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ポール・マッカトニー、環境運動を語る

ポール(左から2人目)と記念撮影。〈(C)MPL Communications Ltd.、Photographer:M J Kim〉

ポール(左から2人目)と記念撮影。〈(C)MPL Communications Ltd.、Photographer:M J Kim〉

Meat Free Monday(週に一日お肉をやめよう)というキャンペーンを知っているだろうか。ポール・マッカトニーなどが強く推進する世界的な環境運動だ。

今回来日したポール・マッカトニーは、日本でこの運動を行なっている動物の権利団体アニマルライツセンターと、大学内の食堂にベジタリアン食導入を推進するVege Projectの取材に応えた。

ライブ直前、口笛を吹きながらやってきたポールは、「僕はベジタリアンでとてもハッピーだよ。一つ目の理由は動物への思いやりだ、僕はこれが一番重要だと思う。あとは健康も理由の一つだ。そして地球の未来のためでもある、未来の世代のためにね」と話した。

2006年に国連が出した畜産業が地球温暖化の主要原因とのレポートを読んで、この運動を立ち上げたポール。「ベジタリアンになることは難しくても、週に一日であればとても簡単に楽しみながらできる。もっと多くの人に参加してほしい。もっと!」と熱を込めて訴えた。

インタビューを通して、未来の為に、次世代の為にということを強調した。彼の動物や地球や未来に対する切実な思いが伝わってきた貴重な時間だった。そのポールの言葉を伝えるインタビュー動画は、夏過ぎに行なうMeat Free Mondayのイベントで公開される予定だ。

(岡田千尋・NPO法人アニマルライツセンター、5月15日号)

山田元農水相、差止等訴訟へ――TPP妥結へ加速か

山田正彦元農林水産大臣は4月24日、農協(JA)や医師会の関係者と衆議院第二議員会館前でのTPP(環太平洋戦略経済連携協定)反対の座り込みに参加、こう訴えた。「TPP交渉は最終段階。自民党筋から『日米合意の内容が決定済』と聞いています。合意内容は、牛肉の関税を4分の1に引下げて9%、豚肉は従来の10分の1、米は10万トンの受入枠を確保した上で徐々に関税を引下げていくというものです」。

JA全中は4月23日にTPP反対集会を予定していたが、中止となった。「萬歳章JA全中会長が辞任表明しても、8月までは留任。安倍首相と握手して“蜜月関係”となった会長が居座る間にTPPを妥結しようとする政権の狙いは明らかです」(山田氏)。

しかし唐突な辞任表明と首相との“手打ち”に他のJA幹部は反発、座り込み集会にはJA茨城などの農協関係者も参加。「会長が闘争心を失っても各県の農協が白旗を上げたわけではない。1月の佐賀県知事選ではJA佐賀が、対立候補を支援して自公推薦候補が落選。来年の参院選でも、重要5品目死守の国会決議を反故にした自民党候補の落選運動が一人区を中心に起きても不思議ではない」(永田町ウォッチャー)。

実際、集会では野党国会議員だけでなく、複数の自民党議員がマイクを握ってTPP反対を訴えた。

TPP妥結に不可欠とされる米大統領貿易促進権限「TPA」法案は下院で難航、NGO「パブリックシチズン」は成立困難と予測する。そこで、オバマ米大統領は28日、TPP交渉の早期妥結に向けて連携する方針で安倍晋三首相と一致したと明らかにした。

こうした事態を受けて山田氏らは、TPP交渉差止・違憲訴訟を5月15日に起こすことを決定した。「米韓FTA(自由貿易協定)が締結された際、韓国の大統領が米国を訪問して演説する機会を与えられ、交渉妥結が加速。韓国は米韓FTAで国内法を変えさせられて独立国家ではない状態になったが、安倍首相も日本の国益を米国に売り渡そうとしている」(山田氏)。

TPP交渉の行方が注目される。

(横田一・ジャーナリスト、5月15日号)

