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『週刊文春』への反論(安 秉直)

軍慰安所の設置・管理と軍「慰安婦」の徴集は
旧日本軍が行なったものであり、
元日本軍「慰安婦」たちの証言は有効である。

『週刊文春』今年4月10日号の記事「慰安婦『調査担当』韓国人教授が全面自供!」は、同誌に寄稿した大高未貴氏が私の発言を恣意的に歪曲したものである。そしてこれは、河野談話の取り消しを主張する日本の右派メディアが、韓国の元日本軍「慰安婦」に対する調査は「信憑性がないので『慰安婦』問題はなかった」という主張を宣伝するために企画された記事の一環でもある。

そのため『週刊文春』は記事の掲載にあたり、私に事実確認をしなかった。もし『週刊文春』が公正な事実報道をする媒体であると自負するのであれば、記事が事実に基づくものではなかったと訂正報道すべきだ。以下、歪曲記事への批判と私の見解を提示する。

まず、背景から説明したい。大高氏が「慰安婦」に関する著書出版のための取材をしたいと、ある韓国人を通して執拗に要請してきたため今年1月16日、「報道しないことを前提」に面会したことがあった。それが記事の基礎資料になっているようである。

これより少し前には『産経新聞』から、また大高氏と同時期に『週刊文春』からも二度にわたって面会要請があったが、すべて拒絶した。その後、その『週刊文春』に私へのインタビューだとして、大高氏の作為的な記事が掲載されたことを知り、非常に驚きかつ反論の必要を強く感じた次第である。

 歪曲記事の細部を検証

 次に、私の発言を歪曲した記事の細部を検証したい。

(1)大高氏は、私が調査に参加した「慰安婦」の証言集『証言 強制連行された朝鮮人軍慰安婦たち』(日本語版は93年、明石書店、編集は韓国挺身隊問題対策協議会と挺身隊研究会)を取り上げながら、私が「当時の調査方法は、反省してみますと、全然ダメです」と言って、「実質的な“調査失敗”を認めたのである」と書いているが、これはまったくの創作である。私は、調査の過程で元軍「慰安婦」かどうかを確認するのはとても難しく、当時の調査にもさまざまな問題があったとは言った。しかし、「実質的な“調査失敗”」を語ったことはない

同書に出てくる19人の元軍「慰安婦」についても、存在を積極的に認めながら、今から再検討すればその中の一人は軍「慰安婦」だったかどうか疑問だと言っただけである。さらに「十九人はすべて会いました」との発言が載っているが、これは私の言い間違いがそのまま掲載されたものだ。この失言を正す機会もなく、記事は掲載された。19人に対する調査資料を包括的に検討する研究会に長期間参加したことはあるが、直接調査をしたのは数人しかいない。

(2)「河野談話はおかしい」という記事中の小見出しと関連内容も捏造だ。大高氏は「河野談話が、ただ元朝鮮人日本軍慰安婦からの聞き取り調査だけに基づいて作られたとすれば、それ自体がおかしいのです」と私が言ったとし、「ストレートに解釈すれば『信憑性に欠ける聞き取り調査をもとに発表された河野談話はおかしい』ということである」と書いている。

この解釈は、大高氏がいかに軍「慰安婦」問題について無知であるかを自白したようなものである。今年6月20日に日本政府が発表した報告書『慰安婦問題を巡る日韓間のやりとりの経緯』の中でも、河野談話は元軍「慰安婦」に対する聞き取り調査がまとめられる前に、軍「慰安婦」に関する既存の研究を参考に日本政府が行なった調査に基づいて発表されたことを確認しているからだ(注1)。これは、以前から私が強調してきた主張と同じ内容である。

(3)「慰安婦を利用している」という小見出しと関連内容も、私の発言を歪曲している。私は、挺対協の活動目的に疑いをかける大高氏に対して、「運動家はそうして慰安婦たちを利用している側面があるかもしれません」と言ったことはある。しかしこの発言は、運動団体であれば問題を解決するために元軍「慰安婦」たちを、「『慰安婦』問題を問題として提起」したり、「国際的に訴える」運動に「利用する」こともあり得るという限定的な意味合いのものであった。大高氏はこの発言を、挺対協など韓国の運動団体の運動を全面的に否定したい自分の報道目的に悪用している。「挺対協には近づきたくない」との小見出しと関連内容も、似た事例である。

