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高経年化(老朽化)審査未了でも――再稼働へ急ぐ川内原発

燃料装荷に抗議。(7月7日、東京・千代田区の原子力規制委員会前にて。提供/阪上武)

燃料装荷に抗議。(7月7日、東京・千代田区の原子力規制委員会前にて。提供/阪上武)

鹿児島県川内原発1号機は、燃料装荷を終え、九州電力は8月中旬にも起動の構えでいる。1号機は昨年7月3日に運転開始30年が経過しており、新規制基準の適合性審査とは別に、運転開始30年の高経年化(老朽化)対策に関する審査が必要だが、これが終わらず、認可を受けていない状況にある。

規制庁は、高経年化対策は再稼働とは無関係とし、再稼働前に審査が終わらなくても手続き上は問題はないとしている。一方で昨年7月、30年が経過する前日に行なわれた規制委員会の会合では、安全上問題はない理由に、当面、冷温停止が継続することをあげていた。運転すればより劣化が進むことになり、制度の趣旨に反する。

私たちは7月6日に規制委・規制庁に対し、審査が未了である状況で再稼働をさせないこと、燃料装荷を含む再稼働への作業を中止させること、現場検証、外部有識者からの意見聴取、一般からの意見募集を実施し、審査結果に反映させることを求めて要請行動を行なった。福島原発事故を受け、これまで以上に慎重で厳格な審査が必要なことは言うまでもない。

にもかかわらず、ここへきて、審査を急いで終わらせる動きが表面化している。九電の補正申請の審査が13日から始まったが、始まる前から29日には終わる方針との報道(『毎日新聞』)が流れている。再稼働に合わせて審査を急ぐというのは本末転倒だ。

今回の補正申請は、基準地震動の変更により、耐震評価を追加でやり直したもので、審査が数週間で終わるとはとても思えない。13日の審査会合で明らかになった評価結果をみても、例えば、主給水系配管の疲労累積係数は、許容値1に対し0・991と余裕がない。1カ所ずつしかない選定部位を広げて評価するなり、当該部位を交換するなりの対応が必要となる。

スケジュールありきの杜撰審査は許されない。

(阪上武・原子力規制監視市民の会、7月17日号)

マイナンバー、10月施行を前に広がる不安と疑問――地方議会・議員から異論続出

共通番号制度への不安と疑問を訴える地方議員=6日、衆議院第一議員会館。(撮影/小石勝朗)

共通番号制度への不安と疑問を訴える地方議員=6日、衆議院第一議員会館。(撮影/小石勝朗)

日本年金機構の個人情報流出を受けて、全国の地方議員100人が7月6日、共通番号(マイナンバー)制度の施行延期を求める共同アピールを発表した。これとは別に制度の中止を求める意見書を可決する市議会が出るなど、10月からの個人番号通知を控え、実務を担う自治体の周囲で不安と疑問を訴える動きが広がりつつある。

共同アピールに名を連ねたのは、主に首都圏と関西の「市民派」の県議・市区町村議で、元職も含む。女性が3分の2を占める。

アピールは「共通番号制は年金機構以上に個人情報流出の可能性がある危険な制度」と強調。自治体の導入準備が遅れていることにも触れ、番号通知などのスケジュールを全面的に見直すよう求めた。また、預貯金や健診情報への利用拡大法案(参院で審議中)を廃案にするよう国会に要請した。

アピール発表に参加した議員からは問題点の指摘が相次いだ。

「住所がない人やDV被害者に個人番号をどう通知するのか、質問に市はきちんと答えられない」

「市民に6%余しか普及していない住基カードでさえ、偽造やなりすましが2件起きている」

「市の財政負担がどのくらいになるのか見えない」

一方、京都府長岡京市議会は6月23日に「『共通番号制(マイナンバー)』法の中止を求める意見書」を可決した。情報流出の危険のほか、中小・零細事業者のシステム変更・情報管理の費用負担が大きいことを理由に挙げており、公明も賛成した。愛知県豊明市議会も「慎重に対応することを求める意見書」を6月29日に可決した。

共同アピールを仕掛けた「共通番号いらないネット」世話人の白石孝さんによると、複数の首長からも施行延期を訴えたいと相談が寄せられているという。今後、地方議員と共に街頭キャンペーンなどで市民へのPRを強め、「延期」の機運を盛り上げていく構えだ。

