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反対世論喚起へ有識者や経済人が呼びかけ――移設阻止へ「辺野古基金」設立

「辺野古基金」設立の記者会見。手前中央が呉屋守将氏、右が翁長雄志知事。(4月9日、那覇市。撮影/横田一)

「辺野古基金」設立の記者会見。手前中央が呉屋守将氏、右が翁長雄志知事。(4月9日、那覇市。撮影/横田一)

安倍政権が強行する辺野古新基地建設に反対する有識者や経済人や県議らが9日、那覇市内で記者会見、「辺野古基金」設立を発表した。賛同者から数億円(目標額)を集め、米国への働きかけや意見広告掲載など新基地反対の世論喚起をすることが目的だ。共同代表には、元外務省主任分析官の佐藤優氏、菅原文太氏の妻・文子氏、金秀グループの呉屋守将会長、かりゆしグループ平良朝敬CEO(最高経営責任者)、沖縄ハム総合食品の長濱徳松会長、そして前嘉手納町長の宮城篤実氏の6名が就いた。

記者会見には翁長雄志知事も参加。「日本の民主主義、アメリカの民主主義に辺野古は大きな足跡を残すのではないか。大変頼もしく、ありがたい気持ち。沖縄こそ平和の緩衝地帯として多くの方と連携していければ」と語った。「基金に関連して菅官房長官や安倍首相に訴えたいことは?」と聞くとこう答えた。「菅官房長官とは(5日に)ある意味でしっかりとお話をさせていただきました。総理とお会いできるのかは分かりませんが、(基金設立関連の)こういった報道はいろいろな形でされると思いますので、向こう(安倍政権)も情報収集をしっかりとされると思いますから、沖縄県民、あるいは沖縄県民の闘いを支持される方々の広がりをご理解していただけるのではないのかなと思っております」。

安倍政権が強行姿勢を続けるのなら、「反対世論を県内外に広げて対抗する」と宣言したに等しいだろう。地元記者はこう話す。

「辺野古基金は、東京都が尖閣基金を募った“逆バージョン”。お金を集める手法は同じだが、『沖縄こそ平和の緩衝地帯』(知事)と強調したように方向性はまったく逆。資金確保をしながら反対世論を盛り上げて“安倍政権包囲網”を作ろうする国民的運動ともいえます」

尖閣問題は東京都の募金を機に関心が高まったが、辺野古基金も世論喚起効果が期待できそうだ。

(横田一・ジャーナリスト、4月17日号)

小嶋進さん(元ヒューザー社長)、再審請求へ──『週刊新潮』が掲載しなかったコメント全文掲載

2005年に発覚した耐震偽装事件で、強度不足を知りながらマンションを顧客に販売して代金をだまし取ったとして、詐欺の有罪(執行猶予付き懲役3年)が確定したマンション企画・販売会社「ヒューザー」(倒産)の小嶋進元社長(61歳)が東京地裁に再審を請求する予定だ。再審請求に必要な新証拠も見つかったという。

小嶋元社長は、一連の経過をつづった電子書籍『偽装──「耐震偽装事件」ともうひとつの「国家権力による偽装」』(kindle版、金曜日)を今年4月に出版しており、そのなかでこう強調している。

「たとえ無実でも、社会的に抹殺されてしまうことがあるのだ――。そんなこの事件の真実と本質を、無念の思いを込め、記録として遺しておくことに決めました」
「これから本書で明らかにしていく事実が、これまでテレビや新聞で報道されてきた『耐震偽装事件』の内容とはあまりにもかけ離れていることに、読者の皆さんはきっと驚かされることでしょう。私を断罪する一方で、警察や検察、報道機関が犯した数々の失態の責任は、すべてうやむやにされています」
「これは、私ひとりの問題では決してないと思います。記録として遺すことで、二度と私のような目に遭う人間が現れないために、私のとんでもない体験を役立てたい」

