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24条守るキャンペーン開始──LGBTの改憲利用注意

憲法24条改悪反対!――先の参院選で改憲勢力が3分の2以上の議席を獲得したことから、特に個人の尊厳と両性の平等を謳う24条の改悪を危惧する市民らが「24条変えさせないキャンペーン」を立ち上げ、9月2日に東京・上智大学でキックオフシンポジウムを開催。約180人が参加した。

自民党改憲草案の24条では「家族」は「助け合わなければならない」という義務規定を新設。「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立」する現行憲法に対し、自民党草案では「両性の合意に基づいて」と「のみ」をとっている。

木村草太・首都大学東京教授と作家の北原みのり氏の対談で、北原氏が自民党の改憲草案をどう思うか問うと、木村氏は「言及する価値がない。問題外」と答え「今は親の同意がなくても婚姻届は受理されることが当たり前なので24条のありがたみが見えにくくなっている」と話した。北原氏は「私も以前は当たり前のことが書いてあると思ったが24条のない世界では女の人生は拘束されていた。それに『両性の合意のみに基づいて』の『のみ』があるからこそ結婚しないでいられるとなると、24条は結婚している人だけではなく結婚しない私にも関係がある」などと条文の意義を語った。

藤田裕喜・レインボー・アクション代表理事が「稲田朋美さんがレインボーパレードに登場したり、自民党がLGBT(性的少数者)を利用しようとしている。同性婚を実現するために改憲が必要と言い出したら現行憲法の終わりの始まり。これは壮大な罠であり、24条は変えさせてはいけない」と呼び掛けたほか、DV被害や虐待に取り組む団体やひとり親家庭などの立場からも24条の存在価値が語られた。これを受け木村氏は「自民党草案の批判にとどまらず、何が女性の権利や性的少数者のためになるかという議論が盛り上がっていけばいいと思う」と述べた。

同キャンペーンは今後も賛同人を募り、活動を展開する予定だ。

(宮本有紀・編集部、9月9日号)

「だれもが週3日労働で生きられる社会に」――思考実験から描く女性の未来

働く女性の全国センター代表の栗田隆子さん。8月28日、埼玉県嵐山町。(撮影/小林蓮実)

働く女性の全国センター代表の栗田隆子さん。8月28日、埼玉県嵐山町。(撮影/小林蓮実)

女性は生き方や働き方、背景や環境などによって、「引き裂かれ」ている。分断を乗り越え「だれもが」希望を抱いて生きられる未来を実現しなければならない。8月26~28日、独立行政法人・国立女性教育会館主催・会場(埼玉県嵐山町)で、毎年恒例の「男女共同参画推進フォーラム」が開催された。

働く女性の全国センター(ACW2)も参加し、「働く女性のホットライン 10年目のリアル」を報告。「退職勧奨や条件の不利益変更に直面するたびに相談し、なんとか仕事を続けている状態」「自活できる収入が得られないために親元から出られないが、親との関係に苦しさを感じている」「セクハラ体験のフラッシュバックに悩まされている」「不本意な退職をめぐる怒りがおさまらず、心身の不調を抱えて生活もままならない」などの相談例が紹介された。

相談者の勤続年数では、5年未満が増加し、10年以上が減少。2011年頃から人間関係に関する相談が最多となり、特に近年は暴言・いじめ・ハラスメントの相談が多くなっていることについて、労働条件が厳しくなったこととの関連なども指摘された。

その後、「だれもが週3日労働で生きられる社会に」をテーマに、問題提起がなされた。運営委員のNさん(37歳)は、「労働を考えた時、引きこもりだった自分にとって、無職からの脱出であり、時間的ゆとりを手放すことだった。『実験としての週3日労働』を実際に開始して感じたのは、週3日の労働で生きていきたいが、1人暮らしだったら経済的に生活が成り立たなかっただろうということ」と語った。さらに、時給を3000円程度に上げ、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)やアンペイド・ワーク(無償労働)についても考慮しなければならないと訴えた。これを受けてのワークショップは盛り上がったが、議論は始まったばかりだ。

(小林蓮実・ライター、ACW2運営委員、9月16日号)

アイヌ遺骨返還に国際協力を――世界考古学会議で訴え

海外のアイヌ遺骨の返還へ、研究者の後押しを求める北海道アイヌ協会の加藤忠理事長。9月1日、京都市。(撮影/井澤宏明)

