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安倍総裁の再選で「一強独裁」加速――橋下徹氏には大臣ポスト打診

菅義偉官房長官が橋下徹大阪市長に対し、10月に予定される内閣改造・自民党役員人事で地方創生担当大臣のポストを打診していると、自民党関係者が証言した。

橋下氏は先月末、松井一郎大阪府知事とともに維新の党を離党したばかり。松井氏は11月の大阪府知事選の立候補を表明しているが、橋下氏は5月の大阪都構想が住民投票で否決された直後に「政界引退」を表明したものの、その後の記者会見などで記者団に“進路”を問われると曖昧な回答に終始している。

戦争法案への反発から来年7月の参院選では自民・公明の過半数獲得が厳しいと言われる中、官邸内では「自民・公明+橋下新党」という新しい政権構想が浮上している。しかし、自民党も一枚岩ではない。自民党大阪府連リーダーである柳本卓治参院議員(二階派)は大阪都構想に反対の立場であり、大阪市議の甥が、11月の大阪市長選に出馬するという観測が出ている。党大阪府連はあくまでも「反橋下」なのだ。

一方、地方創生担当大臣のポストを剥ぎ取られる可能性が出て来たのは、首相最大のライバルとされる石破茂氏だ。橋下氏への地方創生大臣への打診は、裏をかえせば官邸の“石破切り”でもある。

8日に告示された自民党総裁選は、野田聖子衆院議員が当日朝8時に記者会見を開き、立候補に必要な推薦人20人を集めることができなかったと出馬断念を表明。安倍(晋三)総裁の再選が決まった。

野田氏については「安倍一強」の自民党に危機感を抱く古賀誠元幹事長が出馬を強く働きかけていた。4日には尾辻秀久元参院副議長が野田氏の推薦人になることを表明し、本誌も4日の段階では野田氏が推薦人20人を確保するに至ったとの情報を得ていた。石破氏が野田氏の支援にまわることも想定した安倍官邸の“切り崩し”工作が奏功した格好と言える。

(野中大樹・編集部、9月11日号)

ホリエモンの高校生ユニオンへの批判にも反論――「ブラックバイト是正を」

「労働時間を1分単位で算出するよう通達を」「労働知識を周知する冊子を高校生に配布してほしい」「自爆営業の禁止を」――。

8月27日に発足した首都圏高校生ユニオンが、ブラックバイトの是正を求めて厚生労働省へ提出した要望書への回答が9月3日、東京都内で組合側に示された。

15項目からなる要望書に対して厚労省は、労働時間を15分や30分などの単位で算出し、端数を切り捨てることは、賃金未払いなどと同様に労働基準法違反に当たると明言。労働者が使用者の指揮命令下にある場合は労働時間であり、文書での是正指導の対象になるとした。さらに、使用者が繰り返して指導に従わない際には書類送検を行なう、とも答えた。

また、高校生向け冊子の配布について「方法を含め検討する。事業者向け冊子も検討する」と応じた。一方で、横行する自爆営業(ノルマ達成のため自腹で商品購入)の是正については「労基法に抵触するわけではなく、禁止の通達を出すのは困難」と難色を示した。

高校生ユニオンの発足に対しては、ホリエモンこと堀江貴文氏らがツイッターで「頭おかしい」「(ブラックなバイト先を我慢せず、すぐに辞めれば)業者には淘汰圧力がかかる」などと批判している。

回答の場で、ユニオンの高校生3人は「求人広告よりも時給が安かった」「辞めさせてもらえない」「労働時間が5分単位で算出された」などと実情を訴えた。

ネットでの反応にユニオンの高校生の一人は「おかしいことは正すのが当たり前なのに、社会はそうなっていないと感じた」と一言。

首都圏青年ユニオンの宮城みのり氏は「働く本人も使用者も労働法を知らず、そもそも違法という認識がない。グローバルな人材の育成どころか、このままでは貧しい国になっていく。経済を回すためにもブラックバイトへの世論の関心が高まり、現状が是正されるべきだ」と指摘した。

回答の場に同席した民主党の山井和則衆院議員も「ユニオンの訴えは特殊なケースではない。アルバイトの現場では違法な働かせ方が常態化している」と述べた。

初めての労働体験がブラックバイトで、労使双方が違法性を認識しない現状は、ブラック企業がはびこる新たな温床と言える。

(斉藤円華・ジャーナリスト、9月11日号)