ところが、この小嶋さんの思いを冷やかす記事を『週刊新潮』(酒井逸史編集・発行人、5月7・14日号)が掲載した。夜間に自転車を押しながら歩いている小嶋さんを、本人の了解を得ずにこっそり撮影し、〈冤罪のヒーローとして脚光を浴びるつもりなのだ〉と書いたのだ。(記事によると、写真撮影者は大橋和典氏)

小社は、小嶋さんの本を出版した関係から、4月25日(土)午後9時43分に届いた『週刊新潮』からの質問を小嶋さんに取り次いだ。そして、翌26日(日)午前11時14分に小嶋さんからのコメントを『週刊新潮』に送った。

字数の関係上、小嶋さんのコメントがすべては掲載されないことは当然だろう。しかし、掲載されなかった部分が多い。そこで、小嶋さんの了承を得たうえで、「質問」と「回答」の全文を公開する。小嶋さんの誠実な態度がこの回答にも示されている。

(伊田浩之・編集部)

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【『週刊新潮』からの質問】
(1)再審請求への思いをお願いします
(2)事件前と現在の生活(給料や食事、着る物など)はどう変わりましたか

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【『週刊新潮』への回答】
(1)再審請求への思いをお願いします

私は「耐震偽装」に全く関与していないにもかかわらず有罪とされ、地位も名誉も奪われました。しかも、私が罪に問われた「詐欺」容疑とは、警察と検察の証拠捏造によるものでした。「偽装をさせてマンションを売った」からではなく、耐震偽装の発覚後も「マンションを引き渡して残金を受け取った」から、というものです。でも、この容疑自体が、耐震偽装の「小嶋首謀説」を完全に否定しているわけです。
私は無実を晴らすため、『偽装――「耐震偽装事件」ともうひとつの「国家権力による偽装」』という電子書籍を出版しました。警察や検察、報道機関、裁判所が犯した失態をうやむやにはさせまいと、その責任を問うものです。一体どちらが「詐欺師」なのか、まずは読者に判断してほしいと思っています。
その上で、命のある限り、再審請求し続ける覚悟です。開かずの門だろうと、死ぬまで叩き続けるつもりです。

 

(2)事件前と現在の生活(給料や食事、着る物など)はどう変わりましたか

今はマンション管理の仕事をしています。ペンキ塗りやごみ掃除などをして、どうにか生計を立てています。
天が私に課した使命とは、プライベートジェット機に乗って世界を遊び回ることではなく、泥まみれになって己が作ったマンションの溝を浚い、入居者に気持ちよく生活してもらうことだと、今は思っています。さらには、「公正であるべき裁判の不公正」という社会の不条理に一石を投じることだと思っています。

長期契約で川崎重工業に3400億円――時限立法で武器予算拡大

防衛装備のため、長期契約を可能とする「特定防衛調達特別措置法案」が提出され、衆院安全保障委員会で4月2日までの4時間弱の審議で可決、参院へ送られた。

予算組みは単年度ごとが基本。国会の議決があっても5年を超える契約で債務負担(支出)することは財政法違反だ。ところが、この法案は、中期防衛力整備計画に必要な約25兆円を7000億円削減すると算定し、防衛装備の買い控えではなく、まとめ買いで削減するとして、10年以内の長期契約を、計画終了年である2018年度末まで結べる時限立法だ。終了年に2028年までの契約が可能で、「防衛省による武器予算長期囲い込み法」と言うべき法案だ。審議では「2015年度では固定翼哨戒機(P-1)20機のみを要求しているが、来年度以降は対象を広げるのか」と問われ、中谷元防衛大臣は「SH-60KやUH-60Jの固定翼機が対象になりうる」と答え、後に「回転翼」と訂正した。まるで中身が分からないまま子どもにねだられたプラモデルのリストのようだ。

ちなみにP-1の製造社は川崎重工業1社のみで同社は20機分3400億円を手にしたも同然だ。しかし、審議ではP-1には1機156億円の購入実績があり、今回は1機170億円で単価は上がることが判明。左藤章防衛副大臣は通信など必要な仕様を付け「191億円と査定されたものが170億円」だと釈明。企業の言い値であり、縮減効果はウソに近い。

