週刊金曜日公式ブログ 週刊金曜日ニュース

築地移転先の新市場は法律上の「汚染区域」――豊洲問題は都知事選の争点だ

豊洲移転反対デモに参加する水谷和子さん。2015年9月、東京都内。(撮影/永尾俊彦)

豊洲移転反対デモに参加する水谷和子さん。2015年9月、東京都内。(撮影/永尾俊彦)

「どうして都は333カ所の未調査箇所を報告しないんですか!」

6月28日、東京都庁で開かれた豊洲新市場の「土壌汚染対策工事と地下水管理に関する協議会」の閉会を座長が告げた直後、傍聴席に座っていた一級建築士の水谷和子さんが叫んだ。

水谷さんは、東京ガスの工場があったことからベンゼンで環境基準の4万3000倍などの土壌汚染が発覚した豊洲の汚染対策の問題点を都に開示させた資料をもとに追及している。土壌汚染対策法(土対法)施行規則は、地下水を通しにくい粘土層の上端(帯水層の底面)にベンゼンなどの有害物質が溜まりやすいことからその土壌の採取と測定を義務付けている。

だが、水谷さんが開示させた資料から、都は約300カ所もの区画で土壌採取をしていないことが明らかになった。

しかし、この日の協議会ではモニタリングの結果が全地点で環境基準を下回ったと報告され、学識経験者や市場関係者らの委員から「地下水管理システムはほぼ完壁」「都はもっと安全宣言をPRすべき」などの評価が相次いだ。

結局、水谷さんの叫びは無視された。都は、11月7日に豊洲新市場を開場するが、豊洲地区は現在土対法の「汚染区域」に指定されており、その上に市場を開くことになる。この問題は都知事選の重要争点だが、「再検討」を表明したのは鳥越俊太郎候補だけだ。

【土壌汚染対策費858億】

都(市場)は豊洲の土壌汚染調査を2008~9年に行なった。だが、2010年に改正土対法が施行、帯水層底面の調査が義務付けられた。だから、都は帯水層底面の調査を追加調査する必要が生じたが、一部しかやっていなかった。ただ、土対法施行規則では、改正前に行なわれた調査が、「試料採取等と同等程度」と認められるときは「試料採取等の結果とみなす」とされている。その判断は都の場合は、環境局が行なう。

都(市場)は、土対法に従い、国が指定する「指定調査機関」の応用地質㈱に、改正前に行なわれた都の調査を調べて「土壌汚染状況調査報告書」を作成させ、これに基づいて都(市場)は土対法で定められた汚染区域の指定を都知事(環境局)に申請し、区域指定された400カ所について都(市場)は土壌汚染対策工事を実施する中で帯水層底面の汚染の確認と除去をし、2014年に完了した。

この一連の流れを審査した都の環境局が問題なしとしたことから都(市場)は「安全だ」と言う。

しかし、都(市場)は応用地質に業務を委託した2010年12月の仕様書で、ボーリング調査と汚染土壌の掘削除去を400カ所に限定して発注していた。それで、水谷さんは「これは裏を返せば都(市場)が残り約300カ所は帯水層底面の調査をしなくていいと示唆したも同然です」と主張する。

これに対し、都(市場)の担当者は、「それはまったく違います。約400カ所は(2011年11月に)区域指定された後に汚染土壌を掘削除去する区画で、約300カ所は区域指定前に都の環境局が調査不要とした区画です」と反論した。その理由を環境局は、「帯水層底面の調査と『同等程度』と判断しました」と説明した。

だが水谷さんは「環境省に確認したら、帯水層底面の調査をせず、その上で調査が止まっている場合『同等とみなす』ことはできないと即答しました。違法な状況調査の依頼者も審査者も同じ都知事。依頼者が指示すればなんでもやりますでは、指定調査機関制度と土対法は終わりです」と批判した。アンパイアがプレーヤーなのだ。

都は、なぜ300カ所もの帯水層底面調査をしなかったのか。

東京中央市場労働組合の中澤誠書記長は、「調査する区画が増えれば土壌汚染対策費がかさむので減らしたんだろう」と推測する。

土壌汚染対策費は586億円の予定だったのが現在858億円、総事業費は4316億円だったが、現在5884億円に膨張している。

(永尾俊彦・ルポライター、7月22日号)

