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山崎博昭さん追悼、ベトナムで展示会も決定

講演会に先立ち東京・羽田の弁天橋で献花が行なわれた。(写真/赤岩友香)

講演会に先立ち東京・羽田の弁天橋で献花が行なわれた。(写真/赤岩友香)

1967年10月8日、一人の若者が羽田闘争で亡くなった。京都大学生だった山崎博昭さん(当時・18歳)だ。山崎さんを追悼する「10・8山崎博昭プロジェクト」の第3回東京講演会が10月10日、東京・新宿文化センターで開催された。

講演会・第1部では作家の下重暁子さんが登壇。「国にとって、家族は管理しやすければしやすいほどいい。『良い家族』になろうとすることは、国が喜ぶだけ」だと、安倍政権が提唱する家族像に警鐘を鳴らした。第2部では、歌手・作曲家の小室等さん、歌手のこむろゆいさん、歌人の道浦母都子さん、詩人の佐々木幹郎さんが山崎さんへの思いを綴った詩や学生運動で親しまれた歌を披露した。

羽田闘争は、日本がベトナム戦争で米国に加担することに反対する学生たちの運動だが、ベトナムではほとんど認知されていない。講演会では、ホーチミン市にある戦争証跡博物館で2017年1月から3月まで、山崎さんのことや日本のベトナム反戦の闘いを紹介する同プロジェクトの展示が行なわれることが発表された。

また、同プロジェクトは「学生の手による轢死」とされている山崎さんの真の死因を明らかにするため、羽田闘争にかかわった人々への聞き取り調査を始めている。山崎さんはなぜ命を落とさなければならなかったのか。戦争法案が通った今こそ、歴史に刻まなければならない。

(赤岩友香・編集部、10月16日号)

福島、国道6号線清掃活動――抗議無視の安全神話作り

東京電力福島第一原発の被災地を南北に走る福島県の国道6号線延べ50キロ・8区間で、10月10日、中高生を含む約1400人がごみ拾いをする清掃活動「みんなでやっぺ!! きれいな6国」があった。事務局はNPO法人ハッピーロードネット(西本由美子理事長、広野町)。

開催前から、全国70を超える市民団体が中止を求める提言書を提出。理由は放射能問題で、活動ルートの放射線測定値も公表されず、参加可否の判断材料に乏しいことや、被曝防護措置の不十分さを挙げた。西本理事長は「多数の抗議の電話やファクスがあった」ことを明らかにし、「親から参加承諾をもらい、強要はしていない。中高生のごみ拾いは高校の通学路で、線量も低い。線量計も持ち、事前に落ちていたごみの線量も測っている」と弁明する。

広島・長崎の原爆降下物と健康影響に詳しい沢田昭二・名古屋大学名誉教授(素粒子物理学)は「最近の原爆の放射性降下物の研究では、原子雲から降った黒い雨よりも、広がった原子雲から降下した放射性微粒子を呼吸などで人体に取り入れた方が大きな影響を与えたことが分かっている。ほこりなどに含まれる放射性微粒子を取り込んで、がんのリスクを高めるのではないかと心配だ」と話す。

国道6号線は昨年、佐藤雄平知事(当時)が東京五輪組織委に聖火リレーを要望した道路。10日は動員された除染関連業者ののぼりが目立った。経済効果を狙う地元の思惑も透ける。これは善意で彩られた無償奉仕と表裏一体で、被曝リスクを個人負担させる足がかりなのか。

西本理事長からは筆者に「対応できない」と取材お断りの電話があった。地元のメディアは抗議について伝えないが、十分な説明が求められる。かつて福島第一、第二原発で働いていた今野寿美雄さんは言う。「新たな安全神話が今、まさに作られようとしている」。

(藍原寛子・ジャーナリスト、10月16日号)

ヘイト・スピーチ条例案継続審議の大阪市議会へ――即時制定求めて集会と要請文

ヘイト・スピーチ(差別煽動表現)対策の条例化をめざす大阪市の条例案が市議会で継続審議になっているのに対し、条例の「即時制定」を求める集会が10月6日、大阪市北区の公園で開かれた。

