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セクハラ事件で女性が自殺し社員が書類送検――問われる『道新』の企業責任

書類送検の知らせを受け、Mさんの遺骨に手を合わせる両親。(撮影/木村嘉代子)

書類送検の知らせを受け、Mさんの遺骨に手を合わせる両親。(撮影/木村嘉代子)

『北海道新聞』函館支社で嘱託看護師の女性Mさんが同社男性社員2人からセクハラ(性的いやがらせ)を受け、それが原因で自殺した(詳細は本誌昨年12月25日号参照)として、両親が暴行などの容疑で告訴した件で、函館中央署は2月15日、同社社員を函館地方検察庁に書類送検した。

2月21日はMさんの命日(15年死亡)。自宅に安置した遺骨の前で父親は、「次にどうなるか具体的にわからず、まったく気持ちが安らぎません」と心境を明かした。

両親は、「『道新』が『セクハラの事実は存在しない』と納得できる形で説明してくれていたら、表沙汰にするつもりはなかった」という。

Mさんが残した告発資料の真意を確かめるため、両親は昨年2月末に函館支社幹部と面談し、(1)就業規則通りに処理されたか、(2)「ハラスメント相談報告」は本物か、(3)セクハラ窓口の対応および担当者は適切だったか、の調査を依頼した。しかし、『道新』から返答はなく、同年4月に「結果がでるまでには半年以上かかる」と聞かされ、翌5月、刑事告訴に踏み切った。

「あまりにもバカにしている」。両親は、「自分たちも『道新』から不誠実な扱いを受けた」と憤る。

Mさんは、セクハラ被害を訴えたが、会社が適切な措置をしなかったことを告発文で批判していた。「そもそも、会社がもっと真摯に娘の声を聞いて対処してくれたら、こんなことにならなかったのに……」と母親は述べ、こう続けた。

「(男性社員は)『お酒を飲んでいてわからなかった』と言っていますが、それで許され、何も処罰されなかったのが、一番悔しい。(娘の死が)本当に残念でなりません」

両親の代理弁護士によると、『道新』からの15年6月26日付回答には、調査の結果セクハラの事実は認められず、それゆえ民事賠償の義務はないとの記述があるという。

セクハラ防止や被害者対応などの企業責任の是非は、今後、民事訴訟で問われることになるだろう。

(木村嘉代子・フリーライター、3月18日号)

名古屋・佃さん訴訟で東京高裁が判決――実名報道原則見直しを提言

新聞3社提訴で会見する佃さん(右から2番目)、弁護団、筆者(一番右)。2013年8月2日、東京・司法記者クラブで。(提供/浅野健一)

新聞3社提訴で会見する佃さん(右から2番目)、弁護団、筆者(一番右)。2013年8月2日、東京・司法記者クラブで。(提供/浅野健一)

2010年2月、愛知県警に偽造有印私文書行使容疑で逮捕され、名古屋地検で不起訴処分となった佃治彦さんが「実名報道で名誉を毀損された」として朝日新聞、毎日新聞、中日新聞の3社に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が3月9日、東京高裁(水野邦夫裁判長)であった。

判決は「容疑内容や容疑者の地位、属性によっては、捜査段階の実名報道がプライバシー侵害に当たる場合がある」(『東京新聞』)、「犯罪報道のあり方には様々な議論があり、実名報道する場合には正確性について十分に慎重な吟味をすることが求められている」(『朝日』)と指摘。逮捕=実名を否定する判示で、報道現場に一石を投じた。

判決は、『毎日』記事の「取材過程に慎重な吟味の形跡」はないとして、賠償額を東京地裁の2倍の110万円に増額する一方、『朝日』『中日』両社への請求については控訴を棄却した。佃さんは上告する。

一審は昨年9月30日、『朝日』『中日』記事に違法性はないと判断、逮捕容疑を誤記した『毎日』について、記事はネットでも流れ世界中に伝達され、「重要な部分が真実でない」として55万円の支払いを命じていた。

水野裁判長は、『朝日』の「偽造見破ったり!」「契約書 鑑定でダメ」という見出しについて、一審が「犯罪者であるとして原告を揶揄するニュアンスを含む」などと認定していた部分を取り消した。

