週刊金曜日公式ブログ 週刊金曜日ニュース

大阪・釜ヶ崎のあいりん職安がついに仕事紹介を開始――41年がかりの「一歩前進」

あいりん職安が入るあいりん総合センター。(大阪市西成区、撮影/佐藤万作子)

あいりん職安が入るあいりん総合センター。(大阪市西成区、撮影/佐藤万作子)

「日本で唯一の『仕事紹介をしない公共職業安定所』――あいりん職安が、40年以上かかって、やっと本来の業務をやるようになるんやなあ」

稲垣浩・釜ヶ崎地域合同労働組合委員長は感慨深げに話す。稲垣さんが仲間らと共に初めて、あいりん労働公共職業安定所(大阪市西成区萩之茶屋)に仕事紹介するよう要求したのは、1975年1月だった。以後も同様の要求をたびたび行なってきたが、動きは見られなかった。

2012年の年末。業を煮やした稲垣さんら4人の労働者は国を相手取って、あいりん職安が仕事紹介をしなかったことの取り消しを求めて行政訴訟と国家賠償請求訴訟を起こした。訴え自体は退けられたものの、昨年4月16日の判決の中で、大阪地方裁判所の田中健治裁判長は、仕事の紹介業務を行なわないことは「違法であると言わざるを得ない」と断定した。

ところが、この判決の後もあいりん職安は一向に仕事紹介を始める気配がなかった。そこで稲垣さんらは6月11日、福島みずほ参議院議員(社民党)の仲介で厚生労働省との話し合いの場を持った。あいまいな返答に終始する厚労省側に、福島議員は「しばらく待って動かないようなら国会で問題にする」と迫り、以後も働きかけを続けた。

「あいりん職安が職業紹介の業務を始める」という朗報が厚労省から福島議員の元にもたらされたのは、判決から8カ月が過ぎた昨年12月18日だった。

厚労省は取材に対し、「現在、あいりん職安で職業紹介する方向で準備中であり、早ければこの4月1日から開始する予定です。同時に、4月1日付で厚労省の組織規則(省令)を改正して、あいりん職安の業務に職業紹介を追加。官報で公表することになります」と説明する。紹介の規模や、これまで仕事紹介を肩代わりしてきた公益財団法人西成労働福祉センターとの棲み分けなど、具体的なことは現段階では未定だという。

【職安に期待と不安】

この朗報は、昨年末には稲垣さんから釜ヶ崎の労働者に伝えられた。

毎朝8時半になると、あいりん総合センター3階にある、あいりん職安の窓口にはアブレ手当(日雇労働求職者給付金)を申請する労働者が並び始める。稲垣さんは長年その傍らで演説を続けてきたが、その彼のところに労働者が次々と訪れては、「ようやったねえ」「長かったなあ」と労ってくれるようになった。

「41年前、あいりん職安の前に座り込み、拳を突き出しながら仕事紹介せよと訴えた仲間の多くはすでに鬼籍に入ってしまった。彼らに、4月からはあいりん職安で仕事紹介してもらえるんやぞと、教えてやりたい」(稲垣さん)

稲垣さんの元には、労働者から「ピンハネのない仕事を紹介してもらいたい」と職安への期待の声も寄せられている。

「大阪府や大阪市の公共事業の単価は、雑役・片付けで1万5000円。それが労働者の手元には1万円しか入らない。あいりん職安にはこの状態を解消してもらいたいし、やってくれると信じている」と稲垣さんもまた、職安に期待を託している。

一方で冷めた声もある。「職安で仕事紹介するようになったからと言って、労働者の待遇がよくなるとは思わない」と話すのは高柳征一郎さんだ。日払いの現金仕事を求めて釜ヶ崎に通っているが、年が明けてから、まだ一度も仕事にありついていない。

「ぼくは73歳になるが、雇う側は年齢や能力に応じてシビアに人を選別するだろうから、すべての応募者に平等に仕事紹介しろというのは難しいでしょう」。とはいえ、高柳さんは「一歩前進には違いない」と評価もしている。