海外のアイヌ遺骨の返還へ、研究者の後押しを求める北海道アイヌ協会の加藤忠理事長。9月1日、京都市。(撮影/井澤宏明)

世界最大規模の考古学の学会、世界考古学会議(WAC)の京都大会で9月1日、北海道アイヌ協会の加藤忠理事長(77歳)が演説し、海外に研究資料として渡ったアイヌ民族の遺骨返還への協力を呼び掛けた。大会では、アイヌを始めとする先住民の遺骨返還を後押しするため、研究者の間で各国の遺骨の保管状況について情報交換していくことを確認した。

同会議は1986年に発足。考古学の社会的責任を重視し、先住民やマイノリティ自身の研究参加にも積極的に取り組んできた。京都大会は、約80の国や地域から約1600人が参加し、9月2日までの6日間開催された。

加藤理事長は演説で、国内の大学や博物館などに約1700体のアイヌ遺骨が保管され、ドイツやロシアなど海外にも渡っていることを説明。「国の責任の下、発掘時の姿にするのが、あるべき慰霊の姿。日本の先住民政策への取り組みについて、国際的な後押しと、継続的なモニタリングを」と訴えた。

米・ハワイの先住民マオリの文化人類学者は、「アメリカ先住民墓地保護・返還法」成立後、研究機関などから約6000体の遺骨が返還されたことを、米・スミソニアン国立自然史博物館の遺骨返還担当でチョクトー族の女性は、返還作業に先住民自身が携わることの意義について、報告した。

遺骨収集が、国際的な研究者間のネットワークを使って行なわれていたことを示す報告もあった。オーストラリアの研究者によると、メルボルン博物館にあるアイヌ遺骨1体について、日本の人類学者と同博物館の研究者の間で、先住民アボリジニーの遺骨と引き換えに入手した記録が残っているという。

北海道大アイヌ・先住民研究センターの加藤博文教授(考古学)は「国内の研究機関に海外先住民の遺骨があるかどうか調べ、確認されたら、先住民への返還を考えていく必要がある」と話している。

(井澤宏明・ジャーナリスト、9月16日号)

関東大震災時の朝鮮人・中国人虐殺から93年――国家責任を問い続ける人々

高津観音寺(八千代市)で韓国での「追悼会」の報告をする金美鈴さん(中央)。(撮影/西中誠一郎)

高津観音寺(八千代市)で韓国での「追悼会」の報告をする金美鈴さん(中央)。(撮影/西中誠一郎)

1923年9月1日の関東大震災から93年。今年も1日から数日間、関東各地で虐殺された朝鮮人・中国人等犠牲者の追悼行事が行なわれた。大震災直後の戒厳令下、軍隊や警察、新聞が朝鮮人の暴動や犯罪に関する「流言飛語」を煽動し、各地で「自警団」が組織され、数千人が殺害された。

各地で地元住民による墓碑の建立や、長年にわたる市民の聞き取り調査などが続けられ、事件の記憶が継承されてきた。東京都墨田区や神奈川県横浜市、千葉県八千代市などで開催された追悼行事には、それぞれ100人以上の参加者があり、家族連れや学生など若い世代の姿も目立った。

3日、横浜市久保山墓地で行なわれた「神奈川追悼会」では、市民と地元朝鮮学校生徒により「証言」の朗読劇が披露され、生々しい記憶が再現された。自警団や軍隊により多数の朝鮮人が殺害された現場、墨田区八広の荒川河川敷には、来日中の中国人犠牲者の遺族を含む200人以上が集まった。4日、千葉県八千代市の高津観音寺での法要では、先月20日にソウル市光化門広場で初めて開催された追悼会の関係者である金美鈴さんが挨拶した。

「日本での長年の取り組みに感謝します。現在遺族探しをしながら、記録映画制作を在日2世の呉充功監督が進めています。韓国内で上映し遺族探しと日韓両政府への責任追及に繋げたい」と語った。

2003年に日弁連が真相究明と公式謝罪を求める勧告書を日本政府に提出したが反応がなく、今年5月には野党国会議員が質問主意書を参院議長に提出したが、安倍首相の答弁書は「政府内にその事実を把握できる記録が見当たらない」だった。しかし、内閣総理大臣が会長を務める「内閣府中央防災会議」の専門調査会が08年3月(福田内閣)に公表した報告書には、朝鮮人・中国人の「殺傷事件」に関して詳しく記載されている。