(小石勝朗・ジャーナリスト、7月17日号)

自衛官の原因別死亡者数を把握していなかった――防衛省のずさんな集計

(注)陸海空自衛隊の在職中に死亡した自衛官数。

(注)陸海空自衛隊の在職中に死亡した自衛官数。

7月10日号の本誌記事「イラク派遣で自殺等増加か」に関連して、防衛省は7月9日までに、当初発表していた死者数を大幅に増える方向で訂正し、阿部知子衆議院議員ら質問を行なっていた複数の野党国会議員に伝えた。

訂正があったのは2003年度~14年度の在職中に死亡した自衛官の数と死因の統計。従来191人としていた04年度の死亡者数を207人に訂正したのをはじめ、09年度は168人を185人に、10年度は143人を155人に、11年度も150人を156人に、それぞれあらためた。

数字を誤った原因について防衛省は、自衛官の原因別死亡者数をこれまで集計したことがなかったためだと説明しているという。

憲法違反が明白な集団的自衛権行使に伴う自衛官の危険度について、安倍首相は8日のインターネット放送で「リスクも減っていく」と述べた。しかし、自衛官の死亡総数という基本的なデータすら防衛省は正確に把握していなかったのだから、安倍首相は口から出まかせを言ったのではないだろうか。

一連の訂正によって、03年度~06年度の自衛官の死亡者数をみると、4年続けて200人を超している。ちょうどイラクやインド洋、クウェートへの派遣が行なわれていた時期だ。

また、この03年度~06年度の4年間を陸上自衛官だけについてみると、ほかの期間と比べて突出して死亡者が多く、03年度から各年度、142人、138人、152人、141人だ。07年度~09年度は大きく減って120人台、10年度以降はさらに減って約100人で推移する。14年度は89人だった。派遣によるストレスや疲労によって死者が増えた疑いはぬぐえない。

なお7月10日号で、イラクなどへの派遣経験のある自衛官の死亡者数を124人としたのは123人の誤りであった。謹んで訂正したい。

(三宅勝久・ジャーナリスト、7月17日号)

横浜市立中で1年生に陸自演習見学を募集――予備自衛官の教諭が発案

「日本の力を見届けよ」などと富士総合火力演習をアピールするポスター(陸自の公式サイト URL http://www.mod.go.jp/gsdf/)。

「日本の力を見届けよ」などと富士総合火力演習をアピールするポスター(陸自の公式サイト URL http://www.mod.go.jp/gsdf/)。

横浜市立中山中学校(横浜市緑区)で、1年生を対象に、陸上自衛隊が8月に東富士演習場(静岡県御殿場市)で実施予定の「富士総合火力演習」見学会への参加者を募っていることが分かった。

見学会を発案したのは社会科の男性教諭で、陸上自衛隊の予備自衛官二等陸尉。2年前に立ち上げた保守系の教職員組織「横浜教職員連盟」の会長も務める。

同校の1年生8クラスの生徒約290人に配られた案内プリントには「社会科の夏季学習を行います」と記され、8月18日の予行演習の見学会への参加希望者10人を募集した。申し込み多数の場合は抽選会を行なうとしている。

プリントには日程のほか、「公民的分野との関連」について、平和主義の単元に対応していることを説明。育鵬社の中学教科書の指導書から、観点別評価規準に挙げている文章を引用し、「平和主義が日本の平和を守るだけでなく、世界の平和に貢献する考えであることに気づいているか」「自衛隊が平和を守る組織として充実している事実を理解しているか」といった項目を列挙している。

陸自の「富士総合火力演習」は毎年8月に実施。戦車やヘリコプター、火砲などによる実弾射撃を間近で見られる人気イベントだ。昨年の一般公開演習には2万9000人が入場し、観覧入場券の応募倍率は24倍だったという。

小嶋貴之校長によると、社会科の男性教諭が自衛隊神奈川地方協力本部市ヶ尾募集案内所の広報担当に相談し、生徒10人分の入場券を確保したという。

「防衛省の考え方もあるが、小中学校・高校の生徒や大学生は優先的に見学の枠を取るようだ。コネで便宜を図ってもらったのではない」と校長は説明する。

「社会的事象について触れることで、社会科の学習のきっかけとして不適当でないと考えた。昨年度も実施した経緯と実績がある。希望者は保護者の同意を得て参加しており、公的機関が一般公開している催しなので認めた」