41年がかりの「一歩前進」は別の希望も与えている。困難なできごとが多い時代だが、だからこそ粘り強く闘い続けることが大切だと、この事例は教えてくれたのだ。「あきらめたらあかん」と――。

(佐藤万作子・ジャーナリスト、1月15日号)

東京・立川で抗議「機動隊は辺野古に行くな」

道路を挟んで第四機動隊への抗議を行なう市民。(2015年12月27日、東京・立川市。写真/斉藤円華)

道路を挟んで第四機動隊への抗議を行なう市民。(2015年12月27日、東京・立川市。写真/斉藤円華)

「弾圧やめろ」「任務をサボれ」。米海兵隊新基地建設の警備のため、沖縄・辺野古に派遣された警視庁第四機動隊が駐屯する東京都立川市の隊舎前で昨年12月27日、市民120人が抗議行動を行なった。

「砂川秋まつり実行委員会」の呼びかけ。市民らは「機動隊は行くな」「暴力やめろ」などとコール。さらに「沖縄にとってみなさんは日本の暴力装置そのもの」「沖縄について勉強して。現地に行ってほしくない」とも呼びかけた。

また、マリリン・モンローやダグラス・マッカーサーら米国人に扮した市民が「米国のために働く第四機動隊に感謝を伝える」という趣向のパフォーマンスを行なうと、参加者から笑いが起きた。

参加者で「辺野古リレー」の田中祥士さんは昨年11月、実際に辺野古で第四機動隊の警備に遭遇。「少し抗議しただけで『危険人物だ』と指差され、座り込みから排除された。隔離エリアに15分ほど閉じ込められた」と証言する。

主催者の井上森さんは「弾圧の現場で警察に抗議すると『上に言え』と言われるが、それは違う。現場の人に届く言葉で語りかけたかった」と話した。

第四機動隊の隊舎は米軍立川基地跡地に建つ。米軍から土地が返還されても、そこに機動隊が駐屯し、しかも沖縄の米軍基地建設反対運動を取り締まるために派遣されている現実がある。

(斉藤円華・ジャーナリスト、1月15日号)

検察推薦の学者委託で検証――袴田事件の実験強行

袴田事件(1966年)で死刑判決が確定したものの、静岡地裁の再審開始決定を受けて釈放された袴田巖さん(79歳)の再審請求審で、東京高裁(大島隆明裁判長)は1月7日、DNA鑑定手法の検証実験を鑑定人の学者に委託した。袴田さんの弁護団は実施に反対して鑑定人の推薦を拒んでおり、検察推薦だけの異例の実験となる。

鑑定人に選任されたのは、大阪医科大学の鈴木廣一教授(法医学)。この日は非公開の鑑定人尋問もあったが、弁護団が何点か確認の質問をしただけで終了したという。弁護団によると、具体的な実験のやり方を高裁と鈴木氏で今後詰めるため、結果が出る時期は未定だ。

検証実験は「選択的抽出方法」の有効性を確認するのが目的とされる。皮脂や汗、唾液などが混じった血痕から血液のDNAだけを取り出す手法で、これを用いた鑑定結果が静岡地裁の再審開始決定の拠り所になった。決定を不服として即時抗告した検察が実施を求めていた。

高裁の実施決定書によると、検証実験には、(1)新鮮な血液と別人の新しい唾液を混ぜた試料、(2)10年以上前の血液の付着片、(3)(2)に別人の新しい唾液を混ぜた試料、の3種類を使い、選択的抽出方法が「血液のDNA型を判定するのに有用か」を調べる。弁護団が特に問題視するのは(3)の試料で、DNAは時間が経つと減ったり壊れたりすることを挙げて「新しい唾液のDNAを検出させる誘導的実験だ」と反発してきた。

弁護団は昨年12月25日、高裁に異議を申し立て、実施決定の取り消しを求めたが、高裁は即日、理由も記さずに棄却した。

鑑定人尋問後に記者会見した西嶋勝彦・弁護団長は「有害・無益な実験という評価は変わらないが、鑑定人と裁判所のやり取りを見極めるために今日は参加した。今後は実験結果に対して意見を述べていくことになる」と語った。

(小石勝朗・ジャーナリスト、1月15日号)