木下渉弁護士は「逮捕時の実名報道を問う裁判で新聞社相手に勝つのは難しいと思っていたが、『毎日』に勝訴できた上、賠償額も100万円を超えたのは評価できる。だが、『毎日』だけを違法とし、2社は免責するのか(理由)が理解できない。実名報道がネットにまで及ぶ被害などを細かく検討していないなどの問題もあるので最高裁で判断してもらう」と話している。

(浅野健一・ジャーナリスト、3月18日号)

辺野古米軍基地キャンプ・シュワブ前で演奏と舞い――ゲート前、海上に響く三線の音

キャンプ・シュワブ前。三線の演奏に合わせて琉球舞踊を舞う源啓美さん。(3月4日、沖縄・辺野古にて。撮影/石川文洋)

キャンプ・シュワブ前。三線の演奏に合わせて琉球舞踊を舞う源啓美さん。(3月4日、沖縄・辺野古にて。撮影/石川文洋)

3月4日午前6時半、キャンプ・シュワブゲート前に着いたときは、もう三線を手にした人々が座っていた。三線37人、太鼓、琴、鼓弓一人ずつの合わせて40人。みんな、平常から座り込みに参加している人々だ。始まった三線の演奏に合わせ6人の女性が琉球舞踊前之浜を舞った。そのうちの一人源  啓美さん(68歳)は、古典芸能コンクール最高賞を受けている。

沖縄では、1992年から3月4日を「三線の日」と決めて県内だけでなく、神奈川、大阪、福岡、ハワイ、ブラジルなど各地で「三線の日」が催されている。三線は、琉球王朝時代から沖縄の芸能を代表する文化のひとつとして引き継がれ家庭やさまざまな式典で楽しまれてきた。

沖縄戦のとき、難民キャンプでは米軍食料用缶詰の空缶と落下傘の糸を利用した「カンカラ三線」が戦乱に苦しんだ人々の心をいやしたという。那覇新都心ゆいスポーツ・文化クラブの三線教室には週に一度、銘苅小学校ほか25人の児童が通うなど三線は市民生活にとけ込んでいる。

7時過ぎ、機動隊は三線・踊りを披露している人、座り込んでいる人々の排除を開始。ゲートから工事用の車輛が基地内に入った。

9時、仲本興真さん・相馬由里さんの抗議船に乗って辺野古新基地建設現場に近づくと5、6艇の海上保安庁警戒ボートが猛スピードで迫り「ここは立ち入り禁止区域。ただちに立ち去るように」と警告をくり返す。抗議船のスピーカーからは三線と民謡が流れた。ゲート前、海上での三線の音は本土支配、米国支配の歴史の中で抵抗し、沖縄の自主を守ろうとする沖縄の心の現れのように聞こえた。

ゲート前へ戻ると、再び三線と踊りが始まっていた。その時、新基地建設に関する政府と県の代執行訴訟で福岡高裁那覇支部が示した工事中止を含む和解案を「政府が受け入れた」と発表され、新基地建設中止を訴えゲート前に集っていた人々は喜びの歓声をあげ祝い事の「カチャーシー」を踊った。

基地建設中止まで徹底抗戦を続けるという安次富浩、山城博治両氏らの人々の意志は変わらない。

(石川文洋・フォトジャーナリスト、3月18日号)

本誌が報道した呉市の育鵬社教科書の不正採択問題――市が1054カ所の誤り確認

本誌2月12日号で、取り上げた広島県呉市の育鵬社教科書採択の問題が大きく動き出した。

既報の内容は(1)公民的分野における育鵬社を高評価するための数値の水増し・偽装、(2)歴史的分野における歴史上の人物調査のデタラメ、(3)採択システムで選定委員である指導主事が調査研究委員会にも介入していて、公平な採択が保証されていないなどであった。

事態の進展は、2月10日、市民グループが市の教育委員会に質問状を提出したことに始まる。質問状を受け、市教委は否定することができない事実を確認、本誌にこの問題が掲載されたこともあって、2月17日に教科書選定資料の誤りがあったことを、市会議員やマスコミに発表した。

翌日(2月18日付)の『中国新聞』の見出しは「呉市の16年度中学校歴史教科書/選定の評価表に誤記/市教委 採択の影響調査」と(2)だけが問題となっている。続く、2月22日付『中国新聞』記事の見出しは「呉市の教科書選定の評価表/誤記発見者が報告/市民ら学習会」、本文記事で「選定委員会の一員である市教委指導主事が……調査研究委員会でも指導や助言する……選定の公正さが担保されてない」と、ようやく(3)の問題が書かれたが、(1)の問題には相変わらず触れていない。