フジHD株主総会で反省の弁――孫会社育鵬社の責任追及

(株)フジ・メディア・ホールディングス(以下、フジHD)の株主総会で、子会社・扶桑社の子会社、育鵬社の教科書採択をめぐる不正行為の責任が問われた。

不正行為とは、中学校での教科書採択期間中の昨年6月、同社がフジ住宅(株)(大阪府)の今井光郎会長(70歳)に、大阪市は「教科書展示会にて数多くの教科書アンケートを記入していただければ、育鵬社に採択される可能性が高くなる」との情報を提供。フジ住宅が、勤務時間中に社員を組織動員した結果「育鵬社に肯定意見約7割」の数字を作り上げたもの。大阪市教委は、昨年8月、中学歴史・公民教科書に育鵬社版を採択した(今春から全市立中で使用)。

この不正行為については、馳浩文部科学大臣が今年3月8日の記者会見で、「採択への疑念を生じかねない軽率な行為。育鵬社には猛省を促したい」と述べている。

6月28日、フジHDが東京都内で開いた第75回定時株主総会で、増田都子元千代田区立中教諭は馳氏の発言を引きつつ、グループ会社育鵬社の不祥事の責任を追及。フジHDの日枝久会長(78歳)に指名された金光修専務(61歳)は、「(育鵬社がフジ住宅に)情報を提供したということが行き過ぎた営業行為に当たるんじゃないか、という疑念を生じさせたことに関しては認識しております」とし、「採択率を上げるための行き過ぎた営業行動に育鵬社が関与していた問題」の一つとして、「今後、グループ会社においてないように再発防止に努めるとともに、行動規定・営業指針等々、徹底的な見直しを図りました」と答弁した。

増田さんは、また、育鵬社設立(2007年)に関して、〈日枝会長が自民党の安倍晋三氏から依頼され、3億円を用意して作らせた〉との疑惑がある点についても追及したが、金光氏は「そのような事実は一切ございません」と述べるに留まった。

(永野厚男・教育ジャーナリスト、7月15日号)

東京都知事選告示、有力3候補がアピール――鳥越氏は宇都宮氏の政策を継承

宇都宮健児氏(左)の政策引き継ぎを明言した鳥越俊太郎氏(右)。7月13日。(撮影/横田一)

宇都宮健児氏(左)の政策引き継ぎを明言した鳥越俊太郎氏(右)。7月13日。(撮影/横田一)

東京都知事選(7月31日投開票)が7月14日に告示され、小池百合子・元防衛大臣(衆院議員)と増田寛也・元岩手県知事と共に有力3候補とされるジャーナリストの鳥越俊太郎氏が、新宿駅東南口で第一声をあげた。街宣車の前で民進党や共産党などの野党国会議員との連携をアピールした後、シールズの奥田愛基氏が支援表明。「市民主導の野党統一候補」であることを印象づけたのに続いて鳥越氏がマイクを握り、「住んで良し、働いて良し、環境に良し」とスローガンを紹介した。そして、立候補辞退をした元日弁連会長の宇都宮健児氏の政策を引き継ぐことに関連してこう訴えた。

「宇都宮健児さんの『困ったを希望に変える東京へ』は名キャッチコピー。まさにこれだ。これから出てくる私のチラシにこのキャッチコピーが出てくる」

前回と違って今回、分裂選挙が回避されたのは、「都政をより都民の生活にやさしいものへと転換していく千載一遇の機会」と強調しながら身を引いた宇都宮氏の大局的決断の賜物に違いない。しかも、支援者と一緒に練り上げた政策(「東京変革2016 希望の政策7」)が継承されることも確認していた。13日夜の出馬辞退会見で宇都宮氏は、三つの政策を鳥越氏が継承することを確認したと説明したのだ。

「一つは築地移転問題。11月の豊洲移転に対して築地仲買業者の8割が『豊洲の土壌汚染対策は極めて不十分。築地の方で営業を続けたい』と反対。土壌汚染対策が極めて不十分なので、私たちの政策は『移転をいったんストップして見直しをはかる』。二番目は『東京外環道など道路建設についての見直し』。三番目は『横田基地へのオスプレイ配備反対』。これらについては、13日の鳥越氏との会談の場で(3政策を引き継ぐとの)お答えをいただきました」

すでに鳥越氏は、12日の出馬会見でこの3政策に脱原発を加えた4政策について、宇都宮氏と同じ立場であることを表明。築地移転については次のように述べていた。

「友人のテレビ朝日のモーニングショーの玉川徹君がこの問題に一生懸命取り組んでいまして『鳥越さん、仲買人600業者のうち400業者が反対しています。豊洲の築地市場移転先は、コンクリートを少し浮かしている。もし地震があったら液状化で中から危険物質(汚染物質)などが出てきたときに、それを予想してコンクリートを浮かして打っているのではないか』と言っていました。そういう話を聞くと、必ずしも満点の万歳の移転ではないように思いますので、『もう一度、ちゃんと検討しなければいけないのかな』と思っています」