旧日本軍「慰安婦」問題の「合意」に韓日連帯し抗議――「少女像」の前で謝罪を

1月6日、在韓日本大使館前。少女像の背には「私はここを動きたくない。世界女性のみなさん、私の恨(ハン)を解いてください」などと書かれている。(撮影/冨田きよむ)

1月6日、在韓日本大使館前。少女像の背には「私はここを動きたくない。世界女性のみなさん、私の恨(ハン)を解いてください」などと書かれている。(撮影/冨田きよむ)

「被害者の気持ちを無視して米国の要請で日韓政府だけで決めるのは間違っている」

男子学生が怒りの声をあげる。

1月6日、1992以来24周年の水曜集会(日本軍「慰安婦」問題解決全国行動)が韓国・ソウル日本大使館前で開かれ、約1000人が参加した。ベビーカーを押す若いお母さん、子ども連れの若夫妻、高校生や大学生など、幅広い年齢層が集まった。

会場の気温は0度。早朝から7人の学生たちは日本大使館前の少女像の脇で毛布に包まっていた。像を守るのと、訪れる市民に解説をするのが目的。女子学生の一人は、「私たち自身、元『従軍慰安婦』女性の気持ち、立場を全く気にも留めていなかったことが悔やまれます」と涙ぐむ。別の女子学生は「自分の身に起こったことではないけれど、見過ごすことはできない」と唇を震わせる。安倍晋三首相が「今回の合意を破れば韓国は国際社会の一員として終わる」「これ以上は謝罪はしない」と述べたことに対して参加者たちは「被害者が納得できるような謝罪をしろ!」と厳しく糾弾する。

集会で元「慰安婦」の一人は、「安倍首相は“敵”だし憎いが、一度でいいから少女像の前で、申し訳なかったと言ってくれたら、総理の良心が見えるし少しは心が休まる」と述べた。

【「苦しく、悲しい」】

一方、同日、日本の首相官邸前では、寒空の下、韓国からの水曜集会・世界同時連帯行動の呼びかけに呼応し、抗議デモが開かれた。

「本来、日韓が合意し、和解するのは喜ぶべきこと。でも、こんなに苦しく、悲しいのはなぜか」

茨城から参加した男性(50代)は、憤る。横浜在住の山下治子さん(79歳)は、「日本政府が『少女像』の撤去という条件を付けたといいますが、条件付きの謝罪がどこにあるのでしょうか。それなのに、この合意を『前進』と強調するマスコミもおかしい」と話す。

在韓日本大使館前に設置された「平和の碑(平和の少女像)」は、11年12月14日の第1000回水曜デモの際、市民によって建立された。昨年12月28日の日韓「合意」以降、「少女像」を毎日数百以上の人が訪れているという。

「少女像」(のパネル)を持参したのは、金優綺さん(31歳)と李杏理さん(29歳)。直前の外務省前「合意」反対デモを終えてから駆けつけた。「重大な戦争犯罪である日本軍性奴隷制の法的責任を否定した『合意』は、日本が植民地支配責任を果たさずにこの問題を葬ろうとしていることの表れで、許せない。日本の朝鮮植民地支配が原因で存在する在日朝鮮人への差別が克服されない問題も、根は同じです」と金さんは話した。

(取材/韓国=冨田きよむ・ジャーナリスト、日本=弓削田理絵〈編集部〉、1月15日号)

「市民連合」野党共闘めざし新年初の街頭行動だが――参院選の共闘体制は微妙

1月5日の東京・京王線新宿駅前は、5000人の参加者でぎっしり。(撮影/林克明)

1月5日の東京・京王線新宿駅前は、5000人の参加者でぎっしり。(撮影/林克明)

「国家神道の自民党と創価学会の公明党が連立できて、野党が共闘できない理由がない」(高田健氏・総がかり行動実行委員会)。

1月5日、東京の新宿駅西口で「市民連合」(安全保障法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合)による初めての街頭演説会が行なわれ、5000人以上が集まった。冒頭の発言は、そのときのものだ。