一方、市民運動側は2月21日学習会を開催し、「教科書ネット・呉」を立ち上げた。2月23日市民グループは市教委に公開質問状を提出。(1)~(3)の問題についての市教委の見解や対応をたずねて、「綿密な調査研究」が行なわれず、不正も行なわれたとして、採択の無効を主張。『朝日新聞』(2月24日付)はこれを報じた記事で「呉・教科書選定資料誤り/採択無効訴え質問状」の見出しで、公民の教科書選定についても「恣意的で不公正」との批判記事を載せた。市教委のホームページの表記は2月17日には「社会科(歴史的分野)の総合所見の誤り」としていたものを24日、「社会科(歴史的分野、公民的分野)」の問題と変更した。

【呉市教育長は辞任】

広島県内はもとより、県外からも注視される中、3月3日、臨時教育委員会会議が開催された。この会議で呉市教委は、調査した総合所見の誤りは1054カ所と発表。前代未聞の数字である。この時の新聞記事の見出しは「採択結果変更せず」(『中国新聞』)、「教科書採択変えず/呉市教委/資料誤り1054カ所」(『朝日新聞』)であった。

公民教科書採択の問題は「カウント間違い」という程度のものではない。育鵬社が高評価となるように、意図的に同社のみ水増し操作を行ない偽装したのだから、悪質な犯罪的行為である。にもかかわらず3月3日の臨時会議では、育鵬社の水増しした「コラム」を31削除して6とし、他の教科書ではコラムとして数えていなかったものを若干取り入れる(東京書籍は50のうち4)ことで偽装をごまかし、隠蔽しようとした。

数字の改訂の結果、東京書籍の評価得点はプラス4の32、育鵬社はマイナス25の24となった。ところがそれでもなお市教委は数字だけでなく、総合的に判断したとして育鵬社が◎(特に優れている)、東京書籍は○(優れている)の評価を変えない。つまりだれもが納得のいく客観的評価でなく、恣意的な評価をしたのである。

3月9日、衆議院文部科学委員会で呉市の教科書問題が取り上げられ、馳浩文部科学大臣は「呉市教委の歴史・公民教科書研究資料に多数の誤りがあったということに関しては、率直に申し上げて望ましいものではない……保護者や地域住民等に教科書採択に対する不信感を抱かせてしまった……採択権者である呉市教委においては説明責任を果たしていただく……」と答弁している。

この前日、呉市教育長は3月限りで辞任することが発表された。

呉市の教科書問題はこれで終わりになったのではない。市民は教育委員全員が不正採択を行なったことを認めるまでたたかう。

(内海隆男、教科書問題を考える市民ネットワーク・ひろしま、3月18日号)

「日本はGM食品のゴミ捨て場にされる」

ジェフリー・M・スミスさん。『遺伝子組み換えルーレット』DVDはアジア太平洋資料センターより発売。(写真/渡辺妙子)

ジェフリー・M・スミスさん。『遺伝子組み換えルーレット』DVDはアジア太平洋資料センターより発売。(写真/渡辺妙子)

遺伝子組み換え(GM)問題の専門家として知られ、『偽りの種子』(家の光協会)の著作があるジェフリー・M・スミスさんが2月に来日、各地で講演会と、自身がプロデュース・監督を務めるドキュメンタリー映画『遺伝子組み換えルーレット』の上映会を行なった。

スミスさんは講演会やメディア向け会見などで、「GM食品の摂取によって消化管(胃、腸)に穴が空く、アレルギーの発生、不安障害などの影響が出ることがわかっている。これらの健康被害が出た人が、GM食品をやめたら体調が改善した例がある。GM飼料を与えられた家畜でも同様のことが起きている」と、ショッキングな報告をした。

さらに「モンサントは自分たちへの攻撃や批判をかわすためにさまざまな工作をしているが、米国の消費者の58%がGM食品は避けたいと考えており、食品業界もGMから撤退せざるをえなくなっている。すでにハーシーやキャンベルスープなど、大手食品会社がGMを“静かに”やめた」と、スミスさんは米国の現状を伝える。しかし一方で、「この流れはモンサントにとっては悪い方向だが、それは日本に入るGM食品が増加することを意味する。言葉は悪いが、日本の消費者が賢くならなければ、日本はGM食品のゴミ捨て場にされるだろう」と、日本の消費者に対して警鐘を鳴らす。