市民による条例案を提案している多民族共生人権教育センター、部落解放同盟大阪府連など約30団体がつくる実行委員会の主催。約250人の参加者らが集会後に大阪市役所まで繁華街をパレードし、「ヘイト・スピーチを許すな」と訴えた。

大阪市の条例案は、学者などで構成する審査会が被害者の申し立てによって調査し、ヘイト・スピーチと認定すれば行為者の団体名や個人名を公表することで抑止を図ろうとする。被害者の訴訟費用を支援するなどして処罰は司法判断にまかせ、条例としての処罰規定は設けていない。条例案は今年5月に市議会に提案されたが、「表現の自由との調整が難しい」などの意見が出て6月市議会で継続審議になった。

この日の集会は、開会中の9月市議会での条例案審議に向けて開催され、集会参加者らはパレードのあと市議会の「維新の会」、自民、公明、共産、「みらい」の各派代表者に次のような要請文を手渡した。

(1)深刻な人権侵害が放置されており、一刻も早く条例の制定を願う。

(2)ヘイト・スピーチは許されないという社会規範を示す自治体の姿勢を明確にするためヘイト・スピーチ禁止条項を付け加える。

(3)在日コリアンだけでなく様々な被差別少数者へのヘイト・スピーチも抑止できる条例にする。

多民族共生人権教育センターの文公輝事務局次長は「各派の代表者の意見を聞くと、ヘイト・スピーチは表現の自由の範囲を超えており抑止が必要だという認識でほぼ一致しているようだ。前向きに進めていくことを期待したい」と話す。

(平野次郎・フリーライター、10月16日号)

政治的意図丸出しの北海道朝鮮学校への強制捜査――マスコミ動員し差別を助長

北海道札幌市内で10月8日、北海道朝鮮初中高級学校(以下、北海道朝鮮学校)への強制捜査は不当とする緊急集会(主催:北海道朝鮮学校を支える会)が開催された。

北海道警察が学校を強制捜査したのは9月6日。在日本朝鮮人総聯合会北海道本部と関連のある企業が1~2年前に従業員を雇用したと偽り、厚生労働省の雇用対策の助成金を不正受給したとの疑いが持たれ、従業員名のなかに北海道朝鮮学校の教員の名があったことから、学校に捜査が入った。

同日、朝鮮総聯同本部など約20団体が入る「ウリトンポ会館」も強制捜査されている。

その後の調査で、教員が同意の上で従業員として名前を貸したと判明。ただ、雇用実態はなかったという。道警は10月6日、教員ら4人を詐欺容疑で逮捕した。

集会では、家宅捜索の当日に学校側が撮影したビデオが公開された。朝7時ごろ学校の正門前には、新聞、テレビ、通信社らマスコミが乗りつけたタクシー7~8台が待機。8時に捜査員が令状を呈示して校舎内に立ち入ろうとするが、申京和校長や教職員らが、子どもへの影響を訴え、説得を試みる。捜査に応じなかったため、8時20分ごろ突如、立会人として消防署員を連れてきて、捜査員は強硬に校内に押し入った。捜査は18時ごろまでつづいた。

申校長は、「“朝鮮”とつくものはすべて、悪質というイメージを社会に植えつけるのが一番の目的で、政治的意図があからさまだ。こうして仮想敵国を作り、戦争法案もあっという間に採択された。私たち朝鮮学校の子どもたちは、戦争ができる国をつくり上げるための、かっこうのスケープゴートになっている」と憤る。

【イベント日を狙い撃ちか】

この日は日曜日だったが、朝からサッカー部や吹奏楽部などの練習が予定されていた。正門前でマスコミがカメラを構え、教員と捜査員が議論している様子を目にした子どもたちは、動揺を隠せなかったという。

ヘイト・スピーチが過激さを増すなか、事態を聞いて保護者もすぐに駆けつけ、抗議した。

「北海道朝鮮学校を支える会」で活動する教職員らは、「札幌の学校の教員が不祥事を起こしても、学校が特定できるような報道はしない」と、朝鮮学校だけを差別的に扱うマスコミを批判した。