築地市場移転について鳥越氏は13日の「報道ステーション」でも、「ゼロベースで考えていきたい」と宇都宮氏と同じ考えを表明。「コンパクトでシンプルな五輪関連事業を再度徹底的に見直しをして開催経費を抑える」という五輪事業の見直しでも、宇都宮氏と一致していた。鳥越氏の第一声を聞いた民進党の柿沢未途衆院議員はこう話す。

「政策については白紙状態に近い鳥越氏が、宇都宮氏の具体的政策を引き継げば、非常にいい補完関係になるでしょう」

【政策論争を期待】

一方、自民党への推薦願いを取り下げた小池百合子氏は築地市場移転について、「(移転先の)豊洲の土壌汚染問題を懸念している。情報公開することが第一ではないか。なかなか(豊洲)に移らないのはむしろ後継ぎの問題だと思います」と都庁でのぶら下がり会見で述べた。17日の豊洲での街宣でも演説後に「検討中」と答えただけで、見直しを明言しなかった。

これに対して自民党推薦で東京電力の社外取締役を務めた増田氏からは「築地移転中断」や「脱原発」の発言は出ていない。都知事選の有力3候補の対決構図が見えてきた。「自民党の政策継承の増田氏と小池氏 対 見直し派の鳥越氏」というものだ。選挙戦での政策論争が期待される。

(横田一・ジャーナリスト、7月22日号)

「トモダチ作戦」被曝者への支援基金が発足

右から細川護煕、小泉純一郎両元総理。(写真/エィミー・ツジモト)

右から細川護煕、小泉純一郎両元総理。(写真/エィミー・ツジモト)

「トモダチ作戦」に従事した後、低被曝による健康被害で除隊を余儀なくされた元米兵(本誌6月24日号参照)。米国を訪れ、彼らの惨状を目の当たりにした小泉純一郎元総理は、帰国後、細川護熙元総理とともに2カ月足らずで「トモダチ作戦被害者支援基金」を発足した。その敏速さに米国関係者は驚き、感謝した。

記者会見は、7月5日、東京・五反田にある城南信用金庫本店で行なわれた。

小泉氏が基金設立までの経緯を語り終えると、現地で兵士たちの通訳を務めたブライアン・ヴィクトリア博士が米国の関係者を代表して「このような基金を設立していただき、“トモダチ作戦”に従事し被曝した兵士たちの代表として心から感謝の意を表したいと思います。小泉元総理、細川元総理並びに城南信用金庫のおかげであります。日本では昔から『ご恩返し』という美徳があります。今回の件は、その最も素晴らしい例であり、後世に残ることでありましょう。ありがとうございます」と日本語で謝辞を述べ、両元総理と固く握手を交わした。

会見には、細川護煕元総理も同席。日本人記者が「帰国後、兵士たちの一件を安倍総理に報告されましたでしょうか」と投げかけた質問に、小泉元総理が、即座に「ない」ときっぱり答えたことが印象に残った。
詳細は URL http://www.jsbank.co.jp/38/tomodachi_kikin.html。

(エィミー・ツジモト・在米ジャーナリスト、7月15日号)

鹿児島で脱原発派知事が誕生――川内原発を停止できるか

当選確実となり、支持への感謝を述べる三反園訓氏。7月10日、鹿児島市内。(撮影/木野千尋)

当選確実となり、支持への感謝を述べる三反園訓氏。7月10日、鹿児島市内。(撮影/木野千尋)

参院選と同日に投開票された鹿児島県知事選で、脱原発派の無所属新人、三反園訓氏が初当選した。全国で唯一再稼働した九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)について、選挙中に掲げた「停止して調査、再検証」を実行できるのか注目される。

三反園氏は、「ニュースステーション」政治担当キャスターも務めた元テレビ朝日コメンテーター。再稼働に同意した前現職、伊藤祐一郎氏を8万票以上の大差で制した。当選後、「熊本地震を受けて原発を停止し、活断層も調査すべき。安全性が確保されない原発は動かすべきではない」と述べ、避難計画も不備とし、自然再生エネルギー県の構築を掲げた。