(西中誠一郎・ジャーナリスト、9月16日号)

「残業代ゼロ制度」や裁量労働拡大の労基法改正案は継続――「働き方改革」本気度に疑問符

中央最低賃金審議会の会場前で最低賃金引き上げをアピールする人々。2016年7月。(撮影/東海林智)

中央最低賃金審議会の会場前で最低賃金引き上げをアピールする人々。2016年7月。(撮影/東海林智)

「安倍政権の労働政策のフェイズは明らかに変わったよね」

安倍晋三政権が9月中にも「働き方改革実現推進会議」(仮)を立ち上げる。第2次安倍政権の発足以降、労働政策を巡って翻弄され続けてきた厚生労働省。冒頭のつぶやきは、その厚労省の官僚の言だ。安倍政権を間近に取材した者から見ると「転向した」と思えるほどの変わりようだ。

安倍政権の発足当初、政権の目指す労働政策は、明らかに新自由主義的な色合いが強かった。それは「人を動かす」とした政策のキーワードからも明らかだった。終身雇用を中心とした安定した雇用の在り方を、流動的な雇用へと変えることを試みた。ありていに言えば、使用者が自らの都合に合わせ、思うように労働者を使える雇用の在り方へ変えようとした。人を自由に動かすには「解雇がやりやすく」なければならず、流動的に働く者を増やす必要があり、労働時間もフレキシブルにする必要がある。労働者を守る規制の緩和を求めた。これらが、まず何を第一に考えた政策であったかは、「世界で一番企業が活躍しやすい国を目指す」とした政権のスローガンからも明らかだった。

こうした姿勢の中で、不安定で低賃金の派遣労働者を際限なく増やすことを可能にした改正労働者派遣法が、安保関連法さながら反対の声に耳をふさいで通された。また、実質的に長時間労働を合法化する「残業代ゼロ制度」(ホワイトカラー・エグゼンプション/高度プロフェッショナル制度)や裁量労働制の対象者拡大を目指す労働基準法改正案が国会に継続審議となっている。

これに対して、安倍政権が「最大のチャレンジ」と位置づける「働き方改革」は、(1)非正規社員の待遇改善をはかる「同一労働同一賃金」の導入(2)長時間労働の是正(3)最低賃金の引き上げ(4)高齢者や女性の活躍推進――を一つのパッケージとしたものだ。一見して、当初の安倍政権が目指した方向とは矛盾することが分かる。もっと言えば、これらは労働組合など安倍政権の労働政策に対峙してきた者たちが掲げてきた政策だ。参院選挙前、連合の幹部は安倍政権の新たな政策を「政策泥棒だ」とうなった。厚労官僚が言うように安倍政権の労働政策のフェイズは明らかに変わった。

政府は改革の理由について、少子高齢化で労働生産人口が減少する中で、女性や高齢者など多様な人材を確保することを挙げる。過労死するような長時間労働では女性や高齢者が参入できない。また、流動的な雇用の労働者が低賃金に固定化されることが経済の停滞を招くとする。これらは間違ってはいない。政権にとって解決しなけらばならない「課題」なのだ。課題は、これまでの、そして自らの政権が放置し、新自由主義的手法で、安く、流動的に労働者を使い続けたツケだ。金融緩和を中心としたアベノミクスの失敗が明らかになりつつある中、ツケを「究極の成長戦略」(安倍政権)に看板替えしたにすぎない。人が働くということを「成長戦略」と言う嫌らしさは、政権当初から変わってはいないが。

【「働かされ方改革」であってはならない】

ともあれ、秋以降の国会では、働き方改革の在り方が大きな争点だ。政権が本気で改革をやろうとするのか、人気取りにお茶を濁そうとするのかはすぐに明らかになるだろう。たとえば、長時間労働の削減に労働時間の上限規制を検討するという。上限は月80~100時間が検討されている。この時間は、言うまでもなく過労死ラインだ。さらに、自動車や電機などでの適用除外も検討課題だ。つまりは骨抜き。同一労働同一賃金や最低賃金の引き上げも同様に期待できない。何より、労基法改正案を引っ込めないまま、いくら労働時間削減を言っても説得力はない。

時代に合わせ、働き方を変えることは必要だ。しかし、それは働く側に立った「働き方改革」であり、使用者や国の立場からの「働かされ方改革」であってはならない。

(東海林智・ジャーナリスト、9月16日号)