学校のグラウンドでは、1週間前に、朝鮮文化を紹介する「アンニョイフェスタ」が行なわれたばかり。10年目になるこのイベントには、朝鮮の伝統料理をはじめ30種の屋台が並び、今年も2500人の日本人が訪れた。

「計画的に家宅捜索の日を選んだとしか思えない。朝鮮学校と地域との交流を壊したいのだろう」と申校長は言う。

日曜の朝から捜査員やマスコミが学校に押し寄せた騒動で、周辺住民にも不安が広がった。

石田明義弁護士は、「朝鮮総聯が転居したウリトンポ会館は、昨年の11月に竣工した。権力側はその内部状況を把握したかったのだろう。詐欺容疑が浮上し、ここぞとばかりに情報収集したといえる」と述べた。

学校の教務室から押収したリストのなかにも、事件とは直接関係のない「理科教材の購入品についての資料」「年間進路表」「春の遠足要綱」などが含まれていた。

学校の運営管理を担当する事務室では、女性職員ひとりが、15人もの男性捜査員に囲まれ、金庫や引き出しの中身を説明させられるなどの取り調べを受けた。質問はプライベートな内容にまでおよび、まるで犯罪者扱いだったという。

「給与明細なども押収し、学校がどう運営されているのか、その情報を集めているのが見て取れた」。

捜査員からは、「教育援助費(平壌からの補助金)の項目はどこか?」といった質問も出たそうだ。

「戦後70年経っても、私たち朝鮮学校は徹底的に差別されつづけている。しかし、未来を作っていく子どもたちのためにがんばっていきたい」と申校長は訴えた。

(木村嘉代子・フリーライター、10月16日号)

翁長知事、辺野古埋め立て承認を正式に取り消し――「県民や国民の前で議論を」

辺野古の埋立承認取り消しを報告する翁長知事。(10月13日、沖縄県庁。撮影/本誌取材班)

辺野古の埋立承認取り消しを報告する翁長知事。(10月13日、沖縄県庁。撮影/本誌取材班)

米軍普天間基地の移設計画で、沖縄県の翁長雄志知事は10月13日、沖縄県庁で記者会見し、名護市辺野古沖の埋め立て承認について、「取り消すべき瑕疵が認められた」と述べ、取り消したことを正式に表明した。

また、翁長知事は、沖縄県が7月16日、埋め立て承認の法律的な瑕疵を検証する第三者委員会の報告を受け、関係部局で内容を精査。第三者委員会の結論を受けて、9月14日に取り消しに向けた行政手続きに入ったことを表明する記者会見を行なった経緯などをコメントとして読み上げた。

記者会見の中で翁長知事は「知事就任から約10カ月、今日までいろんな形でこの問題は、多くの県民や国民の目に見ていただいた」と述べたうえで「戦後の70年のあり方、現在の沖縄の過重な基地負担をしっかりと多くの県民や国民の前で議論がされるところに一つは意義があると思う」と埋め立て承認の取り消しの理由を語った。

さらに、政府との約1カ月間に及んだ集中協議を振り返り「(政府側には)沖縄県民に寄り添って県民の心を大切にしながら、問題を解決していきたいというような気持ちが、集中協議の中にもなかった。今回、取り消しの手続きの中で意見の聴取、聴聞の期日を設けたが応じてもらえなかった」とこれまでの経緯を説明し「陳述書は出してもらいましたけど、聴聞には応じてもらえなかった。内閣の姿勢として沖縄県民に寄り添ってこの問題を解決していきたいというものが、大変薄いのではないか」と安倍政権の対応を批判した。

翁長知事が承認を取り消したことで、防衛省が今後、承認取り消し無効を求めて国土交通省に行政不服審査請求を行なう可能性が高まった。その場合、国土交通省は沖縄県の弁明書や防衛省の反論書などを基に審理を進め、防衛省の請求を認めるか棄却するかを判断することになる。

(本誌取材班、10月16日号)

防衛装備庁発足で加速化する――官民あげての武器輸出

防衛装備庁発足で武器輸出加速に抗議する市民。(10月1日、東京・新宿。撮影/満田夏花)

防衛装備庁発足で武器輸出加速に抗議する市民。(10月1日、東京・新宿。撮影/満田夏花)

