週刊金曜日公式ブログ 週刊金曜日ニュース

マイナンバー収集、不適切では――国税庁の動画に批判

国税庁がホームページで流しているマイナンバー制度の広報動画に、個人番号を不適切に収集するシーンがあると批判が出ている。制度に反対する市民グループ「共通番号いらないネット」のメンバーは「国税庁は個人番号の取り扱いで他省庁のモデルになっており、民間に誤った方法を推奨することになる」と主張し、配信中止や内容の修正を求めている。

動画は、9月に公開された「マイナンバー(個人番号)と法定調書」で、9分39秒のドラマ仕立て。講演会の主催会社の男性が講演料支払いのために講師から個人番号を収集する場面があり、男性は番号を自分の手帳に書き取ると、そのままシャツの胸ポケットにしまってしまう。

特定個人情報取扱ガイドラインは、個人番号を記載した書類は鍵がかかる棚などに保管し、必要がなくなったら速やかに破棄するよう定めており、動画の中でも説明されている。同ネット事務局の原田富弘さんは「手帳を無防備に胸ポケットに入れて持ち歩けば、紛失や盗難で個人番号が漏洩する危険が大きい。不要になった番号だけをすぐに手帳から消すとも考えられず、番号の扱い方として不適切だ」と指摘する。

同ネットは11月5日に都内で開いた学習会でこの動画を上映し、約100人の参加者が視聴。「費用と手間をかけて個人番号の管理態勢を整えさせられた事業者をバカにしている」との声が聞かれた。

国税庁の担当者は「個人番号を手帳に書き取ることがただちにガイドラインに違反するとは考えていない」とした上で、「番号の提供にどんなケースがあるかにフォーカスを当てて制作しており、収集する側の安全管理措置は当然なされている前提だ」と釈明。一方で、指摘を受けて「機会があれば収集する側に注意を喚起するような広報素材を作ることも検討したい」と話している。

(小石勝朗・ジャーナリスト、11月18日号)

HPVワクチンの危険指摘を抑えるメールが明らかに――厚労省とWHOが接種推進

厚労省とWHOが接種推進に向けやりとりしたメール。(撮影/太田美智子)

厚労省とWHOが接種推進に向けやりとりしたメール。(撮影/太田美智子)

HPVワクチン(子宮頸がん予防ワクチン)接種後の重大な副反応被害に対する賠償と救済を求め、10~20代の女性63名が全国4地裁で国と製薬企業2社(グラクソ・スミスクライン社、MSD社)を訴えたHPVワクチン薬害訴訟は、福岡(9月28日)と大阪(11月8日)で第1回口頭弁論が開かれた。

被告企業側はWHO(世界保健機関)などが繰り返し発表してきた「安全声明」を盾に、対決姿勢を示している。

だが、薬害オンブズパースン会議(鈴木利廣代表)は11月2日、中立の立場で公衆衛生行政に携わるべきWHOと厚生労働省の担当者が、危険を指摘する声を抑え込もうとしていた事実を示すメールの存在を明らかにした。

メールは、2014年2月26日に厚労省が開いた「子宮頸がん予防ワクチンに関する意見交換会」に関するものだ。別件でHPVワクチンの危険性を指摘しようと来日を予定していた米仏の研究者を招き、別の研究者に反対の論陣を張らせて、両論併記の報道に導こうと考えたらしい。

反論してくれる研究者探しのため、WHOワクチン安全性諮問委員会(GACVS)のロバート・プレス委員長が厚労省健康局結核感染症課の難波江功二課長補佐に代わり、18日付でニュージーランドの研究者に打診した。

当の研究者は十分な実績がないことを認めつつ、テレビ会議形式で参加した。そのため、NZでの情報公開請求により、一連のメールが表に出た。意見交換会座長の倉根一郎・国立感染症研究所副所長や難波江氏らはGACVSメンバーと電話会議で事前打ち合わせを行なった可能性もある。GACVSは難波江氏の依頼通り意見交換会の2週間後に声明を発表した。

科学的に未知な事柄に対する謙虚さを忘れ、推進に偏り続ければ、いずれ国もWHOも信頼を失うだろう(役職はいずれも当時)。

(太田美智子・ライター、11月18日号)

