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「東進」告発記事の見出し削除命じる――裁判長は検閲官気取りか

フランチャイズ方式の東進衛星予備校や直営の東進ハイスクールを運営する株式会社ナガセ本社(東京・武蔵野市吉祥寺)。(撮影/三宅勝久)

フランチャイズ方式の東進衛星予備校や直営の東進ハイスクールを運営する株式会社ナガセ本社(東京・武蔵野市吉祥寺)。(撮影/三宅勝久)

株式会社ナガセがフランチャイズ(FC)方式で運営する特定の「東進衛星予備校」の過酷な労働環境を「私は」という1人称を使って告発した体験ルポをめぐり、東京地裁(原克也裁判長)は11月28日、ナガセが直営・FC方式の両方によって全国で運営する「東進」予備校のすべてかその多くで同様のことが起きているような印象を与える――とする曖昧な理由で、記事を掲載した「マイニュースジャパン」(MNJ)に対して見出し削除と40万円の賠償を命じた。真実性は不問、「印象」で「クロ」と決めつけた。明治政府が政府批判を弾圧した讒謗律さながらの乱暴な判決だ。

問題の記事は、2014年10月にMNJがインターネット上で発表した〈「東進」はワタミのような職場でした――ある新卒社員が半年で鬱病を発症、退職後1年半で公務員として社会復帰するまで〉と題する報告。ナガセとFC契約を結んで「東進衛星予備校」を経営する在阪の某企業に就職し、休日もろくにない長時間労働でうつ病を発症した男性の体験記だ。

ナガセは16年1月、この記事が虚偽だとしてMNJに3000万円の賠償などを求める民事訴訟を起こす。「東進」予備校のすべてかその多くで同様のことが起きているかのような印象を与えるが、それは嘘だ――という奇妙な理屈だった。

記事を少し読めば特定の「衛星校」における特定の体験だとはっきりわかるではないか。MNJの反論に、ナガセは見出しだけの削除を求める内容に変更。その見出しも、会話の引用であることを明示しており、やはり、特定の体験だと誤解なく読めるではないかと主張したが、原裁判長らは「印象」を根拠として虚偽認定した。書かれた事実と読み手の内心の「印象」をごちゃまぜにして「適法」「違法」と分ける思想はまさに検閲だ。MNJ側は控訴して争う方針。

(三宅勝久・ジャーナリスト、12月16日号)

国富流出や地域破壊を招くIR法案を強行する安倍政権――“カジノミクス”に野党反発

IR推進議連総会で話す細田博之会長(手前)。12月8日。(撮影/横田一)

IR推進議連総会で話す細田博之会長(手前)。12月8日。(撮影/横田一)

「カジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備推進法案」の参院採決が翌週に延期された12月8日、衆議院第1議員会館でIR推進議連の総会が緊急で開かれ、代理出席を含めて116名の国会議員と誘致自治体幹部が参加した。

まず下村博文・元文部科学相が「法案成立が自民党執行部の総意」と強調、法案提出者の西村康稔・議連事務局長(自民党筆頭副幹事長)が国会報告、細田博之・議連会長が「経済活性化や雇用のために大切な法案。ギャンブル依存症対策も政府が責任をもって対応する」と説明。続いて北海道、横浜、大阪、長崎の自治体幹部がIR推進法成立を期待するとの声を上げた。

一方の野党は強く反発。野田佳彦民進党幹事長は5日の会見で「6時間の審議はあまりにも異常」と批判、安倍首相の成長戦略の目玉であることから“カジノミクス”という異名をつけ、「恐らく官邸の肝煎り」と対決姿勢を強めた。

7日の党首討論では蓮舫民進党代表が「カジノは新たな付加価値を生み出さない。どこが成長産業なのか、と追及。「カジノとIRは別物」という詐欺的IR推進論を安倍首相から引き出した。「(IRは)統合リゾート施設であり床面積の3%はカジノだが、それ以外は劇場であったりショッピングモールであったり、レストラン。そこに投資があり雇用にもつながる」。

