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国の導水事業が生態系を破壊――「霞ヶ浦」募る懸念

「霞ヶ浦導水事業はいらない」全国集会が11月29日、茨城大学で開催された。この導水事業は霞ヶ浦(湖)を中心に那珂川(茨城県)と利根川(千葉県)を導水管で結ぶというもの。茨城県などへの都市用水のほか、常陸川水門の閉鎖で発生したアオコ被害を軽減するための水質浄化などを目的とする。

同事業のうち利根川への導水管は1994年に完成したが、試験通水が行なわれた途端にシジミが大量死した。このため地元漁協から反対があり、以降は「開かずの水路」として未使用となっている。

事業者の国土交通省は2008年4月から那珂川への導水管工事にも着手を試みたが、現在、止まっている。利根川で起きた事例を受け、那珂川沿岸の茨城県内の3漁協と栃木県内の4漁協が工事に反対。「那珂川アユ裁判」が繰り広げられているからだ。事業が開始されれば、取水口にはアユ、ウグイ、サケ、サクラマスなどの仔魚が吸い込まれ、漁獲への影響が懸念される。

29日の集会で基調講演を行なった茨城大学の二平章・人文学部市民共創教育研究センター・客員研究員は、「那珂川は本流にダムのない自然河川であり、目的が消え失せた25年前の計画でその自然生態系を破壊してはならない」と力説した。霞ヶ浦生態系研究所の浜田篤信氏は、那珂川のシジミの生産量は流量に大きく影響すると見られ、導水事業による取水は生産減につながるとの予測を発表、高村義親・茨城大学名誉教授は、浄化効果はないとのデータを発表した。

参加者は、霞ヶ浦導水事業は不要であり、計画の強行は共有財産を破壊するものであるとして、事業の中止を求める決議を行なった。

30日には事業に反対する那珂川漁協への応援に「那珂川ウォーターネットワーク」ら数人のカヤッカーが上流から駆けつけて、「導水事業NO」のプラカードを掲げて反対をアピールした。

(まさのあつこ・ジャーナリスト、12月12日号)

築地市場、移転先の土壌めぐり――ヒ素汚染残して開場

築地市場(東京都中央区)の移転先、豊洲新市場予定地(同江東区)の土壌汚染対策工事を進めてきた都は11月27日、有識者でつくる技術会議(座長は矢木修身・東京大学名誉教授)に汚染土壌の除去、浄化などの工事の完了を報告した。矢木座長は「世界で類を見ない」と評価、岸本良一・東京中央卸売市場長は、「都として安全性が確認できたと認識する」と宣言した。

対策工事の結果として、豊洲新市場予定地で操業していた東京ガス工場由来の汚染物質は現時点で環境基準を下回る。だが、ヒ素は環境基準の10倍を超える地点があるが、ガス工場建設前からの「自然由来」としてそのまま残された。

豊洲予定地は現在、土壌汚染対策法(以下、土対法)の「指定区域」になっている。指定解除するには対策工事後にモニタリング調査をし、基準値以下の状態を2年間保つ必要がある。都は27日、11月から201カ所の井戸で調査を始めたと明かした。だが、地下水の移動などにより、操業由来の汚染が基準値以下を2年間保てるかどうかはわからない。

そもそも、「自然由来」の環境基準を上回るヒ素が残されたので、2016年の新市場開場後も「指定区域」は解除されない。筆者の取材で都の担当者はその点を認めた。「『指定区域』が残ることと安全性は別。技術会議が提言した地下水管理システムで安全は保てます」と強調する。だが、東京中央市場労働組合の中澤誠書記長は、「土対法の指定区域に生鮮食料品を扱う市場を開くなんて論外」と切り捨てた。

また、この問題を追及する水谷和子・一級建築士は、「土対法では、2年間のモニタリングを通して、汚染が生じていない状態の確認も含めて『土壌汚染の除去』としています。除去が未完のまま工事をして誰が責任を取るのですか。汚染が検出されても全井戸の約6割は建造物の下で、汚染箇所を特定する追加調査も対策も物理的に無理です」と批判した。

(永尾俊彦・ルポライター、12月12日号)

ろくでなし子さん勾留、北原みのりさん「釈放」――「嫌がらせ」「見せしめ」逮捕か

二人を逮捕した東京・小岩署。ろくでなし子さんへの取り調べは続いている。(撮影/本誌取材班)

二人を逮捕した東京・小岩署。ろくでなし子さんへの取り調べは続いている。(撮影/本誌取材班)

