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第7期沖縄意見報告・東京集会――「基地ある限り事件また」

報告集会に登壇した特別ゲストのアン・ライト氏。6月12日。(撮影/斉藤円華)

報告集会に登壇した特別ゲストのアン・ライト氏。6月12日。(撮影/斉藤円華)

「米軍による犯罪は絶対に許してはいけない。(しかし)物事を暴力で解決するのが軍隊。軍人はそのための訓練を受けている」

6月12日に連合会館(東京都千代田区)で開催された第7期沖縄意見広告運動主催の報告集会。特別ゲストとして、元米陸軍大佐で国務省外交官としても働いたアン・ライト氏が登壇した。ライト氏は沖縄での米軍属による女性殺害遺棄事件の背景をこう指摘した上で「米兵による沖縄の女性や子どもへの犯罪を止めるためには、基地をなくすしかない」と訴えた。

ライト氏は米陸軍で29年間勤務。後にイラク戦争に反対して外交官を辞任し、平和運動に転じたという特異な経歴を持つ。

「兵士は日常の問題でも暴力で問題を解決しようとする」とライト氏。基地内、そして家庭などの私生活でも軍人による暴力が繰り返されている現状を説明した。

しかも「米国防総省の統計では、軍内部で毎年2万件以上もの性暴力被害が起きている。しかしその7%しか起訴されない」(ライト氏)。同氏によれば、女性兵士の3人に1人が性暴力を受けていることに加え、性暴力被害者に占める男性兵士の割合もこの5年で1割にも達するという。

事務部門で働き、自身は軍務中に性暴力を受けなかったというライト氏。退役後に軍で性暴力が蔓延している事実を知り「知ったからには行動しなければならない」と平和運動に身を投じた。

沖縄の現地報告では、名護・ヘリ基地反対協議会共同代表の安次富浩氏が登壇。沖縄県議選でオール沖縄が過半数を占めたことを踏まえ「参院選で(安倍政権に)勝とう」と訴えた。連帯挨拶で、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会は「参院選で野党統一候補が勝つために郷里へ電話かけを」と呼びかけ、沖縄・一坪反戦地主会関東ブロックは19日の国会前集会への参加を求めた。

(斉藤円華・ジャーナリスト、6月17日号)

「武器輸出反対ネット」が――軍需企業連続訪問し抗議

「武器輸出反対ネットワーク」は6月3日と7日、神奈川県を中心とした軍需企業を連続して訪問し、武器で儲ける「死の商人」としての企業の在り方に抗議した。

同「ネットワーク」は、安倍政権による武器輸出禁止三原則の撤廃に反対する市民によって、昨年12月に結成。3日の行動は、大手の軍需産業を中心に事前に訪問を告知した上で、「死の商人にならないで」と訴える要請書を手渡すという趣旨だ。この日、訪問したのは三菱電機鎌倉製作所(神奈川県鎌倉市)、富士通本店(神奈川県川崎市)、東芝小向工場(同)、三菱重工本社(東京都港区)の4社。このうち富士通と東芝は、要請書の受け取りをかたくなに拒否した。

さらに7日には、今月にパリで開催される武器見本市「ユーロサトリ」に二度目の出展を予定しているジャパンセル(東京都町田市)とNEC本社(東京都港区)、藤倉航装(東京都品川区)をそれぞれ訪問。だがNEC側は警備員十数人を本社前に配置し、要請書の提出を妨害する態度に終始した。

携帯型サーチライトを製造するジャパンセルは会議室で対応し、「警察や消防関係者も『ユーロサトリ』に入場するので、人命救助、災害対策で役立ちたい」と回答。これに対し「ネットワーク」側は、「軍事転用の可能性は残り、せめて出展は見合わせてほしい」と要請した。また、自衛隊にパラシュートを納入している藤倉航装は、名前も名乗らない社員らしき人物が、「要請書は受け取らない」と一方的に宣言するだけだった。

この4月には、三菱重工と川崎重工がオーストラリアへの潜水艦売り込みに失敗。同2社を含む大手6社が昨年と違って「ユーロサトリ」への出展を中止するなど、安倍政権の思惑に反して武器輸出は停滞状態だ。このため同「ネットワーク」は、「今後も反対運動を強め、日本の武器輸出大国化を阻止したい」と語っている。

(成澤宗男・編集部、6月17日号)