これに対し蓮舫代表は「総施設の売上の大半をカジノが生み出している」と反論。安倍首相が日本人の金融資産を差し出す〝売国奴紛い〟である疑いが浮上した。海外カジノ業者が「投資」(安倍首相)をする場合、リターンが不可欠で、〝稼ぎ頭〟のカジノの収益性が重要だ。今回の法案には外国人制限(日本人入場禁止)が盛り込まれておらず、推進議連の西村事務局長に「国富流出につながる。日本人入場禁止にはしないのか」と聞くと、「(カジノ業者に)しっかり納税してもらいます。マーケットを考えたら、日本人入場禁止はない」と答えた。国富流出が前提になっていたのだ。

「全国カジノ賭博場設置反対連絡協議会」代表の新里宏二弁護士は、「IR推進議連が慎重姿勢の公明党の賛成を得るために『日本人入場禁止』を入れることを検討したが、官邸側からブレーキがかかった」と振り返り、こう指摘した。

「賭博解禁という規制緩和で海外からの投資を呼び込むのが安倍政権の成長戦略。狙われているのは、日本人の金融資産なのです」

IR候補地「夢洲」(大阪湾の人工島)は自民と維新が推進する大阪万博の候補地だが、鳥畑与一・静岡大学教授は「夢洲は年間6600万人のIR来場者、うち82%を日本人と想定」と指摘。カジノの儲けで値引きサービスをするIRは周辺から観光客を吸い寄せるため、周辺の商業施設は公平な競争ができず、「米国のアトランティックシティでは周辺のホテルやレストランが潰れた」(鳥畑氏)。

【全国的反対運動も開始】

国富流出や地域破壊などの弊害があるIRというわけだが、阻止を目指す動きも出始めている。

横浜が地元の江田憲司・民進党代表代行は、「菅義偉官房長官と林文子市長が横浜にカジノを誘致しようとしているが、断固反対。来年夏の横浜市長選の大きな争点。『横浜の街を守る』という観点から推進派市長を変えていかないといけない。総選挙でも争点の一つになる」と対決姿勢を露わにした。

サラ金業者への規制強化(法改正)を勝ち取った“弁護士・司法書士軍団”も反対運動を全国展開しようとしている。11日の貸金業法改正10周年記念集会で、先の新里弁護士がカジノ(IR)反対運動を呼び掛けたのだ。すると、「日本退職者連合」事務局長の菅井義夫氏が「高齢者がギャンブル依存症になって年金を取られてしまう。実施法ができるまでに粉砕する」と“宣戦布告”、頑張ろうコールで集会を締めた。「東京で設立決起大会を開き、大阪や横浜や長崎や北海道など誘致自治体を回りたい」(新里弁護士)。

「安倍“売国奴”政権対市民・野党連合」という構図が明確化、今後もカジノ問題から目が離せない。

(横田一・ジャーナリスト、12月16日号)

給付型奨学金導入を訴えて財務省前でキャンドル行動――自公の案はまったく不十分

財務省前でローソクを灯して給付型奨学金導入を訴える人々。(撮影/樫田秀樹)

財務省前でローソクを灯して給付型奨学金導入を訴える人々。(撮影/樫田秀樹)

12月2日、財務省前で市民団体「教育の機会均等を実現する奨学金を考える連絡会」が給付型奨学金の導入を訴える「キャンドル行動」を行なった。会のメンバーはローソクの入ったコップをかざし、財務省に拡声器でのアピールを展開したのだ。

34カ国が加盟するOECD(経済協力開発機構)で、給付型奨学金がないのはアイスランドと日本だけ(そのアイスランドの年間授業料は約7万円)。日本では、自民、公明両党がここにきて給付型奨学金の導入を打ち出したが、その内容はじつに不十分だ。

