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採用と引き替えに性的関係を強要──トヨタ系列企業幹部による就活女子大生セクハラ事件(成田俊一、その3終)

脅迫めいた匿名郵便物

10月30日からの東京モーターショーでアイシングループが出展している変速機。(撮影/『週刊金曜日』編集部)

10月30日から一般公開の東京モーターショーでアイシンAWが出展している変速機。(撮影/『週刊金曜日』編集部)

筆者が豊田氏とA子さん一件を記事にしようと決めたのは、メール文面の強迫性以上に、さらに許しがたい事実を知ったからである。最終面接で落ちた2日後の8月30日の消印で、A子さん自宅の父親あてに、一通の匿名郵便物が届いている。その内容は、A子さんを誹謗中傷した上、脅迫としか言いようのない文言を並べているのだ。

この郵便物は脅迫の証拠物となるため誌面では公開しないが、わざわざ匿名で投函されたこの郵便物には、いかなる意味があるのか。A子さんが肉体関係を拒否したことと何らかの因果関係があるのか。そもそも誰が投函したのか――。いずれも目下解明中だ。

アイシンAW広報の反応もいささか奇妙である。10月20日、筆者が電話取材をすると、「それは個人のことであり、会社とは一切関係ありませんので取材は拒否します」と逃げたのだ。

大手企業の広報であれば、取材の趣旨が企業倫理を逸脱した犯罪的行為に近いと指摘されたことについて決して逃げはしないし、取材拒否もしない。大企業であればあるほど企業のコンプライアンス(法令遵守)に敏感だ。

しかも昨今は、女性の活躍が安倍政権の命題にもなっている。こんな時代状況下で、アイシンAWという会社の危機管理能力はあまりにも低俗だ。豊田氏の名前と所属ポストまで明確に指摘しても「その名前の人物は在籍はしていますが、あなたが言うその名前の人物かどうかはわからない」と、のらりくらり、かわすのだ。

そこで「写真付きの名刺があるので確認したい」と要求したが、「会社とは一切関係がありませんので取材は受けられません」と、またたく間に電話を切った。豊田氏本人にも繰り返し取材を申し込んだが、現在に至るまで一切の返答はない。

A子さんが遭遇した性的関係の執拗な要求の実態を聞いた名古屋共同弁護士事務所の中谷雄二弁護士は「それは事実であれば酷い。相手方本人とこの企業の責任を明確にする必要がある」と断言した。当然A子さんは、法的措置に向けた準備に入っている。

(なりたしゅんいち・ジャーナリスト。11月6日号=肩書き等は掲載当時)

採用と引き替えに性的関係を強要──トヨタ系列企業幹部による就活女子大生セクハラ事件(成田俊一、その2)

「関係が持てないなら……」

アイシンAWの採用をめぐるA子さんと豊田理彰氏のLINE上のやりとり。(今年8月)

アイシンAWの採用をめぐるA子さんと豊田理彰氏のLINE上のやりとり。(今年8月)

名古屋市内のキャバクラでアルバイトをしていたA子さんが客として来店していた豊田氏と初めて知り合ったのは今年の夏だった。A子さんは、豊田氏と知りあうひと月以上前の6月13日にアイシンAWが実施した会社説明会に参加しており、8月1日の筆記試験と第二次面接の直前に、偶然にも豊田氏と知りあう格好となった。

ここから、A子さんと豊田氏のメールのやりとりが始まる。第二次面接を通過し、8月28日の最終面接が迫ってくるにつれて、豊田氏のA子さんに対する“本音”があからさまに出るようになる。以下は、ふたりのメールのやりとりの核心部分だ。

豊田氏――あなたの意思はわかりました。僕と関係が持てない以上、僕もあなたを自分の親類として会社に入れることはできませんので、最終は諦めてください。私から月曜日に人事に断りを入れておきます。

A子さん――アイシンAWに入る為には豊田さんと一度男女の関係を持てばいいということですか?

豊田氏――あなたを僕の縁者として会社にいれるのに、何の保証もないから、二人だけの秘密を確実なものにするためです。今の時点で、あなたの実力だけでは、最終で受かることはありませんから、今日頑張っても残念な事になってしまうね。
(中略)

A子さん――では男女の関係を持つ以外他の方法、例えばモノで見返りという形にはなりますでしょうか?

