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消費者庁による勧誘規制の特定商取引法改正案に反発する――訪問販売苦情トップの『読売』

上/専門調査会で質問の集中砲火を浴びる山口寿一氏(手前後姿)は前日に読売新聞社社長に就任したばかり。とんだ初登板となった。(撮影/野中大樹)下/自民党新聞販売懇話会の決議文。

上/専門調査会で質問の集中砲火を浴びる山口寿一氏(手前後姿)は前日に読売新聞社社長に就任したばかり。とんだ初登板となった。(撮影/野中大樹)下/自民党新聞販売懇話会の決議文。

求められていない訪問販売や勧誘(不招請勧誘)に規制をかけようとする消費者庁の動きに、新聞業界が猛反発している。

消費者庁が検討しているのは特定商取引法の改正。訪問販売に関する苦情は年間約9万件あり、とくに高齢者や認知症患者に対し高額商品の契約を結ばせるようなケースが多発しているためだ。

とりわけ焦点になっているのが新聞の勧誘規制である。消費者庁の調査によると、この5年間に訪問勧誘がもっとも多かった商品は新聞の55・2%だった(2番目はインターネット回線接続の39・2%)。そのぶん苦情も多く、国民生活センターに寄せられた苦情件数を社別にみると、トップは読売新聞社(発行部数約920万)、次いで朝日新聞社(同約710万)、毎日新聞社(同約330万)と発行部数に比例し、以下のような実例があった。

「いきなり玄関に入ってきて、『小学校に上がる子どもがいる。契約してくれなかったらお金が貰えず困る』と紙を差し出され、無理やり書かされた」(90代女性)

「高齢で認知症気味の父のもとへたびたび訪れ、2年後から2年間の契約を結ばされた」(80代男性)

訪問勧誘をうけた人の96・2%が「今後は勧誘を受けたくない」としており、日本弁護士連合会や消費者団体も訪問販売の全面禁止を求めていた。こうした声を受け、消費者庁はこの4月から専門調査会で、審議を開始していた。

【禁止ステッカーに猛反対】

「新聞には百数十年の訪問販売の歴史がある。ステッカーという事前の拒絶で(訪問販売が)制限されるのは新聞協会として反対をしたい」

6月10日に開かれた専門調査会。参考人として出席した読売新聞社の山口寿一東京本社社長は規制に猛然と反対した。ステッカーとは、目下消費者庁が念頭に置いている「訪問販売禁止ステッカー」のこと。米国の一部の州やオーストラリアなどで採用されており、玄関先にステッカーが貼られている家への訪問勧誘を禁止する制度だ。消費者団体などが主張する全面禁止よりは緩いものだが、訪問勧誘で部数を維持してきた新聞業界には大きな痛手となる。

まきかえしを図るため、この日、新聞業界は「新聞は民主主義の維持と発展に寄与してきた」「表現の自由、知る権利が脅かされる」と“正論”をまくしたてた。

一方、新聞業界は水面下で永田町、霞ヶ関に猛烈なロビー活動も展開している。新聞協会の会長で読売新聞社前社長の白石興二郎氏が、消費者庁の動きを止めようと経済産業省の高官に会ったという情報があるのだ。

【自民党が援護射撃の決議】

6月4日には、自民党本部の7階で新聞販売懇話会が開かれた。テーマは新聞への「軽減税率」適用と特定商取引法の改正。会には新聞販売協会の河邑康緒会長が出席し「悪質商法と新聞を同じように規制することは問題」であると消費者庁を牽制。これに出席した議員らも同調した。「消費者庁はあまり過激なことを言わない方がいい」(務台俊介・麻生派)、「消費者庁資料には断片的な情報ばかりで新聞がこれまで果たしてきた価値は何も出ていない」(豊田真由子・細田派)。

同会の会長は丹羽雄哉議員(無派閥)、副会長には山本一太議員(同)、事務局長には国家公安委員長の山谷えり子議員(細田派)、顧問には総務相の高市早苗議員(無派閥)が就いている。同会はこの日、特定商取引法見直しに関する「慎重な検討」を求める要望書を決議した。