集中協議決裂で浮き彫りになった政府と沖縄の溝――埋め立て承認を取り消しか

辺野古・米軍キャンプ・シュワブのゲート前県民大集会。(9月5日、撮影/本誌取材班)

辺野古・米軍キャンプ・シュワブのゲート前県民大集会。(9月5日、撮影/本誌取材班)

沖縄県名護市辺野古への新基地建設をめぐる政府と沖縄県の最終集中協議が9月7日、官邸で開かれた。期間中、政府は移設作業を1カ月間停止し、事務方レベルも含めて合計5回の協議を行なった。最後の協議には安倍晋三首相も出席したが、双方の認識の隔たりは大きく、相互不信は払拭されないまま決裂した。先月29日に那覇市内で行なわれた4回目の協議後、沖縄県の翁長雄志知事は「協議を続けても厳しい状況ということははっきりしている」と記者団に語っていた。菅義偉官房長官も「著しく距離感がある」と同様の認識を示していた。

これまで5回にわたり先行きが見えないまま双方が“主張だけ”の協議を続けたことで、戦後70年間も放置され続けてきた現実がクローズアップされ、結果、焦燥感だけが残った。

これから翁長知事は、前知事が行なった埋め立て承認の取り消しへ向け大きく舵を切ることになる。知事は、圧倒的民意で勝利してきた昨年一連のすべての選挙(県知事選・衆院選)を盾に最高裁まで徹底的に争う構えを見せているのだ。政府と沖縄県が法廷で「全面対決すると不利な状況になる」というのが官邸側の本音だが、政府側が辺野古新基地建設を断念しない限りこれは避けられそうにない。

安倍政権が沖縄県側との協議を続けてきた背景には、安保法制の強行採決や自民党総裁選などを抱え、これ以上安倍政権の支持率を下落させるわけにはいかない官邸の台所事情がある。

また、官邸は来年1月の沖縄県宜野湾市長選挙に照準を定め、自民党沖縄県連(島尻安伊子会長)は県内各地で安保法制の正当性と基地返還跡地利用や再編を受け入れる自治体向けの活性化策を訴える街宣活動を積極的に行なっている。名護市で先月の15日に確認されているだけでも8カ所で街宣を行なった。自民党沖縄県連の訴えを直接聴いた名護市民はそのあまりに無理な主張に驚いたという。

衆議院沖縄3区で敗れ、比例で復活当選した比嘉奈津美氏は「沖縄は全国一経済成長している。仲井眞弘多前知事が8年間で基礎を固めた。この間、翁長知事を連れて直接安倍首相に会わせ沖縄振興の予算要求したのは私たちだ。国政与党のパイプを使った」と訴えたのだ。前出の名護市民は「『予算要求したのは私たち』というのはわかるが、沖縄県民はすべての選挙区で自民党候補者を落選させた。民意は無しか!」と語気を強め怒りをあらわにした。

【「島ぐるみ会議」に結集】

そんななか「戦後最大の基地闘争になる」と語るのは、沖縄建白書を実現し未来を拓く島ぐるみ会議事務局長の玉城義和沖縄県議会議員(名護市選出)だ。「島ぐるみ会議」(通称)とはオスプレイの配備撤回と普天間基地の閉鎖と返還、県内移設断念を求めて県内各地に自主的に立ち上がった反対運動の住民組織。沖縄県41市町村のうちこれまで結成済みや準備中も含めると9月7日の時点で31の市町村で結成されている。

島ぐるみ会議事務局によると、9月21日と22日にはスイスのジュネーブで開かれる国連人権理事会に翁長知事が出席し本会議場で声明を発表する。人権理事会のイベントでも翁長知事の演説を予定しており、政府と沖縄県の埋まらない溝を直接国際世論へ訴える。

さらに、先週末の5日には移設予定地近くの米軍キャンプ・シュワブのゲート前で「工事の再開を許さない県民集会」が開かれ主催者発表で3800人が集まった。参加者は「新基地はいらない。美ら海守れ。安倍政権は退陣せよ!」と声を上げた。名護市の稲嶺進市長は、政府と県が移設に関する集中協議のため、埋め立てに向けた作業を中断していることに触れ「1カ月間、止めることができるなら、これからも可能だ」と移設阻止に向けた決意を表明した。