ろくでなし子さん第2回公判――追加証拠は採用留保

第2回公判後の説明会で話すろくでなし子さん(中央)。(撮影/本誌取材班)

第2回公判後の説明会で話すろくでなし子さん(中央)。(撮影/本誌取材班)

わいせつ電磁的記録等送信頒布などの罪に問われている漫画家、アーティストのろくでなし子さん。彼女の第2回公判が5月11日、東京地裁(裁判長=田辺三保子)で行なわれた。公判内容は検察官による証拠請求や、それらに対する弁護人の意見(認否)が述べられた。

検察から請求があった証拠のうち弁護人が異議ありまたは不同意の意見を述べた主要な証拠は、(1)科学捜査研究所が、ろくでなし子さんの女性器の3Dプリンタ用データをもとに出力したもの、(2)ろくでなし子さんの作品を陳列したアダルトグッズショップのカタログ――の2点。そのため、検察は出力した科捜研の技術者とアダルトグッズショップを内偵した警察官の証人尋問を請求した。ろくでなし子弁護団は後者については事件との関連性がないため異議を述べた。

まず、科捜研が出力に使用した3Dプリンタは高価で、弁護団は「一般人の基準からはかけ離れている」とした。カタログについては、ろくでなし子さんの作品が掲載されているわけではない。次に弁護団は、アダルトグッズショップにろくでなし子さんの作品を陳列したという事実は認めているため、現段階の証拠物で充分だとした。裁判所は検察からの請求をいずれも採用留保とした。

次回の公判からは証人尋問が行なわれる見込みで、日程は6月16日午後1時30分から。

(本誌取材班、5月15日号)

東電ら不起訴に不服申し立て――原発事故の罪を問う

「たった2カ月半できちんとした捜査がなされたとは思えません。新たな証拠が次々と出てきているにもかかわらず、そこに言及しない捜査のありかたは問題だと思います。それだけに、検察審査会という市民の良識に期待したい」

福島原発告訴団(以下、告訴団)団長の武藤類子さんはそう訴える。

4月30日、告訴団は、「2015年告訴」の不起訴処分について、東京検察審査会に不服申し立てを行なった。「2015年告訴」は、今年1月13日、東京電力福島第一原発の事故により被害を受けた住民らが、責任者たちの刑事裁判を求めたもの。勝俣恒久東電会長(当時)をはじめ事故当時の東電幹部、国の関係者など33人を告訴した「2012年告訴」に続き、東電の津波対策担当者、旧保安院関係者ら9人を告訴・告発していた。

しかし、東京地検は4月3日、全員を不起訴処分とした。今回の申し立ては、十分な捜査を尽くさず、不起訴理由にも事実誤認があるなどとして、5人について処分を不服として行なわれたもの。

告訴団代理人の海渡雄一弁護士は「(今回申し立てた)人たちがちゃんと仕事をしていれば事故は避けられたというところまで、ピンポイントで事故の真相がわかってきた。証拠をどっさりつけて申し立てます」と自信をのぞかせる。

なお、「2012年告訴」は、検察審査会が勝俣東電元会長ら3人を「起訴相当」としたにもかかわらず、東京地検は今年1月22日、これを不起訴処分としたため、現在、東京第五検察審査会で、再度の審査が行なわれている。二度目の「起訴相当」が出れば、「強制起訴」となるため、武藤団長は、こちらの告訴についても、「3人の東電幹部が強制起訴になると強く信じています」と期待する。

(山村清二・編集部、5月15日号)

憲法施行68年、迫りくる“改憲”の足音――若者たちも戦争参加に“否”

横浜市臨港パークの集会。(撮影/正しい報道ヘリの会 野田雅也〈JVJA〉)。

横浜市臨港パークの集会。(撮影/正しい報道ヘリの会 野田雅也〈JVJA〉)。

高里鈴代さん。(撮影/山村清二)