市民連合は、今年夏の参院選において32の一人区で野党統一候補擁立を政党によびかけ、その統一候補を支援する目的で昨年12月20日正式発足した市民団体だ。

応援する条件は(1)安全保障関連法の廃止、(2)立憲主義の回復(集団的自衛権行使容認の閣議決定の撤回を含む)、(3)個人の尊厳を擁護する政治の実現、の3点。現時点では与党が圧勝する勢いで、憲法が権力者を縛る立憲主義がいっそうないがしろにされ、憲法改悪の方向に一気に流れる可能性が高い。

一方の野党は、全面的な共闘体制がとれていない現状だ。そのため、街頭演説会では「市民が政党を揺り動かす」ことを強く意識する発言が目立った。

最初に登壇したのは、安保法制に反対するパパ・ママの会・熊本の瀧本知加共同代表。

「熊本は、参議院選挙の一人区で野党統一候補を実現できた最初の所です。子育てをするママたちは二度決断しました。一度目は安保法制に反対する行動を始めるとき。二度目は、選挙にかかわろうと決めたときです。安保法制が強行採決された後、集会に集まる人数が減り、このままでは大変だと野党の統一候補擁立を要請し応援することにしました。その結果、弁護士の阿部広美さんを野党統一候補にすることができました」

瀧本さんが指摘したように、市民が政党を動かして“オール熊本”を実現させた実績は大きい。他の選挙区でも野党共闘が進められようとしているが、あまりにも速度が遅い。煮え切らない野党に対し中野晃一・上智大学教授は「年が明けても共闘体制をつくっていない。あんたたち、何やってるんだ! と言いたい」と叱咤激励する。

小林節・慶應義塾大学名誉教授は「得票率43%の自民党が70%台の議席(12年12月総選挙の小選挙区。14年総選挙では48%→76%)を獲得している。四の五の言わないで野党がまとまれば50%近く得票するのは明白であり、確実に政権交代が可能だ」とずばり言う。共闘を衆院選にも拡大できれば、本当に可能である。

【政治家たちの反応に濃淡】

街頭行動に参加した政治家たちはどうか。吉田忠智・社民党党首は「国会では、アベノミクスの失敗隠し、軍拡、選挙目当てのバラ撒きを野党が追及しなければならない。参院選では、中央レベルでも県連レベルでも共闘を進めていきたい」と述べた。

以前から野党共闘を強く主張している初鹿明博議員(維新の党)が言う。「野党共闘は当たり前じゃないですか。安倍政権は憲法を破壊してるんですから。維新の党は分裂しました。安倍さんと同調する人たちが出て行ったので、皆さん安心してください!」

共産党の志位和夫委員長はさらに前向きだ。

「(昨年の戦争法反対の動きの中から)希望が見えてきました。主権者が自分で考え行動し、市民・若者など様々な人々が主体的に動いていることがうれしい。立憲主義の破壊は、憲法・ルールを守らないで権力者が独走することであり、独裁政治の始まり。参院選で自民・公明・その補完勢力を少数派に転落させなければなりません。野党がバラバラではダメで、好き嫌いと言っている場合ではない」

民主党代表代行の蓮舫議員も、市民とともに政府を追及する旨を決意表明したが、選挙区での野党共闘については言及しなかった。

埼玉県から駆け付けた主婦(50代)は「野党が統一できないのに苛立ちを覚えてきました。今日の話を聞いて、与党を批判する以上に統一に向かわせるため野党に圧力をかけるのが大事なんだと思いました。地元の野党事務所に電話してみます」と語った。

(林克明・ジャーナリスト、1月15日号)

仮放免者の会が入管に申し入れ――子どもたちに在留資格を

「プリーズ! 子どもたちが可哀想、ビザをください!」。一人の黒人女性が突然ひざまずき、東京入国管理局(東京・品川)の職員に涙ながらに懇願した。2015年12月22日、非正規滞在の外国人・仮放免者を支援する「仮放免者の会」(東京・新宿)は、仮放免者とその子どもたちに「人権保護の見地に立ち、早期に在留資格を付与し救済を」とする申し入れ書を東京入国管理局に提出した。