“嫌がらせ”逮捕ではないか――。

本誌の連載執筆者の作家・北原みのりさんと芸術家のろくでなし子さんが12月3日、わいせつ物公然陳列の疑いで逮捕された。加えてろくでなし子さんは今年7月の逮捕時と同様、わいせつ電磁的記録記録媒体頒布容疑にも問われている。内容は、(1)今年7月に逮捕されたときと同様、昨年10月に自らの女性器の3DプリンターをダウンロードできるURLデータを送信したこと、(2)自らの女性器の3Dプリンター用データが入っているCD-Rを個展にきた希望者に配布したこと――の2点だ。

前回の逮捕時、ろくでなし子さんは勾留中、100件に1件程度の割合と言われる準抗告が認められた。なぜ同じような内容で再度身柄を拘束されなければいけないのか。北原さんも証拠隠滅や逃亡の恐れなど、逮捕の要件に当てはまるとは考えにくい。『東京新聞』も12月5日付の記事で、二人の逮捕自体への疑問を提示。本誌同様、アジア女性資料センターやふぇみん婦人民主クラブが抗議声明を出すなど、「不当逮捕」への批判が高まっていた。

そんな中、6日に北原さんは釈放された。検察官の「勾留請求」が裁判官に却下されたことで、検察が準抗告を行なったが、東京地裁に棄却されたことによる。

一方、ろくでなし子さんは同日、弁護人以外とは接見できない「接見禁止」つきの勾留が決定。ろくでなし子さんの弁護団は東京地方裁判所に釈放を求める準抗告を申し立てたが、8日に棄却された。ただ、その際、接見禁止の決定は取り消された。弁護団の須見健矢弁護士は本誌の取材に対し、「今回の逮捕はデータだけではなく作品までわいせつと決めつけたもの。逮捕は恣意的で不当な蒸し返しと言うしかない。勾留は絶対に許されない」と語った。今後、弁護団は最高裁判所に特別抗告を求める方針だ。

なお、ろくでなし子さんの「即時釈放」を求める署名活動が、インターネット上の「change.org」で行なわれており、9600筆を超える賛同者が集まっている。(記事は12月9日18時執筆)

(本誌取材班、12月12日号)

【ろくでなし子さん、北原みのりさん逮捕への抗議声明文】

本件に対して小誌は12月3日、平井康嗣・編集長名で以下の抗議文を発表した。

本日12月3日、ろくでなし子さんが警視庁小岩署にわいせつ電磁的記録記録媒体頒布罪容疑で再逮捕されました。7月12日に続く逮捕です。

ろくでなし子さんは、自身の女性器を主題にした作品の発表をつづけてきました。

ろくでなし子さんの一連の作品は、女性の性を商品化する「わいせつ」物を氾濫させている男性的な社会に対して疑義を唱える表現活動です。いまだに一連の作品を刑法違反の猥褻物とらえる警視庁の不勉強さにはあらためて残念な思いを抱きます。

また、今回の再逮捕のきっかけの一つとして、『週刊金曜日』における、ろくでなし子さんの連載漫画が考えられます。

この漫画では小岩署での勾留体験がつまびらかに描かれています。その中で、警視庁小岩署の不当な取り調べや、そもそもの容疑理由の不明朗さも明らかにされてきています。

警察や司法当局が自らの不都合な事実を隠ぺいするために、または報復的に、ろくでなし子さんの逮捕に及んだとすれば、これは自由な表現活動に対する重大な侵害と暴力行使でしかありません。

さらに今回は、北原みのりさんも同日、わいせつ物公然陳列容疑で警視庁に逮捕されました。北原さんも『週刊金曜日』に連載を持つ作家です。

北原さんも性を女性が取り戻すために活動を続けてきた代表的な人物の一人です。

ともかく不当な理由で国民の平穏な生活を侵害することはやめてほしい。一刻も早く2人が釈放されること、そして強硬な捜査を取りやめることを強く、強く求めます。

抗議の意思表示として、ろくでなし子さんが「わいせつ」と表現について考える対談を12月12日号に掲載します。

2014年12月3日

平井康嗣・『週刊金曜日』編集長

大飯、高浜原発めぐり大津地裁――再稼働の不備を指摘

関西電力の大飯原発3・4号機(福井県おおい町)と高浜原発3・4号機(同県高浜町)の再稼働差し止めを滋賀県や京都府の住民ら178人が求めた仮処分で、大津地裁(山本善彦裁判長)は11月27日、申し立てを却下した。山本裁判長は「原子力規制委員会(規制委)がいたずらに早急に、新規制基準に適合すると判断して再稼働を容認するとは到底考えがた」いと指摘したが、規制委は高浜原発3・4号機については合格証にあたる審査書案の作成に入っており、審査は最終盤。「司法の責任放棄だ」との批判が上がっている。