同校では同じ教諭の発案で、同様の陸自演習の見学会を2009年と2014年の2回実施している。いずれも3年生が対象で、1回目は1人が参加。2回目は15人が希望し10人が参加した。

今回は7月3日までに男女17人の希望者があり、抽選で参加者を選んだ。見学会は予定通り実施する方針だという。

同教諭は12年8月、海上自衛隊横須賀地方総監部に1年生18人を引率し、「海上からの地形図の読み取り学習」として海自の交通艇に乗船させた。

【教職員の会など中止を要請】

横浜市教育委員会指導企画課の三宅一彦課長も、「夏休みの自主的な学習の一つととらえている。保護者の承諾を得て、公的機関の催しに生徒が参加するのだから問題はない」との見解だ。

生徒たちが見学する陸自の演習が、関係者しか観覧できない一般非公開の「予行演習」であることについても、「先生方はそれぞれさまざまな経歴やコネクションを持っている」と理解を示した。

予備自衛官である男性教諭からは、市教委に兼職の届けが提出され受理されているという。予備自衛官は、自衛隊に1年以上勤務した元自衛官らが対象で、有事の際は駐屯地警備に就くほか、年間20日以下の訓練招集などの任務がある。月額4000円の手当と、日額8100円の訓練招集手当が支給される。

一方、教育関係者や保護者からは、「中学1年生はまだ未成熟。影響は大きく問題だ」と、反発や批判の声が上がっている。

「子ども・教育・くらしを守る横浜教職員の会」は、「結果的に自衛隊はカッコいいという感情を育てる洗脳教育になってしまう恐れがあり、公教育として許されない」と指摘し、見学会の中止を市教委に要請した。

独立系教組の「横浜学校労働者組合」は、「自衛官募集のための行動と見まがうばかりで、教育の中立性・公正性を著しく欠く」として、中止を申し入れた。

(池添徳明・ジャーナリスト、7月17日号)

「安保法制」はおかしいです。(5)

「もともと田んぼ」「基地の周りに行けば商売になるということで人が住みだした」――自民党議員らによる6月25日の文化芸術懇話会で、作家の百田尚樹氏はこう放言したという。後日、自身の発言に批判を受けた百田氏は、『日刊SPA!』(Web版7月9日)で「基地というビジネスチャンスがあったからこそ、基地周辺に人が移り住んできた」と持論を重ねた。

槍玉に挙がった沖縄・宜野湾市の米軍普天間飛行場は住宅の密集地区にあり、騒音をめぐる「第2次普天間爆音訴訟」が進行中だ。原告団(約3400人)の意見陳述書作成に関わる中で、私はさまざまな証言を聞いた。戦前から本籍地を宜野湾に置く人には、戦時中に農地を奪われ、「生活」と「仕事」の場を一挙に失った人も多い。たとえば、Aさんの故郷は今もフェンスの中にある。返還を信じて普天間基地周辺に住み、「軍作業員でも何でもやった」と言う。Bさんは「ここはうるさい。孫たちは那覇に引っ越してしまった」と話す。Cさんは「子育てがあり、実家や職場の近くにいたい」として、基地周辺の住宅地に留まっている。

軍事基地は本来の生業を潰してできたものであって、これによる経済を「ビジネスチャンス」と呼ぶのは短絡的な発想だ。周囲の人や環境との関係から個人は生活の「場」を選択できるが(憲法第22条)、現地ではその権利も制限されている。

現政権が「国民の安心・安全」を必死に訴えても、その薄っぺらな人権感覚は随所で浮かび上がってくる。「米国の押しつけ」として憲法改定を叫び、かたや安保法制等では「米軍との一体化」を目指すかのような姿勢だ。こうした矛盾はもとより、現場で生きるか死ぬかを日々迫られる生身の人間への眼差しと想像力が、圧倒的に欠けている。

(有銘佑理、7月17日号)

7%の未買収地収用に向け、八ッ場ダム公聴会――有害スラグは放置のまま

現地では八ッ場ダム本体建設工事が進められている。(6月26日、撮影/まさのあつこ)