10月1日、防衛装備庁が発足した。武器の研究開発から調達、輸出までを所管する防衛省の外局。1800人体制での発足。年間2兆円近い予算を扱う一大組織だ。

以前から、安倍首相は、ロシアや東欧の外遊に、三菱重工や川崎重工などの関係者を同行させ、積極的な武器のセールスを繰り広げていた。昨年4月には、武器輸出三原則を撤廃。「防衛装備移転三原則」を閣議決定した。これにより原則禁止していた武器の輸出を解禁。この直後、昨年6月に行なわれた世界最大規模の武器見本市には、三菱重工、東芝、NEC、日立製作所、川崎重工、富士通など日本の防衛産業が「日本パビリオン」を設けて本格的に参加した。音頭を取ったのは防衛省だった。同省はまた、エンジン開発やロボット、無人車両技術などの軍事関係を進めるため、研究費を大学や研究機関に支給。年間の支給額は1件あたり最大3千万円という。

武器購入資金を低金利で貸し出す軍事版ODA(政府開発援助)の創設や、民間の保険ではカバーできない武器輸出に伴うリスクを、NEXI(日本貿易保険)による公的な保険の適用で支援する案なども検討。官民あげた武器輸出推進の動きが加速化している。

しかし、これは国民の声とは乖離している。共同通信が昨年3月に行なった世論調査では、武器や関連技術の輸出を原則的に禁じる「武器輸出三原則」緩和への反対は66・8%に上り、賛成の25・7%を圧倒的に上回っている。

発足の日、50人以上の市民が、防衛省前で抗議の声を上げた。「武器を売るな、武器を買うな」「死の商人に税金渡すな」――。ある国際協力の関係者は、ガザに住む彼女の友人の一家が虐殺された様を声をつまらせて物語った。参加者の一人は「どんなにきれいな言葉で飾っても、武器は人を殺すもの。私たちの税金を人殺しに使わないで」と怒りの声を上げた。

(満田夏花・FoE Japan、10月9日号)

選挙で安倍政権打倒の動き、広がる

集会後は約2万人がデモ行進した。数寄屋橋交差点付近。(10月2日、写真/林克明)

集会後は約2万人がデモ行進した。数寄屋橋交差点付近。(10月2日、写真/林克明)

10月2日、東京の日比谷野外音楽堂で「安倍政権NO! 1002大行進」と題する大規模集会が開催され、主催者発表で2万人が参加した。戦争法、原発、沖縄米軍新基地建設、環太平洋連携協定(TPP)、消費税増税、秘密保護法、憲法、労働法制、社会保障、教育改悪、農協解体、ヘイト・スピーチに反対の12課題で活動する人々が集会実行委員会を結成した。すべての問題を悪化させる安倍政権そのものを退陣に追い込むことが目的だ。

集会で壇上に立った中野晃一・上智大学教授はこう語った。

「4年前、アメリカのウォール街を占拠するオキュパイ運動はどうなったのか。現在、米大統領選挙の民主党予備選で、自ら社会主義者と名乗るバーニー・サンダース上院議員を押し上げている原動力が、まさにオキュパイ運動を担った人々。いま日本で安保法案反対運動に参加した人々が賛成議員落選運動を提案したり、共産党の志位和夫委員長が選挙協力と連合政権樹立を訴えるまでになっている」

戦争法案(安保法案)が成立した後も各地で同様の反対運動が繰り広げられており、戦争法廃止はもとより、賛成議員の落選運動や国民連合政府樹立へ向けての運動が拡大しそうな勢いだ。これまで、市民運動が選挙運動に直結する例は少なかったが、今回はその可能性が出てきた。実現すれば大きな転機となる。

(林克明・ジャーナリスト、10月9日号)

空母の恒久化と基地機能が強化される横須賀――空母レーガンの入港に抗議

ヨコスカ平和船団が船で抗議。後ろが空母レーガン。(10月1日、横須賀港。提供/新倉泰雄)

ヨコスカ平和船団が船で抗議。後ろが空母レーガン。(10月1日、横須賀港。提供/新倉泰雄)