衆院では共産・社民以外は全党が賛成し可決した。

日本経済団体連合会は、昨年4月に武器輸出三原則撤廃と同時に誕生した「防衛装備移転三原則」を歓迎し、翌5月には経済産業省と防衛省を招いて説明を聞いた。今年1月には、財政悪化で国が戦闘ヘリコプターの発注を取りやめて損害を被ったとして富士重工業が国を訴えた裁判で、国に350億円余の支払いを命じる高裁判決が出た。今回の法案で、財政悪化にかかわらず、医療や社会福祉を削ってでも武器商人に税金を投じる道ができた。時限の延長は折り込み済みだろう。今年度の防衛関係予算は補正予算を含め過去最高の5兆円を超え、栄えるのは軍需産業だ。このままでは参院では21日にも採決の可能性がある。

(まさのあつこ・ジャーナリスト、4月17日号)

福井地裁が運転差し止め仮処分を決定――高浜原発再稼働に司法判断

福井地方裁判所は、4月14日、関西電力株式会社(以下「関西電力」)に対し、高浜原子力発電所(以下「高浜原発」)3号機及び4号機の原子炉について、運転の差し止めを命じる仮処分決定を発令した(以下「本件決定」)。

福井地裁では、昨年、関西電力大飯原子力発電所(以下「大飯原発」)3、4号機について、運転差し止めを認める歴史的判決を言い渡した。同判決は、原告が主張立証した2005年から11年というわずか6年の間で、基準地震動を超える地震動が原発を襲った事例が5例あることや、外部電源や主給水ポンプといった重要な設備について耐震基準がSクラスになっていない等の理由により、原発事故により放射性物質が飛散し、人格権を侵害する具体的危険性を認めた。その後の大津地裁決定も、規制委員会の設置変更許可が未了であったことから保全の必要性こそ否定したものの、地震等による原発事故の危険性については福井地裁の上記判決と同様の認識に立っている。

それにもかかわらず関西電力や規制委員会は、こうした複数の裁判所の指摘を無視して、平均像を元にした基準地震動の策定方法を抜本的に見直すことも、外部電源や主給水ポンプ等の耐震基準を見直すこともしないまま、高浜原発の再稼働を図り、また許可した。これは、露骨な司法軽視であり、三権分立という民主主義の根幹を揺るがしかねない。

本件決定は、このような国と電力会社の暴挙、とりわけ規制委員会による基準の不合理性を指摘したものであるが、国と電力会社は、今度こそ司法の判断を厳粛に受け止めるべきである。一方、私たち市民にも、裁判所のみに任せるのではなく、安倍政権の数々の暴挙を投票その他の手段により、主体的に変えていく責務がある。

前日の太陽が最も遅くまで輝く地こそ、翌日の太陽は最も早く昇るもの。ここ福井県は今世紀に入ってから3・11が起きるまで、衆参両院選挙の比例区における自民党得票率が全国一位だったが、今、福井は、脱原発の夜明けを作ろうとしている。全国各地で、原発等を抱えるそれぞれの現場での、新しい時代に向けた運動に勇気を与える決定だ。

(笠原一浩・大飯原発差止訴訟・福井弁護団事務局長、4月17日号)

上西議員を党除名で乗り切る橋下市長――大阪都構想占う府・市議選

告示の4月3日午後、府議、市議の応援演説をする橋下徹大阪市長。(大阪市此花区、撮影/粟野仁雄)

告示の4月3日午後、府議、市議の応援演説をする橋下徹大阪市長。(大阪市此花区、撮影/粟野仁雄)

「本当に申し訳ありません。今日の晩、本人に会見させて即刻処分を決めますよ」。大阪府議選と大阪市議選の告示日だった4月3日の午後、満開の桜が雨に濡れる大阪市此花区の千鳥橋みどり公園。