「来年度導入と言いますが、1学年2万人だけが対象で月額も3万円だけ。100万人以上が日本学生支援機構の奨学金を受給する現状では考えられない薄い措置です」(会の伴幸生さん)

今年、大学院博士課程を修了したAさんは大学の非常勤助手の職を得たが、月十数万円の給与では機構から借りた数百万円もの奨学金を返せる目途が立たず、機構に返還猶予を申請し認められた。だが機構の規則では、年収300万円以下には猶予が認められるが、最長10年が限度だ。

Aさんは「イギリスでも貸与型奨学金はあるが、30年経っても完済できなければ返済免除の救済制度がある。日本では猶予期間が終わり返済できないと、機構は一括返済を求めてくる。安心して学べる奨学金の制度設計を」と訴えた。

韓国ではかつて授業料の高騰が続き、学生は学業よりもバイトに追われ、借りた学費を返済できず金融機関のブラックリストに2万5000人も登録されると、国民が動いた。街頭で給付型奨学金導入を訴える「キャンドル行動」を実行したのだ。その結果、韓国は08年に給付型奨学金を導入した。

今回のキャンドル行動もそれを意識したものだが、12月9日には、財務省前で他団体との共同行動が実施される予定だ。

(樫田秀樹・ジャーナリスト、12月9日号)

ノミネートの電通、関電ほか「コメントしない」――今年最悪のブラック企業は?

ノミネート会見に臨むブラック企業大賞実行委員。中央は佐々木亮弁護士。(撮影/斉藤円華)

ノミネート会見に臨むブラック企業大賞実行委員。中央は佐々木亮弁護士。(撮影/斉藤円華)

第5回ブラック企業大賞2016(同実行委員会主催)のノミネート発表会見が12月1日、厚労省記者クラブ(東京)で行なわれた。広告代理店最大手で、昨年12月に新入社員が過労自殺した電通をはじめ、関西電力、ドン・キホーテ、佐川急便など10法人が選ばれた。

選定基準は▽労働関連法令に違反またはその疑いが強い▽パワハラなどの暴力を日常的に従業員にふるう▽これらの行為により裁判で企業側の非が確定、または行政処分が科された、というもの。

関電は今年4月、高浜原発1・2号機の運転延長申請を担当していた管理職男性が自殺。原子力規制委員会への対応に追われた男性の残業時間は、2月には200時間に達していた。7月までに審査手続きを終えなければ廃炉が濃厚だったとされ、男性は審査「合格」当日に命を絶っている。

この他の主な選定理由は▽違法な長時間労働(エイジス、ドン・キホーテ、仁和寺)▽過密労働や不当労働行為(プリントパック)▽パワハラによるうつ病発症と自殺(佐川急便、日本郵便)▽長時間労働や残業代未払い(サトレストランシステムズ)▽賃金未払い等(ディスグランデ介護)。

会見でブラック企業被害対策弁護団の佐々木亮弁護士は「人手不足が進む中、退職させてくれない、入社したら求人情報の労働条件と全然違う、といった事例が増えている」と述べた。また、佐々木氏は「労働者は求人情報でブラック企業を見抜きようがなく、労働条件の表示に関する法的規制も必要」と指摘した。

ノミネート各社の反応は2日までで次の通り。「国の是正指導を真摯に受け止める」(エイジス)、「コメントは差し控える」(電通、ドン・キホーテ、関電、佐川急便)、「大賞を知らなかった」(サトレストランシステムズ)、「亡くなられた方にはご冥福申し上げる」(日本郵便)。大賞は23日に発表される。

(斉藤円華・ジャーナリスト、12月9日号)

沖縄県民の分断を図る政府の工作に翁長知事が明言――「ヘリパッドは容認できない」

1年前の昨年12月、辺野古に新基地を造らせないオール沖縄会議が結成され、県内各地域から辺野古ゲート前へ座り込む沖縄県民の抵抗運動はピークに達していた。1週間で5000人から8000人もの一般市民が辺野古新基地建設反対のため工事車両を阻止する現場へと駆けつけたのだ。