今後、翁長知事は、前知事の埋め立て承認を取り消す手続きを加速させる一方、辺野古移設に関する「県民投票」実施の動きもあり、注目される。

(本誌取材班、9月11日号)

「在日」の若者らが連帯して渋谷でイベント

8月23日、「平和」「多様性」などのメッセージを掲げ東京・渋谷をパレードする人々。(写真/渡部睦美)

8月23日、「平和」「多様性」などのメッセージを掲げ東京・渋谷をパレードする人々。(写真/渡部睦美)

「在日」の若者が企画した、人権・平和・多様性がテーマのイベント「PEACE & FRIENDSHIP 2015 ―若者の声を聴け―」(コエキケ)が8月22日と23日、東京・代々木公園とその周辺で開かれた。2日間で約3000人が訪れ、23日に行なわれたパレードには約150人が参加した。

イベントの発起団体となった在日本大韓民国青年会の呼びかけで、在日韓国人だけでなく中国や韓国の留学生、日本人などの若者も企画に携わった。イベントには、韓国料理や中国の土産物の屋台が並んだほか、民族楽器の演奏や日中韓の女性らで構成されるアイドルのライブが催されるなど穏やかな雰囲気で進んだ。

在日韓国青年会会長の徐史晃さん(35歳)は、これまで民族や人種差別などを扇動するヘイト・スピーチに抗する取り組みをしてきたが、その中で「生身の自分を知らない人が多い。日本社会の中での横のつながりが弱い」と感じてきたという。今回のような形式でのイベントを企画したのは、「ヘイト・スピーチにまつわる『表現の自由』の問題は非常にわかりづらい。ポジティブな形で社会と連帯していく方策を探り、横のつながりを増やしたかった」(徐さん)からだ。

コエキケ実行委は、国籍や団体といった属性を乗り越え、多様な生き方を認め合う寛容な社会の実現を目指し、今後も継続的にイベントを開催していくという。

(渡部睦美・編集部、9月4日号)

「首都圏高校生ユニオン」発足――ブラックバイトに対抗

都内で会見に臨む首都圏高校生ユニオン。右から神部氏、羽多野さん、篠さん。(撮影/斉藤円華)

都内で会見に臨む首都圏高校生ユニオン。右から神部氏、羽多野さん、篠さん。(撮影/斉藤円華)

労働者の無知につけ込み違法に働かせる「ブラックバイト」の横行に対抗すべく、労働組合「首都圏高校生ユニオン」が発足。8月27日に東京都内で会見した。

当初の加盟数は5人で、会費は月500円。ブラックバイトの労働相談や団体交渉に取り組む「首都圏青年ユニオン」(神部紅委員長)が活動を支援する。

都内定時制高校2年の羽多野幸遥さんは、以前勤めていたコンビニ店でパワハラ被害に遭った。「オーナーや店長から、私だけ他の社員よりも厳しく注意された」。母親に首都圏青年ユニオンを紹介され加盟。「気持ち良く働きたい」との思いから店との団体交渉に臨み、解決した。羽多野さんは「これからは自分が助ける側になりたい」と意気込む。

高校2年の條大樹さんが働く居酒屋チェーンでは、労使間協定がないにもかかわらず給与から制服代が天引き。しかも時給計算は1分単位ではなく15分だった。「仕方がないと諦めていたが、5月に羽多野さんの体験を聞き、組合に参加した」と條さん。現在、店と団体交渉中だ。

千葉県内高校3年の小木友梨子さんが勤務するコンビニ店では、夏祭り時などにタダ働きを強要し、「給料」は菓子1個。店は高校生を「勇者」と称える。小木さんは「試験1週間前からの休みを希望したら『困る』と言われ、3日前からしか休めなかった」と話した。

羽多野さんらの毎月のバイト収入は2万~6万円で、定期代や携帯電話代などに使う。條さんは「親に負担は掛けたくない」と話す。

会見に同席した神部氏は「高校生の労働相談が増えている。しかし学校では労働組合の役割を教えず、高校生が労組にたどり着く回路がなかった。今後は高校生自身が仲間のために闘うスタイルが必要」と説明した。ブラックバイトは違法性が強いため、団体交渉すればほぼ全てで解決するという。

(斉藤円華・ジャーナリスト、9月4日号)

マイナンバーの利用拡大法案が成立へ――差し止め求め違憲訴訟も

12月に違憲訴訟を起こす方針を説明する水永誠二弁護士。(8月28日、撮影/小石勝朗)