現地では八ッ場ダム本体建設工事が進められている。(6月26日、撮影/まさのあつこ)

八ッ場ダム事業用地の7%にあたる未買収地に土地収用法を適用するか否かを判断する公聴会が、判断者となる国土交通省土地収用管理室の主催で6月26、27日に群馬県内で開催された。

公募した22人の公述人のうち、反対地権者の土地を奪うほどの公益性はないとの立場で14人が公述。治水や利水の目的は消滅していると訴えた下流都県住民の他、現地の長野原町で町議を務める牧山明さんが反対地権者の高山彰さんを伴って公述を行なった。高山さんは「今日は生前葬のような気持ちで来た」と故郷を奪われる気持ちを表現した。「浅間山が山体崩壊した層は貯水によって地すべりが起きる可能性がある」との地質学者の指摘や、事業用地に大同特殊鋼の有害スラグ(鉱滓)が撤去されず放置されている問題を指摘した市民オンブズマン群馬の小川賢さんなど専門的な立場からの指摘も相次いだ。

「早期完成」など賛意を公述した8人のうち1人はダム事業を進める国土交通省、2人は埼玉県副知事と加須市副市長、1人は埼玉県の元水資源課長であったことが公述中に判明、3人は長野原町町議の現職と元職、1人は東京都から江戸川区への天下りを経由して公益財団法人へ「渡り」中の土木官僚だった。「ヤラセではないか」との声が会場からはあがった。

現地では本体工事がすでに始まっており、公聴会自体が通過儀礼と化している。

公述で指摘された鉄鋼スラグについては、昨年11月に国、県、渋川市によって「鉄鋼スラグに関する連絡会議」が設置され、現在も調査が続く。国の事業では3800工事から抽出した92工事中56工事で鉄鋼スラグの出荷記録や類似する材料の混入が判明している。ゴミとして処理すべきスラグを逆有償(大同特殊鋼側が手数料付きで出荷)で公共事業に使った事件だが、群馬県はいまだに業者を廃棄物処理法違反で告発していない。

(まさのあつこ・ジャーナリスト、7月10日号)

憲法学者「合憲」認定の独自案発表で――維新が安倍政権と対決姿勢

小林節・慶應義塾大学名誉教授。維新の党独自案の公開ヒアリングで。(7月2日、撮影/横田一)

小林節・慶應義塾大学名誉教授。維新の党独自案の公開ヒアリングで。(7月2日、撮影/横田一)

維新の党が、安保法制の独自案発表で安倍政権との対決姿勢を鮮明にし始めた。7月2日、憲法審査会で政府案を「違憲」と断じた憲法学者の小林節・慶應義塾大学名誉教授の公開ヒアリングを実施。小林氏は、安倍政権が閣議決定した集団的自衛権を認めない維新独自案を「合憲」と評価する一方、政府案を再び「違憲」と強調した。

また維新幹部や非大阪組は「60日ルールが使えず参院が軽視されない7月末まで衆院で徹底審議をすべき。その前の採決なら欠席、その後の審議拒否もありうる」「独自案国会提出=採決出席とは限らない」「審議時間が不十分なら採決欠席だ」と対決姿勢を露わにする。松野頼久代表が6月25日の会見で「(国会提出で)採決に応ずる“出汁”だけ取られても仕方がない」と述べたのもこのためだ。

小林氏はこう話す。「ある自民党国会議員は『維新を自民党は国会対策で連れ込んで野党を分断、“強行採決ではなかったよ”とする。どうせ維新は消えるのだから(与党接近で党勢減少した)社民党と同じように使い捨てにする』と話していました。当然、維新幹部は自民党の狙いを察知。独自案をすぐに国会提出して国対に任せるのではなく、まず国民的議論を起こすべく、独自案公表と公開ヒアリングで政府案の違憲性を浮彫りにした上で、独自案審議で安倍政権の『バカの壁』を明らかにするという考えでしょう」。

一方、安倍晋三首相らと面談した最高顧問の橋下徹大阪市長に対しては、「国会運営に苦慮した官邸が都構想で支援をした“恩返し”を求めた」との見方が浮上。橋下氏は都構想の投開票日の会見で「(原発)再稼働に邁進する安倍政権批判をしないのか」との質問に「国民の奴隷ではない」と国政への関与を否定。だが、安保法制で発信を始めた以上、「違憲法案強行の安倍政権打倒」と訴えないと首尾一貫しない。維新の対応が注目される。