このほかにも、この記事には私が語っていない言葉を巧みに加えたり、大高氏の問いの後ろに、異なる脈絡で私が語った言葉をつなげるなどの手法で、私の主張を捻じ曲げた箇所が随所に見られる。

「慰安婦」の全体像

次に、私の日本軍「慰安婦」研究をもとに、朝鮮人「慰安婦」の全体像に関する私の認識を記す。

(1)日本軍慰安所は1937年9月29日、陸軍大臣が制定した陸達第48号「野戦酒保規程改正」によって野戦軍の後方施設の地位を確保するようになった(注2)。軍慰安所は野戦軍の後方施設であるため、軍「慰安婦」たちは戦闘地の方面軍や派遣軍の動員計画によって徴集され、徴集された「慰安婦」たちは特定の軍部隊に所属し、移動するケースが多かった。すなわち、軍「慰安婦」は野戦酒保(売店)の「兵站品」の地位に置かれていたのだ。

こうした非人道的地位であったにもかかわらず、軍が「慰安婦」の徴集と管理を業者に依頼したのは、「慰安婦」に対する軍の直接徴集によって生じる責任を回避するとともに、セックス産業としての雰囲気をもたせるためであった。

(2)軍「慰安婦」たちが、国家総動員法が施行される威圧的な植民地支配の雰囲気の中で、方面軍や派遣軍の動員計画に応える現地の警察あるいは憲兵の協力によって、「女子愛国奉仕隊」などの名目で徴集されたという事実は、「慰安婦」の徴集が事実上、戦時動員だったことを意味する。

42年7月に日本軍が「第四次慰安団」として「慰安婦」703人を徴集した際、日本軍の一つである朝鮮軍司令部憲兵隊が協力したという事例もある(注3)。業者たちが朝鮮で軍「慰安婦」を徴集する際、前借金をエサに人身売買・誘拐・略奪の方法を広範囲に利用したという事実も明らかにされている(注4)。

(3)朝鮮人軍「慰安婦」の中には、性的に未経験の少女たちが多かったという報告が少なくない。代表的な例としては、38年1月に中国・上海の軍慰安所で朝鮮人「慰安婦」80人と日本人「慰安婦」20人余の性病検査をした麻生徹男軍医の手記が挙げられる。そこにはこう記されている。

「内地人ノ大部分ハ……(中略)……年齢モ殆ド二十歳ヲ過ギ中ニハ四十歳ニ、ナリナントスル者アリテ既往ニ売!稼業ヲ数年経来シ者ノミナリキ。半島人ノ若年齢且ツ初心ナル者ノ多キト興味アル対照ヲ為セリ」(注5)

44年8月10日ビルマの蜜支那(ミシナ)で捕虜になった朝鮮人「慰安婦」20人(第四次慰安団の一部)は、「これらの大部分の女性は無知で、教養がなかった。しかし、わずかながらだが以前から売春と関係があった者も居る」と報告されている(注6)。このうち12人は徴集当時20歳以下だった。

以上の視点からすれば、旧日本軍が慰安所の設置・管理と「慰安婦」の移送に関与したという趣旨の河野談話は、日本軍が直接慰安所を設置・管理し、戦時動員の一環として「慰安婦」たちを徴集したという事実を認める方向でこそ修正されるべきである。これが日本軍「慰安婦」問題における客観的事実である。

2014年9月9日

アンビョンジク。1936年生まれ。ソウル大学名誉教授。挺身隊研究会とともに90年代に「慰安婦」の聞き取り調査をした学者の一人。日本植民地支配下の朝鮮経済研究のほか、現在は第四次慰安団研究なども行なっている。
(注1)河野談話作成過程等に関する検討チーム『慰安婦問題を巡る日韓間のやりとりの経緯』(今年6月20日発表) の「1、4 元慰安婦からの聞き取り調査の経緯」参照。
(注2)永井和「日中戦争と陸軍慰安所の創設」(同著『日中戦争から世界戦争へ』思文閣出版2007年)参照。
(注3)安秉直翻訳・解題『日本軍慰安所管理人の日記』イスプ、2013年(韓国語版)の「解題」参照。
(注4)吉見義明「日本軍『慰安婦』問題について」(『季刊戦争責任研究』64号、2009年6月)。
(注5)麻生徹男『上海より上海へ 兵站病院の産婦人科医』石風社、1993年、215~216ページ。
(注6)米国戦時情報局心理作戦班『日本人捕虜尋問報告』第49号。