野党4党と市民連合が政策協定を締結――安保法制廃止と改憲阻止へ

左から諏訪原健(SEALDs)、又市征治(社民)、岡田克也(民進)、志位和夫(共産)、小沢一郎(生活)、西郷南海子(安保関連法に反対するママの会)の各氏。(撮影/及川健二)

左から諏訪原健(SEALDs)、又市征治(社民)、岡田克也(民進)、志位和夫(共産)、小沢一郎(生活)、西郷南海子(安保関連法に反対するママの会)の各氏。(撮影/及川健二)

民進党、日本共産党、社民党、生活の党の代表者は6月7日、7月の参院選に向け「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」(市民連合)とのあいだで、安全保障関連法廃止や改憲阻止を柱とした政策協定を締結した。

政策協定にはTPP合意への反対、原発に依存しない社会の実現に向けた地域分散型エネルギーの推進、高校授業料完全無償化、給付制奨学金の導入、奨学金債務の減免なども盛り込まれた。

会見に出席した岡田克也・民進党代表は「市民連合のみなさんのご努力でこういう形で合意ができたことをありがたく、うれしく思っている。おかげで参院選32の1人区で候補者の1本化ができた。いよいよ参院選を控えてしっかり力を合わせて頑張っていかなければならない」と述べた上で、「昨年の安全保障法制、その前の閣議決定、そして、安倍さんが一番やりたがっている憲法九条二項の改悪。それを阻止して、白紙に戻していくのが参院選の戦いだ。安倍さんはアベノミクスを前面に出しているが、本当の狙いは憲法の改悪とそのための3分の2の議席の確保だ」と語り、安倍政権の狙いを批判した。

志位和夫・共産党委員長は「これからが勝負だ。4野党と市民が本気で結束し、心を一つにたたかい、1足す1が2ではなく、3にも4にもなるというたたかいをやる必要がある」と述べた上で、政策協定について「すべての国民の個人の尊厳を擁護する政治という太い柱が据えられた」と述べ、「この『共通政策』をしっかり掲げて、野党全体が勝利する流れをつくるためにがんばりぬく」と決意を語った。

小沢一郎・生活の党代表は「市民連合からの要望の中身は私たちがかねてから主張してきたことなのでまったく同感だ。これを現実の政治の上で実行するには選挙に勝たなければならない」と述べた。

(及川健二・日仏共同テレビ局France10記者、6月17日号)

高校生の政治参加考えるシンポ――「中立とは無関心」

シンポジウムで発言する女子高校生ら。6月1日、東京・千代田区。(撮影/小宮純一)

シンポジウムで発言する女子高校生ら。6月1日、東京・千代田区。(撮影/小宮純一)

選挙権年齢を18歳以上に引き下げた改正公職選挙法が今月19日に施行されるのを前に、文部科学省が高校生の校外での政治活動を認める一方、学校側が生徒の「政治的信条を問わないこと」などを条件に事前届け出制を容認した(今年1月に同省が出した教育現場向けの「Q&A」)点などを考えるシンポジウムが1日、東京・千代田区の弁護士会館であった。

現役高校生や教員、司法関係者ら約150人が参加。届け出制を認めるのは「思想良心の自由」や「政治活動参加の自由」を侵害し、学ぶ機会を奪うのではないか、などの発言が続いた。

シンポは今年の第59回人権擁護大会のプレ企画として東京弁護士会が企画した。問題提起の発言に立った仲里歌織弁護士は、高校生の政治活動を全面禁止していた1969年通知を廃止して、文科省が2015年10月に新たに出した通知は(1)学内の政治活動を禁止し(2)学外の場合も届け出制導入を認めるなど「政治活動や思想良心の自由を侵害する恐れが極めて強い」と指摘した。

現役高校生4人もマイクを取って発言。「学校では『政治的中立性』が強調される。まるで、他人事でいろ-と言われている気がする。僕は無関心ではいたくない。学校の先生たちも自分の言葉で自分の意見を語ってほしい。勉強したい」(私立高2男子)、「新通知やQ&Aは、当事者である私たち高校生の意見を聞かないまま出した。おかしいと思う」(同高3女子)などと発言し、参加者から大きな拍手を浴びた。

(小宮純一・ジャーナリスト、6月17日号)

辺野古埋め立てに加担しない――土砂採取地の闘い冊子に

冊子は1冊500円(カンパ)。問い合わせは全国連絡協議会事務局(TEL 086・243・2927)。(撮影/平野次郎)