豊田氏――モノ??(笑) そういうのは、いらないよ~。ただね、僕も関係を持った人とそうでない人とでは、自分自身の責任感が違ってくるよね。僕だってあなたに対して気持ちや情だってあるから、こうして連絡してるんだよ。
(中略)

豊田氏――残念ですが、うちの会社の内定は絶対にさせないので、どこか他を当たってください。これであなたとの連絡もおしまいにします。無駄な時間と労力を費やしてご苦労さまでした

豊田氏のメッセージの意図は単純だ。最終面接に合格したければ、最終面接前に自分とセックスをしろというおぞましい強要行為である。豊田氏の予告どおり、A子さんはアイシンAWの内定を取れなかった。最終面接で落ちたというべきか、落とされたというべきか。日本を代表するトヨタ系列のアイシンAWの学生採用の最前線で、同社の中間幹部社員が自社に就職を切望する女子大生に対してあろうことか、肉体関係を交換条件にするという反吐の出るような事実には驚愕、閉口するしかない。

上記以外にも、豊田氏がA子さんに送ったメッセージの中には「まぁ普通にリラックスして受けて下さい。ちゃんとパスさせますので!」と、あたかも採用の約束をするような内容があったり、「8月26日中に電話かLINEがなかったら、本当に今回の件はなかったことにするよ」という脅迫に近い内容もある。

さらに、最終面接を落とされたことを知った上で「これからも時々ご飯とか食べに行く位の関係でいいかなぁって思った。あとは、あなたのお友達を紹介してくれたりね。貴重な人材を逃がした気分です。縁がなくてとても残念だな。」と、肉体関係を断わったA子さんに対し別の女性の斡旋まで求めるという信じがたいメッセージまで送っている。

大企業の管理職という社会的立場にある豊田氏とは、いったいどういう人物なのか。自身がやっていることが人間を傷つける悪質な行為だという認識はないのか。

A子さんは筆者の取材に対し、こう胸の内を明かした。
「誰もが入社したい会社でしたし、豊田さんの言葉も最初は信じていました。ですが、身体の要求をお断りした時点で最終面接は落ちると覚悟しました。でもこんな要求は許せなかった」

(なりたしゅんいち・ジャーナリスト。11月6日号=肩書き等は掲載当時、つづく)

採用と引き替えに性的関係を強要──トヨタ系列企業幹部による就活女子大生セクハラ事件(成田俊一、その1)

「女性の活躍」を高らかに掲げる安倍政権だが、その下半身はいかほどだろうか。アベノミクスをはじめ安倍政権の経済政策をリードする「世界のトヨタ自動車」の系列企業幹部が、就職活動中の女子大生に卑劣な行為をおこなっていた事実が発覚した。
※本記事で取り上げた豊田理彰氏が社内処分を受け、退職したことが明らかになったため、記事を緊急配信する。

豊田理彰氏が参与と製造本部副本部長を務めるアイシンAW株式会社。(撮影/筆者)

豊田理彰氏が参与と製造本部副本部長を務めるアイシンAW株式会社。(撮影/筆者)

昨今、学生の就職活動で問題になっているのがオワハラだ。企業が、内定を出すことと引きかえに他の企業への就職活動を終われと迫る「オワラセル+ハラスメント」のこと。学生にとって就活は社会人になるための大事な一歩なのに、企業のオワハラ行為が学生たちの自由な就活の権利を奪うものとして社会問題化してきた。

本稿で取り上げるのは、採用権を持つ企業によるオワハラ問題を通り越す大事件だ。就活学生の名誉と尊厳を踏みにじっただけではなく、内定を切望する学生の心理を逆手にとった、きわめて悪質な企業採用の実態である。

その企業とは、トヨタ自動車系アイシングループで、愛知県安城市に本社を置くアイシン・エィ・ダブリュ株式会社(川本睦社長。以下、アイシンAW)だ。世界シェア1位の車の変速機などの製造で年間売上高は1兆円(連結)を超える大手自動車部品メーカーだ。そのアイシンAWで参与と製造本部副本部長の肩書を持つ豊田理彰(とよだまさてる)氏が、今回の事件の当事者だ。被害者は名古屋市内の某女子大学4年生のA子さんである。

(なりたしゅんいち・ジャーナリスト。11月6日号=肩書き等は掲載当時、つづく)