(横田一・ジャーナリスト、7月10日号)

訪問勧誘規制の特商法見直し論議で消費者庁叩き――自民・読売のお笑い二人羽織

マスコミへの「二重基準」が露骨な自民党。(東京・千代田区の党本部、撮影/野中大樹)

マスコミへの「二重基準」が露骨な自民党。(東京・千代田区の党本部、撮影/野中大樹)

要請のない勧誘行為(不招請勧誘)に規制をかけようとする消費者庁の動きに、自民党と読売新聞社が阻止にむけたスクラムを組んでいる。

本誌は6月19日号本欄で、消費者庁が検討している特定商取引法の改正について報じた。訪問勧誘への苦情は新聞がもっとも多く、とりわけ読売新聞社への苦情件数が業界トップであったこと。また6月10日に消費者庁で行なわれた専門調査会では、規制反対の弁を打った読売新聞社の山口寿一東京本社社長に対し、疑問の声や質問が続出したことなどだ。

立つ瀬のない読売新聞社は、かっこうの反撃材料を見つけたのだろうか。同調査会から5日後の15日、消費者庁の板東久美子長官と消費者委員会の河上正二委員長、そして山口俊一内閣府特命担当大臣宛に「抗議書」を送りつけた。調査会で、山口社長の発言中に「笑った委員がいた」というのだ。

「複数の委員らが声をあげて笑う場面が複数回にわたって続き(中略)新聞協会の代表として山口を出席させた当社としては、極めて遺憾です」(抗議書一部抜粋)

筆者も当日は会場内にいたため状況は覚えている。山口社長の前に、新聞協会販売委員会委員長の寺島則夫氏が「一度営業に行きまして、もう来ないでねというところには行かない」と発言し、その後に、山口社長はこう述べていた。「新聞の勧誘の現場ではさまざまな接触のやり方があって、断られたけれども、とっていただくということも現実には多々ある」。

この時、たしかに笑い声があがった。それは再勧誘の禁止について両者の発言が矛盾していたからであり、筆者も思わず失笑した。

笑う理由はあったのだ。

【自民党が助け船か】

7月2日、自民党本部7階では内閣部会・消費者問題調査会合同会議が開かれた。議題は特商法見直しについてだったが、実質、自民党と読売新聞社による消費者庁バッシングの場だった。

山口社長は「(規制は)アベノミクスや地方創生に逆行する」と安倍晋三首相に秋波を送り、続いて発言した永原伸社長室長が口火を切る。「専門調査会の議事運営について、ヒアリングの際に一部委員が机に突っ伏して笑うということがあった」。これに出席議員らが「けしからん!」と声をあげ、当日の映像が流されることに。

映像放映後、西田昌司参議院議員(細田派)が「消費者庁の責任だよ。笑っているのは誰なんだ」と声をあげ、薗浦健太郎衆議院議員(麻生派)は「笑った専門委員に(消費者庁は)笑った理由を確認したのか。こんな専門調査会の意見では誰も信用しない」と続けた。ちなみに薗浦議員は元『読売新聞』政治部記者である。「消費者庁の方針に賛成する意見がなかったことを重く受け止めるべきだ」と発言した北村経夫参議院議員(細田派)も、元『産経新聞』政治部長という経歴だ。

しかもこの日は「笑った」論にとどまらず、消費者委員会のありかたにまで踏み込む発言が出た。元大阪府知事で元通産官僚でもある太田房江参議院議員(同)は、「消費者委員会(本委員会)は全員消費者側委員であり、業界側の委員が入っていないのは問題。業界側の委員を入れるべき」と述べ、中川雅治参議院議員(同)も「消費者庁は消費者側に一方的に進むのは危険である」と同調した。

「消費者保護とビジネスのバランスを取る」(森まさこ参議院議員、同)と言いたいのだろうが、消費者委員会は、消費者庁がそのレゾンデートルである「消費者目線の行政」をきちんとやっているかをチェックする機関として発足している。その委員会に事業者が入るのはお目付け役に「泥棒」が就任するようなものではないか。