冊子は1冊500円(カンパ)。問い合わせは全国連絡協議会事務局(TEL 086・243・2927)。(撮影/平野次郎)

沖縄県名護市の辺野古新基地建設の埋め立てに反対する「辺野古土砂搬出反対全国連絡協議会」が、各地の土砂採取予定地の闘いを冊子にまとめた。タイトルは「どの故郷にも戦争に使う土砂は一粒もない」。

沖縄防衛局によると、埋め立て用土砂の総量約2100万立方メートルの大半は鹿児島、熊本、長崎、福岡、山口、香川各県の計13カ所の採石場から搬出する。この計画に対し「環瀬戸内海会議」と「自然と文化を守る奄美会議」が中心になって昨年5月、全国連絡協議会を設立。土砂採取地を抱える他の地区でも搬出反対の組織が次々と生まれ、沖縄からは「本部町島ぐるみ会議」などが加わった。全国協議会への参加はこれまでに18団体を数え、本土と沖縄のすべての採取地がつながった。冊子はこの1年の10地区の取り組みを紹介する。

熊本県天草市の採石場では、「あまくさ九条の会」の呼びかけで「辺野古土砂搬出反対熊本県連絡協議会」が発足。採石場が以前、高レベル放射性廃棄物最終処分場の候補地になったこともあって運動が広がり、採石会社に搬出反対を申し入れるなどの行動を続けている。

山口県では瀬戸内海の2島が採取地。上関原発建設に反対する市民らが「原発も新基地建設も民意を無視する構造は同じ」と訴え、「『辺野古に土砂を送らせない!』山口のこえ」を結成。2島の砕石会社が北九州市の採取地の3社と同じ系列であることを突き止めた。

土砂採取地ではないが三重県津市では、鉄筋コンクリート製の巨大な箱に土砂などを詰めて海に沈めるケーソンを製造する工場があることがわかり、「辺野古のケーソンをつくらせない三重県民の会」ができた。「何も知らされないまま新基地建設に加担させられる」として、県民や工場労働者に広く知らせるビラ配りなどの運動を展開している。

(平野次郎・フリーライター、6月10日号)

「軍学共同」反対、「今が正念場」――日本の科学を軍事に売るな

5月29日、京都大学で開かれた「『軍学共同』反対シンポジウム」。(撮影/土岐直彦)

5月29日、京都大学で開かれた「『軍学共同』反対シンポジウム」。(撮影/土岐直彦)

防衛省が大学・研究機関を軍事研究に誘う制度を昨年度から設けたことに対し、反対の動きが広がっている。5月29日には、「『軍学共同』反対シンポジウム―平和のための学術を求めて」が京都大学で開かれ、日本の科学の軍事化阻止には「今が正念場」との強い危機感が共有された。戦争協力の苦い経験から軍事研究は絶対にしないと誓った科学者の歩み(日本学術会議総会の1950・67年声明)が突き崩されかねないからだ。

シンポは、「安全保障関連法に反対する学者の会」が主催。防衛省による「安全保障技術研究推進制度」に応募する大学も出てきたため、「戦争への反省をもう一度肝に銘じるべき」と開かれた。

防衛省の公募は民生技術の軍事転用と大学・研究機関との連携を戦略的に強化する狙い。対象の研究は「将来の装備品に適用できる可能性のある萌芽的な技術」。武器への利用は明らかだ。15年度は109件(大学関係58件)の応募で、9件(同4件)が採択された。予算は3億円。今年度は6億円に増額された。日本版「軍産学複合体」形成への動きと懸念される。

シンポで基調講演した池内了名古屋大学名誉教授は、防衛省は04年度から民間との「技術交流」を着々と進めており、「軍学共同」では軍事研究の「下請け機関になる」と明言。軍事・民生両用にわたる科学技術協力について、「どこからカネが出ているのかが判断基準だ」と安易な応募に釘を刺した。

また金子元久筑波大学教授は、大学に対する運営費交付金削減による構造的な研究資金不足が「軍学共同」研究にも手を挙げさせる深刻な背景を浮かび上がらせた。

「軍学共同」をめぐっては、大学教授らでつくる2団体が反対の署名運動を展開。4月下旬には、2団体が共同記者会見、大学関係者と科学者に警鐘を鳴らすとともに、安倍政権による武器輸出原則容認が問題の背景にあると指弾した。