電通のブラック企業体質に強制捜査――遺族の悲痛な叫びに応えよ

4半世紀の間に少なくとも3人の過労死者を出し、労基法違反で再三の是正勧告を受けながら放置し続けた巨大広告代理店・電通に、ついに捜査のメスが入った。

入社9カ月目の電通社員・高橋まつりさん(当時24歳)が過労により自殺していたことが明かされた遺族会見(10月7日)からちょうど1カ月となる11月7日、厚生労働省が電通の東京本社と3支社に対し、同省・過重労働撲滅特別対策班(通称・かとく)メンバーなど総勢88人を動員しての、強制捜査に踏み切ったのだ。

報道によれば、東京労働局などでは10月14日以降、電通の各事業所や主要子会社に任意の立ち入り調査を実施。この調査結果から、電通が各地の労働基準監督署に届け出た時間外労働の上限を超え、従業員を違法に働かせていた疑いが強まっていた。今後は押収した労務管理のデータや賃金台帳などの資料をもとに、違法な長時間労働を放置した会社側の責任を解明。さらに刑事事件としての立件も視野に、幹部社員の事情聴取が行なわれる見込みだという。

まつりさん遺族の会見をきっかけとして電通の「ブラック」ぶりは、この日までに続々と明らかになっていた。

10月20日には、2013年6月に病気で亡くなった東京本社勤務の若手男性社員のケースが、今年に入り長時間労働による労災と認定されていたと各紙が報道。さらに一昨年と昨年にも、大阪の関西支社と本社で社員に違法な長時間労働をさせていたとして、労基署から是正勧告を受けていたこともわかった。

そもそも電通は25年前の1991年8月、入社2年目の社員・大嶋一郎さん(当時24歳)を長時間労働の末に自殺に追いやった「電通事件」の当事者だ。過労自殺における会社側の安全配慮義務を明確化したこの歴史的事件を引き起こした同社で、かくも無法がのさばっているとあっては、さすがの厚労省も座視できなかったのだろう。

【「鬼十則」の社風 命よりも業績を優先】

強制捜査開始から2日後の9日には、厚生労働省が過労死防止月間となる今月、全国各地で開催している「過労死等防止対策推進シンポジウム」の中央集会が東京・内幸町で行なわれ、亡くなったまつりさんの母親である高橋幸美さんと、その代理人を務めている川人博弁護士も登壇した。

川人弁護士によれば、まつりさんの労働時間は本採用となった10月頃から深夜勤務・休日勤務が常態化し、睡眠時間が非常に少ない状態が続いていた。入退館記録を元にした彼女の終業時間は、この頃、夜10時、12時を過ぎることが当たり前のようになっており、10月26日などは始業時間が「6時5分」、終業時間「38時44分」と記録されていることから、30時間以上、会社から一歩も出ずに働いていたことが裏付けられるという。母親・幸美さんによれば、亡くなる1カ月前となる11月には、25年前の大嶋さんの記事を見せ、「こうなりそう」と話したこともあったという。

この日の約10分間のスピーチの中で幸美さんは、4代目吉田秀雄社長が1951年につくった電通「鬼十則」(社訓)の1カ条「取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは」を引用しつつ、「社員の命を犠牲にして業績を伸ばして、日本の発展をリードする優良企業と言えるでしょうか」と電通の姿勢を糾弾。さらに「残業時間の削減を発令するだけでなく、根本からパワハラを許さない企業風土や業務の改善をしてもらいたい」とし、残業隠しの再発を防ぐための対策としての、「ワークシェアや36協定の改革、インターバル制度の導入」といった具体案にも言及した。

幸美さんは政府に対しても、「国民の命を犠牲にした経済成長第一主義ではなく、国民の大切な命を守る日本にしてほしい」と訴えている。この悲痛な叫びに電通と国が本当に応えられるのか、国民からは、かつてなく厳しい目が注がれている。

(古川琢也・フリーライター、11月18日号)

長野県大鹿村、工事責任者は姿をみせず――リニア起工式に住民が抗議

「リニアは誰のために走るの?」などのプラカードを掲げて起工式に抗議。(撮影/樫田秀樹)

「リニアは誰のために走るの?」などのプラカードを掲げて起工式に抗議。(撮影/樫田秀樹)