年が明けて今年の1月から政府側はこの事態を打開すべく、沖縄県警や公安、内閣情報調査室などを総動員。ありとあらゆる情報を収集していた。県警の公安情報に詳しい関係者によると、政党や労働組合幹部行きつけの飲み屋での張番、反対運動幹部とのオフレコ情報交換など人物像や人間関係など徹底して洗っていたという。

現場での非暴力無抵抗の市民をどのようにしたら分裂させることができるか。政府側も必死だった。前出の関係者は、「辺野古と高江で反対運動に関わる関係者を泳がし、同時に逮捕する。いわば一網打尽にすることで、反対運動は過激な人たちによってつくられていた、という印象操作まで行なうという実に巧妙な罠が仕掛けられていた可能性がある」と指摘した。

今年7月の参議院選挙後、安倍晋三政権は、沖縄に対して無慈悲でひどい仕打ちを行なった。沖縄県民の民意に反し辺野古新基地建設と高江オスプレイパッド設置を同時に強行することで翁長県政と沖縄県民の分断を狙ったのだ。

翁長雄志沖縄県知事の公約は、オスプレイの配備撤回、普天間基地の閉鎖・撤去、辺野古新基地建設断念である。その沖縄『建白書』の理念の実現を支える大きな世論を突き崩すには辺野古と高江の分断工作しかないと、公安と内調関係者は本土機動隊500人を人口わずか150人の沖縄県東村高江地区へ送り込み反対する県民を排除、米軍基地建設を強行した。

辺野古と違い高江は地元の首長が移設に賛成していることも翁長知事側のアキレス腱となっていた。さらに、高江は当初ヘリの使用が想定されていたが、今は最新型の輸送機オスプレイが使用する着陸帯へと変貌してきた経緯もあった。安倍政権が復帰後最大の米軍基地の返還と猛アピールする「北部訓練場の4000ヘクタールの返還式典」も12月22日に迫ってくる。政府関係者によると外務省側も「すでにケネディ駐日大使の日程は押さえてあるから」と、建設を強行する理由を明かした。

このような状況で、11月28日、翁長知事は就任2周年の記者会見を開いた。そこで、「苦渋の選択の最たるものだ。4000ヘクタールが返ることに異議を唱えるのはなかなか難しい」と述べた。高江容認ととれる発言に『沖縄タイムス』や『琉球新報』も翁長発言を批判し県民に動揺が広がった。

翌日、事態は一気に動いた。県警は辺野古ゲート前のテントや沖縄平和運動センター、ヘリ基地反対協議会の事務所など県内8カ所を一斉捜索し抗議する4人を逮捕した。容疑は威力業務妨害だった。「絶妙のタイミングを狙っていた」と県警に詳しい関係者は話した。

【「苦渋の選択」発言の真意】

12月2日、沖縄県内の基地負担の軽減を協議した日米合同委員会(SACO〈沖縄に関する特別行動委員会〉)の合意からすでに20年の時が経過していた。同日、翁長知事は報道各社のぶら下がりに応じ「新辺野古基地は絶対造らせない。オスプレイの配備撤回ということを申し上げていますから、これを必ず実現するという意味で、法廷闘争もありましたし、1日2日ですぐ解決する問題じゃありませんので、こういったことを経ながらオスプレイの飛び交うヘリパッドは容認できないということを言っているわけです」と「苦渋の選択」発言を説明した。

沖縄平和運動センター大城悟事務局長は「いっこうに沖縄県内の米軍基地の整理縮小が進まない現実は、沖縄県内にあるすべての米軍基地返還に移設の条件が付き、それが足かせとなり必ずしも沖縄の負担軽減には繋がっていないからだ。そればかりか機能が強化された新基地がどんどん建設されようとしている。それが問題だ」と矛盾点を突きつけた。

(本誌取材班、12月9日号)