地元の反原発団体幹部が立候補を表明したが、原発停止に加え、原発に関する諸問題を検討する委員会を恒久的に設置するとした政策合意が成立し、告示直前に候補一本化に成功。最大の争点に据えた県政刷新に加え、4月の熊本地震で現実味を帯びた原発事故への不安が追い風となったとみられる。

ただ、この当選を脱原発へのうねりと受け止めるのは早計だ。

選挙戦では、元県議会議長や元自民党県議などが陣営を固め、「保守系無所属」を強調。陣営は「反原発派の支援で勢いに乗った」と認めるが、三反園氏は保守派に配慮し、演説では脱原発政策にはほぼ触れず、当選後も九電への一時停止要請の時期を明言しなかった。ある自民党県連関係者は「地震を受けての調査は理解するが、廃炉とは別の話だ」とにべもない。

野党系県議は「『4選阻止』の反伊藤派が勝っただけ。原発推進派が圧倒する県議会や県職員を相手に、脱原発政策を実行できるのか」と懸念。反原発派の一人も「再稼働反対の泉田裕彦・新潟県知事のような信念を感じない。公約を破れば民意を敵に回すことになる」。川内原発が定期点検のため停止する今秋に最初の正念場を迎えそうだ。

(木野千尋・フリー記者、7月15日号)

TPP反対で“東北の乱”――野党・市民共闘の成果も

野党共闘で勝利した舟山康江氏。山形市内にて。(撮影/横田一)

野党共闘で勝利した舟山康江氏。山形市内にて。(撮影/横田一)

7月10日投開票の参院選で、東北6選挙区(1人区)で野党統一候補が自民党候補に次々と競り勝つ“東北の乱”が起きた。全国的には与党勝利だが、東北地方では秋田を除く、福島・山形・宮城・岩手・青森で野党が勝利したのだ。

最も早く当確が出たのは、山形選挙区。3年前に苦杯を舐めた舟山康江元参院議員の返り咲きが確定。万歳三唱の後すぐに記者会見が始まり、舟山氏は「TPPで自民党が変節したことが追い風になったのか」の問いに、こう答えた。「自民党の政権復帰の一つの決め手は、自民党はTPP断固反対を掲げていたこと。私自身でさえ『これでTPPは阻止できた』と思ったが、政権誕生して3カ月で交渉参加に入った。TPP反対に期待して投票した有権者、特に農業関係者の落胆と怒りは大きかったのではないか。やはりウソのない正直な政治でないといけない。諸事情で政策を変更せざるを得ない場合には、正直に認めた上で説明するべきなのに、自民党にはそうした姿勢が全く見えなかった」。

舟山氏支援に回った農協幹部も、同じ見方だ。「この3年間、農村部は良くなるどころか、疲弊している。安倍政権は『農協改革をして強い農業を作る』と言っているが、実際はその逆になっています。選挙戦後半に農村部も盛り上がりましたが、『TPP反対の声はまだまだ強い』と思いました」。今後の活動について舟山氏は「最重要課題はTPPだろう」と指摘し、「先の通常国会では衆議院で議論が途中で終わったので、おそらく秋の臨時国会が正念場になってくる。TPPの様々な問題について、しっかりと政府に対して追及をするつもりです」と意気込んだ。

自民党公認で公明党推薦の月野薫候補と実質的な一騎打ちとなったが、約12万票の大差となった。舟山氏は「中央主導への反発だろう」と分析。「山形から農協解体を進める」という中央の意向を受けて遠藤利明・五輪担当大臣の主導で農協出身者を担ぎ出したが、地元農協は「自主投票」を決めて舟山支持に回る農業関係者も多く、逆に返り討ちにあった形だ。安倍首相や小泉進次郎氏ら大物議員が続々と山形入りをしても、ほとんど効果がなかった。選対本部長の近藤洋介衆院議員は「小泉進次郎マジックの化けの皮がはがれた」と言い切った。

別の支援者は「安倍政治への怒りを東北から全国に広げていきたい」と意気込んだ。TPPとアベノミクスと憲法問題を三大争点と位置づけ、安倍政権を徹底批判して圧勝した舟山氏は次期衆院選勝利のモデルケースになりそうだ。

東京選挙区は前回より枠が1増えて6議席。最後の1議席には、小川敏夫氏(民進)が田中康夫氏(おおさか維新)を制し、滑り込んだ。SEALDsが「3分の2議席の鍵を握る候補者17人」として推し、党や支援団体である連合東京の組織票だけでなく、SEALDsの学生、市民のボランティアら幅広い支持による「総掛かり」の勝利といえよう。一方、7月14日告示の都知事選候補者選びが難航する民進・東京都連会長・松原仁氏はお礼の挨拶で「次の選挙もよろしく」と添えた。意識はすでに都知事選に移っていた。