(2014年9月12日号)

ガーナ人の強制送還死亡事件――検審「不起訴相当」

ガーナ国籍のアブバカル=アウデウ=スラジュ氏(享年45)が、2010年3月22日、強制送還のため飛行機に乗せられた際、東京入国管理局所属の入国警備官から激しい制圧を受けて死亡した事件で、千葉第二検察審査会は10月28日、特別公務員暴行陵虐致死罪で書類送検され千葉地検が不起訴にした入国警備官9人に対し、「制圧行為は正当業務行為の範囲」だったとして不起訴相当とする決定を出した。

事件をめぐっては今年3月、遺族が起こした国家賠償請求訴訟で国の責任を認める判決が東京地裁で下された。裁判の中で国側は「死因は心臓病」との主張を展開したが、判決は「過剰な制圧による体位性窒息」と判断した。この判決を受けて遺族は今年4月、検察審査会に対して「不起訴不当」の申し立てを行なった。

しかし同審査会は、東京地裁の事実認定を無視して「心臓病」だと決めつけた。

スラジュ氏は日本人の妻と約20年にわたって日本で暮らしていたが、不法滞在だとして退去命令を受け、強制送還のため成田空港に連行された。

その際、両手両足を縛られたまま入国警備官らによって機内に担ぎこまれ、▼7~8人がかりでシートに押さえつける、▼ズボンのベルトと両手を結束する、▼タオルで猿ぐつわをする、▼力ずくで前屈させる――といった暴力的な制圧を受け、死亡した。スラジュ氏が意識を失って航空会社の職員から搭乗拒否が告げられた後も、入国警備官らは「詐病」として救命措置をしなかった。

国賠訴訟は控訴審が東京高裁で係争中。国側は勝又義直・元科学警察研究所所長や岩瀬博太郎・千葉大学大学院医学研究院教授の意見書を証拠で出し、死因は生前発見できなかった心臓疾患だと主張している。

岩瀬教授は司法解剖の執刀医で、当初は「頸部の圧迫や鼻腔部閉塞による窒息死の可能性」との所見を出していた。

(三宅勝久・ジャーナリスト、11月14日号)

朝鮮総聯本部の明け渡し確定――日朝交渉に暗雲

「これでストックホルムでの日朝合意は日本側が破ったことになる。拉致問題解決も暗礁に乗り上げるでしょう」――朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)取材でモンゴルに滞在していたジャーナリストの成田俊一氏は、電話の向こう側で苦々しく話す(17ページに関連記事)。

11月5日、最高裁は朝鮮総聯中央本部の土地建物の競売事件について、朝鮮総聯の抗告を棄却した。これで不動産業のマルナカホールディングス(香川県高松市)に22億円で売却されることが確定した。日本は日韓基本条約に基づき、朝鮮半島における唯一合法な政府は韓国だけとする。そのため北朝鮮との間には国交はないが、朝鮮総聯中央本部施設は事実上の大使館として重要な拠点となってきた。

マルナカの白井一郎顧問弁護士は「今回の取得は投資目的だ。総聯に売ったり貸したりはしない」(11月6日『中日新聞』デジタル版)と話しており、政府も菅義偉官房長官が「法治国家として手続きを踏まえた決定について、口出しできないと北朝鮮側に明快に申し上げている」(前出『中日新聞』)と無関係を主張する。

しかし成田氏はこう分析する。「最高裁はこれまで政治的と言える引き延ばしをしてきたわけだから、菅発言はいかにも嘘臭い。

注目すべきはこの最高裁判断のタイミングだ。拉致一辺倒の日本の意向を受け北朝鮮は再調査をしているが、官邸も国民が満足する結果が出る可能性は薄いと承知している。安倍政権はこの国内批判をかわすため総聯施設を取り上げたのだろう。日朝合意では明文化されていないが、総聯施設の維持は了解事項。だから北朝鮮からすれば合意違反になり、日朝交渉が停滞する可能性がある。だがそうなっても政府は北朝鮮と最高裁の責任だと逃げられるわけだ」