「仮放免者に在留資格を!」弁護団(齋藤和紀団長)によると、収容施設から一時的に解放され日本国内で暮らす仮放免者数は14年末で約4400人。在留資格がないため仕事ができず、健康保険証もないため満足に病院にかかれないなど、数々の権利を奪われながら困窮生活を続ける。両団体が日本弁護士会館で開いた会見では、自身と中学3年男子の在留資格取得をめざし裁判中のフィリピン国籍、オノ・エディータさん(48歳)が実態を報告。「子どもはフィリピンの言葉を話せないのに(法務省は)帰れと言う。無理です。在留資格をください」と訴えた。

申し入れにはフィリピン、ペルー、ブラジル、ガーナの国籍を持つ14家族43人が参加。東京入管前でアピールをしたあと、大町剛事務局長が参加家族の名簿とともに申し入れ書を総務課の職員に手渡した。その際、冒頭の黒人女性のあと、両親がペルー人で日本の小学校に通うカストロ・ミハイル君(9歳、小学4年)が職員の前に立ち、「僕は日本生まれだから日本語しか話せない。学校を出たらまじめに仕事をするから在留資格をお願いします」と頭を下げた。 この申し入れとは別に、「仮放免者に在留資格を!」弁護団からは7家族13人の再審査を求める「再審情願」が提出された。

対応した入管職員は「真摯に受け止めます」としながらも「回答はお約束できない。上の方と関係部署に伝える」とだけ応じた。

(片岡伸行・編集部、1月8日号)

多様な教育法案の撤回を――「親の会」が議連に要望書

議連総会。「馳浩文科大臣の就任で加速度的な動きが広がる」との発言も。(撮影/池添徳明)

議連総会。「馳浩文科大臣の就任で加速度的な動きが広がる」との発言も。(撮影/池添徳明)

不登校の子どもの教育支援を目的に議論されている「多様な教育機会確保法案」をめぐり、「不登校・ひきこもりを考える当事者と親の会ネットワーク」は昨年12月21日、法案の国会上程に反対する要望書を、超党派のフリースクール等議員連盟・立法チーム座長代理の笠浩史衆議院議員(民主党)に提出した。

要望書は、「いじめや体罰など不適切な指導で傷つき、家庭を唯一の居場所にする子どもと保護者に対し、教育委員会が直接介入し家庭を学校化する危険性がある法案に危機感を抱いている。不登校の子と親にさらに大きな圧力がかかることが懸念される。不登校の小中学生のうち、フリースクールなどに在籍するのは3・5%だ」と主張。法案を白紙に戻し、不登校で家庭にいる当事者・経験者・保護者らの意見を法案審議に反映してほしいと訴えている。

これに対し笠議員は「各党の手続きを終えているわけではなく、自民党内の議論も踏まえ、最大公約数の意見をもとに合意を得て国会に提出される。自民党が野党の理解なく押し切ることはないと思う」と説明し理解を求めた。

同議連は議員立法として、全会一致での法案成立を目指していたが、各会派や自民党からも異論が相次いだため、先の通常国会への法案提出を断念。意見調整した上で、今年の通常国会に超党派での法案提出を目指している。

要望書提出の翌22日には議連の合同総会が開かれ、馳浩衆議院議員の文部科学大臣就任で空席となっていた議連の立法チーム座長に、丹羽秀樹衆議院議員(自民党)が選任された。総会では親の会からの要望内容も報告されたが、新年に開会される通常国会での法案成立を目指す発言が相次いだ。

一方、自民党内で議論され、文科省の叩き台とされる修正案からは「多様な」の言葉が削除されていることが判明。関係者の間には波紋や困惑が広がっている。

(池添徳明・ジャーナリスト、1月8日号)

復旧から程遠い鬼怒川水害被災者たち――緊急対策費600億円にも嘆息

被災者ではなく「被害者」だと挨拶をする被害者の会の逆井正夫・共同代表。(撮影/まさのあつこ)

被災者ではなく「被害者」だと挨拶をする被害者の会の逆井正夫・共同代表。(撮影/まさのあつこ)