(横田一・ジャーナリスト、小林和子・編集部、7月15日号)

参院選は圧勝の与党と、民進・共産の明暗くっきり――3分の2獲得で“改憲”現実味

共産党志位和夫委員長(右)と小池晃副委員長。東京・渋谷区の党本部。(撮影/編集部)

共産党志位和夫委員長(右)と小池晃副委員長。東京・渋谷区の党本部。(撮影/編集部)

7月10日に投開票された第24回参院通常選挙は、大方の予想通りに自民党、公明党、おおさか維新の会の3党で77議席を獲得し、非改選の議員と併せて憲法改正案の提出に必要な3分の2を獲得した。同日夜9時30分過ぎ、自民党の開票センターに姿を現した安倍晋三首相は、満足げに頬笑みながら谷垣禎一幹事長らと握手した。

公明党本部の開票センターでは、山口那津男代表の表情も晴れやかだった。選挙区で擁立した7人の公認候補は全て当選し、比例区では7議席を得ている。

その一方で浮かない表情だったのが、共産党の志位和夫委員長だ。6年前の3議席から6議席に倍増したものの、今年4月の第5回中央委員会総会で採択された「比例区で850万票・15%以上、複数区での勝利」という目標とはほど遠い。とりわけ痛かったのは、選挙区では東京選挙区の山添拓氏しか当選できなかったことだ。当選圏内と思われていた大阪選挙区や神奈川選挙区で公認候補を落としただけではない。埼玉選挙区では公明党現職の西田実仁氏と激しく競った伊藤岳氏も落ちている。当選者の名札に最初のバラを付けた時、志位氏の顔があまりにも暗いので、撮影していたカメラマンらは何度も「笑って」と声をかけたほどだった。

一方で民進党の岡田克也代表は、普段と変わりない様子だった。「落選したら次期代表選に出ない」と岡田氏が全力で応援した三重選挙区の芝博一氏は、岡田氏(当時、自民党)に地盤を譲った故・山本幸雄元自治大臣の孫で自民党の公認候補である佐知子氏と接戦を繰り広げた末に当選した。民進党が獲得した32議席は6年前の参院選で獲得した44議席には及ばないが、3年前の17議席よりは多い。しかし当時の民主党代表だった海江田万里氏はその責任をとらず、細野豪志氏だけが幹事長を辞任してこれに抗議した。

「3分の2をとらせない」がキャッチコピーであったにも拘わらず、岡田氏は「公明党も維新も、9条は変えないと言っている」とはぐらかした。9月に予定されている次期代表選についても、「出馬は白紙」と述べている。

しかし情勢は変わっている。

民進党の蓮舫代表代行が7月9日、銀座で街宣した。この時の観衆の数は、その前の週に安倍首相が参加した自民党の街宣の動員数とほぼ同じ。他の候補応援重視のため、自身の街宣は数回のみだったが、それでも蓮舫氏は112万票以上を獲得している。

その数字に、「国政に尽くしたい」と東京都知事選を断った彼女の意気込みが見えた思いがした。

(天城慶・ジャーナリスト、7月15日号)

改正風営法の施行で変わる日本のクラブシーン

6月22日、C4主催の記者発表会。東京都内。(写真/内原英聡)

6月22日、C4主催の記者発表会。東京都内。(写真/内原英聡)

「犯罪者は実際は違う場所で取引している場合であっても、危険ドラッグなどの取引場所としてナイトクラブで取引したと証言することも多かった。経営者の弱みにつけ込んでのことです」

こう実態を明かすのはクラブとクラブカルチャーを守る会(Club and Club Culture Conference、以下C4)の広報担当、DJ WASEI CHIKADA(WASEI)氏だ。「クラブは従来の風営法で原則午前0時まで。深夜帯営業はグレーゾーンで警察の摘発も恣意性が高かったのです」。

6月23日に施行された改正風営法(昨年6月成立、風俗営業等の規制及び業務の適正化などに関する法律の一部を改正する法律)はダンスを基準とする営業(客にダンスをさせる営業)の規制を撤廃。また「特定遊興飲食店」を新設し、営業許可取得を条件に深夜に酒類の提供をしつつ客に遊興をさせることを可能にした。