『読売』は渡邉恒雄グループ会長の意向からか、政権与党の政策に歩調を合わせることが多い。公明党が主張する軽減税率しかり、憲法学者から「違憲」と下された安保法制しかりだ。新聞が政権を支え、政権はそんな新聞を守る――こんな構図の下でいくら「民主主義の維持と発展」を叫び訪問販売規制に反対しても、説得力は持ち得ないだろう。

(野中大樹・編集部、6月19日号)

「安保法制」はおかしいです。(1)

うざわ よしふみ・元自衛官。1988年生まれ、27歳。2013年春にシリアへ行き、数ヶ月間イスラム兵士として戦った経験がある。

うざわ よしふみ・元自衛官。1988年生まれ、27歳。2013年春にシリアへ行き、数ヶ月間イスラム兵士として戦った経験がある。

いまの国会での「安保法制」に関する安倍晋三首相や中谷元防衛大臣などの発言を聞いていると、現場をまったく知らない人たちなのだなとつくづく感じます。

安倍首相は5月27日、「指揮官の正しい判断で、危険な状況になる前に柔軟に(自衛隊の活動場所を)移すことができる」と発言しました。ですがシリアでは2012年、フリージャーナリストの山本美香氏が「政府軍はここから遠いから安全だ」と言われていた場所で殺害されました。戦場では目紛しく状況が変化していくため、危険な状況になる前に移動することなどまず不可能です。動きの取りづらい大人数の部隊であれば尚更でしょう。

中谷防衛大臣は6月1日、「自衛隊は相手を識別して武器使用するための訓練や、地元住民と友好関係をつくる訓練を行なっている。一般の現地住民に危害を加える事態は極めて想定しにくい」と言っていますが、実際はまったく正反対です。現代は非対称戦。軍隊対軍隊ではなく、軍隊対ゲリラという構造が多いのです。相手は民間人に紛れ込んで攻撃してくるので、服装での見分けがつきません。

07年7月にイラクで、米軍が記者の持っていたカメラを銃と誤認して射殺したこともありました。いつ、どこで、誰が、どうやって攻撃してくるかわからないのが現代の戦争です。そうした高い緊張状況下では民間人の誤射は往々にして起こり得ると考えるべきです。ほかにも実際の現場に沿っていない発言は山ほどあります。こんな想定しかできない状態で集団的自衛権を行使すれば、最悪な結末が待っていることは目に見えています。

(鵜澤佳史、まとめ/渡部睦美・編集部、6月19日号)

メトロ駅売店の非正規女性が雇用を確保

ロビーでスクラムを組む疋田節子さん(右端)ら組合員。(提供/須田光照・東部労組)

ロビーでスクラムを組む疋田節子さん(右端)ら組合員。(提供/須田光照・東部労組)

東京メトロ駅売店の非正規労働者でつくる全国一般東京東部労組(東部労組)メトロコマース支部が、6月3日、今年3月末に65歳定年で雇い止めされた同支部組合員の疋田節子さん(65)ら希望する非正規労働者5人全員の雇用確保を実現した。

売店で同じ仕事をしている正社員との間に大きな賃金格差がある非正規労働者だが、65歳定年制は同じ。退職金はゼロ。月の手取り13万円台で貯金も年金も少ない非正規労働者にとって定年退職はたちまち路頭に迷うことを意味する。

雇用確保を求めて疋田さんら同支部組合員の中心メンバー4人は3月24~27日に朝から夕方まで連日、東京メトロ本社前に座り込んだ。いずれも60歳超の女性4人にとってビル風と日陰で寒風吹きすさぶ現場は過酷だったが、決死の覚悟と4日間で延べ約260人の支援者に励まされてやり抜いた。

さらに4月1日には24時間ストライキを実施し、東京メトロ子会社で雇い主のメトロコマース本社ロビーに約140人の支援者とともに座り込んだ。その場で雇用確保のための団体交渉の開催を約束させた。その後、雇用条件などについて会社側と協議を続けてきた。