高里鈴代さん。(撮影/山村清二)

「憲法を守る」ピエロにメッセージを書く参加者。(撮影/山村清二)

「憲法を守る」ピエロにメッセージを書く参加者。(撮影/山村清二)

「戦争参加は反対です」。アンケートに答える高校1年女子。(撮影/片岡伸行)

「戦争参加は反対です」。アンケートに答える高校1年女子。(撮影/片岡伸行)

安全保障法制の与党協議や、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)改定など、“戦争法制”が進む戦後70年の今年、GW中の、憲法をめぐる動きに注目した。

【目標超えた3万人が集結】

施行から68年を迎える5月3日の憲法記念日、全国各地で「護憲」の催しが開催された。神奈川県横浜市の臨港パークで開かれた「平和といのちと人権を! 5・3憲法集会」(主催:戦争をさせない・9条壊すな! 総がかり行動実行委員会)には、およそ3万人(主催者発表)が集まった。主催者目標1万人を大きく超えたのは、危機感のあらわれだろう。

呼びかけ人の一人、作家の大江健三郎さんは、安倍晋三首相の米国上下両院会議演説(4月29日)について「米国では、日本が(平和憲法を超えて)集団的自衛権(行使)を決めたかのように報道されているが、日本人は賛同などしていない」と怒りをあらわにする。

神奈川県大和市から来た男性(66歳)は、昨年、話題になった「憲法9条にノーベル平和賞を」実行委員会のメンバー。「(ノーベル賞の)ハードルは高いが、第9条を無視し、立憲主義を踏みにじる安倍首相に、少しでもプレッシャーを与えるためにも、今年も受賞をめざしています」と語る。

「沖縄では、辺野古基地移設に反対する座り込みや海上行動が、今も行なわれています」と、沖縄、基地・軍隊を許さない行動する女たちの会共同代表の高里鈴代さん。「みなさんが“憲法が危うい”と思うならば、辺野古基地建設をやめさせなければいけません」と沖縄への連帯を力強く呼びかける。

中高年層が目につく集会場で、「友だちと旅行する予定でしたが、今の政治状況をみて来なければと思った」と語るのは、東京・狛江市から参加した19歳の女性。憲法改正の国民投票の年齢が18歳に引き下げられようとしていることについては、「私は反対。選挙権もそうだが、引き下げるならば、学校教育でもっと(政治や社会の問題を)教えるべき」と述べた。

【船田氏、改憲は「分けて」】

一方の「改憲」側はどうか。

「改正の環境が整った。いよいよ中身の議論だ」などと登壇者が口を揃えたのは、主催者発表で約1000人が参加した「新しい憲法を制定する推進大会」(主催:新憲法制定議員同盟、会長・中曽根康弘元首相)。

5月1日、東京・永田町の憲政記念館で開催され、冒頭の発言は、中曽根氏、船田元(自民・憲法改正推進本部長)・小沢鋭仁(維新)の両衆院議員、続橋聡・経団連産業技術本部長らから出たもの。

船田氏は、「何回かに分けて、改正を発議する。3分の2必要なので幅広い合意を得るものに」と述べた。第9条に言及しなかったが、「何回かに分けて」の発言からは、この日、斉藤鉄夫衆院議員(公明)が語った「環境権の加憲」などで“お試し”し、2回目以降で「9条を」という鎧が、衣の下から透けて見える。自民党が「環境権」と共に“お試し”改憲の条項に挙げる「緊急事態、財政規律」には、小沢氏も「賛成だ」と明言した。

この日は前述の3党の他、民主・次世代の両党からも登壇。「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して……」と規定する憲法前文を、平沼赳夫衆院議員(次世代)は「絵空事」と非難。松原仁衆院議員(民主)も「拉致問題の解決において了解できない」とした上で、「日本は排他的経済水域という準国境を持つ。ナショナリズムの高まりに呼応し、憲法は変えるべき」と述べた。