(土岐直彦・ジャーナリスト、6月10日号)

歴史学会が「慰安婦」問題で声明――日韓合意「決着ありえない」

声明を読み上げる歴史学研究会の久保亨氏(右端)。(撮影/片岡伸行)

声明を読み上げる歴史学研究会の久保亨氏(右端)。(撮影/片岡伸行)

「慰安婦」(=日本軍性奴隷)問題をめぐる日韓合意(2015年12月)に対して、歴史学会が学問的立場からNOを突きつけた。合意から約半年、日本国内での決着ムードが漂う中、歴史学関係15団体は5月30日、「『慰安婦』制度の責任を曖昧にし、当事者を置き去りにしたままの決着はありえない」などとする「声明」を発表し、衆議院議員会館内で会見した。

声明ではまた、桜内文城氏(当時「日本維新の会」衆議院議員)の「捏造」発言を容認した「吉見裁判」(歴史学者の吉見義明中央大学教授を原告とした裁判)の判決(1月20日)について、名誉毀損を認定しながら「意見ないし論評」だとして免責した「不当な判決」だと指摘。歴史学会として「見過ごすことはできない」とし、司法のあり方に危機感を示した。

会見には、声明原案をまとめた歴史学研究会の久保亨・前委員長、同・石居人也事務局長、歴史教育者協議会の桜井千恵美事務局長、同・丸浜昭副委員長、埼玉学園大学名誉教授で歴史科学協議会の服藤早苗委員長、それに吉見裁判支援の会の加藤圭木事務局長が出席。声明は3月から準備し、83団体が加盟する日本歴史学協会を通じて賛同を呼びかけたもの。

日韓合意で「関与」と曖昧にされている日本政府と軍の役割は「主導」であり、女性たちが強制的に連行され、自由を奪われた「慰安婦」制度の本質は性奴隷制度であることがこれまでの歴史研究で実証されている。にもかかわらず、政府間で一方的に「解決」を宣言し、教科書からも「慰安婦」問題の記述が削られる事態が進行していることを憂慮。「議論を封殺するかのごとき手法では、抜本的な解決はありえない」と指摘した。

5月31日には吉見裁判の控訴審がスタートしたが、日韓合意をめぐる声明とこの裁判は、いずれも歴史修正主義の動きを危惧する歴史学会からの“申し立て”である。

(片岡伸行・編集部、6月10日号)

「イラク戦争公聴会」で柳澤協二氏、安保法危機感から――「生きているうちに」と証言

「第1回イラク戦争公聴会」で証言する柳澤協二氏。東京・千代田区。(撮影/林克明)

「第1回イラク戦争公聴会」で証言する柳澤協二氏。東京・千代田区。(撮影/林克明)

5月31日、衆院第一議員会館国際会議室で「第1回イラク戦争公聴会」が開催された。検証委員会は、専門家、市民、国会議員有志で構成される。

冒頭、総合司会を務めた検証委員でジャーナリストの志葉玲氏は、「昨年来の安保法制の審議は、戦争の実態からずれている。それは、イラク戦争そのものと日本が関わったことをきちんと検証していないからだ」と、民間主導の検証委員会設置の意義を訴えた。

海外では、詳細な検証を行なっている例もある。自衛隊が派遣されたサマーワ近辺で軍に治安維持活動をさせたオランダ政府は2009年3月、元最高裁長官を中心とした検証委員会を設立し、10年1月にはイラク戦争を支持したオランダ政府の判断は正当化できないと結論づけた。

英国は下院外交委員会に二つの独立調査委員会で検証したものの、野党やマスコミから追及が甘いと厳しく批判され、首相と議会の承認のもとで09年7月に「イラク戦争検証委員会」を設置した。ブレア元首相ら政権中枢にいた人物が公開の公聴会で証言し、その様子はネットでも見られる。今年7月に膨大な報告書を出す予定だ。

翻って日本は、外務省が12年に検証結果を4枚の報告書にまとめただけ。「政府がきちんと検証する様子は今のところないから、自分たちでできることから着手したい」(前述・志葉氏)ということだ。

【「だからこそ検証が必要」】

初回の証言者は、小泉純一郎政権で内閣官房副長官補でイラク開戦時は防衛研究所長だった柳澤協二氏。政治と軍事をつなげる役割を果たしてきた人間として「生きているうちにしゃべりたい」と、ざっくばらんな態度で語り、検証委員の質問にも真摯に答えた。