公務を早く切り上げ、大阪維新の会の大阪市議・大阪府議候補の応援演説に駆け付けた橋下徹代表(大阪市長)は街宣カー上で上西小百合衆院議員の不祥事を謝罪(翌日除名)した後、パネルを次々と見せながら、「こんな税金の無駄遣い、役人高給や天下りに自民、公明、民主、共産は何もしてこなかった」と批判し、市議会で条例案が二度否決された地下鉄民営化について「料金を20円下げるのも大変なことなんです。それを維新の党はやったんです」と熱弁した。

だが、5月17日に予定されている都構想の住民投票について「住民投票することには賛成だが都構想には反対」とする公明党にはもちろん、都構想自体にほとんど触れず、税金無駄遣い批判から常に4党を並列で批判していた。

大阪市を廃止し大阪都として五つの特別区に分け、二重行政による税金の無駄遣いをなくし東京都のような力をつける、とする大阪都構想だが、有権者にわかりにくく集票に結び付かないことを認識している。12日投開票の二つの重要選挙で市議選での過半数は断念したが、府議選では「住民投票で都構想に賛成の結果が出れば、大阪府議会での条例改正などを迅速に進めるためにも過半数は重要」(松井一郎大阪維新の会幹事長・府知事)と過半数確保を目指す。

最盛期、府議会で過半数あった維新の会も離党が相次ぎ現在は半数を割る。公務の合間にも都構想の説明会を400回も行なった橋下市長は「都構想が否決されれば市長を辞める」と宣言している。

「5月の住民投票は今年、最大の政局」と言われ、ある自民党幹部は「地方選で維新を叩き住民投票でも都構想を葬らなくては」と話す。

(粟野仁雄・ジャーナリスト、4月10日号)

大阪市など地方議会から包囲網――ヘイト・スピーチ条例で規制

ヘイト・スピーチ(差別煽動表現)に対し、大阪市が「ヘイトスピーチへの対処に関する条例案要綱(案)」を公表し、4月12日まで意見を募集している。要綱案は2月に橋下徹市長が市人権施策推進審議会の答申を受けてまとめたもので、全国初の条例化をめざす。

要綱案によると、ヘイト・スピーチは特定の人種・民族の属性をもつ個人または集団に対し、社会からの排除、権利・自由の制限、憎悪・差別意識や暴力の煽動を目的に、侮辱や誹謗中傷し脅威を感じさせる表現活動と定義。人の尊厳を害し差別意識を生じさせるおそれがあることから、必要な措置をとることによって人権を擁護しヘイト・スピーチの抑止を図ることを目的としている。

具体的措置として、学識経験者らによる審査会を設け、ヘイト・スピーチと認定すれば表現内容の拡散防止措置をとるとともに表現活動者の名前や名称を公表。被害者が訴訟を起こす場合、市が訴訟費用を貸し付けるなどの支援をすることも盛り込んだ。

一方、各地方議会でヘイト・スピーチ規制を国に求める意見書の採択が相次いでいる。その多くは、日本政府に法整備を求めた昨年8月の国連人種差別撤廃委員会の勧告や、京都朝鮮第一初級学校(現、京都朝鮮初級学校)への街宣活動を人種差別と認定した同12月の最高裁決定に触れ、国際社会の批判が高まっていると指摘。「移住労働者と連帯する全国ネットワーク」によると、昨年12月までに東京都国立市、名古屋市、奈良県など24議会、さらに今年3月議会で約70議会が意見書を採択し、計100近い地方議会によるヘイト・スピーチ包囲網を形成している。

市民運動も監視を緩めていない。神奈川県川崎市の市民団体は、3月市議会でヘイト・スピーチ対策意見書の採択にただ一人反対した三宅隆介市議に公開質問状を出し、理由の説明を求めている。東京都にヘイト・スピーチ対策を求めて週1回の都庁前アピール(訴え)を実行してきた「差別反対東京アクション」は、3月都議会が何の対策も打ち出せないまま閉会したことを批判。

今後はアピール行動を不定期に開催し、より効果的で強力な運動をめざすことをホームページで宣言している。

(平野次郎・フリーライター、4月10日号)

「日の丸」掲揚も進む東京都――不起立は業務「妨害」!?