2015年9月の関東・東北豪雨水害から約3カ月。茨城県常総市の被災者らは完全復旧からほど遠い状態の下で新年を迎えた。

家屋全壊は53件、大規模半壊1462件、半壊は3524件など、被災者の多くは仮設住宅やみなし仮設、自力によるアパート入居などで年末年始を凌いだ。同市災害対策本部によれば「自宅に帰った人の中には修理が終わらず2階だけで過ごす人もいる」という。さらに、53人が市内4カ所のホテルでの二次避難を続けている。

昨年12月20日、鬼怒川と八間堀川の決壊・越水の被災者ら約200人が地域交流センターに集い、水害被害者集会を開いた。

無堤防地区の若官戸に土地を持つ元養鶏場経営者は「01年から堤防を要望していたのに聞き入れられなかった」と国土交通省の不作為を批判。農機具が全壊した農家は、「市役所は6割補助してくれるというが、総額2000万円以上もする。自宅も全壊し、とても再建できないので農業をやめる。ソーラーパワーの業者はまた事業を再開するという。もう見たくもない」と吐き捨てた。

別の地主は「河川管理者は住民には砂をバケツ1杯、木を1本たりとも伐ってはいけないと言ってきたのに、なぜ堤防代わりだった砂浜を削ってソーラーパネルの設置を許したのか」とちぐはぐな対応に憤った。

また、より下流側で1・8メートルの浸水被害を受けたという自営業者は「機械も水没、在庫も流され、家の解体にも1000万円かかる。どうやって捻出したらいいのか。農業者には補償があるのに、商工業者には融資の支援しかない。生活の糧を奪われたのに来年の固定資産税も払わなければならない。自営業だから国保も払わなければならない」と不安と不公平感を訴えた。

集会で講演した水源開発問題全国連絡会の嶋津暉之さんは、水害が起きた鬼怒川の下流部は流下能力が大幅に不足していたと指摘。「巨額の河川予算が投じられている湯西川ダム事業を中止し、その予算で鬼怒川下流部の河道整備をすみやかに進めるべきである」と、鬼怒川上流の栃木県民が提訴した湯西川ダム、南摩ダム、八ッ場ダムをめぐる住民訴訟で裁判所に意見書を出した経緯を報告し、水害が起きたのは長年、危険性を放置した行政の責任だと述べた。

【制度改善要望と賠償を】

集会を準備した「常総市水害・被害者の会」(共同代表:逆井正夫さん、堀越辰男さん、古矢邦夫さん)は、(1)住宅応急修理制度の収入制限の撤廃、(2)全壊でも100万円にとどまる支援の最高限度額を500万円に引き上げること、(3)商店や企業の再建支援への補助金の拡充、(4)二重ローンの軽減措置、(5)建築廃材を個人負担ではなく災害ゴミとして処理すること、(6)ペット同行避難を推進するガイドラインを反映しなかった県と市に抗議し、今後は改善を図ることなど、国と県、市に対して11項目のきめ細かな要望をまとめ、参加者に「さらに声を集めて政府交渉を進めたい」と呼びかけた。

その上で、鬼怒川を管理する国交省と八間堀川を決壊させた茨城県には河川管理の瑕疵があるとして、実際に受けた損害と既存制度での補償の差額の弁済を求めていくことを確認した。会場には、高杉徹常総市長や衆議院の塩川鉄也議員・梅村早江子議員も参加した。他にも自民党国会議員からもメッセージが寄せられた。

国交省は昨年12月4日、茨城県と常総市など被災7市町とともに堤防整備など6年間で600億円の「鬼怒川緊急対策プロジェクト」を発表したが、集会では「私たち被害者にはそれで何かいいことはあるのか。若宮戸は土嚢が置かれているだけ。次の雨期までに(築堤を)やっていただかないと同じことが起きる。6年は待てない」と不安を訴えた78歳女性もいた。

通常国会では「被害者」支援の拡充が求められる。また現場には住民の意見を反映した堤防警備が必要だ。

(まさのあつこ・ジャーナリスト、1月8日号)