12月に違憲訴訟を起こす方針を説明する水永誠二弁護士。(8月28日、撮影/小石勝朗)

共通番号(マイナンバー)制度の施行前にもかかわらず、用途を預貯金口座や健診データに広げる法案が8月28日、参院で可決され、今国会で成立することになった。

日本年金機構の個人情報流出を受け、同機構による共通番号の利用開始を当初の来年1月から最大1年5カ月遅らせると修正した。しかし、10月5日からの個人番号通知を前に実務を担う地方自治体の安全対策の不備が露呈しており、反対運動も活発化している。

8月27日の参院内閣委員会では、年金機構の問題を受けて総務省が自治体に対し、付番した個人情報を扱う「基幹系」とインターネットにつながる「情報系」のネットワークを分離させるよう求めたのに、8月18日時点で1~2割が完了していないことが判明した。

未分離の自治体も付番の手続きを進めていることを批判された山口俊一IT担当相は、10月の制度施行時にセキュリティーが整っていない自治体は「マイナンバーのネットワークに入れない」と明言。全国一斉に制度をスタートできない可能性も出てきた。

一方、8月28、29日に「共通番号いらないネット」が東京都内で開いた反対集会では、共通番号制度はプライバシー権を侵害して違憲だとして、12月1日に全国7カ所以上の地裁に番号の使用差し止めを求める訴訟を起こす方針が報告された。準備に当たる水永誠二弁護士は「庶民は一方的に個人情報を吸い上げられて利・活用され、プライバシーは有名無実化される。問題点を広く明らかにして制度に歯止めをかけたい」と話した。

同ネットは引き続き番号通知の延期を求めるとともに、制度が施行された場合には、(1)番号通知カードの返上、(2)個人番号カード(ICカード)への取り替え拒否、(3)公的書類への番号不記入――といった「抵抗策」を検討していくことを決めた。10月3日には東京で千人規模のデモを計画している。

(小石勝朗・ジャーナリスト、9月4日号)

総裁選は無投票再選でも、強行採決回避の思惑は外れる――安倍政権の“維新工作”頓挫

「都構想」住民投票敗北で「政界引退」を表明した橋下氏だが……。(5月10日、撮影/横田一)

「都構想」住民投票敗北で「政界引退」を表明した橋下氏だが……。(5月10日、撮影/横田一)

谷垣禎一幹事長ら自民党執行部は総裁選を「9月8日告示・20日投開票」に正式決定、安倍晋三首相の無投票再選の見通しが強まっている。永田町ウォッチャーは「20人の推薦人確保の目途が立っていない野田聖子・元総務会長が水面下で賛同者を募り、一気に出馬表明をすれば、安保法制成立は危うくなる。事前に漏れると潰されるので極秘に進めている可能性はゼロではない」と語る。

一方、安倍政権が意欲を示していた「維新の党との修正協議」は頓挫する見通しだ。当初は、衆院段階では合意に至らなかったものの、参院でも維新独自案(対案)の早期提出を呼びかけ、与党協議の再開にも意欲的だった。これを受けて維新は8月20日に8本の対案のうち5本を提出、与党協議も28日に再開したが、一転して高村正彦副総裁は27日、「(維新との)話し合いには真摯に対応するが、維新が一本にまとまってくれるか慎重に見ないといけない」と述べ、消極的な姿勢となった。「安倍政権は、修正協議で参院での強行採決は回避したいと考えていた。しかし維新分裂が決定的となり、執行部が政権対決姿勢を強めることが確実なため、自民党の思惑が外れた」(永田町ウォッチャー)。

安倍政権の“維新工作”頓挫は、党内闘争で大阪組が執行部に敗北したことを意味する。山形市長選の野党系候補を支援した柿沢未途幹事長辞任を強く求めた松井一郎・大阪府知事(維新の党顧問、当時)は、25日に菅義偉官房長官と面談。この頃、後任幹事長として大阪組の馬場伸幸国対委員長の名前も挙がっており、安保法制の修正協議を左右する幹事長ポスト争奪戦の様相を呈していた。