前述の船田氏は、自民党発行の『ほのぼの一家の憲法改正ってなあに?』と題する漫画をPR。国民投票は、法改定を前提に18歳以上が有権者。漫画のターゲットは若者だ。ナショナリズムを刺激しつつ、「柔らかい媒体」(船田氏)で迫る。正念場の護憲の側は、若者の心に響く取り組みも必要だ。

【渋谷で若者にアンケート】

「9条を変えるのも、他国の戦争に参加するのも反対」――5月3日に東京・渋谷で実施された「若者憲法アンケート」の結果、安倍政権が進めようとしている集団的自衛権の行使に対し、圧倒的多数の若者たちが反対の声を上げた。「戦争の放棄」を掲げる憲法9条についても半数超が「変えるべきでない」と回答。若者たちの多くが安倍政権に異議を唱えている形だ。

連休でにぎわうJR渋谷駅前。「声をあげよう! 私たちの命と自由のために」をスローガンに、6月14日に東京都内で「若者憲法集会」の開催を予定している同集会実行委員会の黒津和泉さんらメンバー約10人が集結、ハチ公前にいる若者たちにアンケートへの協力を呼びかけた。「100人アンケート」と銘打ったが、約2時間で10代95人、20代15人、30代6人の計116人が回答。8割あまりが中高生、学生だった。

その結果、憲法は「どちらかといえば」を含めて「変えるべきでない」(37・9%)が「変えるべき」(26・7%)を10ポイントあまり上回った。9条については「変えるべきでない」(51・7%)が「変えるべき」(16・4%)の3倍超に。また、集団的自衛権については8割近くの77・6%の若者が知っており、海外での同盟国の戦争に「参加するべきでない」と答えた人が9割近くの87・9%に達し、「参加するべき」(9・5%)を大きく引き離した。

回答した人に話を聞くと、「平和が保たれているので9条は変えなくていい」(15歳・高校1年男子、東京都内)、「いくら米国と友好関係にあっても戦争参加は反対。とくにアジアの国々との友好を深めてほしい」(15歳・高校1年女子、東京都内と静岡県在住の二人)などと安倍政権批判の声が多かった。実行委では、憲法の平和主義が「若者にも根付いており、戦争に対する拒否感は強い」と分析、「自分が戦争に行くのではないかという危機感もある」とみている。

5月7日、衆院憲法審査会が開かれ、船田氏は憲法改正に向け、環境権、緊急事態条項、財政規律条項の3点について優先協議を提言。改憲論議が本格化しつつある。

(本誌取材班〈片岡伸行・山村清二〉+永野厚男・教育ライター、5月15日号)

“異性装”からみえる社会の不自由さ

安冨歩さん(右)とヴィヴィアン佐藤さん(4月20日、東京・渋谷にて)。(写真/小林和子)

安冨歩さん(右)とヴィヴィアン佐藤さん(4月20日、東京・渋谷にて)。(写真/小林和子)

「エリート」「金持ち」「美人」……人間をはめ込む枠は社会に多数あるけれど、「最もわかりやすく、最も強烈なのは〈男〉〈女〉」(安冨歩東京大学教授)。その区分けを超えたトランスジェンダーの等身大の生と愛を描く『私はロランス』(ドラン監督、2012年)の上映会が4月20日、東京・渋谷のアップリンクで開かれた。上映後、男装をやめた安冨教授と女装家のヴィヴィアン佐藤さんによるトークがあった。

大きなウィッグをつけ、女装歴が長いヴィヴィアンさん。以前行ったディズニーランドでは職員にウィッグを外し、化粧を落とすことを強要されたという。しかもミッキーマウスは記念撮影を拒否。「すかしたネズミね」とヴィヴィアンさんは会場でバッサリ。