逮捕者は428日も勾留――不可解な公安「倉敷民商」捜索

確定申告の際、申告者が作成した決算書の数字を税務ソフトに入力するといった手伝いをしただけで民主商工会(民商)の女性事務局員が脱税がらみの「法人税法違反容疑」等で逮捕・起訴され、しかも当の申告者が逮捕も勾留もされていないのに、何と約1年2カ月間(428日)も勾留される――。こんな異様な事件が、岡山地裁で審理中だ。

この女性は、倉敷民商の事務局員・禰屋町子さん。事件の発端は2013年5月21日、岡山県倉敷市の民商事務所に広島国税局が、当時会員だった建設会社社長夫妻の「脱税容疑」と称して捜索に入ったこと。禰屋さん宅も捜索された。

禰屋さんの容疑は、建設会社の経理担当者の指示に従い、単にパソコンの会計ソフトの入力作業や振替伝票の作成を行なったことが脱税(法人税法違反)を「幇助」し、さらに資格がないのに税理士の業務をした(税理士法違反)というもの。だが、家宅捜索で押収された164点の書類中、この建設会社関連のものはごくわずかで、大半が容疑と関係のない倉敷民商の会議議事録や会員の名簿、スケジュール表といった組織の内部資料で占められていた。

しかも、この種の経済事件とはまったく管轄外のはずの岡山県警公安部は翌2014年1月21日、禰屋さんを「法人税法違反」で逮捕したのに続き、2月には「税理士法違反」で再逮捕。だが、脱税当事者であるはずの建設会社社長夫妻は後に在宅のまま懲役1年6カ月・執行猶予付きの有罪判決が確定したものの、1日も勾留されず、なぜか広島国税局の捜索すら受けていない。

つまり、形式上脱税事件の「主犯」を単に「幇助」した立場の禰屋さんが、「主犯」が免れた国税局の捜索や勾留を強いられた上に、勾留日数も428日にも及ぶという異常な事件だ。さらに検察側は肝心の建設会社の脱税に関し、現在まで重加算税が課せられたのかどうかの事実すらも明らかにしていないという不自然さだ。弁護側は、「禰屋さんが一貫して容疑の否認を貫いたため、裁判所が事実上の制裁を課した人権侵害だ」と抗議している。

【なぜ管轄外の公安が】

起訴された禰屋さんは現在、岡山地裁で審理中で、この1月22日に第15回目の公判が予定されているが、判決日は未確定だ。一方、建設会社の確定申告業務には何も関与していなかった倉敷民商事務局長の小原淳氏と事務局次長の須増和悦氏の二人も、14年2月に「民商会員が確定申告書の作成・提出に際して、税理士でもないのに会員自身が作成した決算書の数字を、税務ソフトに入力するなどの実務援助をした」として、「税理士法違反容疑」で逮捕された。

二人はやはり約6カ月(184日)も長期勾留された後、禰屋さんの逮捕・起訴とは切り離された形で15年4月17日に岡山地裁(松田道別裁判長)で、検察の主張通りに懲役10カ月(未決勾留100日参入)、執行猶予3年の有罪判決を受けた。二審の広島高裁(大泉一夫裁判長)も12月7日、弁護側の証拠調べ請求をすべて却下し、控訴棄却の判決を下した。弁護側は最高裁に即時上告したが、一連の裁判で共通するのは、倉敷民商の「税務書類作成協力」が違法なのか、という争点だ。

禰屋さんの第13 回目の公判で11月6日に弁護側の証言に立った東京都の関本秀治税理士は、国税庁が育成してきた青色申告会では、税理士資格のない同会職員が税務申告書の作成を日常的に請け負っている実態を暴露。さらに、「税務書類の作成」と「税務相談」は、税理士法の趣旨から「可罰的違法性のない、誰がやってもよいものだ」と明言している。

かりに民商側の行為が違法でも通常は反則金等の行政罰で足りるケースだ。それを管轄外の公安警察が捜索し、「主犯」でもない逮捕者を長期勾留するのは、「中小企業会員の『自主計算・自主申告運動』を続けてきた民商に対する、権力の弾圧」(須増事務局次長)と批判されても仕方ないだろう。

(成澤宗男・編集部、1月8日号)

売れゆき優先の大手書店は平積みに――波紋呼ぶヘイト・スピーチ本

BLARと「のりこえねっと」による共同記者会見。(12月21日、参議院議員会館。撮影/松岡瑛理)