疋田さんは「みんなの連帯の力で勝ち取った成果。非正規労働者でもあきらめず団結すれば会社を動かせることを実感した」と喜んでいる。

(須田光照・東部労組書記長)

被災地に若年女性専用電話開設――性被害者の支援急務

専用相談電話とSNS開設を発表する熊坂代表理事(右端)ら=6月2日、福島市。(撮影/藍原寛子)

専用相談電話とSNS開設を発表する熊坂代表理事(右端)ら=6月2日、福島市。(撮影/藍原寛子)

東日本大震災の被災3県で若年女性(10代、20代)のDVや性暴力の被害が見えにくくなっている。社会的包摂サポートセンターの電話相談「よりそいホットライン」で、被災3県の女性のDVや性被害相談の割合が全国比で2倍近くに上る一方、若年女性からの相談が顕著に低いという矛盾した結果が出た。

若年女性の被害が不可視化し、深刻化が懸念されるため、同センターは今月、若年女性専門の支援相談電話とSNSサイトを開設した。熊坂義裕代表理事は6月2日福島市で会見し、「秘密は守られるので、安心して相談して」と呼び掛けた。

同ラインには2014年度、被災3県から61万6000件を超す電話がかかり、このうちDVや性被害は約4万9000件。若年女性の相談は「被害による精神的なダメージ」「性的な搾取」など深刻な状況にもかかわらず、相談は10代が1・3%、20代が4・4%で、他の年代より圧倒的に低い。生活環境が激変したなかでの被害など被災地の状況に加え、被害者自身が「自分が悪い」と思ったり、「若くて健康な女性」といった固定的な概念から支援も少ない。

関係機関には、復興で外から福島に来た人たちから性被害を受けたケースがあり、被害女性は、「(加害者は)福島のために頑張ってくれている人だから」と遠慮して、被害を訴えられない相談があったという。若年女性支援のBondプロジェクトの橘ジュンさんは「被災地の女の子たちは外に出にくい状況ですが、相談できず辛い思いをしている女の子たちは、ぜひ声を上げて」と訴える。

若年女性専用相談電話は0120・279・226(通話無料)のあと、8番を押す。火、木、土曜日の午後4時から翌日の午前4時まで。SNSサイトは「もやもやルーム」URL www.moyaroom.jp/で、同じ悩みを持つ人同士でチャットができる。

(藍原寛子・ジャーナリスト)

陸自配備計画の与那国島で反対派住民たちが――差し止め仮処分を申請

仮処分申請に先立ち、計画に疑念を訴える崎元俊男氏。5月31日、東京都内。(撮影/黒島安央)

仮処分申請に先立ち、計画に疑念を訴える崎元俊男氏。5月31日、東京都内。(撮影/黒島安央)

与那国島(沖縄県八重山諸島)への陸上自衛隊配備問題で、反対派の住民グループ(上地国生・田里千代基・崎元俊男共同代表)30人は6月1日、駐屯地建設の差し止めを求める仮処分を那覇地方裁判所石垣支部に申請した。

防衛省は新防衛大綱等(22大綱に基づく23中期防)の一環で、2016年3月末までに工事完了し、150人規模の陸上自衛隊沿岸監視部隊を配備する計画だ(本誌2015年5月15日号参照)。

住民グループは申し立ての理由に、(1)尖閣問題等で隣国との緊張が高まる中、有事に島が攻撃対象となれば平和的生存権が脅かされる、(2)沿岸監視レーダーの電磁波が生体に及ぼす影響(健康被害)が不明、(3)人口1500人ほどの町内に150人超の組織票(自衛官)が入ると住民自治は崩壊する、(4)通信監視施設による町民の携帯電話等の傍受は憲法21条第2項のプライバシー権を脅かす――などを挙げ、計画は基本的人権の侵害にあたると主張している。