11月1日。南アルプスの西端に位置する長野県大鹿村で、2027年開通予定のリニア中央新幹線の起工式が執り行なわれた。昨年12月には南アルプス東端の山梨県早川町でも起工式が執り行なわれ、事業者であるJR東海は、今後、本州の山塊で唯一人工的な横断工作物がない南アルプス(約25キロメートル)に長大なトンネルを穿つ(静岡県の部分は未着工)。

起工式には、リニア計画に納得していない県内外の住民約50人が集まり「リニア反対」などの横断幕を掲げての抗議活動を行なった。

従来、JR東海は大鹿村民に「地元の理解がなければ着工しない」と約束していた。ところが今年4月の住民説明会で突如「住民が理解したかどうかは事業者が判断する」と言葉を変えた。

村ではトンネル工事から排出される膨大な建設残土を運ぶダンプなどが一日最大1736台、10年間狭い道を走り回る。粉塵、騒音、振動、排気ガス、交通事故や観光への影響に不安を抱く住民は多く、理解とは程遠い状態だった。

だがJR東海は、10月14日の説明会で、住民から疑問の声が上がっていたのに、閉会後、記者団に「住民理解は得られた」と公言し、19日には工事開始後の取り決めを明記した確認書を村と締結した。そして、着工への最後の手続きである村議会での決議が注目されたが、21日、4対3の僅差でリニア着工が可決されたのだ。

市民団体「大鹿リニアを止める実行委員会」の宗像充代表は「僕たちは理解も同意もしていない。工事責任者を出してください!」と起工式会場の入り口で訴えた。2014年にリニア計画を国土交通省が認可する際、太田昭宏国交相(当時)は「住民への丁寧な説明を」との措置をJR東海に求めた。だが宗像代表が「僕たちは一度も丁寧な説明を受けていない」と言うように、この日、とうとう責任者は姿を現さなかった。

(樫田秀樹・ジャーナリスト、11月11日号)

辺野古埋め立て土砂搬出に反対署名9万超

環境省に要請書を提出する辺野古土砂搬出反対全国連絡協議会のメンバー。(撮影/松本宣崇)

環境省に要請書を提出する辺野古土砂搬出反対全国連絡協議会のメンバー。(撮影/松本宣崇)

沖縄県名護市の辺野古新基地建設の埋め立てに反対する「辺野古土砂搬出反対全国連絡協議会」は11月1日、搬出計画は深刻な環境破壊をもたらすとして撤回を求める約4万1000人の署名を安倍晋三首相あてに提出した。昨年10月の署名と合わせ約9万4000人に達した。

連絡協議会は、埋め立て土砂2万1000立方メートルの大半を本土から持ち込む国の計画に反対する自然保護団体など18団体で結成。この日は署名提出に先立ち防衛、環境両省に計画中止を要請。質疑では、「土砂搬出は生物多様性基本法に基づく生物多様性国家戦略に抵触しないか」「4月に環境省が公表した『生物多様性の観点から見た重要度の高い海域』に含まれている辺野古を埋め立てていいのか」など環境政策の矛盾を追及した。

なかでも注目すべきは、9月の国際自然保護連合(IUCN)ハワイ会議で決議された「島嶼生態系への外来種の侵入経路管理の強化」に日本政府が棄権したことだ。決議は日本自然保護協会など非政府組織(NGO)6団体が日米両政府に、辺野古を含む沖縄本島の外来種侵入防止策の強化を求めた勧告案に基づく。勧告案に対しては、外務省が辺野古の新基地建設に触れる記述の削除を求めたが、IUCN側が応じなかった。環境省は棄権した理由について、「辺野古を特定した決議は不適切」と答弁した。

(平野次郎・フリーライター、11月11日号)

規制委員会は中央構造線断層の危険性を無視――伊方原発「妥当」閣議決定

伊方原発直近にひずみが溜まっていることを示す資料。今年9月の日本地質学会で発表された。(提供/早坂康隆)

伊方原発直近にひずみが溜まっていることを示す資料。今年9月の日本地質学会で発表された。(提供/早坂康隆)