BLARと「のりこえねっと」による共同記者会見。(12月21日、参議院議員会館。撮影/松岡瑛理)

特定の出自を持つ人々を標的としたヘイト・スピーチ(差別煽動表現)を含んだ本の出版は許されるのか。今、論議が国内で巻き上がっている。

端緒となったのは、漫画家・はすみとしこ氏のイラスト集出版だ。はすみ氏は昨年9月、難民の少女に「何の苦労もなく生きたいように生きていきたい/他人の金で。/そうだ難民しよう!」などのコメントを添えたイラストをネット上で発表。人種差別を助長する内容だとして大きな非難が巻き起こった。しかし「炎上」状況を逆手に取るかのように、12月には青林堂より問題の画を含んだ書籍が刊行された。

本書の出版に対し12月21日、「ヘイトスピーチと排外主義に加担しない出版関係者の会」(BLAR)と「のりこえねっと」による共同記者会見が参議院議員会館で行なわれた。BLARは近隣諸国への憎悪感情を煽る「嫌韓・嫌中本」の流通に対する危機感から2014年に発足した出版関係者の有志団体。同書の出版は公正な言論や表現の自由を損なうもので、書店は「偏見と憎悪の煽動に加担すべきでない」とネット上で署名活動を呼びかけ、12月末時点で約8200筆が集まった。

同会の岩下結氏は、はすみ氏の新刊にはイスラム教徒を揶揄する画像なども含まれ、書の半分以上は在日コリアンが標的になっていると紹介。「全体として特定の民族への偏見を助長する内容に溢れている。これが人種差別ではなかったら何なのか」と問題を提起。

「『表現の自由』は最大限尊重すべきだが、野放しでいいというわけではない。編集者や出版社は、本の出版をする時に一定の表現コードにもとづいて選択を行なっている。その中で排外的なイラストだけが正当化される意味を考えてほしい」と訴えた。

今回、問題となった難民画像を、一部新聞やネットメディアが「風刺表現」と報じたことも物議を醸している。「差別」と「風刺」表現とはどう異なるのか。会見での質問に対し「のりこえねっと」共同代表・辛淑玉氏は「風刺は本来、自分より力の強い権力者の暴走を止めるためのもの。彼女の作品は徹底した妄想であり、社会がきっちり落とし前をつけなければならない『犯罪』です」と語った。

【「店名を出さないで」】

書店の対応はどうか。今回、同書を入荷しなかったのが大阪・梅田の清風堂書店だ。店長の面屋洋氏(40歳)は「差別に加担したくなかった」と理由を明快に語った。今後、類書が出てきた際の判断基準については「在日コリアン、LGBTなど、被差別当事者の声はできるだけ考慮に入れたい。ツイッターを始めとして、さまざまな情報源から判断している」と語る。

一方、筆者が都内十数店を歩いたところ、残念ながら本書を平積みする店舗の方が多かった。大手のMARUZEN&ジュンク堂も特別な対処は取っていない。広報担当者は、論議については把握しつつも「手に取った人に危険が及ぶ内容、ないし法的に処置が必要な場合は速やかに対応します。そうでなければお客様側に購買の選択肢を残したいので、店側での判断は極力控える」と話す。では、他国に出自を持つ人々が本書について物理的・精神的に「危険が及ぶ」と訴えた場合はどうなのか。重ねて訊ねると「場合によって対応を考えるが、今のところそのような問い合わせはない」。

10月には、東京・渋谷のジュンク堂書店で「自由と民主主義」をテーマとしたブックフェアの選書内容が「偏っている」と批判を受け中断する事件があったばかり。同店店長は「誌面に店名がどう出されるかわからない」とし、電話での取材には応じなかった。

他にも、「上が神経を尖らせる。店名を出さないで」と念押ししてくる書店もあった。

書店は、自社の評判と商品の売れ行きだけを気にする状況でよいのか。第一に責任を負うべきは、作者や出版社だ。しかし、報道や書店も含めて偏見への「加担」範囲は、いま問い直されている。

(松岡瑛理・ライター、1月8日号)