重い処分にならなかったのは支援者らの「闘いの成果」と田中聡史さん。(撮影/平舘英明)

重い処分にならなかったのは支援者らの「闘いの成果」と田中聡史さん。(撮影/平舘英明)

「起立斉唱の命令には従えないと態度で示すことは重要」。こう語るのは、14年度卒業式で「君が代」斉唱時に起立せず、5回目の減給処分(10分の1・1カ月)を受けた特別支援学校教員の田中聡史さん。

東京都教育委員会(都教委)の「日の丸・君が代」強制に反対する「卒業式処分発令抗議・該当者支援総決起集会」(3月31日、東京・全水道会館)での発言だ。

田中さんは減給処分に加え、業績(学校経営)評価が最低のD評価で、「服務事故再発防止研修」も繰り返されるなど不利益取り扱いを受けている。しかも、15年度は意に反する異動の対象となった。

田中さんの他にも、東京「君が代」裁判第三次訴訟判決(今年1月)で減給処分が取り消された教員9人のうちの一人(3月31日退職者)に戒告の再処分が発令された。「日の丸・君が代」を強制する都教委の03年の通達後、被処分者は延べ465人に達した。

都の14年度卒業式では田中さん以外の被処分者はいない。理由について、集会の主催者(卒業式入学式対策本部)が、不起立する高校教員などが担任から外されている現状を報告。さらに、都教委が管理職連絡会に配布した文書で、被処分者に重い処分を科すために、職員会議での発言内容や、職務命令書受領時の言動などを克明に記録するよう指示していたこと、不起立行為は業務「妨害」行為とみなされていることなども判明した。

また、3月10日(東京大空襲70年)と11日(東日本大震災4年)、都内の公立学校が初めて「日の丸」の半旗を掲げたことも報告。都教育庁都立学校教育部などによると、10日は東京都生活文化局、11日は内閣官房長官、文部科学省から、教育庁を通じて都立学校長に指示された。学校現場で「日の丸」掲揚が進む。東京「君が代」裁判原告団らは、都教委に対し「不当処分取消・撤回を求めて最後まで闘い抜く」との抗議声明を出した。

(平舘英明・ジャーナリスト、4月10日号)

総聯議長・副議長宅の家宅捜索で証拠物ゼロは想定内か――拉致問題で安倍首相が脅し

拉致被害者家族の前で「拉致問題は私の内閣で解決する」と繰り返し公約した安倍晋三首相が、ついに国家権力を発動した。3月26日早朝、在日本朝鮮人総聯合会(以下、総聯)の許宗萬議長と南昇祐副議長の自宅に京都府警、島根・神奈川・山口県警の合同捜査本部の装甲車や捜査ヘリまで動員して家宅捜索に踏み込むという、暴挙というよりは脅しに出たのだ。

この日の家宅捜索容疑は2010年9月、貿易会社東方(東京都台東区、李東徹社長)が北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)産のマツタケ1200㎏を中国産と偽って輸入した外為法違反事件に、総聯の許議長と南副議長が関与しているという容疑をかけて突如踏み込んだ。こじつけのガサ入れだけに、押収した証拠物はまったくなし。許議長宅に踏み込んだ捜査員はわざわざ自分のバッグを入れていかにも押収物があったかのように持ち帰っている。この事件では昨年5月にも今回よりも大規模な摘発捜査で許議長の息子の自宅も捜査対象になったが、その頃から警視庁筋からは「議長逮捕が狙い」という観測情報は流れていた。今回も「何も出ないのを承知でやっている」と警視庁の外事関係者。