住民グループ共同代表の崎元俊男町議会議員は同日、東京・防衛省前でこうも訴えた。

「基地機能の説明を防衛省はまったくしておらず、住民側が質問をしても答えない。まず安全を保障してから(計画を)行なうべきだ」

「レーダー運用に大量の冷却水を要するというが、旱魃では農業用水の確保で精一杯。基地建設に合わせた地下ダム構想も聞くが、短期間で解決する問題ではない」

崎元町議は5月31日も都内の市民集会で講演し、陸自配備の是非を問う住民投票(2月22日実施、賛成多数)の総括を行なった。

一方、自民党は5日、自衛隊の艦船が利用し易いよう「特定国境離島」の港湾整備を促すことなどを盛り込んだ「国境近くの人が住む離島を保全する議員立法」の概要をまとめた。「保全」や「振興」といった美名のもと、「切れ目のない」軍事要塞化が進行している。

(黒島安央・ライター)

翁長沖縄県知事、「新基地NO」を米に伝え帰国――「これからが新たな第一歩」

訪米の成果を報告する翁長雄志知事(右から3人目)。5日、那覇空港。(撮影/本誌取材班)

訪米の成果を報告する翁長雄志知事(右から3人目)。5日、那覇空港。(撮影/本誌取材班)

辺野古移設反対を掲げ昨年11月に当選した翁長雄志沖縄県知事が5月27日から初訪米し、米国関係者に「新基地建設反対」の民意を直接訴えた。米政府、連邦議員、米国メディアや世論に対して移設阻止の明確な沖縄の声を届けた翁長知事は6月5日夜、初の訪米行動を終えて那覇空港に到着。空港には約100人の県民が訪米要請団を出迎えた。

最終便にもかかわらず多くの県民の出迎えを受けた翁長知事は、初の訪米要請行動を「首長、議員、経済界の全員が連邦議会を回って歩いた。こんなに密度の濃い要請行動は初めてだと思う。必ずワシントンにこの気持は伝わったと固く信じている。(中略)結論的には良い形にはならなかったが、ワシントンに行き、私たちがこれだけ話をさせてもらったというのは大変大きな成果だと思う」と振り返り総括した。最後に「これからが新たな第一歩になる。皆さま方の厚いご支援をよろしくお願い致します」と出迎えた県民へ呼びかけた。

訪米団長を務めた渡久地修県会議員は「政府関係者や議員、シンクタンクなど55カ所を訪れ、関係者90人と直接会い、辺野古に新基地は造れないと明確に伝えた」と訪米の成果を記者団に報告した。

知事に同行した稲嶺進名護市長は空港で記者団に「普天間飛行場の移設問題は国内問題だという人もいるが、海兵隊が使う基地は米国も当事者だ、と伝えたことは大きな成果。今後、市長権限、知事権限を市民、県民のために行使し、知事と力を合わせて必ず辺野古移設を止める」と決意を語った。

翁長知事が伝えた「新基地NO」の沖縄の民意。マスコミを通じ国内外の世論に直接訴えることで米国での関心も高まった。しかし、菅義偉官房長官は4日の記者会見で訪米中の翁長知事を牽制し「辺野古移設が唯一の解決策だ」と言い切った。沖縄に寄り添う政府の姿勢は未だ変わらないままだ。

(本誌取材班)

年金情報流出で改めて浮き彫りになる危険――マイナンバーの通知延期を

神奈川県保険医協会の講座では医師らから共通番号制度への不安や批判が出された。(撮影/小石勝朗)

神奈川県保険医協会の講座では医師らから共通番号制度への不安や批判が出された。(撮影/小石勝朗)

「警鐘と受けとめるべきです。共通番号(マイナンバー)の導入後に同じことが起きれば、影響はこのレベルでは済みません」

日本弁護士連合会(日弁連)情報問題対策委員会副委員長の水永誠二弁護士は、日本年金機構の個人情報流出をこう捉えている。

10月から全国民に通知される12ケタの個人番号によって結び付けられる予定の情報は、年金にとどまらない。税金、雇用保険、健康保険、福祉など、来年1月の運用開始時点で約100の行政事務と広範だ。政府は「対象の個人情報はまとめて一つのデータベースに収めるわけではなく、行政機関ごとに分散管理した上で暗号化してやり取りするので、芋づる式に流出することはない」と説明する。