安倍政権を応援する新聞社は「健全な事業者」として守り、『沖縄タイムス』『琉球新報』をはじめとする政権に批判的なマスコミには「圧力」をかける――これが自民党の姿か。自民・読売のお笑い「二人羽織」は、もう少し続きそうである。

(野中大樹・編集部、7月10日号)

「安保法制」はおかしいです。(4)

もとやま じんしろう・1991年生まれ(23歳)。国際基督教大学・教養学部4年生。SEALDs・辺野古で活動する学生団体「ゆんたくるー」メンバー。

もとやま じんしろう・1991年生まれ(23歳)。国際基督教大学・教養学部4年生。SEALDs・辺野古で活動する学生団体「ゆんたくるー」メンバー。

私は毎週金曜日の19時30分から東京・永田町の荘厳な国会議事堂に向かって抗議の声をあげている。各自のプラカードに掲げられる言葉は、「War is Over」「Peace Not War」「憲法守れ」「(安保法制を)本当に止める」など。

中高年や仕事終わりの会社員、学校やアルバイトが終わったあとに駆けつける学生たち、中には制服姿の高校生もいる。SEALDs(自由と民主主義のための緊急学生行動)が主催する抗議行動だ。

自衛隊の海外任務を拡大し、日本を「戦争ができる国」に変えると言われる安保法制。では、自衛隊がその任務に向かうための基地はどこにおかれるのか。訓練はどこで行なわれるのか。既存の基地強化に加え、政府は、新基地建設も構想している。奄美諸島や先島(宮古・八重山)諸島などの「南西諸島」を中心に、自衛隊の配備計画が進められているのだ。

このままでは近い将来、最先端技術の詰まった軍事基地が造られ、周辺の地域・海域では激しい訓練も実施されるだろう。奄美・喜界島出身の祖父を持ち、米軍普天間基地に隣接する野嵩(宜野湾市)で生まれ育った私は、故郷がさらなる「基地の島」となりかねないこの事態に、強い危機感を抱いている。

この春、陸上自衛隊の配備計画が進む与那国島で、牧野トヨ子さん(92歳)と出会った。「(戦争では)、基地があるところが狙われた」と牧野さんは語る。この言葉が頭から離れない。そうした"戦争を知る人々"の言葉を意識しつつ、私は今日も議事堂前で声を上げる。安保法案が廃案になるまで、いや、「戦争をする国」にさせないために、これからも。

(元山仁士郎、7月10日号)

「クボタショック」から10年――因果関係は80年代から

「クボタショック」から10年。6月27、28日、「アスベスト被害の救済と根絶を目指す尼崎集会」が行なわれた。クボタショックとは2005年6月、青石綿などを扱っていたクボタの旧神崎工場周辺で従業員多数が癌などで死亡していたことを『毎日新聞』が明らかにし、工場周辺で中皮腫に罹患した住民3人(早川義一さん、土井雅子さん、前田恵子さん)が勇気ある記者会見を行なったことだ。3人はその後他界した。

「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」の古川和子会長は「あれからも会員が増えていますが被害が広がっている証拠。1000万トンも輸入したアスベストは日本で今も消えずに残っています」などと話した。

昭和二〇年代から工場近くに住む砂場明さん(68歳)は2年前に悪性胸膜中皮腫が判明。癌が脊髄に転移して余命1カ月と宣告され、車椅子で参加し、「周辺住民の救済がクボタの工場から1・5キロで切られているが私は1・7キロ。1・5キロで空中飛散がぴたっと止まるわけがない」などと訴えた。

アスベスト被害の疫学調査を進める奈良県立医科大学の車谷典男教授は「最新調査では工場から300メートル以内の住民女性の中皮腫発生率は全国平均の63・9倍もある」と話した。

10年前にスクープした『毎日新聞』の大島秀利記者は「尼崎の労災病院が80年代初頭にクボタと癌死亡の因果関係を明記した証拠カルテを入手したが、守秘義務を盾に医師は話そうとしない。公的な病院の責任放棄では」と指摘した。

主催事務局の飯田浩氏は「多数の参加で関心の高さを示していただいた。現在、国内のアスベストの大半が建材として建物に残る。安易な解体を許せば被害は拡大する」と指摘した。恐ろしい中皮腫の潜伏期間は40年とも50年とも言われる。アスベストとの戦いはこれからだ。

(粟野仁雄・ジャーナリスト、7月3日号)