10月1日、米国の原子力空母ロナルド・レーガンが神奈川県横須賀港に入港した。空母レーガンは、今年5月に燃料交換と大規模な修理のために米本国に戻った空母ジョージ・ワシントンの後継艦として、横須賀に配備されたものである。

横須賀は1973年のミッドウェイを最初に、インディペンデンス、キティホーク、初の原子力空母となったジョージ・ワシントンと、42年間も米空母の母港とされてきた。

空母レーガンは最新鋭の、米国外を拠点とする唯一の原子力空母で、日本の多くの原発と同じ、加圧水型原子炉2基を動力源とする「海に浮かぶ原発」であり、艦載機で世界の無辜の市民を殺傷してきた「戦争する航空母艦」だ。

米第7艦隊の中核を担う空母レーガンへの交代に加え、2017年夏までに日米ミサイル防衛の強化も視野に入れた3隻のイージス艦も追加配備される計画で、横須賀は空母の恒久化と基地機能が格段と強化されようとしている。

空母レーガン入港当日の10月1日、市民団体は連携して終日、陸と海からさまざまな抗議活動を行なった。

朝6時から船で海上から抗議したのは「ヨコスカ平和船団」。沖を航行する空母レーガンに海辺の公園から抗議の声を唱和したのは「平和運動センター」や「三浦半島連絡会」などであった。

女性で組織する「いらない!原子力空母」も駅前での宣伝やシール投票を実施した。

さらに、「非核市民宣言運動ヨコスカ」は、米海軍横須賀基地の正門前で抗議のスタンディングを行ない、また、下船して町に出てきた空母レーガンの乗組員に、市民の約半数が「原子力空母配備反対」であるとアンケート結果(小誌10月2日号5ページ参照)を英文リーフで知らせる活動を行なった。

(新倉泰雄・原子力空母の母港化を阻止する三浦半島連絡会事務局長、10月9日号)

櫻井よしこ氏、謝罪求める質問状に「再回答不必要」――NHKで誤った民主党批判

ジャーナリストの櫻井よしこ氏が9月27日に放送されたNHKの「日曜討論」で、民主党の岡田克也代表に対して不正確な批判をし、同党側から送られた二度目の謝罪を求める質問状について、「回答不必要」との姿勢を示している。

問題の発言は、(1)「(岡田代表について)かつて、集団的自衛権は必要ですと、民主党政権の外務大臣として言った人が、いまは必要ありませんと180度変わっ」た(2)「民主党が共産党と組むというのは、かつての自民党と社会党のことを思っても……それこそ国民を馬鹿にしている」というもの。

これに対し民主党は、近藤洋介役員室長名で28日、(1)については「岡田代表が外務大臣として『集団的自衛権は必要』と述べた事実はない」(2)自民党と旧社会党の連立政権を例にして「共産党と組む」と発言したのは、両党が連立を組むことが決まっているような誤解を与える――と指摘。

櫻井氏は30日、(1)は「外務大臣として」発言したという初歩的誤りは認めながら、「日本を防衛するために活動している米軍が攻撃された場合、日本に対する行為と見なし、日本が反撃する余地を残すのは十分合理性がある」(『読売新聞』2005年5月3日)、「日本の利害に直接関わるような地域で、同盟国である米国が攻撃を受けた際、日本が傍観していていいのか、という問題意識はある」(『中央公論』05年7月号)という岡田代表の発言を持ち出し、「180度の転換だ」と反論した。

しかし、『読売』での発言は個別的自衛権に関する事項だ。『中央公論』については、「集団的自衛権は必要だと言っている」と断定するのは無理だろう。共産党についても「『民主党と共産党が選挙協力したときに』何が起き得るのかに言及し」たと反論するが、何も決まっていない段階で「自社連立」のようなことが「起き得る」と推測し、「馬鹿にしている」と述べるのは言いがかりに等しい。

このため近藤室長は同日、「内容は全く同意できない」として、再度質問状を提出。ところが櫻井氏は10月2日、「回答文で説明が尽くされている」として、「再回答は不必要」とする文書を民主党に送った。だが少なくとも、「説明が尽くされている」という櫻井氏の主張に説得力がないのは疑いない。

(成澤宗男・編集部、10月9日号)