解散総選挙説も噂される中、政治の動きが怪しさを増している。

(本誌取材班、11月14日号)

『ある精肉店のはなし』、アンコール上映

纐纈あや監督は、「この機会を活かして、ぜひ、ご覧いただきたい」と話す。(写真/内原英聡)

纐纈あや監督は、「この機会を活かして、ぜひ、ご覧いただきたい」と話す。(写真/内原英聡)

「北出家の仕事を撮らせていただくうちに、この営みこそ“生きる”ことの基本なのだろうと、心が納得したんです」

こう語るのは『ある精肉店のはなし』(ドキュメンタリー映画)の纐纈あや監督だ。11月29日から12月19日まで東京のポレポレ東中野でアンコール上映される。

本作品は2013年11月に同館で公開され、全国計55館の劇場で上映された。自主上映会も各地で頻繁に行なわれており、5万人超の観客を動員。また、本年度の文化庁映画賞「文化記録映画大賞」をはじめ数々の賞も受賞した。

舞台は大阪の貝塚市。纐纈監督はこの地で仔牛の買い付けから飼育、屠畜、精肉、販売まで一連の作業を家族で営む「北出精肉店」の暮らしを撮影した。初監督作の『祝の島』(2010年)では、中国電力・上関原子力発電所の建設に約30年にわたり反対を貫く祝島(山口県)の人々を映像に収めた。纐纈監督は「撮らせていただいた方々や、その空間に漂うある種の“懐かしさ”、細胞に刻まれている記憶が目覚めるような感覚」に導かれるように製作に取り組んだと語る。「原発」や「被差別」といったテーマに寄り添いつつ、人間として、生き物として、「命の根源」を問い続ける。

『ある精肉店のはなし』の詳細は、URL http://www.seinikuten-eiga.com/で。

(内原英聡、11月14日号)

「翁長雄志新知事」誕生の背景――沖縄県知事選挙を振り返る

「イデオロギーではなく、アイデンティティ」を合い言葉に、辺野古移設反対を訴えた翁長雄志氏。(写真/横田一)

「イデオロギーではなく、アイデンティティ」を合い言葉に、辺野古移設反対を訴えた翁長雄志氏。(写真/横田一)

「どのように勝つか、が大事だ」

米軍普天間飛行場(宜野湾市)の辺野古移設問題を最大の争点とする沖縄県知事選の投開票日(11月16日)を直前に控え、翁長雄志選対のひとりはこう話した。

11月7、8日の両日、共同通信社が実施した世論調査で、前那覇市長の翁長氏(64歳)は現職の仲井眞弘多氏(75歳)を大きく引き離した。共産、社民、沖縄社会大衆各党の支持層をほぼ固め、無党派層の5割超に浸透。自民党、次世代の党の推薦を受ける仲井眞氏は、自民党支持層の5割超を固めたが、公明党支持層は3割にとどまる。

一方で、自民党支持層の3割弱が翁長支持にまわっており、同氏陣営の焦点は、勝敗から「辺野古移設反対という民意を日本政府につきつけるため、どれだけ差をつけられるか」(支援者のひとり)に移りつつある。前衆議院議員の下地幹郎氏(53歳)、元参議院議員の喜納昌吉氏(66歳)の支持は、ともに拡がりを欠いている。

【“翁長撃ち”に幸福実現党】

安倍政権にとって最大の懸案は、日米合意のもとで進められる普天間飛行場の辺野古移設に翁長氏が反対している点だ。推進の仲井眞氏をバックアップし、翁長氏の票を削ごうと画策している。

複数の事情通によると、数カ月前から警察庁は沖縄県警に対し、翁長氏をおとす、もしくは脅せるスキャンダルがないか照会を求めていたという。しかし「確たるものは出てこなかった」(事情通)。そこで街に出てきたのが翁長氏を誹謗中傷する怪文書と宗教団体の存在だった。本誌が確認したものだけで複数枚の怪文書がばらまかれている。