これに対して水永氏は「共通番号は個人情報を開く『カギ』になるのです」と注意を促す。

共通番号制度開始後、ある行政機関から個人情報が流出したとする。あらかじめマイナンバーが知られている人であれば、漏れた情報に付いている個人番号と合致するだけで、その人の情報だと特定される。「個人番号は原則として生涯変わりませんから、氏名や住所、生年月日と照合する手間もなく迅速・正確にマッチングされてしまいます」と水永氏。

あるいは、さまざまな行政機関にサイバー攻撃を仕掛け、一つの個人番号をもとに特定の人の情報を盗み出すことも可能になる。

おまけにマイナンバーは「見える番号」。勤務先に知らせておかなければならないなど、民間を含めてたくさんの場面で使用を義務づけられる。必然的に、多くの人の目に触れることとなるのだ。番号を提示するたびに個人情報のカギをばらまいている、といっても過言ではない。

集められたマイナンバーを媒介に、漏れたり盗まれたりした個人情報が蓄積されて「闇のデータベース」が構築される可能性は高い。これらを悪用した詐欺やなりすましの被害に遭うおそれも出てくる。

それだけではない。市民団体「プライバシー・アクション」の白石孝代表は、希望者に来年1月から交付される「個人番号カード」に内在する問題も指摘する。

将来的に健康保険証、パスポート、クレジットカードなど多くの機能をこれ1枚に集約し、誰もが持ち歩かざるを得なくする構想があるからだ。本人確認をはじめ買い物や旅行、病気といった日常生活のあちこちでカードを提示するようになれば「すべての行動が逐一記録され、蓄積される。国家による国民の監視です」。

【医療情報への拡大を批判】

さて、今国会では、共通番号の用途を預貯金や特定健康診査(メタボ健診)などに広げる法案が審議されている。すでに衆院を通過したが、年金情報流出の発覚で参院の採決は先送りになっている。

これまで共通番号の利用範囲は税と社会保障、災害対策に限られ、よりデリケートな医療情報については個人情報保護の特別法制定が条件とされていた。だが、特定健診には血液検査や尿検査、血圧などのデータが含まれる。

「まぎれもなく医療情報で秘匿性が高い。医療情報を共通番号の対象にする足がかりではないか」。神奈川県保険医協会が6月5日に開いた講座で、田辺由紀夫・医療情報部長(医師)は法案を強く批判した。政府は5月下旬、カルテなどの診療情報を共通番号と連動させる方針も打ち出している。

白石氏は「マイナンバーに結び付く個人情報が増えることで、番号の価値は高まる。同時に、危険も拡大します」と警戒する。

2月に発足した「共通番号いらないネット」は6月8日、東京都内で記者会見し、拡大法案の廃案と個人番号の通知延期を訴えた。

政府は年金情報とマイナンバーの連携時期を遅らせる可能性を示唆したものの、共通番号制度そのものは予定通り導入する構えだ。

「共通番号ありきではなく、分野別の番号を個別・限定的につなぐ仕組みを採るべきです。立ち止まるなら、運用開始前の今しかありません」(水永氏)

(小石勝朗・ジャーナリスト)

被爆地長崎の思い踏みにじる――不透明な3委員交代

被爆地長崎の思いを世界に発信してきた平和宣言文の起草委員会で、3人の委員が突然、交代させられるという事態が起こり、市民の間に波紋が広がっている。

ことの発端は、今年4月中旬。平和宣言文起草委員会のメンバー15人のうち、長崎総合科学大学長崎平和文化研究所前所長の芝野由和氏、漫画家で「ながさき女性国際平和会議」代表の西岡由香氏、それに活水女子大学教授の上出恵子氏に対し、長崎市の平和推進課が電話で「任期の長い委員には交代していただく」と通告し、3人は今年の委員から外されたのだ。

