト、12月16日号)