真相を明かすのは西田健次郎元自民県連会長。同氏は今年1月の名護市長選でも辺野古移設反対派の候補をおとすべく怪文書配布を主導した。「今回も宗教団体と連携しているのですか」と尋ねると、「幸福実現党が怪文書を配布してくれている。自民党と幸福実現党が連携するのは沖縄だけだろうが」と笑って答えた。同党は宗教団体「幸福の科学」の政党だ。

【娘と妻と仲井眞知事】

「ネックは年齢」と言われる75歳の仲井眞氏は自分の娘を前面に出す。琉球放送に務める長女と、電通に務める二女だ。街宣車でまわる仲井眞氏の横には、「候補者の娘」というタスキをかけた女性が手を振る。選挙プランナー三浦博史氏(アスク社長)が「娘同伴若返りイメージ作戦」を指南した。また、仲井眞氏の数十年来の知人によると、今年2月に結婚式を挙げた二女の「ご祝儀」の額は常識をかけ離れていたという。

「去年の8月、菅義偉官房長官が来沖し仲井眞と会いました。同席したのは琉球放送最高顧問の小禄邦男、國場組社長の國場幸一です。この席で菅は仲井眞に『あなたはいくらもらえば降りるのか』と聞いたそうです。仲井眞は『自分は個人的にカネをもらったことはない』と返したそうですよ」

このやりとりが前段となって、後々でてきたのが「祝儀」だった。「祝儀なら何千万だろうと何億だろうと問題視されないし、表にも出ないでしょう」と知人は語る。

「仲井眞は東京にマンションも買い、現在の妻U氏と静かに暮らす準備も進めていたよ。ところが、借金が残ったりとか、いろんな事情があったんでしょう、また出馬すると言い出した。当時は政府から官房機密費がおりるという話もあったから」。官房機密費がおりたのかどうかは定かではない。

【鉄道建設というアメ】

仲井眞氏の出陣式(10月30日)にかけつけた谷垣禎一自民党幹事長の横で、仲井眞氏は“巨大花火”を打ち上げた。総事業費が7~8000億円の鉄道建設である。

「(那覇市と名護市を結ぶ)『南北縦貫鉄道』もほぼ調査が終わっております。那覇空港のもう一本の滑走路(建設)の後は、直ちにこれが立ち上がるように安倍総理に話をしております。今日は自民党の幹事長さんもお見えですから、一つ、よろしくお伝えください」

仲井眞氏の演説終了後、鉄道建設について谷垣氏に直撃すると、「しっかりとバックアップしていかないといけない」と回答。だが、辺野古移設反対派はこれに憤る。

「全国で鉄道がないのは沖縄だけ。鉄道建設は県民の悲願ですが、新基地建設容認とセットにすべき話ではないでしょう」

【島尻氏のカレンダー】

「経済政策で勝負する」――地元選出の島尻安伊子参院議員は仲井眞陣営の講演で次のように語った。

「仲井眞さんは鉄道建設に加え重粒子線治療施設整備から成る『国際医療拠点構想』やカジノを含む『統合型リゾート(IR)開発』などの振興策を進めようとしています」

しかしその島尻氏、支援者らに配った顔写真入りカレンダーが公職選挙法に抵触するのではないか、との指摘を受けている。告発したのは島尻氏選挙区の住民だ。

「ことし初めに配られていた顔写真入りカレンダーです。こんなものを配るのは似顔絵入り『うちわ』を祭りで配っていた松島みどり前法相や、顔写真入りワインを支持者に贈っていた小渕優子前経済産業相と同じではないでしょうか」

島尻氏はカレンダー画像を自身のブログにもアップし、〈ちなみに写真は「島尻あい子 2014カレンダー」支持者の皆様にお配りしてるところです〉と書き込んだ。

公選法は選挙区での「寄付」を禁じている。「うちわ」や「ワイン」は「寄付」かどうかが争点となっている。顔写真入りカレンダーはどうか。島尻事務所に問うたが、期日までに回答がなかった。