四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)直近を通る中央構造線が活断層である危険性が高い問題(本誌10月21日号参照)で、安倍晋三内閣は11月8日、〈四国電力が(略)調査を実施し(略)適合性審査において、原子力規制委員会はこれを妥当であると判断〉との答弁書を閣議決定した。早坂康隆・広島大学准教授(岩石学・構造地質学)は「『地体構造境界としての中央構造線』が佐田岬半島北岸に沿って伊方原発の沖、およそ600メートルを通っていることは明らか。にもかかわらず、この大断層に着目した構造探査が全く実施されていない。このような重大な不備を不問に付すなら原子力規制委員会の審査体制そのものの質を疑わざるをえない」と批判している。

福島みずほ参議院議員の質問主意書への答弁書で、内容には知識不足やはぐらかしが多くみられる。(1)質問主意書では中央構造線の位置を聞いているのに、「中央構造線活断層帯」の位置について答弁、(2)中央構造線本体に沿っては幅1キロメートルを超えるダメージゾーンが形成されていることは学界の常識であるにもかかわらず、〈「ダメージゾーン」が何を指すのか明らかではなく、お答えすることは困難〉と答弁している。

早坂氏は「京都大学防災研究所の西村卓也准教授はGPS(衛星利用測位システム)データの解析からひずみがたまりやすい場所として『四国の中央構造線断層帯沿い』『山陰の島根県東部から鳥取県にかけて』などを挙げ、西村氏の予想通り10月21日には鳥取県中部でM6・6(暫定値)の地震が発生した。伊予灘は長い間大きな地殻内地震の発生がなく、普段の地震活動も大変少ないため大きなひずみが蓄積されていると考えるのが自然」と警鐘を鳴らしている。

(伊田浩之・編集部、11月11日号)

「冗談」発言以上に問題の山本農水相のもう一つの発言――委員会審議の意趣返しか

市民と国会議員のTPP反対集会で署名を受け取る福島のぶゆき衆院議員。(撮影/横田一)

市民と国会議員のTPP反対集会で署名を受け取る福島のぶゆき衆院議員。(撮影/横田一)

「野党共闘に消極的」「国会対策も弱気」と不評だった民進党蓮舫執行部が、安倍政権と闘う姿勢を見せ始めた。きっかけは11月1日夜の山本有二農林水産大臣発言だ。

同日に山井和則国対委員長は「2日のTPP特別委員会での採決、4日の本会議での採決」で与野党合意をしたが、篠原孝筆頭理事ら現場の委員が「審議は尽くされていない」「委員を辞める」と猛反発。そこに山本大臣の問題発言が飛び出し、状況は一変。翌5日、国対と現場が共に「採決できる環境にない。山本大臣辞任が先決」と与党に迫った結果、2日の委員会採決は見送られたのだ。

しかし、安倍政権は山本大臣辞任を拒否する一方、三笠宮崇仁さまの本葬が午前中に行なわれた4日午後の特別委員会で強行採決。「喪に服するべき日に国会を混乱させた安倍首相は保守なのか」といった疑問も出る中、蓮舫民進党代表は「農水大臣発言は利益誘導」「不信任案提出も視野に入れている」と徹底攻勢を示し始めたのだ。

山本大臣の問題発言が出たのは自民党の田所嘉徳衆院議員(茨城1区)のパーティ会場。「JA(農協)の方々が大勢いらっしゃるみたいでございますので、明日、田所先生のご紹介で農水省に来ていただければ、何か良いことがあるかもしれません」と口利きを勧めたのだが、同じ選挙区で戦った民進党衆院議員こそ、TPP特別委員会でSBS米価格偽装問題など政府追及の先頭に立った福島のぶゆき衆院議員(比例北関東)。同僚の宮崎岳志衆院議員はこう話す。

「山本大臣を追及した福島議員は農協などの農業関係者も支持している。だから恨みを晴らしてやろうということなのか、田所衆院議員が負けないようにしてやろうということなのか、『農水省に来てくれれば、(大臣の)オレが便宜を図ってやるぞ』という内容のことを言った。TPP特別委員会審議での意趣返しなのです。しかも山本大臣はSBS米の調査対象業者から資金提供を受け、国と公取と談合関与の疑いで係争中の業者からも献金を受けていた」