民進党新体制も影響する新潟県知事選のゆくえ――泉田知事の後継者はだれに

新潟県知事選候補者に名前があがる古賀茂明氏。『原発ホワイトアウト』の著者とされる官僚も候補者に浮上。(撮影/横田一)

新潟県知事選候補者に名前があがる古賀茂明氏。『原発ホワイトアウト』の著者とされる官僚も候補者に浮上。(撮影/横田一)

新潟県知事選(9月29日告示・10月16日投開票)で、泉田裕彦知事路線後継者擁立の動きが活発になってきた。8月30日に原発再稼働に厳しい姿勢の泉田知事が『新潟日報』の報道を理由に突如の出馬撤回をすると、東京電力の株価が上昇。自民推薦内定の森民夫・前長岡市長(全国市長会会長)が有力候補となり、柏崎刈羽原発再稼働の可能性が高まったと株式市場が判断したためだ(本誌9月9日号)。

「泉田知事は『福島原発事故の検証と総括なき原発再稼働はありえない』が持論で、東電に厳しい姿勢で対応してきました。去年、田中俊一原子力規制委員会委員長と面談した時も、原子力防災、具体的には避難計画のズサンさなどを指摘。原子力ムラにとって再稼働を阻む大きな障壁となっていました」(原発問題の専門家)

泉田知事に対しては市民団体が説得しているが、「不出馬の意思は固い」(泉田知事の支援者)。そのため、泉田知事路線を引き継ぐ後継候補探しも始まり、元改革派経産官僚の古賀茂明氏や泉田知事のモデルが登場する『原発ホワイトアウト』の著者とされる霞ヶ関官僚が浮上。同書では、泉田知事がモデルの知事が電力会社など電力モンスターの画策で失脚する結末。今回の事態を予見、原子力ムラの実態を熟知しているとみられたことから白羽の矢が立った。しかし2人とも固辞している模様だ。

11日、民進党代表選の討論会と会見で新潟県知事選について筆者が質問。参院選新潟選挙区では野党統一候補の森ゆうこ参院議員が当選。野党共闘を新潟県知事選でも実現、「再稼働容認派対泉田路線を継承する野党統一候補」という構図に持ち込めるかを問うた。しかし3候補とも「新潟県連の意向が第一」と答えるにとどまり、県知事選での野党共闘への意気込みを聞くことはできなかった。

新潟県知事選で民進党新体制が野党共闘をリード、脱原発の民意の受け皿になることができるか否かが注目される。

(横田一・ジャーナリスト、9月16日号)

南西諸島での“国民保護”は二の次のズサンさ──陸上自衛隊の配備に前のめりな安倍政権の無責任(内原英聡)

宮古島市と同じく粗雑な「避難のイメージ」を掲載する石垣市国民保護計画。(撮影/内原英聡)

宮古島市と同じく粗雑な「避難のイメージ」を掲載する石垣市国民保護計画。(撮影/内原英聡)

他国からの武力攻撃で生活の場が戦場と化したとき“日本国民”の生命や身体、財産はどのように“守られる”のか――。防衛省が陸上自衛隊の配備を計画している奄美や宮古・八重山など南西諸島の住民の間では、この問題がいま深刻に危惧されている。なぜなら自衛隊は国民保護を“最優先任務ではない”としているからだ。

例年通り2016年版の『防衛白書』にも〈自衛隊は、武力攻撃事態においては、主たる任務である武力攻撃の排除を全力で実施〉とあり、〈国民保護措置については、これに支障のない範囲〉でのみ取り組むと記されている。住民の安全確保は“自己責任だ”というのか。

この点をカバーするかのごとく政府は2004年、「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」(国民保護法)を成立させた。同法に従い都道府県も「国民保護計画」を策定したが、市区町村単位では4カ所が未作成となっている。今年3月に160人規模の陸自沿岸監視隊が配備された沖縄の与那国町も、このうちの一つだ。

天候の条件がそろえば台湾も見渡せる「日本最西端」「国境」の与那国島。しかし人口は年々減少するなど、住民は厳しい町運営を強いられてきた。そうしたなか08年頃に浮上したのが陸自配備計画だったが、これまでの過程では筆舌に尽くしがたい苦悩を迫られた。住民は陸自配備を“経済活性”とみなす誘致推進派と、島へのリスクを増大させるとした計画撤回派に分断され、いまも溝は埋まっていない。さらに強引かつ急ピッチで進められた基地の建設工事により、大量の土砂が海へ流出するなど環境汚染も甚大だ。自衛隊配備に拙速な国側の失態といえる事態が相次ぐなか、大前提となるはずの「国民保護計画」さえ整っていない。