WASEI氏は、「店内で違法行為を発見したとき経営側も通報しやすくなる。大きなメリットです」とも指摘。ただし課題はあり、「遊興」が何を指すのか、警察の恣意的な法運用をどう避けるかといった点は業界と政治、行政の調整が続く。

施行前日の22日、C4は東京・渋谷のSOUND MUSEUM VISIONで記者発表会を実施。長谷部健渋谷区長らも同席した舞台で、C4のZeebra会長はクラブ業界の質向上を訴え、“PLAYCOOL”(粋に遊ぼう)キャンペーンを呼びかけた。

(内原英聡・編集部、7月8日号)

住友化学株主総会で――「脱ネオニコ」訴える

ミツバチの大量死が世界中で進み、原因にネオニコチノイド系農薬が指摘されている。同農薬はすでにヨーロッパをはじめとして使用規制が広がっており、住友化学が開発・販売するクロチアニジン(商品「ダントツ」)は、現在9カ国で規制されている。

国際環境NGOグリーンピース・ジャパンは、同社の定時株主総会の6月21日、会場前(東京・中央区)で株主に対し、ネオニコ系農薬ビジネスは会社にとってブランドリスクであり、製造販売をやめるよう訴えた。選挙シーズンにちなんだ架空の「脱ネオニコ党」を結成し、声を上げられないミツバチの代わりにアピールを行なった。

グリーンピースは、株主総会参加・議決権行使等を通して企業の社会的責任を追及するため、住友化学の株式を最小単位で購入している。総会にはグリーンピースのボランティアで、日本ミツバチ保護活動家の御園孝氏が出席し、「ミツバチの被害が広がっている。積極的に調査、対策を行なえないか」と質問。住友化学の健康農業関連事業部担当西本麗専務は「カメムシ防除剤を直接浴びたことが被害の原因の可能性がある」と述べつつも、「ラベルに基づき適正に使用すれば被害は防げる」と回答した。

だが、農薬の「適正使用」には限界がある。グリーンピースは今年5月、夏野菜の苗に残留する農薬を調べたところ、9製品中4製品から表示のない農薬が見つかり、ほとんどがネオニコ系農薬であった。ミツバチなど環境への影響を気にかける消費者に正しい情報が伝わっていない恐れがあり、だれも知らないところで「農薬汚染」が広がっている。

現在、安全で生態系をまもる農業を望む消費者とともに、小売業に有機農産物の調達・販売方針の強化を求める「Goオーガニック」署名を展開中。URL act-greenpeace.jp/food/organic-ranking2016/

(石原謙治 グリーンピース・ジャパン食と農業担当、7月8日号)

マイナンバー違憲訴訟続々――神奈川でも始まる

仙台、東京、新潟、名古屋、大阪、福岡……マイナンバー(共通番号)違憲訴訟が全国展開していく中、神奈川でも今年3月24日、201人の原告が▼個人番号の収集、保存、利用及び提供の禁止▼国が保存している個人番号の削除▼損害賠償(一人あたり11万円)を国に求め、提訴した。争点は大きく分けて二つ。(1)情報漏洩の現実的危険、国家による個人情報の一元管理となることの具体的弊害の立証 (2)憲法13条が保障する「自己情報コントロール権」という概念で捉えられるかという憲法論だ。

6月23日、第一回期日が開廷され、意見陳述が行なわれた。長年共通番号制度を問題視し、本訴訟の原告代表を務める宮崎俊郎さんは、「共通番号制度の根幹は、データマッチングを目的とした情報連携。住民情報の保管は実質的には一極集中システムであり、サイバー攻撃等を受けたら全市民のデータが流出する危険性がある。大規模ネットワークに参加しない権利が憲法13条におけるプライバシーの一種と捉えることが現代的な解釈。ぜひとも現代における最先端の状況を踏まえた議論をして頂きたい」と強く訴えた。また、開業医の藤田倫成さんは、「医療情報は極めて機微性の高い個人情報だからこそ、医療従事者には厳しい守秘義務が課せられているのに、共通番号と結びつけば漏洩の危険性が増してしまう」と指摘。

これに対し、国は、▼直ちに漏洩に繋がるものではない▼原告のいう危険性というものは抽象的なもので、具体的な危険性はない▼自己情報コントロール権はない――などとし反論している。

弁護団は第二次訴訟を起こす構えで、8月末日締切。問い合わせは事務局TEL 090・6138・9593(中森) ●次回期日は、10月13日(木)午前11時~横浜地方裁判所101号法廷(※20分前より抽選開始)。

(稲垣美穂子・フリーランスライター、7月8日号)