大飯原発3・4号機の運転差し止めを認めた福井地裁判決(今年5月)は「福島原発事故の後において、具体的危険性が万が一でもあるのかの判断を避けることは裁判所に課された最も重要な責務を放棄するに等しい」と踏み込んだ。が、大津地裁の山本裁判長は安全性に対する判断を示さなかった。

一方で山本裁判長は、基準地震動の合理性について関西電力が「何ら説明を加えていない」と指摘。田中俊一規制委員長が新規制基準に適合しても安全だとは言わないとしたことにふれ、「新規制基準の合理性に疑問を呈するものといえなくはない」と批判した。さらに「事故に対応する組織や地元自治体との連携・役割分担、住民の避難計画等についても現段階においては何ら策定されておらず、これらの作業が進まなければ再稼働はあり得ない」と断じた。

住民の弁護団長、井戸謙一弁護士は「判断を逃げた決定だが、関西電力が基準地震動の合理性を説明しなかったことを指摘したのは大きな意味を持ち、退路を断ったとも言える。規制委が審査『合格』を出した段階で仮処分を改めて申し立てれば、差し止めを認めざるを得ないだろう」と話している。

再稼働に猛進する安倍晋三政権とは別に、合理的な判断をすることこそ司法に求められている。

(伊田浩之・編集部、12月5日号)

実習先のいじめで自死――妻が大阪の専門学校など提訴

理学療法士をめざす大阪の専門学校生が実習期間中に自死したのは、指導員のいじめが原因として、遺族が11月28日、対処を怠った専門学校「近畿リハビリテーション学院」と実習先の診療所を運営する医療法人を相手取り、約6000万円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こした。同学院では2008年にも実習生が自死しており、両親は「実習先病院のパワハラが原因」と提訴している。

今回の原告は、死亡した大野輝民さん(当時39歳)の妻・佳奈子さん=大阪市在住。被告は同学院を運営する医療法人「高寿会」(大阪府吹田市)と診療所運営の医療法人「一裕会」(大阪市住吉区)。

訴状などによると、輝民さんは派遣会社など数社を転職後、安定した職に就くため10年に同学院の夜間部に入学、昨年11月から大阪市内の診療所「辻クリニック」でリハビリ補助などの実習を受けていた。成績は学年トップで、卒業を4カ月後に控えて就職先も内定していたが、指導役の理学療法士から過重なレポート作成を課せられ、繰り返し厳しく叱責されるなど理不尽な扱いを受け、同月30日、神戸市内で縊死しているのが発見された。遺書には「本当にもう無理」「終わらせたい」とあった。

心身疲弊が強まっていた輝民さんは、実習先でのプレッシャーの大きさ、指導員との関係など悩みを担任に伝えていたが、学校側は対処しなかった。佳奈子さんは「理学療法士なら将来も安定すると期待し、数百万円の学費を借金などで工面して学んでいたのに、相談に適切に対処しなかった学校側に裏切られた。裁判では専門学校のあり方を問いたい」と語る。

理学療法士の養成校は規制緩和によって12年前から急増、14年現在、全国で249校(定員1万3000人余り)に達する。この間、有資格者は10万人以上と4倍に増え、供給過剰から治療費切り下げや廃校も予想されている。

(村上恭介・ジャーナリスト、12月5日号)

朝大で開催も、課題は山積み――朝鮮半島統一の催し

フォーラム第二部で司会を務めた徐勝・立命館大学特任教授(左)と発表者ら。(撮影/北岡裕)

フォーラム第二部で司会を務めた徐勝・立命館大学特任教授(左)と発表者ら。(撮影/北岡裕)

分断された朝鮮半島の統一を考えるシンポジウム「統一人文学・世界フォーラム2014」が11月29日、東京都内の朝鮮大学校で開催され、約200人が参加した。テーマは「東北アジアにおけるコリアンの民族主体性の継承と変容」で、約700万人の海外同胞についての討論、発表が行なわれた。

〈コリアンの離散と分断による苦難の歴史を共有し、その痛みを治癒する道、即ち分断(筆者注=日本の朝鮮植民地支配と解放後の民族分断)を克服し、朝鮮半島と海外のコリアンが共に集う平和統一の道を模索する〉 との趣旨のもと、第一部では研究者発表が行なわれたが、各自のテーマのばらつきと時間的制約もあり、配布資料に沿った発表と質疑応答に終始した。

第二部は徐勝・立命館大学特任教授が司会を務め、発表者全員による討論が行なわれたが、南北間の教育の質の違いや、社会制度の差異の擦り合わせなどの具体的課題についての言及に欠けた。