(渡辺妙子・編集部、3月11日号)

北海道5区補選、市民の力で野党共闘、国政で初対決――共産党公認取り下げで実現

3月5日、北海道札幌市の市民集会で挨拶する池田真紀氏。(撮影/木村嘉代子)

3月5日、北海道札幌市の市民集会で挨拶する池田真紀氏。(撮影/木村嘉代子)

衆院北海道5区補欠選挙(4月24日投開票)は、安保関連法の強行採決後はじめての国政選挙であり、「反安倍」を掲げる市民と野党が共闘して臨む初対決となる。

北海道札幌市厚別区で3月5日、野党統一候補として無所属で出馬する池田真紀氏(43歳)の市民集会が開かれ、約400人が詰めかけた。2月中旬に共産党と民主党の共闘が成立した後、一堂に会するのははじめて。民主、共産、維新、社民、市民ネット北海道、生活、グリーン北海道、アイヌ民族、新社会の9政党、道労連と連合、50以上の市民団体が集った。

池田氏は声援に応え、「この国の平和、憲法を守るのが私たちの闘い。北海道5区から、日本に希望を作っていこう」と訴えた。共産党公認の立候補を取り下げた橋本美香氏(45歳)も壇上であいさつし、「全面的に池田さんを応援する」とエールを送った。

会場は熱気にあふれ、歴史的な野党共闘を印象づけたが、そこに至るまでの道のりは困難を極めた。

共闘を調整してきた川原茂雄氏(「市民の風・北海道」共同代表)は、「多くの団体や個人が自主的に各政党に働きかけてきた。政党に任せるのではなく、市民が動いて、共闘が実現した」と言う。

統一候補勝利に向けた取り組みが具体化したのは、昨年の秋ごろ。「市民自治を創る会」(札幌)の山口たか代表らが中心になり、戦争法反対のデモなどに参加するメンバーが結束。上田文雄前札幌市長も加わり、11月10日に「戦争させない北海道をつくる市民の会」(以下、市民の会)を発足した。

しかし、共産党はすでに候補予定者を公認していたため、候補者の一本化に時間がかかった。民主党北海道の候補者選定も遅れ、「市民の会」が先がけて池田氏に出馬を要請。池田氏の受諾後、12月22日に民主党が推薦を決定した。年明け早々には、新党大地が自民党公認候補者の支援を表明し、統一候補の話し合いは膠着。

政党の動きの鈍さに業を煮やした「市民の会」は2月初旬、民主と共産の地元支部に話し合いを求めた。判断は道内レベルの政党間に委ねられ、民主党北海道と共産党道委員会が協議をはじめた。

最終的に、共産党が公認候補者の取り下げ、19日、池田氏、民主党北海道と共産党道委員会、「市民の会」が「戦争法の廃止と立憲主義の回復をめざす」「所属会派の状況にかかわらず、その姿勢を最後まで貫く」との協定を結んだ。

【与党候補は大地も推薦】

投開票まで1カ月半。池田氏陣営は、戦争法以外の政策の違い、無党派層・無関心層の掘り起こしなどの課題を克服していく必要がある。各組織・団体は、情報を共有しつつ、独自の選挙活動で支持集めを繰り広げる方針だ。自民党公認で公明党、新党大地などが推薦する和田義明氏(44歳)は、故町村信孝前衆院議員の二女の夫。厳しい闘いになるのは必至だ。

2014年の衆院選では、投票率58・43%。民主・共産両候補者の合計得票数は町村氏の13万票強より4896票下回った。「投票率60%、得票数14万票を目標に設定する。自衛隊のある恵庭市と千歳市は最重要地域。ここで拮抗した闘いができるかが勝敗の分かれ目」と選挙対策委員会の藤盛敏弘事務局長は説明。安保関連法に反対する自衛隊や自衛隊の家族に寄り添う戦略を展開していくという。

池田氏は、幼少から複雑な家庭のなかで怯えて暮らし、高校を中退して、シングルで2児を育てた。福祉の仕事に20年たずさわり、社会福祉士、介護福祉士など6種の資格を取得。大検にも合格し、北海道大学公共政策大学院を修了している。生きづらさを経験した当事者として、「だれ一人、置いてきぼりにしない政治」を目指す。