【櫻井よしこ氏の講演】

11月9日には評論家の櫻井よしこ氏も仲井眞氏の応援にかけつけ、豊見城市内で講演した。

「翁長さんを応援しているのは誰ですか。共産党じゃないですか」

「名護市には辺野古移転に反対の方(稲嶺進市長)が通りました。いま副市長は共産党なんですって。教育長も共産党なんですって」

名護市役所関係者は「事実無根です。櫻井氏の発言は公職選挙法に抵触するのではないか」と反論する。櫻井氏はさらにこう続ける。

「(普天間の移設先は)辺野古しかない。辺野古を活用して、アメリカが働きやすくし(中略)この中国の脅威の最前線に、否応なく立たされている沖縄を力強い砦にしないといけない」

安全保障の基礎知識が欠落しているのだろう。たとえば「有事」の際、MV-22(オスプレイ)は長崎・佐世保の米軍艦船に積まれたのち現場に向かう。九州に配置されているほうが出動しやすいのだ。

今年8月、翁長氏に出馬を要請したことで自民党を除名された那覇市議の屋良栄作氏もこう話す。

「どうしてそういう(櫻井氏のような)発想になるのか。役割や機能を考えれば、海兵隊が沖縄に常駐する必然性はない。沖縄にあるのは、森本敏元防衛相が言ったように『政治的な理由』からです。ここにだけ基地機能を集中させ、強化することは、またも『捨て石』にしかねない発想だと思います」

11日現在、衆議院の年内解散が現実味を帯びてきた。安倍首相最大の公約「拉致問題の解決」ははるか遠く、消費税増税や原発の再稼働は国論を二分している。沖縄県知事選の結果が、安倍首相をさらに追い詰めるだろう。

(横田一・ジャーナリスト+野中大樹・本誌編集部、11月14日号)

籾井会長に元職員ら1700人――「辞任」か「罷免を」

この夏、NHKの元職員が行なった異例のアクションの波紋が広がっている。「籾井勝人会長の辞任および罷免」を求める、経営委員会への申し入れだ。賛同した元職員は11月初旬で1700人。まだまだ増える勢いで、理事や局長クラスの経験者を含め、元職員の10人にひとりが署名した。

呼びかけ人の事務局は先月、NHK会長・全経営委員だけでなく、副会長や理事に向けても要求書を提出。公共放送の現状に対する危惧を切々と訴える元職員たちの生の声も添付した。

先日の経営委員会で、籾井会長は、面識のない元職員から資質がないと批判されても困ると言った。今のNHKは逃げ続けるが、元職員らはなんとかしたいだけなのだ。

英国の『タイムズ』紙は、国際放送英語ニュースにおいて、マニュアルがつくられ、「慰安婦」問題や南京大虐殺などの伝え方をめぐり、細かな指示が出されていたと伝える。「慰安婦」については「いわゆる」は使わず、「慰安婦だと申し立てている人」と表現する、などとしている。

真偽はともかくネット上では、部外秘の文書を読むことができる。これは、籾井会長の就任時の記者会見、「国際放送において、政府が右というものを左というわけにはいかない……」と符合する。

用語の問題は、それだけにとどまらず、ニュースの方向を規定する。重大なことと言わざるを得ない。今年の前半はNHK問題。8月以降は『朝日新聞』問題。どちらも安倍政権のメディア戦略が深く影を落としている。

思えば13年前のETV2001番組改変でも、「慰安婦」問題をめぐる安倍晋三氏の言動がかかわっていた。11月16日には、籾井会長辞任・罷免要求の核になった「放送を語る会」の25周年集会が都内で開催される。公共放送はどこへ向かうのか、目が離せない。

(永田浩三・武蔵大学教授、元NHKプロデューサー、11月7日号)

同性愛者に暴言も「悪気はない」と釈明――豊島区議が“セクハラ”発言

取材をうける石川大我豊島区議。ネット上でも話題が沸騰した。(撮影/野中大樹)

取材をうける石川大我豊島区議。ネット上でも話題が沸騰した。(撮影/野中大樹)