同内容のシンポジウムは、12年末に朝鮮大学校で開催されて以来2回目。今回は、立命館大学コリア研究センター(京都府)、建国大学校(韓国ソウル)統一人文学研究団、朝鮮大学校朝鮮問題研究センター、延辺大学(中国吉林省、延辺は朝鮮民族自治州)民族学研究所の共催で、朝鮮新報社、韓国のハンギョレ新聞社が後援した。

今後はシンポジウムの毎年開催に加えて、延辺、ソウル、平壌(朝鮮民主主義人民共和国)での開催を目指すほか、ロシアや米国の研究者にも参加を呼びかけるという。韓国では昨年の開催の許可が下りなかった。朝鮮大学校のみでの開催に留まる現状は、南北分断の厳しい現実と歩み寄りの難しさを感じさせる。

一方シンポジウム後の懇親会では、参加者らが談笑する姿が見られた。近年は日中、日韓、日朝間の政治的な関係悪化が懸念されるが、学術交流の歩みは地道に続く。

(北岡裕・著述業、12月5日号)

「近弁連がヘイト・スピーチの規制求める決議――「表現の自由」めぐり議論も

差別を煽動するヘイト・スピーチの規制をめぐりそれぞれの観点から論議するパネリストら。(撮影/平野次郎)

差別を煽動するヘイト・スピーチの規制をめぐりそれぞれの観点から論議するパネリストら。(撮影/平野次郎)

「ヘイト・スピーチは表現の自由か」――近畿弁護士会連合会(近弁連)の人権擁護大会が11月28日に大阪弁護士会館で開かれ、ヘイト・スピーチ(差別煽動表現)について「人種的憎悪や民族差別をm動する言動に反対し、人種差別禁止法の制定を始めとする実効性のある措置を求める決議」を賛成多数で採択した。決議に先立ち、当日は冒頭のテーマで市民も参加するシンポジウムが行なわれた。

近弁連人権擁護委員会は2012年の夏期研修会からヘイト・スピーチ問題と本格的に取り組み、各弁護士会が会報や討論会などで差別煽動表現の規制について、賛成派と反対派の議論を重ねてきた。その成果を今回の人権擁護大会に向けて、17人の弁護士が執筆して報告書にまとめた。

報告書は法的規制と表現の自由の関係について、「表現の自由が絶対的なものではなく、公共の福祉による制限に服することには異論がない。(略)個人の尊厳の保護や人格権・平等権という憲法的価値を実現するための規制であることが公共の福祉による制約の根拠となるであろうろう」との意見を掲載。このほか刑事規制を求める提案から規制反対論まで多様な意見を掲載し、まとめでは「表現の自由を盾に人種差別の横行を許す社会ではない」と述べ、差別禁止法制定を求める決議を提案している。

シンポジウムには4人のパネリストが登壇。市川正人・立命館大学法科大学院教授が「表現の自由の保障が十分でない日本でヘイト・スピーチを規制するとどうなるかを考えるべきだ」と慎重論を述べた。一方で、東京弁護士会の師岡康子さん、金尚均・龍谷大学法科大学院教授、ジャーナリストの中村一成さんの3人は「マイノリティの表現の自由が犠牲になっている」などとして、被害者の視点から規制の必要性を訴えた。

表現の自由の盾をいまどこに向けるべきかが問われている。

(平野次郎・フリーライター、12月5日号)

コミュニティを破壊したスーパー堤防

最後の1軒も12月6日には立ち退く予定という。(撮影/平井康嗣)

最後の1軒も12月6日には立ち退く予定という。(撮影/平井康嗣)

11月17日、東京都江戸川区北小岩1丁目の東部地区から高橋喜子さん(84歳)が、21日には隣に住む長男の新一さん(55歳)ら家族が相次いで、約半世紀も暮らした土地をあとにした。

かつて約90世帯が居住した地区も、残るは1世帯。地域を消滅させたのは、国の「スーパー堤防事業」と区の「土地区画整理事業」との共同事業だ。

スーパー堤防は幅が200メートル前後あり、洪水時でも「決壊しない」のがウリだ。ただし実現には200年の歳月と2兆7000億円が必要とされ、区は江戸川河川部周辺の9万人を立ち退かせようとしている。

2011年、「コミュニティ破壊を招く」として、新一さんが原告団長となり、住民11人が事業取り消しを求めて区を提訴した。しかし昨年12月の東京地裁と今年10月の高裁で敗訴。立ち退きを拒否していた高橋さん親子は「行政代執行による強制解体となると、移転地への移転費も住居費も自腹になる」と立ち退きを決意した。新一さんら住民は11月12日、新たに国を相手取る民事訴訟を提訴した。