柿沢幹事長は、小林節・慶應義塾大学名誉教授らから「合憲」の評価を得た独自案作成に尽力した中心人物。与党協議についても「独自案のつまみ食いは許さない」と自民党に強い姿勢を示していた。結局、「党のルール違反をしたわけではない。辞任する必要はない」(松野頼久維新の党代表)とする党執行部の意向は固く、「幹事長ポストを奪取して修正協議で安倍政権と妥協する」というシナリオが実現することはなかった。

一連の経過を辿ると、29日の橋下徹市長(維新の党最高顧問、当時)の「大阪維新の会」の新党結成宣言は、「官邸別動隊」「第二自民党(与党補完勢力)」と呼ぶのがぴったりの大阪組が本性を露呈したといえる。本来なら橋下氏は「維新独自案を丸呑みすべき。違憲法案を強行採決なら安倍政権を打倒する」と訴えて執行部を後押しするのが普通なのに、実際には天下分け目の決戦を前に“御家騒動”を引き起こし、安倍政権から法案根幹部分の修正(違憲法案を合憲法案に変更)を勝ち取ろうとする執行部の足を引っ張った。

「国民の奴隷ではない」(大阪都構想投開票日の会見)と断言した橋下氏だが、「安倍政権の“下僕”(補完勢力)にはなる」と勘繰られても仕方がないだろう。

【「非自民」の受け皿なるか】

すでに維新非大阪組の間では分裂を見越した動きも始まっていた。

8月24日の区市町村議員団研修会で、かつて橋下氏のブレーンで、今は「フォーラム4」を設立した元経産官僚の古賀茂明氏が講演。「『改革はしないが戦争はする自民党』に対決するには、『改革はするが戦争はしない』という第四象限(フォーラム4)の政党が不可欠。維新も民主もこの立場の政党になるといい」と助言した。「安倍政権と対決するのか接近するのか分からない曖昧政党から脱却すれば、非自民党の受け皿になる」という考え方である。質疑応答では、「橋下氏は安倍政権に接近、『公武合体(幕藩体制の再編強化)』をしようとしている。『維新』を名乗っているのに進む方向が正反対」といった批判が次々と飛び出し、古賀氏に賛同する声も相次いだ。

橋下氏の新党結成宣言で、非大阪組の維新が民主党に接近、安保法制反対の野党共闘が進むのは確実。非自民の受け皿作りが一気に加速する可能性が出てきたといえるのだ。

(横田一・ジャーナリスト、9月4日号)

自民党副幹事長、義家弘介氏が顧問の協会代表――SEALDs琉球にデマか

沖縄県内の「自由と民主主義のための学生緊急行動」(シールズ琉球)をめぐる怪情報がインターネット上で飛び交っている。手登根安則氏(日本文化チャンネル桜沖縄支局キャスター)によるSNSへの書き込みが発信源の一例だ。

シールズ琉球は8月23日、米軍嘉手納基地近くの美浜多目的広場で「戦争法案に反対する緊急アピール」を実施し、約500人(主催者発表)が参加した。手登根氏は24日、自身のフェイスブックへ「エイサー(編集部注:祭祀芸能)をする、という理由で借りたようですが内容は反政府、反基地、反安全保障法案」と書いた。また、北谷町が定める「使用基準」「利用規約」関連の使用制限事項に「特定の政治団体、宗教団体及び個人等の利益になる活動(例:特定の政治団体の選挙活動、特定の宗教団体の勧誘活動等)」があるとし、「公共機関が政治団体に場所を貸し広報」などと記した。不特定多数の利用者が閲覧可能で、9月1日時点で668人が「いいね」(賛同)を押し、33人が転載している。

だがシールズ琉球は「エイサーは間近で決まり追加したもの。当初からアピールを目的に申請した」と説明する。同町企画財政課は「集会と演舞で最終的に受理しています。総務大臣等へ届け出のある政治団体に該当せず、憲法21条等の観点からも無闇に制限されるべきでないと考える」と回答した。

手登根氏は本誌に「知人からの伝聞を基にしたあの書き込みはシード(問題提起)です。真実が明らかになれば伝えるが、情報をどう判断するかは皆さん」と言う。

沖縄教育オンブズマン協会代表(義家弘介自民党副幹事長が顧問)など複数肩書きがある手登根氏は、東京都内で8月7日開催の「琉球新報、沖縄タイムスを正す県民

・国民の会」集会でゲストとして司会を担当。「ウソを平気で書いて(中略)実証されぬまま(中略)歴史に刻まれているのがたくさんある」などと訴えたが、自身はどうか。同会の名誉顧問は中山成彬氏(次世代の党両院議員総会長)で、集会当日は百田尚樹氏らも出席した。