日本で初めて男性同性愛者(ゲイ)であることをオープンにして2011年に東京都豊島区議に当選した石川大我氏が、石川氏と同じ会派「自治みらい豊島区議団」の区議から“セクハラ”発言をされていたことが石川氏への取材でわかった。都議会では今年、塩村文夏議員に対する“セクハラやじ”がクローズアップされたばかりで、今回も波紋を呼んでいる。

石川氏によると、セクハラ発言は10月29日、同区議団と労働組合との話し合いの席上で飛び出した。区役所における女性の登用について討議している際、同会派の藤本きんじ氏(51歳、民主党)は、会派メンバー6人のうち4人が女性であることに触れつつ「うちの会派は女性が多い。というか、実質的な男は私だけ」と発言。石川氏は「事実誤認であり、差別発言だ」と藤本氏に訴えたが、藤本氏は「悪気はなかった」という回答に終始したという。

藤本氏は本誌の取材に対し、「そのような趣旨の発言はしたと思う。認識不足、理解不足だった」と話した。石川氏によれば、藤本氏はかつて視察旅行で石川氏と部屋が同室でなかったことをうけ「おれの身の安全が保たれた」といった発言もしたという。そのことについても尋ねると、「昔のことで一言一句覚えていない」としながらも「冗談のつもりだったとはいえ、本人がショックを受けている。反省している」と釈明した。

石川氏は31日、自治みらい豊島区議団宛に申し入れ書を提出。内容は藤本氏への厳正な処分、セクハラその他のハラスメントのない社会をつくるため、次回定例会で意見書もしくは決議を会派として議会に提案すること、セクシュアル・マイノリティの権利擁護・平等取り扱いに資する条例の制定を会派として求めていくことなど。

07年に施行された改正「男女雇用機会均等法」は今年7月、新たにセクハラについて「同性に対するものも含まれる」という文言を加えている。

(野中大樹・編集部、11月7日号)

多くが“盗掘”により持ち出された先祖の遺骨――東大でアイヌ民族の慰霊祭

東京大学内で伝統舞踊により先祖の霊を慰めるアイヌ民族とその支援者。(撮影/根岸恵子)

東京大学内で伝統舞踊により先祖の霊を慰めるアイヌ民族とその支援者。(撮影/根岸恵子)

東京大学が保有する198体に及ぶアイヌの遺骨を慰霊するため、10月22日、同大学医学部二号館前でイチャルパ(慰霊祭)が執り行なわれた。旭川アイヌ協議会会長の川村・シンリツ・エオリパック

・アイヌ(「先祖を大事にする人」の意味)さんが祭祀を司り、アイヌ伝統舞踊をレラの会代表の平田幸さんが舞った。雨のなか儀式の厳粛さに学生も足を止め、キャンパスにはアイヌ語の歌が響いた。

文部科学省の調査でアイヌの遺骨が全国12大学に1600体以上存在することが昨年公表され、多くが明治期以降、盗掘によって蒐集されたことが判明している。東大が保管するのは、主に1888~89年に小金井良精医学部教授がクリル諸島や北海道で集めたもの。彼の銅像が標本室入口に飾られていることに、川村さんは憤る。

アイヌ民族と支援者は慰霊祭後、遺骨返還を求める573筆の署名を持って東大本部に向かった。しかし、大学側はビルのシャッターを閉じ、警備員と職員がバリケードを張り、署名は届けられなかった。拒絶の背景には、政府の進める「アイヌ文化の復興等を促進するための『民族共生の象徴となる空間』の整備及び管理運営に関する基本方針」(本誌6月27日号で詳報)がある。

6月13日に閣議決定され、道内・白老町に「遺骨等の慰霊および管理のための施設」を2020年の東京五輪までに作るとした。だが「慰霊」とは名ばかりで、遺骨は引き続き研究対象となる。北海道は開道150年に合わせ、この計画を18年に前倒しする予定。

7月、スイス・ジュネーブの国連自由権規約委員会日本審査でアイヌに対する日本政府の対応が問われた。政府は同閣議決定を持ち出して自画自賛したが、そこにアイヌの意思が反映されているとは言い難い。多くのアイヌは、自分たちの墓に先祖の遺骨を返してほしいと望んでいるからだ。

(根岸恵子・ルポライター、11月7日号)