「スーパー堤防は、住民の移転同意が必須。だが本事業では誰も同意していない。これを争点に闘いたい」としている。今後、他地区が同じ目に遭わないための闘いと、新一さんは主張する。

(樫田秀樹・ジャーナリスト、12月5日号)

「松代大本営」工事開始70周年――長野市「説明版」改変

アジア太平洋戦争末期「国体護持」を目的に秘密裏に強行された「松代大本営」(長野県長野市)地下壕の突貫工事。1944年11月11日に工事開始の発破が行なわれて70周年の同日、象山地下壕前の「朝鮮人犠牲者追悼平和記念碑」前で追悼集会が開催された。

敗戦までの約9カ月間、朝鮮半島から強制動員された2000人を含む約6000人の朝鮮人が苛酷な労働の主体となった。80年代以降、地元高校や市民、研究者らの調査が続き、その犠牲者は100~200人と推定される。

集会は鎮魂の舞と黙祷、「追悼碑を守る会」と在日本大韓民国民団、在日本朝鮮人総聯合会の各代表の挨拶、読経と続き、参加者の献花が行なわれた。

一方、象山壕の入り口の横には長野市が設置した案内板がある。昨年、説明文の「強制的に」の文言を同市がテープで覆い隠し、市作成の案内パンフレットも撤収したため、今年8月、「追悼碑を守る会」(塩入隆会長)が文言を復元するよう長野市に申し入れていた。

市側は「検討会」で協議した文案を10月7日、同会に示したが、内容は、「労働者として多くの朝鮮や日本の人々が強制的に動員されたと言われています」「必ずしも全てが強制的ではなかったなど、さまざまな見解があります」などと、史実が曖昧にされたものだった。翌日の定例会見で加藤久雄長野市長は、これを「確定稿」と発表。11月13日、長野市は従来の案内板を撤去し、新たな板を設置した。

「追悼碑を守る会」と在日2団体は、(1)史実を明確に記すこと、(2)市長発言を撤回し、市民と在日団体が参加した検討会で、協議合意の上で説明文を確定すること――を求めて、署名活動を続けている。

「市は最低でも案内文を元に戻すか調査研究成果を示すべき。本質的に強制連行があったことは歴史的事実」と、塩入さんは“歴史修正”の動きに警鐘を鳴らす。

(西中誠一郎・ジャーナリスト、11月28日号)

摂津市がJR東海の事業に反対――地方自治体初の提訴

JR東海が大阪府摂津市の新幹線基地(鳥飼車両基地)で突如として井戸掘削を開始したことについて、「地盤沈下が起こる」と反対する同市は11月14日、工事中止を求める訴訟を大阪地裁に起こした。地方自治体がJRを訴えるのは初。

1964年の新幹線開業から当時の国鉄は同基地で井戸水を汲み上げていたが、まもなく周辺での地盤沈下が判明。77年に摂津市は旧国鉄と環境保全協定を締結、地下水を汲み上げないことを定め、民営化後のJR東海とも同協定を継続し、地盤沈下は止まっていた。

だが、今年9月、JR東海は車両基地内の3%だけを占める茨木市部分で井戸掘削工事を始めた。摂津市は「協定違反だ。地盤沈下が再び起こる」と撤回を要求したが、JR東海は「摂津市の行政管理権は及ばない」として工事を続行。市は工事差し止めの仮処分を同地裁に申し立てていた。

摂津市の森山一正市長は「騒音問題の克服にも協力してきた市民は裏切られた思い」と怒り、「協定は基地全体に及ぶ」と主張する。

基地前で座り込みを続けてきた鴻池勝彦さん(74歳)の自宅は、かつての地盤沈下で傾斜し、廊下でボールが転がる。「家のすぐ近くの神社で57センチメートルの沈下が記録されている。説明もなしに強行するのは許せない」と話す。

同基地ではトイレ用や清掃などに1日750トンもの水を使う。JR東海は、水道は災害時に断水もあるため井戸にウエイト(比重)を置きたい意向だが、本音は経費節減だろう。同社が摂津市に支払う水道料金は約1億円。井戸利用で約6000万円の上水代を抑えられる。北摂全域での汲み上げ量に比べればごくわずかで地盤沈下は起きないとするJRに、森山市長は「摂津市は土地が低く地盤沈下すれば水害の危険もある。絶対に認められない」と対立する。

開業半世紀の祝賀ムードの陰で、JRによる地元民無視が露呈した。

(粟野仁雄・ジャーナリスト、11月28日号)