変わり映えせぬ内閣改造、先行き暗い石破氏の旗揚げ――「単色化」する安倍自民党

安倍晋三首相は10月7日にも内閣改造・党役員人事を発表する。本誌10月9日号は6日校了のため最終結果を載せることはできないが、あるベテラン自民党担当記者が「単色政党になってしまった」と嘆くほど、自民党は安倍カラー一色に染めあがっている。9月の自民党総裁選では安倍氏以外の候補者が一人も出なかった。この事実も「単色化」を物語るが、新人事もその流れにあるとみていい。

6日の時点で菅義偉官房長官、麻生太郎副総理兼財務相、岸田文雄外相、甘利明経済再生相、中谷元防衛相、高市早苗総務相、塩崎恭久厚労相の留任は決定。「公明党ポスト」の国交相は太田昭宏氏から石井啓一党政調会長に交代する見通し。上川陽子法相、山谷えり子拉致問題担当相、有村治子女性活躍担当相の3閣僚の交代が確実視されている。新ポストの「一億総活躍担当大臣」は甘利経済再生相の兼任となる見込みだ。

党4役も谷垣禎一幹事長、二階俊博総務会長、稲田朋美政調会長、茂木敏充選挙対策委員長、高村正彦副総裁の続投が決まった。

変わり映えのない人事の中、6日時点で一人だけ、その去就がはっきりしない現職大臣がいる。石破茂地方創生担当相だ。

【浜田氏らにも見限られ】

石破氏は9月28日、新派閥「水月会」を立ち上げ、3年後の総裁選に臨む意思を示した。設立会見には山本有二元金融相や鴨下一郎元環境相など石破氏の側近らが顔を揃えたが、集まったのは20人にとどまった。しかも盟友の浜田靖一元防衛相、小此木八郎国対委員長代理の姿はない。

「余計なことを言わず、普通にしていれば70人くらいは集まっただろうになあ」

水月会に集まった人数を聞いた菅官房長官は半笑いで、番記者たちにこう言ったという。官邸や自民党にとって、石破氏の“チョンボ”を挙げたら最近だけでも枚挙にいとまがないそうだ。

党内でメディアを威圧する発言が続出していた7月2日、石破氏は「なんか自民党、感じ悪いよね」という言葉で党執行部を牽制した。懸案事項であった安保法案が衆議院を通過する二日前の7月14日には、「『国民の理解が進んできた』と言い切る自信があまりない」と官邸・与党全体に向けて弓を引くような発言をしている。

いずれも国民感情に沿った発言と言えるが、官邸や自民党内では「相変わらず空気が読めない男だ」と呆れる声が続出していた。

ある自民党関係者は「決定的だったのは1年前の9月」だと述懐する。この時もまた、石破氏が閣内に入るか無役になって次期総裁を目指して派閥を結成するかが議論になっていた。党本部では怒号が響きわたったという。

「絶対に閣僚を引き受けるな。一緒に無役になって、次期総裁に向けて準備をすべきだ」

石破氏にこう向けたのが浜田氏だった。安全保障を専門とするが、狭量な安倍官邸チームとは一定の距離を持ち、聞く耳を持つ議員として周囲の評価も高い。

そんな浜田氏の懸命の説得にもかかわらず、石破氏は目の前にぶら下げられた地方創生担当相のポストにつかまってしまった。「浜田が石破を見限る決定的な場面だった」と見る向きは強い。

前出の自民党担当記者は言う。

「総理大臣や、総理大臣を目ざす人間にとって何よりも重要なのは参謀。安倍政権には菅官房長官という強力な参謀がいるから長期政権になっている。浜田氏や小此木氏は人望もあり、国会対策もできる。参謀になりうる党内でも数少ない議員なのに、その彼らが石破氏を見限ってしまった。水月会が、これから勢力を拡げていく見通しがあるとは思えない」

一方、次期総裁の最有力候補に挙がるのが岸田派(宏池会)の領袖である岸田外相だが、安保法制の審議で安倍首相にひとことも苦言を呈さなかったのは記憶に新しい。「当面、憲法9条は改正することを考えない」(5日、岸田派の研修会)そうだが、どこまで真実味があるのか。

(野中大樹・編集部、10月9日号)