一方の安冨教授。街では好奇の視線に晒されることも多いが、職場(東大東洋文化研究所)ではまったく差別を受けることはなく、映画の主人公のような孤独を感じることもないという。最近は「美人」と言われることもあるそうだが、「背が高い」「脂肪が少ない」「彫りが深い」など、男性の特徴が強く出ている女性が「美人」と区分されると分析。結果、大半の女性がブスに区分され、「自分はブス」と思い込まされることが「(男性の)支配の手段として使われている」と指摘。近々論文にしたいと語った。

(小林和子・編集部、5月1日号)

都教委の免職処分取り消し判決――所見は「信用できない」

東京都立学校に新任教員として赴任したものの、採用1年目で分限免職となった男性(30代)が、東京都教育委員会(都教委)を相手に処分取り消しを求めた裁判で、東京高裁は4月16日、都教委の控訴を棄却し、一審判決を支持する原告勝訴の判決を下した。

これを受けて、現職の教員らでつくる「すずかけ会」(新採教員解雇撤回の会)は4月21日、都教委に要請書を提出した。要請は、上告を行なわないことと、男性を早急に学校現場に復帰させることの2点。応対した都教委の担当者は、「(関係部署に)伝える」と回答するにとどまった。

男性は2011年4月に赴任。だが、勤務校では校長のパワハラが日常化していた。校長は、男性の初任者研修の指導教員を独断で解任したうえに、教員として不適格とする評価所見を都教委に提出した。自主退職を拒否した男性は、11年度末で免職処分となった。

男性は12年9月に提訴。裁判で、都教委側は研修の指導教員が外れたのは男性の反抗的態度が原因であり、「(男性は)授業中に携帯電話で株取引をしていた」などと事実に反する主張をした。

一方で、校長は初任者研修の年間指導計画にすら目を通していなかったことがわかり、研修体制の杜zさが露呈した。それどころか、都教委は指導教員の不在を把握しながら、そのまま放置していた。

東京地裁は昨年12月、校長の評価所見は「不合理」であり、都教委の免職処分は裁量権の逸脱・濫用で「違法」と断じ、処分取り消しの判決を下した。にもかかわらず、都教委は控訴していた(本誌15年4月10日号参照)。

東京高裁は校長の評価所見は「信用できない」とし、都教委は再び敗訴した。判決を受けて、男性は「安堵した。早く職場復帰したい」と語った。教員人生を狂わす不当な免職処分。あらためて教育行政の責任が問われている。

(平舘英明・ジャーナリスト、5月1日号)

入管施設の実態を無視する偏向報道!?――『読売新聞』に収容者が抗議

茨城県牛久市にある法務省管轄の外国人収容施設、東日本入国管理センター(通称・牛久収容所、佐藤政文所長)の収容者たちが4月18日までに、〈「帰りたくない」難民申請〉との記事(3月29日付)を掲載した『読売新聞』に対し、〈憤りを感じずにはいられません〉との抗議文書を送付した。

『読売』の記事には、次のようなくだりがある。

〈収容施設は刑務所とは異なり、食事時間は自由で、備え付けの電話を使うこともでき、刑務作業もない。収容者は自室で本を読んだり、テレビを見たりして過ごし、自由時間には卓球やサッカーなどもできる。病気の治療も無料だ〉

これだと収容生活がいかにも快適なような印象を与える。抗議文書ではこの点を取り上げ、〈私たちは受刑者じゃないから、刑務所と違ってあたりまえです〉とし、電話代は自己負担であること、治療を申し込んでから診察を受けるのに1カ月以上かかることも珍しくないこと、〈医療体制の悪さと入管職員の不適切な対応のせいでここ1年半5人の収容者が死んで〉いること、長期収容自体が〈精神的虐待以外の何ものでもない〉ことなどを縷々述べる。その上で、〈偏った報道の怖さを新聞社である読売は知らない訳ではないのですね?〉〈自国では望めない平穏な暮らしが日本でなら手にできるかもと胸に夢を抱いてきた人の気持ちが読売には理解できないのですか?〉などと問うている。