一方の和田氏は、大学卒業後、商社マンになったエリートで、若手経済人の支持拡大を狙う。

対照的な40代新人候補の一騎打ち。「この共闘モデルが成功すれば、参議院選にも弾みがつく、絶対負けられない」。市民と野党は、前例のない共闘体制で新風を巻き起こそうと意気込んでいる。

(木村嘉代子・フリーライター、3月11日号)

国連女性差別撤廃委員会が勧告――「慰安婦」問題にも遺憾表明

日本女性差別撤廃条約NGOネットワーク主催の集まり。スイス・ジュネーブ。(提供/坂本洋子)

日本女性差別撤廃条約NGOネットワーク主催の集まり。スイス・ジュネーブ。(提供/坂本洋子)

国連女性差別撤廃委員会は3月7日、2月16日に行なった第7・8回日本政府報告書審査の結果を評価した総括所見を公表した。

委員会は、2009年以降の日本政府の取り組みを評価する一方で、「慰安婦」問題や民法改正など57項目にわたる勧告を行なった。

委員会は、昨年末に日韓が合意した「慰安婦」問題について、2国間合意を注目しているとしつつ、人種差別撤廃委員会、自由権規約委員会、拷問禁止委員会、社会権規約委員会、国連人権理事会からも勧告されていることに言及した上で、日本政府がそれらの勧告を実施していないこと、条約批准の1985年より前に「慰安婦」問題が起きたことを理由に日本政府が委員会の権限外であると主張していることに遺憾の意を表明した。

また、公的立場にある者の「慰安婦」問題への発言、「最終的かつ不可逆的に解決した」とする合意が被害者中心のアプローチを十分に採用していないこと、被害者に対する国際法上の責務が果たされていないこと、教科書から「慰安婦」問題の記述が削除されたことなどに懸念を示し、日本政府に被害回復のための措置を行なうよう勧告した。

一方、フォローアップ(追加情報の提供)の対象としていた民法改正については、女性16歳、男性18歳とする性差別の婚姻最低年齢が維持されていること、昨年12月16日の最高裁判決を受けて再婚禁止期間を100日に短縮したが女性だけに再婚禁止期間が設けられていること、最高裁が夫婦同姓規定を合憲としたものの実際には多くの女性が夫の姓を名乗らざるをえないことに懸念を示し、前回勧告(女性を18歳とする婚姻最低年齢、選択的夫婦別姓導入、再婚禁止期間撤廃)を遅滞なく行なうよう勧告した。さらに、今回も民法改正をフォローアップの対象とし、2年以内に詳細な書面による情報を提供するよう求めた。

(坂本洋子・ジャーナリスト、3月11日号)

「少女像」作家が来日講演――日韓合意の「撤去」批判

キム・ソギョンさん(左)、キム・ウンソンさん。(撮影/木村嘉代子)

キム・ソギョンさん(左)、キム・ウンソンさん。(撮影/木村嘉代子)

2月22日、北海道札幌市で「少女像」(正式名称「平和の碑」)を制作した彫刻家、キム・ソギョン&ウンソン夫妻が講演し、昨年12月28日の日韓合意への憤りを語った。

日韓合意で日本政府が10億円拠出の条件として、ソウル市の日本大使館前に建てられた「少女像」撤去を要請したことに対し、「美術品を外交や政治のテーブルにのせる国など、世界のどこにもない」とウンソンさんは一喝した。

キム夫妻は美術大学在学中から民主化闘争に参加し、民衆美術家として活動。2011年12月の「慰安婦」水曜デモ1000回記念に、モニュメントを制作した。

「当初は碑の予定だったが、日本政府の妨害で、よりメッセージ性の強い『慰安婦』の姿に変更した」とソギョンさん。「自分や娘が連行されたら、と想像しながら作業した。これは、平和な未来、特に子どもたちの将来への思いを込めた作品。私たちの誇りでもある」

現在、「少女像」は韓国内だけで27カ所あり、日韓合意後、国内および海外からの依頼が増えている。

2月3日に手のひらサイズの「少女像」を世界に広めるプロジェクトを設立し、クラウドファンディングで寄付を募ったところ、46時間で目標の1億ウォンに達した。

二人は韓国政府にも批判的だ。

「日韓合意の内容が正確に国民に伝わらなかった。国民の不満を隠蔽しようとする韓国政府に、断固として抗議していきたい」

「韓国でも歴史の歪曲がある」と言い、ベトナム戦争で韓国軍に虐殺された被害者を慰霊する像「ベトナム・ピエタ」をベトナムと韓国に設置する準備も進めている。

「歴史は顧みられるべきなのに、日韓合意では『不可逆的』という言葉が使われた。『慰安婦』の気持ちを無視して、日韓政府が取り決めたことは耐えがたい。このようなやり方で、戦争犯罪、女性の人権問題の解決にいたるのか」と二人は疑問を呈した。