自民党国会議員のパーティ券を買って役所に頼めば、TPP対策をしてくれるという露骨な利益誘導だが、献金や選挙応援の見返りに関連予算増などの恩返しをするのは自民党の伝統的手法だ。実際、新潟県知事選で現地入りした二階俊博幹事長も、農業関係者の会合で土地改良事業費(農業土木予算)増加を口にしながら自公推薦候補への支援を訴えた。

しかし、野党推薦の米山隆一知事に敗北。選対本部長の森ゆうこ参院議員は10月31日のTPP反対集会で「最大の争点は原発再稼働だったが、もう一つはTPPだった」と挨拶。先の福島氏はこう話す。「熊本の農協関係者が上京、夜から議員会館前で座り込みをしていた。『自民党国会議員に文句を言われるので』と言っていましたが、参院選の東北の乱が九州などに広がろうとしています。次期衆院選で原発とTPPを訴えることが大切。野党共闘をすれば、地方の自民党は壊滅する」。

【食の安全徹底追及の構え】

一方、都市部も食の問題を野党が本格的に取り上げ始めてから反応、メデイア的にも盛り上がってきた。食の安全を脅かす安倍首相の発言を徹底追及しようとしているのが玉木雄一郎衆院議員だ。

「発がん性の疑いのある肥育ホルモンや飼料添加物は、日本国内では使用禁止なのに輸入は認める二重基準。TPP発効で食肉輸入が増えてリスクが増大するのに、表示を義務付けるなど日本独自に規制することが困難になる規定がTPPに入っていた。『食の安全に関する協議をすべて秘密にする』という内容の秘密協定になっていたのです。それなのに安倍首相は根拠なしに『安全でないものが食卓に届くことは絶対にない』と断言した。米国で認可された遺伝子組み換えサケが入ってくる恐れもある。TPPは単なる自由貿易のルールではなく国家の役割を縮小させるのです」

農業や食の安全を脅かすTPP。強行すれば、安倍政権打倒の気運が高まるのは確実だ。

(横田一・ジャーナリスト、11月11日号)

呉市の育鵬社教科書不正採択問題――監査請求から住民訴訟へ

本誌3月28日号で報じた広島県呉市の育鵬社教科書不正採択問題で、新たな動きがあった。

広島県呉市監査委員会は「教科書ネット・呉」の7月15日の住民監査請求に対して審査した結果を9月13日に通知してきた。通知は「本件採択及び選定委員の委嘱においては、著しく合理性を欠きそのためこれに予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵が存するとは認められない。(中略)教師用教科書及び指導書の購入費の支出並びに選定委員への報償費の支出については、違法又は不当な公金の支出に該当しない」とする。

監査請求では、育鵬社教科書の採択における不正や違法性について提起した。具体的には、(1)社会科指導主事が選定委員と調査・研究委員を兼任していること、(2)採択の基本資料である総合所見において、育鵬社が高評価になるようにデータの水増し・改ざんが行なわれていること、(3)各教科書の評価をどのようにして決めたのかという公文書は不存在としていることは、客観性のない恣意的な評価を行なったこと、(4)選定委員会も教育委員会においても膨大な誤り(1054箇所)をみつけることなく採択していること、(5)任期が期限切れ(15年の8月末まで)の選定委員を動員しての答申の改訂は無効、などを提起したが、監査委員は採択権者(市教委)の主張をなんの疑問も示すことなく受け入れ、「瑕疵」はなかったとする監査結果を発表したものであった。

この監査結果は呉市長に任命された監査委員3名の出すものとして、予想されたものであったとはいえ、到底受け入れられるものではないので、教科書ネット・呉は住民訴訟に踏み切った。

10月13日、広島地方裁判所に提訴し、舞台は裁判法廷に移った。新聞報道は訴状の内容から「育鵬社の教科書を不正に高く評価する水増しや改ざんを行った」と記す。

(内海隆男・教科書問題を考える市民ネットワーク・ひろしま、11月4日号)

厚労省通達は再稼働担当業務を規制適用除外に――関電過労自殺者に労災認定

過労自殺した男性が運転延長審査への業務を担当していた福井県高浜原発。(撮影/粟野仁雄)

過労自殺した男性が運転延長審査への業務を担当していた福井県高浜原発。(撮影/粟野仁雄)