約10年も具体的な避難計画を放置

しかし、その「国民保護計画」が策定されても有事に役立つ担保はない。会派「沖縄の風」の伊波洋一参議院議員は8月3日、「国際人道法違反の宮古島への自衛隊配備に関する質問主意書」を政府に提出。08年策定の宮古島市国民保護計画について、(1)「避難実施要領のパターンの作成」、(2)「島外避難における備え」、(3)「避難実施要領の策定」の進み具合を質問した。同市の計画によると「避難実施要領のパターン」とは、市が〈関係機関(中略)と緊密な意見交換を行いつつ、消防庁が作成するマニュアルを参考に、季節の別、観光客や昼間人口の存在、混雑や交通渋滞の発生状況等について配慮し、複数の避難実施要領のパターンをあらかじめ作成する〉(32頁)というものだ。

かりに自衛隊が配備されれば“標的の島”になるおそれがある。それで攻撃を受けたとき国民保護計画が機能しなければ、住民の危険はさらに高まるだろう。だが行政は約10年間も具体策を放置している――。伊波議員の質問に対して政府は8月15日、〈宮古島市は、平成二十八年八月三日時点において避難実施要領のパターンを作成していないと認識している〉と他人事のように答弁した。

一方、宮古島市の下地敏彦市長は6月20日の市議会で、市への陸自配備「受け入れ」を表明している。同市国民保護計画では有事の際、飛行機や船で住民約5万人を島外避難させるイメージ図もある。だが市職員の一人はこう漏らす。「その乗り物が狙われたらどうするか、といったことも(市では)議論していません」

内閣官房と総務省は責任を回避

国民保護計画を所管する内閣官房と総務省消防庁に“責任の所在”を問い合わせた。内閣官房の担当は、「市町村の国民保護計画については都道府県がチェックしており、国側が直接タッチしているわけではない」と回答した。総務省消防庁の担当も「私どもでお答えするのは難しい。自治体ということになるのではないか」と国側の責任をはぐらかした。

陸上自衛隊は「富士総合火力演習」(総火演)で“離島奪還作戦”を過去5回実施したというが、今年8月28日の総火演では島民の存在すら想定していなかった。『八重山毎日新聞』(本社石垣市)は9月3日の社説で、総火演では〈「国民保護法」に基づく住民避難はなかったという。これはなかったのではなく、できないというのが本音だろう。(略)「島民の存在は想定されていない」という演習など税金の無駄遣いである〉と批判した。弾薬だけで約3億9000万円もの税金を投入し、隊員約2400人が参加したという演習でさえこの状況だ。石垣島の住民はこのように不安を明かす。

「昨年10月に突然、石垣島自衛隊配備推進協議会という団体が発足しました。彼らは配備候補地の近接地区にパンフレットを配布し、〈部隊配備は、住民の命と平和な暮らしを守り抜きます〉と強調しました」。このパンフレット「石垣島への自衛隊配備の魅力」を主に作成したのは地元の砥板芳行市議だ。住民はこう続ける。「しかしパンフには具体策への記述が見当たりません。陸上自衛隊の配備計画は他国の脅威を煽る半面、住民のコミュニティや生態系をこわす危険性が大いにあります。候補地に近接する各集落は、配備への断固反対を表明しています」

宮古島市内では昨年10月22日、自民党主催の「平和安全法制セミナー」が開かれた。登壇した“ヒゲの隊長”こと佐藤正久参議院議員は、国民保護計画の所管は「総務省系統」であり、「各県や自治体が作る」と説明した。また自衛隊の配備によって「空港と港、そういうインフラっていう部分も整備しやすくなります」と宣伝したが、その前段では「宮古島から約5万人を避難させるというのは生半可じゃない」と本音を吐露している。

集団的自衛権の行使容認が閣議決定された2014年7月1日、安倍晋三首相は「いかなる事態にあっても国民の命と平和な暮らしは守り抜いていく」と豪語していた。しかしこの発言とはかけ離れた行政運営により、南西諸島はいま混迷をきわめている。
(うちはら ひでとし・編集部)