日大名誉教授、山口組元大物幹部からの借金騒動――ならば白石議員らも大問題だ

山岡名誉教授らと山口組元幹部との交際が裏付けられた陳述書(コピー)。

山岡名誉教授らと山口組元幹部との交際が裏付けられた陳述書(コピー)。

先週、日本大学の山岡永知名誉教授(77歳)が10年前に山口組の元組長から2000万円の借金をしていたことがメディアを騒がした。報道によれば教授の大学院の授業はすでに休講しており大学側は解雇を検討しているという。

金の貸し借りは民民の案件だが、相手が山口組元幹部であることから大学やメディアは問題視したわけだろう。だとすれば小誌が本件で問いたいのは名誉教授ではなく、火の粉が飛ぶことを息を潜めて怯えているだろう二人についてだ。自民党衆院議員と日本オリンピック委員会(JOC)の元「関係者」で三菱商事元社員である。

さてまず騒動の相手方の山口組元幹部はだれかといえば大石誉夫氏である。大石氏は経済ヤクザで知られ山口組で顧問まで務めたその筋の大物。2012年に引退後は現役時代の“投資”を回収するためか、民事訴訟を次々に起こしている。小誌も昨年9月にリクルートに対する訴訟を報じ、今年は8月7日号で報じた。

〈自民党代議士に民族派がぶちきれた 戦争法案強行採決の白石議員〉と題する前出の記事では、第三次安倍改造内閣で環境相政務官に就任した自民党麻生派(為公会)の白石徹衆議院議員(愛媛三区)が「X親分」こと大石氏と昨年5月に二人きりで赤坂の料理屋で会食していたことを指摘した(掲載時に白石議員側は取材を拒否)。現職議員がのこのことでかけた背景には愛媛県で経営する建設会社白石建設工業に大石氏が協力していたからだという。両者を知る愛媛県出身の民族団体「国防同士社」の代表、高橋斗志夫氏は次のように証言する。

「白石議員が白石建設の社長時代から大石さんと付き合いが始まり、以後続いてきたわけです」

実は今回の山岡名誉教授を大石氏に紹介したのは高橋氏だと言う。

「紹介はしたが、山岡さんがその後にカネを借りていたことは最近知った。この件では1カ月ほど前にもテレビ局記者から取材を受けました。日大やJOC(日本オリンピック委員会)の問題を調べていると言うから協力したのになぜか山岡さんしか報道されていないのはおかしい」

【JOC関係者も同席か】

そもそも山岡氏の名前が浮上した契機は大石氏が2013年にある男性に民事訴訟を起こした際に、山岡氏が陳述書を提出したためだ。その裁判では同じく陳述書を出した人物がいる。三菱商事元社員で公益社団法人日本トライアスロン連合(JTU)の元顧問、金子清志氏だ。トライアスロンは2020年東京五輪の種目の一つ。金子氏は、「私と大石さんとは平成17年頃、三菱商事の先輩であり上司であった飯山勝也氏に紹介されて知り合い、それ以来、お付き合いしています」と陳述。しかし金子氏は今年6月にJTUを離職(JTUは「ご本人だと特定できない」と回答)。このためか、そのほかの元組長交際報道は11月10日に『毎日新聞』が「JOC関係者も同席か」と報じた程度だ。しかしながらヤクザのネットワークが広く深いことがうかがわれる。

ある政界通はこう話す。

「山岡名誉教授どころではない。日本大学にはもっとヤクザとずぶずぶのおエライさんがいる。でも、ある警察幹部によると、日本大学は警察の天下りを恒常的に受け入れる体制をつくったので捜査の手が伸びることはないそうです」

天下り先とは、日本大学が来年4月に新しく学生150人規模の「危機管理学部」を開設することを指すという。同学部の公式サイトを見ると、実務経験がある教員5人の中に「茂田忠良教授〈インテリジェンス論〉元埼玉県警察本部長」が含まれている。警察本部長とは、言うまでもなくキャリア警察官僚がつくポストである。

そういえば先の白石建設工業も、経営経験のない愛媛県警の元署長を昨年まで社長に据えていた。元署長は現在も顧問だという。警察OBを雇用する企業や学校は過去にうしろめたいことがあると考えるのが世間の常識ではないだろうか。誌面は尽きたが、引き続き調査を続けていく。