菅官房長官と松井府知事地元(横浜と大阪)で推進――自民・維新カジノ含むIR法案強行の裏側

IRの有力候補地の一つ、横浜港の山下埠頭(神奈川県)。(撮影/横田一)

IRの有力候補地の一つ、横浜港の山下埠頭(神奈川県)。(撮影/横田一)

ギャンブル依存症増加や国富流出や地域破壊を招く“売国奴的法案”が、自民党と日本維新の会によってゴリ押しされている。12月2日の衆院内閣委員会で、採決が強行された「カジノを含む統合型リゾート施設(IR)整備推進法案」のことだ。

IR推進の急先鋒が、菅義偉官房長官と懇意の松井一郎・大阪府知事(日本維新の会代表)だ。審議入りに慎重な民進党を「日本のことも考えず、党利党略、個人的な好き嫌いで物事を考える。バカな政党だと思う」と批判しているが、「自民党と維新の“蜜月関係”は、両党の悲願実現の交換条件とみられている」(永田町ウォッチャー)。IR候補地「夢洲」(大阪湾の人工島)は、維新が切望する2025年大阪万博の候補地でもあり、「維新が望むカジノ解禁や大阪万博実現を自民党が後押しする見返りに、安倍政権の改憲に協力してもらう」といった“密約”が交わされているかのようにみえるのだ。

実際、両党の暴走ぶりは常軌を逸している。IR法案は14年6月に1回審議入りしたが、当時の合意事項は、(1)官房長官を含めた内閣委員会所属大臣や国家公安委員長の出席、(2)参考人招致、(3)地方公聴会の実施だったが、「今回まったく満たされず、審議時間はたった5時間33分」と民進党の玉木雄一郎幹事長代理は問題視する。推進派議連が発足して賛否が割れる民進党だが、自民と維新の“暴走審議”には反対。共産党の小池晃書記局長も4日の討論番組で、日本はパチンコなどで世界有数の“ギャンブル依存症大国”で「カジノ解禁で依存症がさらに出てくることを前提に、バクチの寺銭で依存症対策費をまかなうのは本末転倒」と批判すると、社民党の又市征治幹事長も「ゼネコン利権につながって、地域経済を破壊した1987年のリゾート法の二の舞になる」と懸念を表明。自由党の玉城デニー幹事長も「(依存症対策などを列挙した)公明党の付帯決議を議論するべき。参院では拙速な議論を避けるべき」と続いた。

【国富流出招く恐れ】

4野党が足並みをそろえ、政権批判を滅多にしない『読売新聞』を含む主要新聞の社説も反対で一致する中、「IR推進派は利益誘導優先の売国奴紛い」と批判される可能性がある。カジノに詳しい大谷大学の滝口直子教授はこう話す。

「カジノ関連の主な顧客は外国人観光客ではなく、日本人の富裕層。海外のカジノ業界の大物が駆け付けた国際会議では『日本人の富裕層の個人金融資産量』を『日本に出来る推定カジノ施設数(3~10)』で割り、『海外に比べて日本の一つのカジノ当たりの個人金融資産量は突出しているから日本のカジノは莫大な利益が確実』と投資を呼びかけていました」

安倍政権は「IRは外国人観光客を呼び込む成長戦略の目玉」と位置づけるが、今回の法案は「日本人禁止」にはなっていない。国富流出の恐れは十分にある。

菅長官(神奈川2区)の地元への利益誘導の狙いも兼ね備えている。IR推進で連携する林文子・横浜市長は内閣委員会採決に対し、「都心臨海部を活性化、観光MICE(ビジネスイベント)を推進する上で有効な手法と考えている」と発言。候補地の山下埠頭ではインフラ整備がすでに始まっており、港湾荷役会社「藤木企業」の藤木幸夫会長や京浜急行などと菅長官の関係については、「藤木幸夫菅義偉と昵懇の港町横浜のドン」(14年10月号『選択』)で紹介した。