捜査当局が大挙したこの家宅捜索劇を外務省担当の記者は「脅しですよ。北朝鮮本国に対して拉致被害者情報を出さないとこうなるという脅しですよ」と説明した。さらに「安倍は北側と交渉している外務省の伊原(伊原純一アジア大洋州局長)がなんの成果も出していないことが相当に頭にきて呼びつけて激怒」した結果、官邸、外務省、拉致問題対策本部が脅しに合意したというのだ。また、ある情報筋によると、家宅捜索に及んだ3月26日以前に、北朝鮮から日本政府に対して、拉致被害者情報を外した特別調査委員会調査報告書提出の打診があった。安倍首相はこれにも激怒、一転、脅しに転じたというのだ。なるほど合点がいく説明だ。

26日、ガサ入れを受けた許議長は捜査員同様に大挙して押し寄せたマスコミを前に激しく抗議した。「無法、奇襲的、異様な、非人間的な、政治的弾圧の暴挙」であり「このデタラメ捜査を許可した官邸にすべての責任がある。私は徹底的に戦う」し「拉致を解決させる意思がないのは日本当局である」と激高が続いた。4月1日行なわれた「警察当局の朝鮮総聯議長・副議長宅に対する不当極まりない強制捜索の暴挙を断罪・糾弾する在日朝鮮人緊急集会」で渡辺博弁護士は「今回の議長宅、副議長宅への捜索差押はマツタケの不正輸入という名目で行なわれましたが、実際は、朝鮮総聯や議長、副議長が犯罪に関与しているという印象を作り上げるために公安警察が行なったイベントにすぎません。これは重大な人権侵害です」と、国家権力のイベントだと指摘した。当然のように、北朝鮮本国は「調査拒否」を通知してきた。

【首相の焦りのあらわれ】

多くの識者が指摘しているように、今回の家宅捜索の背後には「拉致問題を解決すると公約した」安倍首相の焦りが見え隠れする。以前の安倍首相は「対話と圧力」をモットーにしていたはずだが最近は「行動対行動」とか「圧力対圧力」を連発するようになった。安倍首相には拉致問題しか眼中にないようだ。昨年5月の日朝局長級会談でまとまったストックホルム合意の〈すべての日本人調査〉から〈最優先するのは拉致被害者情報〉と勝手に方向先を変えたのも安倍首相である。前述の外務省担当記者は「官邸には、脅して圧力をかければ北は折れてくるという錯覚がある」と図星のポイントを語ったが、その錯覚の持ち主こそ安倍首相だろう。

4月3日、安倍首相は拉致被害者家族会と面会した。「安倍政権にとって拉致問題の解決は最重要課題だ。その方針で6年間、北朝鮮との交渉に当たってきている。縷々困難な問題があろうとも被害者の方々と家族の皆様が抱き合う日がやってくるまで、我々の使命は終わらない」と不思議な決意表明に終わった。

拉致問題解決にはタフな交渉力を持つ人物が必要だ。

(成田俊一・ジャーナリスト、4月10日号)

Mプロデューサーと恵村氏、古賀氏降板に新事実――報ステ、古賀vs.古舘論戦の裏側

放送の2日後(29日)に三重県松阪市での講演でも報道ステーションについて話す古賀芳明氏(左)。隣は松阪市市長。(撮影/横田一)

放送の2日後(29日)に三重県松阪市での講演でも報道ステーションについて話す古賀芳明氏(左)。隣は松阪市市長。(撮影/横田一)

官邸の圧力で「報道ステーション」の統括プロデューサーM氏と恵村順一郎氏と古賀茂明氏は同時期に更迭・降板されたのか否か。3月27日の同番組で古賀氏は、古舘伊知郎キャスターとの楽屋での会話を録音したことを明らかにした。

「(報ステに出演した)3月6日、古舘さんは僕の楽屋に来てこう謝罪しました。『自分は何もしなかった』『Mプロデューサーと、恵村順一郎さんが降板することについて、気付いても 自分はわざと知らないふりをした』と打ち明け、『大変、申し訳ない』と頭を下げました」