手登根氏の周辺・関連記事として、ネット情報サイト『リテラ』は〈「基地反対派がハーフ女児暴行」は右派のデマ攻撃だった! 元国会議員も関与〉(15年4月7日、梶田陽介氏執筆)を報じている。

(内原英聡・編集部、9月4日号)

『四国新聞』、西日本放送と自民・平井たくや議員の癒着――6200万円もの資金還流

西日本放送サービス本社玄関の平井たくや衆議院議員のポスター。平井氏は2014年10月まで同社の取締役で、現在も1800株を持つ大株主。(撮影/三宅勝久)

西日本放送サービス本社玄関の平井たくや衆議院議員のポスター。平井氏は2014年10月まで同社の取締役で、現在も1800株を持つ大株主。(撮影/三宅勝久)

平井たくや衆議院議員(自民・香川1区)が、自身が代表を務める自民党支部を通じて、身内企業である西日本放送と『四国新聞』の関連会社(高松市など)に対して5年間で6200万円を超す政治・選挙資金の支出をしていることが政治資金収支報告書などから判明した。6200万円のうち3400万円は政党交付金などの公金で、平井氏はこれらの支出がされた企業から「役員報酬」「顧問報酬」として多額の金銭を受領していた。メディアと政治家の間で政治資金を還流させ、報道の公正さがゆがめられている疑いは濃厚だ。

『四国新聞』の社主は平井氏の母・温子氏。西日本放送は平井氏がかつて社長を務め、現在は弟の龍司氏が取締役に就いている。どちらも平井氏の一族経営で、平井議員も大株主である。そして自民党や平井氏に好意的な報道をすることで有名だ。「平井新聞」「平井放送局」とささやかれている。

その「香川のメディア王」平井議員が代表を務める「自民党香川県支部連合会」と「自民党香川県第一選挙区支部」が香川県選挙管理委員会に提出した政治資金収支報告書の支出欄をみると、『四国新聞』や西日本放送のほか、両社の関連会社が続々と登場する。

西日本放送サービス、モトリス、アド・サービス・センター(以下、アド社)、アール・シー・エス、ネクサス、シコク・サービス、アクシス。これらの会社に対して「新聞広告掲載代」「政治資金パーティ運営費」などの費目で、1件数万円から数百万円の支出を多数行なっている。選管に記録がある2011年から13年の3年間だけで、総額4972万円もの金額だ。西日本放送サービスの2776万円を筆頭に、ネクサス1270万円、モトリス611万円と続く。

西日本放送サービスとモトリスは平井氏が14年後半まで取締役をしていた。モトリスについては現在も顧問だ。4972万円のうち2300万円は政党交付金から払われている。

09年と10年については、政治資金収支報告書はすでに廃棄されているものの、政党交付金の記録は残っている。自民党香川県支部連合会と自民党香川県第一選挙区支部の政党支部交付金収支報告書によれば、西日本放送サービスやアール・シー・エス、アクシス、アド社に計922万円が「ポスター印刷代」などとして政党交付金から払われている。アール・シー・エスは、平井議員が14年4月まで取締役をしていた。アド社は弟・龍司氏が会長だ。

14年12月の衆議院選での選挙資金も平井氏の身内企業に流れ込んでいる。西日本放送サービスとアド社に対して公選はがきや選挙ポスター代など316万円。うち256万円が公費だ。

以上、確認し得たものだけを合計すると、平井氏の身内企業への資金流入は6210万円で、うち公費が3479万円と、約6割を占めた。

一方、衆議院議長に提出された資産報告書類によれば、13 年末現在で平井氏は西日本放送サービスをはじめとする7社の役員と私立高松中央高校の理事をしており、これらの企業などから年間約3000万円の報酬を受け取っている。

【メディアを政治家が支配】

与党の代議士が、税金を含む政治資金を身内企業に流し、自分自身もその利益にあずかる。結果、自民党と平井氏に好意的な報道がなされ、選挙を有利に運ぶ。けじめなき光景を前に、ドイツやアメリカなどのメディアで仕事をした経験を持つジャーナリスト・神林毅彦氏は驚く。

「権力をチェックするはずのメディアが、政治家に支配され、税金まで入れている。先進国ではありえない。そんな新聞・テレビは信用を失う。地元の記者や野党は何をしていたのか」