「カジノとIRは別物」とする詐欺的推進論を口にする小池百合子知事も2日の会見で「観光振興にプラス」とIRを再評価。「東京と大阪と横浜が有力候補地」という予測が出始める一方、弊害の国民的議論は皆無だ。カジノの面積はIRの5%程度でも大半の稼ぎを叩き出す「収益エンジン」(鳥畑与一静岡大学教授)で、ギャンブル依存症の父親が大損する傍らで母親と子どもが他の施設で楽しむ構造。国富流出に加え、値引きサービスで周辺のホテルやレストランの経営悪化も招き、巨大ハコモノ建設で工事費高騰に拍車をかける。慎重な国会審議が不可欠だ。

(横田一・ジャーナリスト、12月9日号)

米山新潟県知事と東電トップが初会談へ――日露関係でLNG構想も

知事選挙戦で米山隆一知事(左)を応援した古賀茂明氏。10月1日。(撮影/横田一)

知事選挙戦で米山隆一知事(左)を応援した古賀茂明氏。10月1日。(撮影/横田一)

新潟県知事選で「県民の命と暮らしが守られない現状では柏崎刈羽原発再稼働は認められない」と訴えた米山隆一知事が11月29日、東京電力の數土文夫会長や廣瀬直己社長らと県庁で初会談をする予定(注)。米山知事と意見交換をしている元経産官僚の古賀茂明氏はこう話す。「ロシアに近い新潟では 泉田裕彦前知事が検討していたウラジオストクと新潟のガスパイプライン構想(900キロ)に加え、米山新知事がLNG(液化天然ガス)火力新設を練っています。柏崎刈羽原発廃炉で宙に浮く800万KWの送電線で関東に売電するのです」。

プーチン大統領訪日で“北方領土解散”を狙う安倍政権は、その呼び水にすべく日露経済協力を検討中で、その目玉の一つがガスパイプライン構想だ。「日露天然ガスパイプライン推進議員連盟」によると、サハリンから稚内を経て東京湾にまで設置、全長約1500キロで建設費は7000億円と見積もっているが、新潟ルートも検討されていたのだ。「新潟にはガス貯蔵施設など関連施設があり、東北や関東方面とパイプラインでつながっているため、ロシアとパイプラインで結べば、新潟がエネルギー拠点となる可能性がある。そこで泉田前知事の主導で調査が始まり、2014年3月に報告書を作成しました」(県国際企画課)。

建設費は3000億円から5000億円だが、「推算値で、水深3300メートルに通す技術的課題は残っている」(同)。一方、ロシアからタンカーでLNGを新潟に運び、発電することも可能。北海道石狩湾新港でも、ロシア産LNGを使う予定のガス火力発電所(170万kW)が建設中で、「泊原発(207万kW)再稼働の必要はなくなる」(鈴木宗男新党大地代表)。

ロシア産天然ガス輸入拡大は、原発ゼロを加速、中東依存度を減らす効果もある。日露経済協力の内容は拙速に決めるのではなく、長期的多角的な視点からの国民的議論が不可欠だ。

(注)会談はその後、諸事情により延期されている。

(横田一・ジャーナリスト、12月2日号)

大学所蔵のアイヌ遺骨問題――「コタン」への返還続々

市民集会で語る訴訟原告の小川隆吉さん(右)ら。11月25日、札幌市内。(撮影/平田剛士)

市民集会で語る訴訟原告の小川隆吉さん(右)ら。11月25日、札幌市内。(撮影/平田剛士)

北海道大学に対する一連のアイヌ遺骨返還請求訴訟のうち、紋別市内から1941年9月に持ち出された4体について、原告の畠山敏・紋別アイヌ協会会長と北大の間の和解が11月25日、札幌地裁で成立し、近く同協会に対する返還が実現することになった。

政府の遺骨返還指針が定めた祭祀承継者(民法が規定する遺骨の所有権者)にこだわらず、大学が遺骨を元の地域のアイヌ集団に返還するのは、今年7月の「コタンの会」への返還(浦河町杵臼、本誌8月26日号で既報)に続き2例目。原告団によれば、残る浦幌訴訟(原告=浦幌アイヌ協会、約60体)でも、遺骨返還に向けた和解協議が進んでいる。