国と電力会社の強引な原発政策が痛ましい犠牲者を生んでしまった。関西電力高浜原子力発電所(福井県高浜町)の40代の男性課長が自殺したのは「長時間労働の過労が原因」として、敦賀労働基準監督署は労災を認定した。

技術畑の男性は、運転開始から40年以上経過した高浜原発1号機と2号機の運転延長に関わる原子力規制委員会の審査への対応を担当していたが、今年4月20日、出張中に都内のホテルで自殺した。

この月も19日間で150時間程残業している。審査の期限は7月7日だったが、男性は規制委員との折衝や報告書の作成、手直しなどで寝る時間もなく、今年からは月に100~200時間の残業が続いた。労働基準法36条による告示で残業時間の上限はひと月最大で45時間だが「管理監督者」の立場の課長職だった男性の労働時間に上限はないが、上司など周囲が健康などに配慮する義務があった。

一方、労基署を統括する厚生労働省は、再稼働目的での原子力規制委員会の審査に向けた電力会社の仕事について「月45時間、3カ月120時間の残業時間上限の適用を除外し、年間360時間の上限だけ適用」という趣旨の通達を2013年、密かに出していたことが、10月12日の衆院予算委員会で判明。安倍首相は理由を「公益上の必要性。集中作業が必要」と説明する。申請が通達の後だった高浜原発には適用されないが、民意も問わぬ再稼働を「公益」として事実上、過労を黙認しており、再稼働目的の労働規制適用除外の是非も改めて問われよう。

社員の労災死について関西電力は「遺族の感情に配慮して、当社の社員かどうかコメントを差し控えたい」とするが、遺族が「関西電力の社員だったことを伏せてほしい」とでも要求したのだろうか。課長になるまで尽力した人を「わが社の社員かどうか言えない」とは。これ以上の冷淡はなかろう。

(粟野仁雄・ジャーナリスト、11月4日号)

術後の猥褻行為容疑――「不当逮捕」の署名2万筆

向かって右端が佐藤一樹医師、真ん中が鶴田幸男会長。(撮影/樫田秀樹)

向かって右端が佐藤一樹医師、真ん中が鶴田幸男会長。(撮影/樫田秀樹)

8月25日、柳原病院(東京都足立区)の乳腺外科専門医A氏が突然警察に逮捕された。9月14日に起訴が決まり、東京拘置所に勾留されている。容疑は、全身麻酔で乳腺腫瘍摘出術を受けた患者Bさんの乳首を術後に17分間舐めたということだ。訴えたのはBさんだが、柳原病院は不当逮捕だとして、早期釈放を訴える署名活動を行なっている。

その行為が行なわれたと主張する時間帯は、手術直後の全身麻酔による「せん妄」状態(幻覚を見やすくなる)が続いているときだ。しかも、術後Bさんは4人部屋に移されたから、他の患者もいれば、術後処置で医師や看護師が頻繁に出入りしていた。そういう状態でのわいせつ行為は可能か。せん妄状態における性的幻覚に違いないと病院は訴えている。

千住警察署はBさんの訴えを受理し捜査を開始。A医師は任意取り調べが一切ないまま、8月25日、突然現れた刑事に逮捕されたのだ。

10月14日。東京都の医師が所属する「東京保険医協会」が、東京地裁の司法記者クラブでA医師の早期釈放を要求する記者会見を開いた。同協会勤務医委員会担当理事の佐藤一樹医師は訴えた。

「『勾留の理由がない』ことを訴えたい。警察が107日間も捜査しての逮捕なら、必要な捜査は終了したはず。証拠隠滅の恐れで保釈できないと言うが、どんな証拠隠滅が可能かの根拠も存在しません」

佐藤医師は10月12日、A医師と接見したが、A医師は「なぜ私がこのようなところにいなくてはならないのか?」と精神疲労をにじませていたという。

同じく記者会見に臨んだ鶴田幸男会長は「このままの理由なき勾留は、類似の医療行為や類似の薬品を扱う医師を萎縮させ、国民の司法不信を助長する」と主張した。

病院は10月20日、2万筆以上の署名を東京地裁に提出。だがまだ医師釈放の動きはない。

(樫田秀樹・ジャーナリスト、11月4日号)