(本誌取材班、11月20日号)

市民350人がNHKに抗議――「アベちゃんねるにするな」

NHK放送センター西門前で抗議の演説。(東京・渋谷。撮影/高橋清隆)

NHK放送センター西門前で抗議の演説。(東京・渋谷。撮影/高橋清隆)

NHKの報道に疑問を持つ市民約350人が11月7日、東京・渋谷の(NHK)放送センター前で抗議の声を上げた。元職員らが安倍晋三政権に追従するNHKの姿勢を批判した後、渋谷の繁華街をデモ行進し、「NHKをアベちゃんねるにするな」などと訴えた。

この抗議活動は「NHK包囲行動実行委員会」が呼び掛けたもので、8月に第一弾が決行されている。今回は全国に呼び掛け、大阪や京都、名古屋、福岡など全国10の放送局前でも抗議行動が展開された。

冒頭、NHK退職者の今井潤さんが「NHKの報道にはさまざまな問題があるが、最も大事な点は安倍政権べったりで、市民の声を反映していないという一点に尽きる」とあいさつした。

元共同通信記者で日本ジャーナリスト会議事務局次長の丸山重威さんは、安全保障関連法案の審議で安倍首相が辻元清美衆院議員(民主)に「早く質問しろよ」とやじったことや、後方支援の名目で米軍ヘリに給油を繰り返すのは戦闘参加に当たると指摘した小池晃参院議員(共産)の質問などを挙げ、「こんなひどい話がいっぱい出ているのに、それがニュースとして報道されていない」と指摘。「しかし、皆が声を上げるようになり、歴史が変わろうとしている。この問題を報道局の一握りの政治部の記者に任せないで、みんなで声を上げていただきたい」と出入りする職員に向けた。

実行委員で「NHKを監視・激励する視聴者コミュニティ」共同代表の醍醐聰・東京大学名誉教授は受信料義務化の動きを批判し、「NHKが変われば日本の政治が変わる」と訴えた。

集まった市民は「安倍政権は報道への介入をやめろ」「NHKをアベちゃんねるにするな」「NHKは政権の介入に屈するな」などとシュプレヒコールを上げ、公園通りなどをデモ行進した。

(高橋清隆・ジャーナリスト、11月13日号)

「虹の戦士号」辺野古沖寄港を却下した日本政府――反対運動への注目恐れる

那覇新港に停泊する「虹の戦士号」。(提供/グリーンピース・ジャパン)

那覇新港に停泊する「虹の戦士号」。(提供/グリーンピース・ジャパン)

国際環境NGOグリーンピースの船「虹の戦士号」が申請していた、沖縄県名護市辺野古沖への寄港申請について、国の沖縄総合事務局は4日までに却下した。

米海兵隊新基地の建設作業に対する反対運動が国際的な注目を集めることへ、国が異常に神経をとがらせている様子が浮き彫りとなった。

外国船籍の同船は、開港されている港以外の場所に寄港する際には国の許可が必要。グリーンピース・ジャパンは10月28日に申請書を提出しており、1週間も待たされた挙句に却下された形だ。

グリーンピース・ジャパンで広報担当の土屋亜紀子氏は「通常は1~2日で許可が出る。虹の戦士号が2005年と07年に辺野古沖へ寄港した際には、即日で許可が出た」と話す。同船は辺野古沖で、工事にともなう制限区域の外側に停泊する計画だった。同NGOで海洋生態系問題を担当する小笠原和恵氏は「調査ではなく、辺野古に世界の注目を集めるのが目的だ」と説明した。

沖縄総合事務局は4日、決定前の時点で取材に「国交省と調整中」と述べ、今回の申請が「本省扱い」であることを示唆していた。

国は却下の理由として「同海域に混乱が生じやすくなるため、安全確保ができない」と説明。これを受けて6日、那覇新港に停泊する「虹の戦士号」で会見が開かれた。マイク・フィンケン船長は「安全上の支障はない。却下は別の理由によるものだ」と日本政府を批判した。グリーンピース・ジャパンの佐藤潤一事務局長も「詳細な情報を事前に海上保安庁に提供していた。全ての行動が危険に値しないことは海保が一番知っているはずだ」と述べた。