「先住民族の権利に関する国連宣言」(2007年採択)は、祖先の 遺骨へのアクセス権を「先住民族集団の権利」の一角に位置づける。各アイヌグループが相次いでこの「集団の権利」を取り戻していることに刺激を受けて、道内の他の地域でかつて墓暴きや遺骨持ち出しの被害にあったアイヌたちも声を上げ始めた。

同日、札幌市内で開かれたシンポジウム「アイヌの遺骨はコタンの土へ」(コタンの会など主催、本誌など協賛)には市民約110人が参加。かつて地元墓地から約200体の遺骨を持ち去られた新ひだか町在住の高月勉・コタンの会事務局長や、12体の遺骨が北大に留め置かれたままになっている平取町の木村二三夫・平取アイヌ協会副会長らが、遺骨返還をめざすそれぞれの活動を報告した。

また「杵臼をモデルに各地への遺骨返還プログラムを確立しよう」、「アイヌに対する植民地支配・同化政策について学び合い、地元への遺骨返還を支援しよう」などとする集会声明文が、大きな拍手で採択された。

全国の大学・博物館には、まだ1600体以上のアイヌ遺骨が残されている。

(平田剛士・フリーランス記者、12月2日号)

実行犯の「証拠はない」が、予断と偏見で懲役12年――ジャカルタ事件判決に疑問

城崎勉さんが未決勾留されている東京拘置所(葛飾区小菅)。

城崎勉さんが未決勾留されている東京拘置所(葛飾区小菅)。

1986年5月にジャカルタで起きた日本大使館への金属弾発射事件で殺人未遂罪に問われた城崎勉さんの裁判員裁判の判決公判が11月24日に東京地裁第11刑事部で開かれた。辻川靖夫裁判長は懲役12年の実刑判決を言い渡した。

判決は、金属弾の発射元だったホテル客室で採取された指紋2点が城崎さんの指紋と一致したことなどから、「本件殺人未遂の実行犯であるとまでの証拠はないが、少なくとも部屋の確保など重要な役割を果たした共犯者」として、「事件当時、レバノンにいた」という城崎さんの主張を退けた。「犯行動機は明らかではない」とも述べた。米国で18年間服役したことについて、「大幅に刑を減じる事情とは言えない」とした。「推認できる」という言葉が二十数回あった。城崎さんは即日控訴した。

判決は指紋の転写の可能性について、「パソコンが十分に普及していない当時、容易にできたとは考え難い」「露見した場合には重大な問題に発展しかねない計画を日本の捜査機関や米国の情報機関が行なうとは考え難い」と指摘。捜査機関による指紋シートのすり替えも「考えられない」と片付けた。

裁判官3人と裁判員6人・補充裁判員3人は、氷見事件、足利事件、袴田事件や大阪地検のフロッピーディスク改竄などの「日本の捜査機関の証拠捏造」を忘却している。裁判員・補充裁判員の7人(2人は欠席)の会見の中で、「裁判員2」の会社員は「決め手のない事件で、判断が難しかった」と話した。「有罪と認定することに異論はなかったのか」と聞くと、地裁職員が「評議の内容に当たる」と筆者の質問を制止し、隣の「裁判員4」の会社員が「言うべきではない」と小声で発言した。

城崎さんは裁判で、自らが共産同赤軍派メンバーだった時代の金融機関襲撃事件などを「間違いだった」と明言し、自身の超法規的措置での釈放につながった日本赤軍ダッカ事件(77年)についても「人民を盾にするのは支持できない」と述べた。