「いまこそ検証する意義がある。成立した安保法によって自衛隊員が戦闘の当事者になる可能性があるからです。アメリカ兵士のPTSD(心的外傷後ストレス障がい)が問題となっており、自衛隊員が帰国後に精神的に崩壊しないとも限らない。軍の崩壊は日本社会の崩壊につながる」と強い危機感を持ちながら柳澤氏は続けた。

イラク開戦の最大の理由であった、イラクが大量破壊兵器を保持していたからという点はどうか。当のアメリカも、そのような証拠はなかったとすでに認めている。では、嘘をついてアメリカやイギリスはイラクを攻撃したのか。

「『嘘ついたのではなく、みんなが間違えた』という趣旨のことをブッシュ元大統領は語っている。(多くの情報が結果的に誤っていたのは事実、とブッシュ氏は05年12月に明言している)。だからこそ検証が必要なのです。

情報機関と政策決定者の関係は重要だ。一方、軍や政治は戦争が避けられないなら準備をしなければならない。すると『大量破壊兵器があるとはいえない』から何度かやりとりして『ないともいえない』となり、それを繰り返していくうちに、『ある』ことが前提でことが進められてしまうのです。警告を発するのも情報機関の役割だが、いつしか政策決定者を喜ばす情報=大量破壊兵器持っている、と伝えてしまう。こういうことが重なり、サダム・フセインが大量破壊兵器を持っていると私も信じていました」

国際法違反との指摘には、「当時から国際法違反だと認識していた。しかし、アメリカを誰も止められない。(金だけ出したと批判された)湾岸戦争時のトラウマからも抜けだせなかった。アメリカのおかしさを口にしたら、仕事はできない状況だった」と率直に述べた。

さらに、イラク戦争直前に全世界で1000万人の反戦デモが起きたときも「そんなの関係ねー、国会追及の答弁づくりのほうが大事、という雰囲気だった」と官僚たちの本音を語ったことも印象的だった。

公聴会は1カ月に1度のペースで開き、1~2年で報告書をまとめる予定だ。

(林克明・ジャーナリスト、6月10日号)

民主的意思決定経ず、独裁化する安倍首相と今井首相秘書官――「リーマンショック前」の裏側

資料を説明する玉木雄一郎衆院議員。6月1日、東京・千代田区。(撮影/横田一)

資料を説明する玉木雄一郎衆院議員。6月1日、東京・千代田区。(撮影/横田一)

安倍首相の消費増税延期に対して、民進党が徹底追及をスタートさせた。6月1日の首相会見を受けて、それまでサミットで配布された文書を調査していた「『リーマン・ショック前夜』検証チーム」を、「安倍政権公約違反調査チーム」に名称変更。首相の側近である今井尚哉首相秘書官に出席要請をしながら、安倍政権の独裁的体質を浮彫りにしようとしているのだ。

調査チームの玉木雄一郎衆院議員は、「これは世界経済の危機ではなくて、日本の統治機構、民主的意思決定プロセスの危機といえます」と強調した上で、こう続けた。

「サミットで各国首脳に配布されたA4で4枚の文書には、英語版と日本語版があるのですが、日本語版には全ページに『リーマンショック』という文言が入った解説が加えられていた。新興国の景気減速と08年のリーマンショックを並べることで世界経済のリスクを強調、アベノミクスの失敗を新興国の要因にツケ回して、増税延期を正当化する内容でした。

問題の文書は、詐欺師まがいの代物。サミット前の月例経済報告には「世界の景気は、弱さがみられるものの、全体としては緩やかに回復している」と楽観的に捉えていたが、配付文書には「悲観的予測」が並ぶ。「世界のエネルギー・食料・素材など商品価格はリーマンショック前後の下落幅である55%と同じ」「新興国の投資伸び率はリーマンショックより低い水準まで低下」という具合だ。この文書を配布して安倍首相はサミットでリーマンショック級の経済状況を共有しようとしたが、キャメロン英国首相に「危機とまで言うのはいかがなものか」と一蹴された。

【今井氏関与の真偽答えず】

この検証チームの5回目会合が開かれた1日、関係省庁の官僚が出席する中、玉木氏らは「『リーマン資料』極秘準備 経産主導、財務・外務反発」と銘打った同日付『毎日新聞』の記事の事実関係について問い質した。関連部分は以下の通りだ。