却下を受けてNGOは6日、国に不服審査請求を行なった。一方、名護漁港沖への寄港は9日に許可。滞在期限を見越した国の「時間稼ぎ」に対し、船は台湾への出発を遅らせて名護港へ向かう。

(斉藤円華・ジャーナリスト、11月13日号)

民法の夫婦同姓強制と再婚禁止期間訴訟――「違憲」求め最高裁で弁論

「名前は私の人生そのもの。塚本協子で生き塚本協子で死んでいきたい」と報告集会で話す原告団長(左)と原告ら。(撮影/宮本有紀)

「名前は私の人生そのもの。塚本協子で生き塚本協子で死んでいきたい」と報告集会で話す原告団長(左)と原告ら。(撮影/宮本有紀)

婚姻時、夫妻の同姓を強制する民法750条。女性のみ6カ月の再婚を禁じる同733条。これらが婚姻の自由と個人の尊厳、両性の平等を保障する憲法に違反するとして訴えた二件の訴訟の上告審弁論が4日、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)で行なわれた。

岡山県の女性が「女性の人権を制約し男女平等違反」と訴えた再婚禁止期間訴訟は、作花知志弁護士が弁論。子の福祉のための父子関係早期確立という立法目的を実現するには「離婚後再婚した女性が生んだ子については、後婚の夫の子と推定」すればよいし、父子関係を判断するDNA鑑定技術も発達しているのだから半年もの再婚禁止期間は不要と主張。「新しい時代の新しい判断」を求めた。

東京都、富山市、京都府の男女5人が選択的夫婦別姓を求める訴訟では、弁護団が、姓の変更強制は氏名権や個人の尊厳の侵害であること、姓を変えるのは女性という社会的意識がある日本では形式上中立な規定も実質的に女性差別をもたらす間接差別にあたることなどを指摘。裁判官に「誰かではなく自分の姓が変わることを想像してみてほしい」と訴えた。

1898年制定の民法は、現行憲法制定後、個人の尊厳と両性の平等に基づき改正されるべきだった。だが家族規定は改正されず、1985年の女性差別撤廃条約批准時にも、96年に法制審議会が選択的夫婦別姓導入や再婚禁止期間の短縮などを答申した時も、保守派議員の反対で実現しなかった。長年の立法不作為は明らかゆえ、原告の小国香織さんは「政治に期待できないから司法に訴えた」と陳述し、「子ども世代のためにも別姓も選べる社会を」と訴えた。

二宮周平・立命館大学教授(家族法)は「これは人権侵害の問題であり家族のあり方の問題ではない」と指摘するが、現政権の理解は期待できず司法判断を待つしかない。早ければ年内にも憲法判断が示される。

(宮本有紀・編集部、11月13日号)

東京高裁の判決と仮執行宣言で――緊迫の経産省前テントひろば

緊張続く経産省前テント。11月6日、東京・千代田区。(撮影/林克明)

緊張続く経産省前テント。11月6日、東京・千代田区。(撮影/林克明)

脱原発の象徴で運動の拠点になっている「経産省前テントひろば」が緊張状態にある。2011年9月から経済産業省前にテントを張って反原発運動を続けている淵上太郎氏と正清太一氏に対して、土地の明け渡しと損害賠償を求めて国が訴えた裁判で、東京高裁は10月26日控訴を棄却した。

高野伸裁判長は、テントを撤去し、1日当たり2万1917円(約3300万円)を支払え、という判決を言い渡し、仮執行宣言も出した。被告らは、上告と同時に仮執行停止の申立てをしたが、仮執行停止はただちに却下された。したがって、いつテントが撤去されるか予断を許さない状況だ。

同月29日には、テントひろば現地で被告や支援者らが記者会見を開催、代理人のひとり大口昭彦弁護士は、「これは市民を黙らせるためのスラップ(口封じ)訴訟、司法の悪用です」と断じた。

この判決に勢いを得たかのように、判決当日には、愛媛県の中村時広知事が伊方原発3号機再稼働の同意を表明している。政府をはじめ、原発推進勢力としては、川内原発の再稼働に続き、伊方原発3号機、高浜原発3・4号機再稼働を是が非でも実現させたい。これらを強行するためにも、テントひろばを潰したい、というところだろう。