共同通信は24日の記事(堀野紗似記者)で「実行犯とする証拠はない」との認定を伝えていない。実行犯でないなら懲役12年は重すぎる。共同通信はサイド記事でも「かつて社会を揺るがした過激派の面影はなかった」「裁判長が判決理由を読み上げ、傍聴席の支援者から『不当判決だ』と声が上がった時も振り返らない」などと伝えた。また、「無罪となった後の生活を聞かれて『故郷の富山に帰って余生を過ごしたい』と話す姿に、過激派の面影はなく、時代の流れを感じさせた」とも書いた。予断と偏見に満ちた記述だ。

【ダッカ事件の復讐か】

筆者は判決翌日の25日、東京拘置所10階の面会室で城崎さんに取材。城崎さんは次のように話した。

「裁判長は冷や汗をかいていた。恥ずかしい判決だから、それが顔に出ていた。ふざけた判決だと、怒りを込めて、裁判長をにらみつけていた。裁判長は一度も私と目を合わさなかった」

「親分の米ワシントン連邦地裁が禁錮30年の判決を出しているので、属国の日本の裁判官たちはそれと違う判決を出せなかった。裁判員は私に偏見を持って裁判官に従った。実行犯だという証拠はないが、爆弾発射に適したホテルの部屋を確保したのは間違いないという判決だったが、それなら実行犯は誰なのかを究明すべきだ。実際、米国の捜査で、発射台を作った大工は3人で来た実行犯と3回会っていると証言しているが、その大工は行方不明になっている」

「この判決は、(ダッカ事件の)奪還作戦に応じたことへの復讐ではないか」と聞くと、「そうだろう。裁判長は被告人質問で、日本赤軍の指名に応じなければ、2、3年で出られた。私なら主張の異なる党派の指名に応じないが、などとしつこく聞いた。『あんたには言われたくない』という気持ちだった。私を必要とする人がいるならと思って応じた」と答えた。パレスチナ現地のレジスタンスから学んだという城崎さんは「米帝国主義と闘うという姿勢は変わらない」と強調した。

(浅野健一・ジャーナリスト、12月2日号)

「天皇制いらないデモ」襲撃――右翼の暴行放置する警察

右翼が市民団体のデモ参加者の車を破壊しているのに、目の前にいる機動隊は何もせず、逮捕もしない――。かねてから問題になっている警察のこうした「右翼野放し」が、11月20日に東京都武蔵野市で起きた。

この日、JR吉祥寺駅近くの公園から出発した参加者約100人の「天皇制いらないデモ」に対し、警視庁は約700人もの機動隊員を動員。だがデモが出発した直後から解散地点に到達するまで1時間近く約40人の右翼がつきまとい、「殺せ」などと叫びながら、参加者に暴行を加え続けた。

デモの主催側によると、宣伝カーのフロントガラスが破壊されたほか、宣伝カーのスピーカーのコードも切断。参加者が持参した4台の拡声器も破壊されたり奪われたりしたほか、さらにデモの先頭に掲げられていた横断幕も引きちぎられた。出血を伴うケガを負わせられた市民も、6人以上にのぼった。参加者によれば、デモ隊を取り囲むように警備していた機動隊は右翼を事実上野放し状態にし、本来なら現行犯で逮捕すべき暴行や傷害、器物破壊等をろくに制止もしなかったと証言している。

これについて警視庁公安部は「現在捜査中なので、回答は差し控える」とコメントしているが、これまで天皇制に抗議するデモ隊を警察が大がかりな警備体制で取り囲みながら、右翼が襲撃するのを放置している例は多発している。

典型的なのは、毎年8月15日に東京・靖国神社付近で行なわれるデモだ。宣伝カーや横断幕のみならず、参加者に対する右翼の暴力が常態化しているが、「暴行をふるった側の逮捕者が出たためしはない」(20日のデモ参加者)という。しかも現場では、私服の公安が右翼と談笑する光景もしばしば目撃されている。現在この国では、「反天皇制」を掲げるデモは、警察公認の右翼の暴力にさらされるのに甘んじなければいけないのか。

(成澤宗男・編集部、12月2日号)