平和宣言文の起草委員会は、広島にはない長崎独自の制度で、市長が1年任期で委嘱する。しかし芝野氏と西岡氏は15年、上出氏は7年にわたって選出されており、今回の交代劇は3人にとって予想外の出来事だった。

これまでの平和宣言をめぐっては、市側の当初案にはなかった、脱原発や集団的自衛権の問題について、起草委員会で3人は先頭に立って発言し、最終的に宣言に盛り込ませることに成功した。任期は3人より長い委員も他に複数いて、市側の説明には説得力がない。

5月29日には被爆者や被爆2世らで作る市民団体が、3人は「現在の状況に危機感を持っている識者」であり、「3人を排除した背景に何かがあるとしか思えません」とした公開質問状を提出し、市側の意図を質した。しかし応対した平和推進課長らは「“被爆問題の継承”などの観点から若い委員を新たに選び、結果的に3人が外れた」などと答えるにとどまった。

申し入れをした平野伸人氏は「委員の若返りと市側は言うが、82歳の新任委員もおり、説明になっていない。市の不誠実な対応に怒りを覚える」と述べた。

起草委員会の定数は20人であり、3人を追加しても問題はない。田上富久市長は市民の声に耳を傾けるよう強く求めたい。

(中村尚樹・ジャーナリスト、6月5日号)

地震から1カ月以上のネパールで復興めざし――NGO活かす窓口一元政策

ネパール・ヌワコット王朝付近のコミュニティも被災。(5月20日、撮影/蜂谷翔子)

ネパール・ヌワコット王朝付近のコミュニティも被災。(5月20日、撮影/蜂谷翔子)

4月25日にネパールをマグニチュード7・8の地震が襲ってから1カ月以上が経過。国内外での犠牲者の数は8000人を超える。

さまざまな機関による支援活動の中で被害の状況が少しずつ把握される中、徐々に地理的に到達するのが難しい場所への支援が最重要課題だと認識され始めている。

首都カトマンズの国際空港と大きな道路への被害が少なかった為、市内では物流がストップすることはなく物資の供給は比較的安定してはいるものの、地震が発生してから約2週間の緊急支援の段階で、モンスーンの雨期が迫る現地ではシェルターの需要が高まるが、テントをつくるターポリンという生地が不足して入手困難に。

非常事態の中で支援の方法を模索する中、ネパール政府は、ネパールの72郡に設置されているDDRC(地域災害リリーフセンター)を通じて、国内外のNGOが持っている物資、資金、人材が何なのか情報共有し、DDRCが支援能力に合った被災地を指定し、また他の支援団体との重複がないようにコーディネートするために「ワン・ウィンドウ・ポリシー(窓口一元政策)」というポリシーを採用。

ネパールで現在も支援活動をしている日本のNGOシャプラニールのカトマンズ事務所長・宮原麻季さんは、「このポリシーを活かして外部の人間が被災したコミュニティの中に入り込んでいき、平等主義に則った支援や、支援のミスユース(誤使用)がないように心がけ注力するべきだ」と話す。

彼女は震災前からシャプラニールで活動する中、ネパールの地方行政や省庁の人々と直接会って話をする機会がたくさんあり、「汚職が見えたりしてあまり楽しい想いをすることはなかったけれど、震災後、こんなに国際NGOに協力的な地方行政は初めて見たというくらい彼らはすごく一生懸命やっています」と評価する。

復興には長い時間がかかる。

(蜂谷翔子・ジャーナリスト、6月5日号)

「金銭解決」派弁護士に3度目の「解雇無効」判決――ブルームバーグ、またも敗北

司法記者クラブで会見する新聞労連の役員と今泉義竜弁護士(左から2人目)ら。(撮影/片岡伸行)

司法記者クラブで会見する新聞労連の役員と今泉義竜弁護士(左から2人目)ら。(撮影/片岡伸行)