また、牛久収容所で3月下旬から4月初めまでに起きた、座り込み強制排除の際の収容者の負傷と抗議のハンガーストライキ(医療措置を約束したことなどから4月7日に収束)の経過を記し、〈しかし、読売新聞はこういう事には関心が無い事でしょう〉と皮肉気味に指摘。収容者は『読売』に抗議の電話もしたが、「納得できる対応はされなかった」という。

『読売』は同じ日の1面で「法務省の調査」を紹介し、「難民申請が不法滞在者の『送還逃れ』にも悪用されている」との見方を示しているが、日本の入管行政が国連人権機関から再三の是正勧告を受けながらそれを無視している事実は紹介していない。〈入管職員の言ってる事だけをそのまんま記事にする事は良くないと私たちは思います〉との収容者の声をどう聞く。

(片岡伸行・編集部、5月1日号)

仕事を紹介しない職安を大阪地裁がバッサリ――「あいりん職安は違法である」

あいりん職安の代わりに(公財)西成労働福祉センターが職業紹介をするが、トラブルが多い(本誌3月27日号参照)。(撮影/佐藤万作子)

あいりん職安の代わりに(公財)西成労働福祉センターが職業紹介をするが、トラブルが多い(本誌3月27日号参照)。(撮影/佐藤万作子)

「よく考えられた判決と言えます。『合法』という被告の主張はことごとく否定して原告の顔を立てながら、職員に『過失なし』としたのは、『今回だけは許したる。しかし、こんな訴訟がおこらんようにちゃんとせえよ』というメッセージです」――原告代理人弁護団の大川一夫弁護士はこう話す。

4月16日。釜ヶ崎(大阪市西成区萩之茶屋の通称)の労働者4人が、地元のあいりん職安による求職申し込みの拒否処分などの取り消しを求めた裁判の判決言い渡しが大阪地裁であった。傍聴席を埋めた労働者が固唾をのんで見守る中、田中健治裁判長の声が響いた。「却下する」「棄却する」。傍聴人が「仕事紹介せん職安はあいりんだけや。それでええというんやな」と吐き捨てるように言った。

ところが間もなく怒りの声は一変することになる。判決文には、「あいりん職安は(略)日雇労働に係る職業紹介を行うことをその分掌事務とするものである以上、これを行わないのは違法である」とはっきり記されていたのだ。

しかも田中裁判長は、同職安が仕事を紹介しない理由として被告の国が主張した「短時間に大量の求人・求職を受け付ける施設の整備ができない」など3点について、「昭和45年10月頃には(略)職業紹介を行うことが課題として指摘されていたのであるから(略)組織及び設備等の整備を行うべき期間は十分にあった」などと、すべてを退けたのである。ただ、求職申し込みを拒否した職員には「現状の組織や設備等を前提とした対応を取ったことに過失はない」として、訴えを棄却したのである。

原告の一人、釜ヶ崎合同労組の稲垣浩委員長は「あいりん職安はこの判決を真摯に受け止め、早急に釜ヶ崎の労働者に仕事の紹介業務を行う準備にかかれ」との声明を出した。原告らはあえて控訴しないため、あいりん職安を断罪したこの判決は確定することになる。

(佐藤万作子・ジャーナリスト、5月1日号)

安倍政権の本音は裁量労働制の拡大だ――残業代カットが合法化!?