しかし番組中に古舘氏は、早河洋・テレビ朝日会長と佐藤孝・古舘プロジェクト会長の意向で古賀氏が降板になったことを否定し、メディアの政権監視機能が低下しているとの古賀氏の批判に対しても、「(報ステで)いい番組を作っている」と反論した。

だが、その番組を作っていた中心人物こそ、古賀氏が「更迭」と訴えたMプロデューサーであったのだ。報ステの前身『ニュースステーション』時代からディレクターを務めたベテランで、古賀氏は「政府を批判するとニュースをもらえなくなると横やりを入れる政治部や経済部の記者たちを一喝。抗議が来たら真正面から反論、幹部の圧力にも自分が矢面に立った」と高く評価する。権力監視・批判番組を作ってきた報ステの屋台骨のような存在であったというのだ。

30日の記者会見で菅義偉官房長官は、古賀氏の発言を「まったく事実無根」と反論し、放送法に触れながら「テレビ局の対応を見守りたい」と述べた。しかし、Mプロデューサーの更迭を古舘氏自身も問題視していたのに、番組では更迭を否定する虚偽発言をしていたとすれば、古舘氏の方こそ、放送法に違反する発言をしたことになる。古舘氏が楽屋での発言内容を認めた場合、官邸の圧力がテレ朝の人事に影響を与えた実態が明らかになる可能性もあるのだ。

(横田一・ジャーナリスト、4月10日号)

富岡町仮設焼却炉完成だが――除染ゴミ処理のメドたたず

富岡町の仮設焼却炉。2機あり、各250トン/日の処理能力をもつ。(撮影/中村ゆうき)

富岡町の仮設焼却炉。2機あり、各250トン/日の処理能力をもつ。(撮影/中村ゆうき)

3月19日、福島県双葉郡富岡町で仮設焼却炉の火入れ式が行なわれた。本格稼働は4月だが、年度内に動き出した形だ。現在、福島県内では災害廃棄物や除染廃棄物などを処理するための焼却炉が次々と建設されている。その数は地元調整中のものを含め19にも及び、富岡町焼却炉の処理能力は500トン/日と最大規模。50万都市のゴミ焼却炉と同等という施設群が富岡町仏浜・毛萱地区を独占し、周囲には除染ゴミの入ったフレコンバッグが山積している。

富岡町の廃棄物総量は30万トンと想定され、そのうち22・5万トンの可燃物を2年後の2017年3月までに焼却するとしている。焼却灰は、放射線濃度が10万Bq/kg以下のものは町内のエコテッククリーンセンターにセメント固化後、埋め立て処分される。一方、10万Bq/kg超のものは中間貯蔵施設に搬入されていく。ゴミ焼却後のバグフィルターで捕集された飛灰は30万Bq/kg超が想定されており放射線濃度は非常に高く、その量は除染により生まれたゴミの量次第となる。この点を、環境省担当課に確認すると「(焼却する除染ゴミの量は)正直読み切れていない」と回答。さらに、焼却せず中間貯蔵施設に直接搬入する土ごみは廃棄物総量30万トンの中に含まれず、その量は焼却される草木ゴミの14万トン以上とされるが「中間貯蔵施設への運搬事業は今のところ何も決まっていない」(同課)。

総事業費600億円で焼却事業を受注した三菱重工や鹿島建設は、焼却灰保管までは請け負っているがその後は管轄しない。中間貯蔵施設への搬入が直ちに始まる訳でもなく、汚染土壌や焼却灰が富岡町にいつまで保管されるのかは不透明なままだ。富岡町の宮本晧一町長は「待ちに待った施設で、復興の加速化の一翼を担うことを期待したい」と火入れ式で話した。町長は2年後に町民帰還を目指すとしているが、除染ゴミの処理が間にあわないのは目に見えている。

(中村ゆうき・フリーライター、4月3日号)