「金融情報を通じて世界の資本市場の透明性を高める」というのが米国ニューヨークに本社のある大手の金融・経済情報通信社ブルームバーグ(全世界従業員1万5500人)の信念らしいが、やっていることは不透明きわまりない。

リーマン・ショック(2008年)後、経営側の悪質な人員整理策として一時流行ったPIP(パフォーマンス・インプルーブメント・プラン=成績改善計画)による退職強要の末に男性記者(当時48歳)を解雇し(10年8月)、その解雇が無効(12年10月)と判断されるや即日控訴。高裁結審(13年1月)後の和解協議中、記者職とは無縁の倉庫管理業務への復職を提案し、男性が拒否すると再び解雇(同年3月)。翌月には2度目の「解雇無効」が東京高裁で認定され、会社は上告せずこの控訴審判決が確定したにもかかわらず、今度は「雇用契約不存在」の確認を求めて提訴(13年7月)――といったきわめて理不尽なやり方で男性を職場から排除してきたのだ。「解雇無効」判決が確定していながら復職できない男性側は当然、これに反訴した。

その裁判の判決が5月28日、東京地裁であり、鷹野旭裁判官は子会社のブルームバーグL.P.(東京都千代田区、石橋邦裕代表)に対し、あらためて「解雇無効」を認定し、バックペイ(復帰時までの賃金)の遅延損害金167万円余の支払いを命じた。男性側が求めた慰謝料の請求は退けたものの、一審・控訴審を含め、3度目の「解雇無効」勝利判決だった。

「今回の判決はある意味、当然。日本の法に従わない会社の姿勢は間違っている。会社側は判決を尊重し、謝罪し、今までの記者職で復職させるべき」

判決後、司法記者クラブでの会見で男性はそう述べた。時事通信社での記者歴も含め豊富な経験を持つが、すでに解雇から5年。53歳になった現在、毎月の給与は支払われているもののペンを持つことができない。会見では、会社側の退職強要の手口についての質問も出たが、注目されたのは「金銭解決」を持ちかけてきた会社側代理人・岡田和樹弁護士と、安倍政権が導入をめざす「解雇の金銭解決制度」をめぐる話題だった。

男性側代理人の今泉義竜弁護士はまず、ブルームバーグ側の2度の解雇を「私の知る限りない、悪質なもの」とした上で、「岡田弁護士も解雇の金銭解決を求めている一人。(今回の裁判は)この制度を導入させたい側との闘いだった」と吐露したのだ。岡田弁護士とはどんな人物なのか。

【産業競争力会議でも主張】

〈私は、フレッシュフィールズブルックハウスデリンガーという国際法律事務所、世界でも五指に入る大きな法律事務所の東京オフィスに勤務をしており……〉

安倍晋三首相が議長を務める産業競争力会議の雇用・人材分科会「有識者ヒアリング」(13年11月6日)の議事録に、岡田弁護士の発言が残る。弁護士になって40年ほど。国鉄関係の労働組合側弁護士を25年ほどやり、外資系の事務所に移り、今は使用者側の事件をやっているという。ヒアリングの中で岡田弁護士は、解雇の金銭解決制度の必要性を訴え、「6カ月分の賃金を払ったということを解雇理由の正当性を判断する要素の一つに入れていただきたい」と“お願い”している。しかし次の発言は、3度も解雇の不当性が認定された今となってはあまりに空しい。

〈要するに全く根拠のない解雇ではどうしようもないけれど、社会的に見て合理的と思われる理由があれば、解雇できるということ。今まで14年間外資系の企業(の弁護人)をやっているが、そうした解雇によって、深刻なトラブルになったということは、ゼロとは言わないが、ほとんどない〉

ブルームバーグは今回の判決を受け、「この度の判決を残念に思い、引き続き本件の解決に向け、努めて参ります」とのコメントを出したが、控訴するかどうかは明確にしていない。それにしても、再三の違法判決に懲りない企業の「情報」を誰が信用するのだろう。

(片岡伸行・編集部、6月5日号)