(木村嘉代子・フリーライター、3月4日号)

国連の女性差別撤廃委会期中に――杉田水脈氏ら呆れた言動

国連女性差別撤廃委員会が2月15日から3月4日までスイス・ジュネーヴで開催され、16日には日本政府報告書審査が行なわれた。

日本からは、審査に臨む政府代表団のほか、女性差別撤廃に取り組むNGOや日弁連から80人が傍聴したが、いわゆる「慰安婦」問題やジェンダーへのバッシングを行なう側も参加。前衆議院議員の杉田水脈氏ら女性たちの中に、和装やブルーリボンのバッチを付けた男性たちの姿が目を引いた。昨年末の「慰安婦」問題での日韓合意により、この問題が焦点の一つとなっていたこともあり、政府やNGOを監視するためと思われる。

開会式直前、国連にあるカフェは差別撤廃のNGOとバッシング派がけん制しあう異様な雰囲気が漂っていた。ブルーリボンの男性が、NGOの女性たちを無断で撮影していたため、筆者が「ここは撮影禁止ですよ」と注意したが、その後もなりふり構わず撮影していた。翌日の審査会場でも、傍聴に来たアイヌの民族衣装やチマチョゴリ姿の女性たち、糸数慶子参議院議員らを無断で撮影。その後、NGOの女性たちから撮影を断られたにもかかわらず、杉田氏は撮った写真を許可なくウェブサイトにアップし、「左翼」「小汚いNGO」などと誹謗した。特に、糸数議員の参加について、「昨日来られて発言していない。もしも国会を休む理由に国連での発言とか書いてあったら、上西小百合さんと同じように嘘をついて休んだことになるから追及していきたい」などとウェブサイトで批判した。

これについて糸数事務所は、「女性差別撤廃については外交防衛委員会でたびたび質問してきた重要な課題。今回は女性差別撤廃委員へのNGOブリーフィングで、基地と女性への性暴力について発言するのが目的だ。国会会期中だが、委員会質疑も始まっておらず、国会の正規の手続きを経ており、批判は当たらない」と反論した。

(坂本洋子・ジャーナリスト、3月4日号)

野党共闘で戦争法廃止へ!2・26集会

水島朝穂氏は、「軍人」が政治の中枢に入ることを危惧する。(2月26日、東京・中野。写真/星徹)

水島朝穂氏は、「軍人」が政治の中枢に入ることを危惧する。(2月26日、東京・中野。写真/星徹)

「野党共闘で戦争法廃止」を目指す集会が2月26日、「市民連合」と総がかり行動実行委員会の共催で東京・中野にて行なわれた。会場は約800人で沸き立った。この日は、1936年に発生した軍事クーデター「二・二六事件」から80年にあたる。

民主・維新・共産・社民・生活の野党5党は2月19日、衆院に安保関連法廃止法案を共同提出し、今夏の参院選などで共闘することで合意した。集会当日には、民主と維新が3月中に合流することでも合意。

集会では、野党各党から挨拶があった。共産党の小池晃副委員長は、「究極の談合」との批判に対し、「安保法制を廃止し、立憲主義を取り戻す。これほど明確な大義はない」と述べた。

水島朝穂早稲田大学教授(憲法学)は講演で、安保関連法と昨年6月に改定された防衛省設置法との関連に注意を促した。

新しい防衛省設置法の12条は、幕僚長ら自衛官(制服組)が防衛大臣を直接補佐できる、と規定する。改定前は、防衛省内文官(背広組)が優位にあった。

水島氏は「安保関連法を制服組の論理で進める仕組みができてしまった」と憂え、憲法に緊急事態条項を入れようとする動きも合わせて、「静かな形での『二・二六事件』を危惧する」とした。そして、「立憲主義を回復させるまで、たとえ『嫌い』でも、(野党共闘を維持するために)一緒にやっていこう」と訴えた。

(星徹・ルポライター、3月4日号)