JR東海、長野県大鹿村で自治会長抜き「説明会」開催――リニア工事着工へ強硬姿勢

8月24日、長野県大鹿村中心部での全体の説明会を開いたJR東海。(撮影/井澤宏明)

8月24日、長野県大鹿村中心部での全体の説明会を開いたJR東海。(撮影/井澤宏明)

リニア中央新幹線の建設を進めるJR東海は、南アルプストンネルの長野県側大鹿村で、狭隘部の多い村を通るアクセス道路の県道拡幅に向けた工事説明会を開催。トンネル入り口となる釜沢地区での8月26日の説明会で、正副自治会長が退席する事態となった。

これまでJR東海は、住民の理解と同意がなければ工事は始めないと説明会で言明してきた。しかし、大鹿村に通じる道路の入り口、中川村での説明会(23日)では、終了後にJR東海の澤田尚夫中央新幹線建設部担当部長が理解を得たと発言。翌日の大鹿村中心部での全体の説明会でも同様の発言を繰り返した。説明会では道路拡幅がすむまでトンネル本体工事は取りかかるべきでないと意見も出たものの、JR東海は拒否。村が求めてきた県道全線の複線化や景観を遮る送電線の地中化にも応じないまま、10月中の本体工事着工を示し、住民の反発が強まっていた。

JR東海は地区ごとの説明会では報道陣を締め出したため住民が不安を抱き、釜沢地区の自治会長の谷口昇さんが、村長が委任した村のリニア対策委員の前島久美さんの傍聴を求めた。ところがJR東海が「関係者ではない」と自治会が管理運営する集会場への入場を拒否したため、谷口さんは正副自治会長の判断を一方的に拒否するのは「住民自治の観点から受け入れられない」と副会長とともに退席した。谷口さんは「対話の余地がない、既成事実のための説明会」とJR東海の対応を批判した。JR東海は29日に村に至る県道拡幅工事に着手した。

大鹿村での着工予定は1年遅れ、長野県内の残土置き場は未定。一連の強硬姿勢に、JR東海の焦りが垣間見える。JR東海に対し沿線住民らで作る、リニア新幹線沿線住民ネットワークは「説明会は無効」、阿部守一長野県知事は「対応は悪い。広く門戸を開くことが重要」とコメントしている。

(宗像充・ライター、9月9日号)

「汚染区域」は解除できず、環境基準からも疑問符――豊洲では「安全宣言」出せない

豊洲移転に反対し築地市場再整備を訴えるデモ。8月20日、東京・新宿区。(撮影/永尾俊彦)

豊洲移転に反対し築地市場再整備を訴えるデモ。8月20日、東京・新宿区。(撮影/永尾俊彦)

「安全性への懸念、巨額かつ不透明な費用の増加、情報公開の不足」の三つの疑問点をあげ、8月31日、小池百合子・東京都知事は築地市場の11月に予定していた豊洲移転の延期を発表した。そして、「市場問題プロジェクトチーム」を設置し、2014年11月に2年間に9回の予定で開始した地下水モニタリングの残る2回(今年10月と来年1月に公表)の結果で安全性を確認し、新たな移転時期を決めると述べた。

土壌汚染対策法(土対法)は、「地下水汚染が生じていない状態が2年間継続すること」で「汚染区域」(形質変更時要届出区域)の指定が解除できるとする。

しかし、都の環境局は、筆者の取材に「2年間のモニタリングに法的な意味はまったくありません」と言い切った。それは、都の中央卸売市場が汚染を東京ガスの操業由来と元々あったヒ素など自然由来に分け、操業由来は掘削・除去するが自然由来は除去せず、盛り土などで封じ込めただけで残っているため、これまで7回のモニタリング結果は環境基準を下回っているが、残る2回が下回っても土対法により、「汚染区域」は解除できないからだ。市場は、地下水で環境基準の10倍以上は操業由来、環境基準を超えるが10倍以下は自然由来と区別している。

だが、それなら一体何のためのモニタリングなのか。環境局は、「土対法上の汚染区域の台帳を作る事務手続きのため」と答えた。

8月16日に小池知事が築地・豊洲両市場を視察した後のぶら下がり取材で、筆者は「豊洲は土対法上の『汚染区域』になっていて、安全宣言をするには『汚染区域』を解除しなければならないが、どう考えるか」と聞いた。知事は「モニタリングで都民も私自身も納得できることが必要。さらに様々な調査を確認し総合的に判断したい」と答えた。「汚染区域」は残る2回のモニタリングで環境基準を下回っても解除できないという重要な事実が知事に報告されていないのではないかと感じた。