ブラック企業被害対策弁護団などが開いた「ブラック法案によろしくシンポ」でアピールする参加者=4月23日、東京・千代田区。(撮影/東海林智)

ブラック企業被害対策弁護団などが開いた「ブラック法案によろしくシンポ」でアピールする参加者=4月23日、東京・千代田区。(撮影/東海林智)

「われわれにとっての目玉は残業代ゼロじゃないですよ」

1年前、東京・大手町に本社を構えるある商社系の人事担当者の意外な言葉を聞いた。当時、厚生労働省の労働政策審議会で検討されていたホワイトカラー・エグゼンプション(WE・残業代ゼロ制)に対する、企業の本音を取材しようと訪れた。小一時間話を聞いたが、今ひとつピンとした答えが返ってこない。残業代ゼロ制度のこともよく知っている感じではない。大手の人事がこの程度ではまだ、取材が早かったかなと思い引き上げようとした時に、人事担当者は冒頭の言葉を発した。「え、じゃ何ですか」と問うと「裁量労働制ですよ」と答え、こうつけ加えた。「いつ使えるようになるか分からないエグゼンプションより、すぐに使える裁量制拡大ですよ」

安倍晋三政権が閣議決定した労働基準法改正案。メディアの関心はもっぱらWEに向いている。労基法の根本規制である労働時間規制(1日8時間、週40時間など)に“穴”を開けるWE制度の創設は大問題であり、決して許してはいけない。だが、その陰に隠れるように盛り込まれた企画型裁量労働制の対象拡大が、実は経営側が目玉として切望する“改正”なのだ。

裁量労働制には、専門業務型と企画業務型の2種類あり、改正のターゲットは企画型。裁量労働制は予め決めた時間を働いたと「みなす」制度。決められた時間は実際、働いたかどうかは関係なく働いたとみなす。たとえばみなした時間を9時間とする。その場合、6時間だけ働いても9時間働いたことになる。逆に18時間働いても、働いた時間は9時間である。

働く側に労働時間を決める裁量があれば、短時間勤務も可能になるだろう。だが、実質的に裁量を持たない労働者がこの制度に取り込まれれば、残業代を合法的にカットできる制度となってしまう。そのため、裁量を持つ者の要件は厳しく設定される。適用されている労働者は企画型で0・3%程度だ。経営側はここが不満だ。「使い勝手が悪い」「(要件が)厳しすぎる」と適用拡大を求めてきた。

【首相の無責任な答弁】

今回の改正案でどのように対象が広がるのか。法案要綱は非常に分かりづらいが、煎じ詰めれば(1)法人向けに提案型の営業をする者(2)現場で営業の業務管理を行なう者――の2類型だ。対面販売などの営業やルートセールスなど単純な営業でない場合、すべての営業職が適用対象になる可能性がある書き方だ。厚労省は「単純な営業はダメだし、高度な営業でなければ適用できない」と言うが、分かりづらい文言でいかようにも解釈できる書きぶりである。ブラック企業が社会問題のご時世、企業の倫理感などに期待はできない。

しかも、裁量制には、WEと違い年収要件はない。300万円だろうが200万円だろうが、一定の経験があれば20代半ばの営業職も対象にされてしまう。

3月30日の予算委員会。民主党山井和則衆議院議員が安倍首相に「若者や低所得の営業マンにも裁量労働制を拡大することは過労死を増やすのではないか?」と質問すると、首相は「考えにくい」と答え、山井議員から「無責任な答弁」と断じられた。みなしの平均は約8時間20分だが、実際に裁量制で働く人の約5割が12時間以上働いている(厚労省労働時間総合実態調査13年度)。残業代に相当するとされる裁量手当があるとは言え、残業代カットが露骨に合法化されるようなものだ。加えて、労働時間が曖昧で、過労死などの被害に遭った際の労災認定は非常に困難だ。労働弁護団の棗一郎弁護士は「労働時間の立証が困難で、過労死認定に非常に苦労する。命を脅かす拡大を許してはいけない」と警鐘を鳴らす。

圧倒的多数の与党の下、今国会で成立しかねない労基法改正は、WEで労働時間規制に穴を開けるという名を取り、裁量労働制の拡大で残業代カットの実を取ることが企まれている。私たちの時間が盗まれようとしているのだ。今春のメーデーは大きな山場を迎える。

(東海林智・ジャーナリスト+本誌取材班、5月1日号)