英国国会議事堂前の広場で長期間にわたりテント生活をしながら反戦を訴え、あの手この手で警察とわたりあっていた人物の記録映画『ブライアンと仲間たち パーラメント・スクエアSW1』を製作した映画監督の早川由美子さんは、「終電の後や休日が危ない。撮影・取材できる人が交代で監視したほうがいいと思います」と、自身も経産省前テントに泊まる。

プロの取材者に限らず、多くの人が、スマホなど撮影機材を常時携帯して、可能な限り現地に赴く必要があるだろう。市民による監視がキーになる。

(林克明・ジャーナリスト、11月13日号)

小林節氏と「制服向上委員会」の“コラボ”

小林節氏(中央)と「制服向上委員会」メンバー中の二人。(10月26日・東京都内。写真/横田一)

小林節氏(中央)と「制服向上委員会」メンバー中の二人。(10月26日・東京都内。写真/横田一)

安保法制の国会審議の潮目を変えた憲法学者の一人、小林節・慶應義塾大学名誉教授と社会派女子アイドル「制服向上委員会」の“コラボ集会”が26日、東京都内で開かれた。名称は「戦争法NO! Yes Peace 世田谷のつどい」で、冒頭で「ダッ!ダッ!脱・原発の歌」で注目された制服向上委員会が、自民党国会議員が文句をつけた替え歌(「諸悪の根源は自民党」と一刀両断)や「♪日本の憲法、平和の印」と訴える護憲ソングを歌った。その後、世田谷区民のリレートークを受けて小林氏が講演をした。

野党結集(選挙協力)による安倍政権打倒を呼びかける小林氏は現在、各地を講演行脚中。この日も「政策が違うのに野合する自公に学ぼう」と選挙区棲み分けを提唱、共産党アレルギーについては「『共産党に組織を乗っ取られる』という消極派への決め台詞は、『いま日本は安倍首相に乗っ取られている。安倍首相より共産党の方がいいだろう』」と訴えた。

集会終了後、小林氏は「前から評判を耳にして一度聞いてみたかったが、想像以上に良かった。普通のアイドルと違って嫌々歌わされている痛々しさが全くなかった」と絶賛、CDも購入。各メンバーに「良かった」と声をかけ握手もした。

世代を超えて安倍政権打倒の思いが広がることを物語る光景。制服向上委員会もSEALDsと同じ役割をしたといえる。

(横田一・ジャーナリスト、11月6日号)

関電・老朽炉の耐震性示せず――混迷の美浜原発審査

10月27日に原子力規制委員会の臨時会合が開かれ、関西電力の八木誠社長を含む幹部が呼ばれた。テーマは関電の3つの原発の新規制基準適合性審査の進め方。現在、大飯、高浜、美浜原発の合わせて7機の原子炉について審査が行なわれているが、規制委側は、同時並行で続けるのは困難だとし、優先順位を決めるよう迫った。

特に問題なのが福井県美浜原発3号機だ。来年11月30日に運転開始40年が経過する老朽原発だが、この日までに寿命延長の審査を終えなければ廃炉となる。延長審査は、適合性審査の終了が前提だが、期限まで1年余りしかない状況で、終了の目途は全く立っていない。

基準地震動の策定では、活断層の上端深さが議論になった。750ガルから993ガルへ引き上げられたが決定は8月にずれ込んだ。その後、機器や施設の耐震安全性を確認する書類が関電から提出されない状況が続く。関電は、開発した新しい評価手法を適用したいと説明。規制委側は、それでは手法の妥当性から審議しなければならないと難色を示した。

10月15日の審査会合において、原子力規制庁の櫻田道夫規制部長が、新しい手法を用いる目的について「従来の手法では基準適合性が示せないからではないか」と問い質すと、関電の原子力事業本部水田仁副本部長は「従来の手法では耐震健全性を示せない」と明言した。関電は、新しい手法は精緻なものだなどと言うが、結局のところ、安全を取り繕い、耐震を装うための手法であることを白状したにすぎない。

再び臨時会合。優先順位は決められないと煮え切らない関電に対し、規制委側は、期限があることを理由に、美浜3号機を優先的に審査したいと述べた。なぜ最も老朽化が進み最も危険な原発の優先審査を規制当局の側が提案するのか、全く理解できない。審査を打ち切り廃炉と決めるときだろう。

(阪上武・原子力規制監視市民の会、11月6日号)