この自然由来・操業由来の区別について日本環境学会元会長の畑明郎・元大阪市立大学教授は、「東京ガスはヒ素を触媒として使っていたし、ヒ素の汚染は局所的に表層から地下7メートルまで連続しているので操業由来もあります」と指摘した。

また、豊洲の汚染問題を追及し

ている一級建築士の水谷和子さんは、「都は、操業由来の汚染は全部除去するので操業由来の汚染は区域指定を解除すると議会答弁をしています。今になって2年間モニタリングに法的意味はないと言うのは汚染の除去は目指していないと宣言したも同然で、都民との約束の重大な違反です」と批判した。

【クロスチェックが必要】

8月31日、都の新市場整備部は、豊洲市場施設内の空気のベンゼンなどの臨時の測定結果を発表した。今回は、最高0・0013mg/立方メートル(環境基準0・003mg/立方メートルの4割)で、前回6月発表の最高0・0019mg/立方メートル(同6割)を下回った。

前出の畑氏は、「都の測定が信頼できるのか疑問です。私が調査を続けているイタイイタイ病では加害企業と被害者団体がデータのクロスチェックをやっているが、豊洲でも第三者のクロスチェックを認めるべきです」と提言した。

都は、「環境基準とは70年間毎日15立方メートルの空気を吸い続けても健康に影響がない基準」と説明する。

だが、有害化学物質対策に詳しい田坂興亜・元国際基督教大学教授は、「環境基準とは、有害物質の毒性について絶対超えてはダメという基準で、下回っているから安全とは言えません。環境基準の4割、6割とはとんでもない値です。百歩譲ってどうしても豊洲に市場を開設するなら、有害物質濃度はゼロが望ましいわけですから、恒常的に環境基準のせいぜい1%以下にすべきです。その努力をしないで『健康に影響がない』などというのは詭弁です」と批判した。

「汚染区域」は解除できず、環境基準からも疑問符がつく。小池知事は豊洲では「安全宣言」を出せない。

(永尾俊彦・ルポライター、9月9日号)

ビザのない学生に在留許可を――日本で「将来が見えない」

日本で難民申請などが認められずに両親が「仮放免」の立場に置かれているがゆえ、日本で生まれ育ったにもかかわらず親と同じ仮放免の立場に置かれる子どもたちがいる。仮放免とは、入国管理局の収容を一時的に解かれること。特に、ビザがないので将来働くこともできないなど差し迫った不安を感じている仮放免の高校生、大学生などに在留特別許可を出すこと求めて8月24日、約800人の仮放免者などから成る「仮放免者の会」が法務省入国管理局に申し入れをした。その後、同会と仮放免の4家族は東京都内で会見を開いた。

会見に出た家族はいずれも両親が20年ほど日本に滞在しており、子どもは日本で生まれて日本の教育機関で教育を受けてきた。ガーナ国籍で高校1年の女性は、「この先の未来がまったく見えないから、すごくつらい。一生懸命勉強していい成績を出しても、ビザがないと社会に出て働けないから、全部意味がない。遠くにもあまり遊びにいけない。周りの友だちみたいに自由に人生を生きたい」と話した。仮放免者は居住する県などを出る際、事前に入国管理局から「一時旅行許可」をもらわなければならず、日本国内であっても自由に移動できない。

前出の高校生の母は、「祖国に帰れと言われても、子どもにとって祖国は外国にすぎない」と訴えた。インド国籍で高校2年生の男性も、「生まれてこのかた、日本人としか関わりがない。日本での大学進学を目指しているが、進学のお金を補填するためにアルバイトすることもできない」とした。ブラジル国籍で専門大学1年の男性は、「これまで身につけてきたことや勉強したことも、就職しないといかせない。将来、家族ができても養えない」と不安を語った。

同会顧問、久保田祐佳弁護士は、「何か悪いことをしたから在留特別許可がないと誤解する人もいるが、子どもたちに落ち度はまったくない」と強調し、指宿昭一弁護士は「両親が仮放免だということに引っ張られ、子どもまでもを仮放免の立場に起き、在留特別許可を出さないのはおかしい」と指摘した。

(本誌取材班、9月2日号)