平井事務所に見解を質すと「親族が経営する会社だからと言って、法的にも倫理的にも問題があるとは思えない。『四国新聞』や西日本放送が報道の内容を変えたとかもない」との回答だった。

問題は政治家を選ぶ側にもある。

(三宅勝久・ジャーナリスト、8月28日号)

最大20万床、政府の入院ベッド削減構想に不安の声――入院患者が行き場を失う

「2025年の全国の入院ベッド(病床)数を1割以上削減する――」。政府が6月に打ち出した病床削減構想に、多くの患者や家族が不安を抱いている。

ただし、政府に強制力はなく、そのスタンスも揺れている。実現可能性は、まだ見えてこない。

「また出て行け、と言われたらどうしたらいいんでしょう」。福岡市に住む女性(52歳)はそう言って、深いため息をついた。

糖尿病を患う女性の父親(77歳)は同市郊外の高齢者向け長期入院施設、療養病床に入院して3カ月になる。女性は夫と共働き。自宅には義母が同居しており、父を迎える余裕はない。以前に入院していた自宅近くの病院から退院を迫られ、今の病院はつてを頼ってようやく見つけたばかり。それなのに国の病床削減策が本格化すれば、再びベッドを追われかねない。

【3割以上削減される県も】

政府は6月、2025年に必要となる全国の病床数を115万~119万床と公表した。現在の病床数(約134万7000床)からすると、最大20万床、15%の削減となる。25年時点の人口推計などをもとに、各都道府県で必要となる病床数を積み上げた。大阪、神奈川、東京など高齢人口の急増が想定される6都府県では病床を増やす必要があるとする半面、残る41道府県はすべて削減対象だ。九州、四国では3割以上の削減を迫られる県も少なくない。

「治療が不要な入院患者は数十万人」。そう考える国は、こうした患者が退院したり介護施設に移ったりすれば、病床を20万床減らしても問題ないとみている。

療養病床の患者1人当たりの医療費は月35・8万円~59・6万円。これに対し、介護の老人保健施設なら27・2万円に抑えられるという。12年度に35・1兆円だった医療給付費は、このままでは25年度に54兆円へと膨らむとされ、病床再編構想には医療費カットに結び付けたい国の本音が見え隠れしている。

「20万床減」に対する厚生労働省の言い分は、「あくまで参考値で、強制はしない」。だが、医療現場はそうは受けとめていない。医療費抑制を迫る財務省は「規定方針」とみなし、厚労省と食い違う。日本医師会の横倉義武会長は「必要な病床数は地域の事情によってさまざま。都道府県の数字を足して全国の数字を出すことに意味はない」と切って捨てる。「入院ベッドを出て介護へ」。そんな国の姿勢に、関係者は不信を強めている。

15年度、介護事業者らに支払われる介護報酬は2・27%減と過去最大の削減幅となった。医療同様、介護保険の財政も苦しく、退院患者の受け皿となるはずの介護施設整備は進んでいない。医療や介護の現場からは「受け皿なしに病床を減らすなら、医療と介護が必要な高齢者は行き場を失う」との批判が噴き出ている。

【看取りの場はどうなる】

ただ、病床を巡る政府の政策は、二転三転を繰り返してきた。国に振り回され続けてきたという埼玉県の病院長は、「どうなるかわからない。様子を見た方がいい」と冷静に受けとめている。

というのも、国や都道府県は病院のベッド増設にストップをかける権限は持っていても、削減を強要する権限はないからだ。日本の病院は8割が民間で、行動を縛るのは難しい。国ができることは病床を減らした医療機関を診療報酬や補助金で優遇するくらいだが、効果はハッキリしない。この病院長は「今、各病院が持つベッド数の枠は既得権益の面がある。簡単には手放さない」と漏らす。

日本では8割の人が病院で死ぬ。「自宅の畳の上で死にたい」という望みはあっても、さまざまな家庭の事情がそれを許さない。そうした現状での病床削減は、さらに看取りの場を失うことにもなる。今後、「多死社会」が本格化するにもかかわらず、在宅医療・介護は行き詰まっている。

「看取りの場の確保は切実だから。現実には、病床を大幅に減らすことは難しいかもしれない」。厚労省幹部は、そうつぶやく。

(吉田啓志・『毎日新聞』編集委員、8月28日号)