「(文書の)作成は経済産業省出身の今井尚哉・首相政務秘書官と菅原郁郎・同省事務次官らの『経産省ライン』が主導したとされる。ペーパーは、サミット開幕を2日後に控えた24日、首相官邸で開かれた関係省庁の『勉強会』の席上、突然配布された。予定通りの増税実施を求める財務省にとっては『寝耳に水』(幹部)。(中略)麻生太郎副総理兼財務相は『何がリーマン・ショック前だ。変な資料作りやがって』とうなった」。

しかし「『毎日』の記事は事実か、それとも誤報なのか」という質問に対し、官僚たちは今井氏の関与の真偽を答えようとしなかった。サミット関連文書を取りまとめた外務官僚はもちろん、財務官僚も経産官僚も「政策の調整プロセスについては逐一お答えしない」と繰り返すだけだった。

玉木氏は呆れた。「今井秘書官を中心として資料を極秘に作成し、外務省も内閣府も他の関係省庁も知らされずに、5月24日の勉強会で知らされたのが本当だとしたら、総理の意向を受けた一部の人たちだけで説明資料を作成、民主的過程を経ずに独断で政策を一夜にして変えてしまうことになる。近代民主主義国家にあってはならないことだ」。

山井和則衆院議員もこう批判した。「予算委員会の審議で首相が増税と繰り返し答弁したのに、国会が終わってから全部引っくり返した。『国会で説明はしない。選挙で信を問う』というのでは、民主主義国家ではないでしょう」。

しかし2日と3日の調査チームの会合への出席要請を受けた今井氏は、理由も言わずに欠席。しかも、消費増収分を充てるはずだった社会保障の充実のうち、何をやめて何が残るのかについても厚労省の担当者は「年末の予算審議で検討」と不明確なまま。

「今井氏は『(文書を)示すと言ったら示す』と外務省関係者に発言したと『毎日』は報じましたが、強権的体質の今井氏は安倍首相とよく似ている。官邸独裁政治という状態です」(玉木氏)

日本の意思決定過程(民主主義)が危機的状況にあるのは確実だ。

(横田一・ジャーナリスト、6月10日号)

袴田事件、新たな証拠捏造疑惑――「脛の傷は逮捕後に」

袴田事件(1966年6月)の再審を求めている元プロボクサー袴田巖さん(80歳)が、逮捕後に「犯行時に被害者に蹴られてできた」と供述した右足の脛の傷が、逮捕当日の身体検査調書などに記載されていないことが分かった。弁護団は証拠捏造の疑いを指摘。「死刑判決の事実認定に重大な誤りがあった」として、改めて再審開始を求める意見書を5月16日に東京高裁へ提出した。

医師の鑑定書によると、右足脛の傷は4カ所で、長さ1・5~3・5センチ。袴田さんがいったん犯行を「自白」した二日後の66年9月8日に確認された。その約1年後に発見された「5点の衣類」のズボンには右足脛の位置に「2・5×4センチの、裏地にまで達する損傷」があり、傷は衣類が袴田さんの犯行着衣だと認定する重要な根拠になった。

しかし、今年3月に検察が開示した逮捕当日(8月18日)の静岡県警の身体検査調書には、7カ所の傷の記録があったものの脛の傷は書かれていなかった。弁護団が調べたところ、同日の医師による鑑定書や、留置場に収容した際の留置人名簿にも、記録はなかった。

弁護団は「傷は逮捕後にできた」と結論づけ、「ズボンの損傷が脛の傷に合わせて作られた可能性をうかがわせる」と主張。5点の衣類が「捏造された疑い」に触れた2年前の静岡地裁の再審開始決定をもとに「捏造の可能性が一層高まった」と述べている。

逮捕当日の身体検査に9月と同じ警察官が当たっていたことも判明したため「警察は脛の傷が逮捕後にできたと知っていた」と強調し、傷が「警察官から暴行を受けて生じた可能性」にも言及した。

弁護団は逮捕当日の右足脛の写真を開示するよう求めたが、検察は「見当たらない」と回答。西嶋勝彦・弁護団長は「逮捕時に傷があった証拠は示されず、この問題は決着がついた」と自信を見せた。

(小石勝朗・ジャーナリスト、6月3日号)