安倍首相が国際法曹協会で「法の支配」スピーチ――参加弁護士からは批判の声

安倍晋三首相は10月19日、国際法曹協会(IBA)が東京で開催した年次大会に招かれ、その場で「法の支配」について演説した。

憲法が禁じる集団的自衛権の行使を閣議決定した安倍首相が「法の支配」でスピーチという外形的事実だけでもブラックジョークだが、案の定、弁護士らからは「自国の法の根本である『憲法』や『法の支配』がなんたるかわかっているのか」と批判の声が上がっている。

IBAは1947年に設立され、150カ国以上の約4万5000人(2012年時点)の弁護士会及び個人の弁護士らが加盟する世界最大の法曹団体だ。今年は19日から24日まで東京で年次大会が開かれた。

安倍首相は演説で、「法の支配」は西洋を起源とする用語だが、アジアでも同様の考えがあるとし、吉田松陰や聖徳太子の「十七条憲法」を持ち出した。そして「法と正義の支配する国際社会を守ることが、日本の国益」であり、法の支配の実現に向け外交を展開する、とまで言ってのけた。

今回のIBA年次大会に参加した日本弁護士連合会の公害環境委員会エネルギー・原子力部会長などを務める笠原一浩弁護士と、安倍首相の演説についてやり取りをした。

――安倍首相は開会式の演説の中で聖徳太子の十七条憲法を持ち出しましたが、ご感想は?

失笑です。安倍首相や自民党の憲法観は、聖徳太子の十七条憲法の水準にすら達していないと言わざるをえないからです。

――どういうことでしょうか。

聖徳太子の十七条憲法は「役人に対する規制としての法規」です。しかし、自民党の憲法草案では「憲法においても国民の義務を導入しよう」との議論さえあるからです。

――聖徳太子の十七条憲法についてもう少し細かくみていただけますか。

一条の書き出し「和をもって貴しとな」るや第二条などは、国の政治を動かす役人が人々を虐げないようにという戒めが仏教思想などに基づき書かれています。それが直ちに立憲主義の根拠というわけではありませんが。

立憲主義は、国家権力を憲法によって規制してその暴走を防ぎ、人権を保障することを目指した思想です。個人は等しく尊重されるべきであるという概念を基礎としたのです。

――国民ではなく、役人が何をしなければならないかが書かれている点で「憲法」ですね。

第十条は、権力の行使者が絶対的に正しいわけではない。民衆の意見が自分と違ったとしても、間違っているわけではない。役人も民衆もひとしく凡夫であると。

――安倍首相は『法の支配』の考え方は普遍的だとし、「人類愛によって結ばれ、助け合う人間が、合意によって作っていく社会の道徳や規範。それが法です」と演説しました。これを聴いた他の弁護士からは、「『法の支配』は、人による支配や恣意的支配を廃し、公権力の恣意性をコントロールするものとして中世以降のイギリスで発展したものだ。しかし、安倍首相の言う『合意』では、単に自分の思いが法になりかねない。『法の支配』の概念を消す恣意的な使い方だとの批判も上がっています。

その通りです。さらに言えば、聖徳太子の十七条憲法は、日本で最初に「憲法」の名が付されましたが、過去の歴史においても国民一般を規制した鎌倉時代の「御成敗式目」等に対しては「憲法」の名は付されていません。

――安倍首相がリードする自民党の憲法草案は憲法に値するのか、という疑問が改めてわいてきます。自分が率いる内閣の閣議だけで9条の解釈改憲を行ない、いまだかつてない国会デモが巻き起こっている原発再稼働に向かい、国会においてさえ、特定多数で押し切り、特定秘密保護法を制定し、それを実施して言論や思想を自民党内の「合意」で進めようとしています。

安倍首相の憲法観は、聖徳太子の十七条憲法の水準以下だと言わざるをえません。

(まさの あつこ・ジャーナリスト、11月7日号)

東京大行進の裏で在特会は“ひっそり”デモ――差別のない社会を呼びかけ

「東京大行進2014」には若者の姿が多く見られ4梯団が「差別撤廃」を掲げて行進した。(撮影/植田千晶)

「東京大行進2014」には若者の姿が多く見られ4梯団が「差別撤廃」を掲げて行進した。(撮影/植田千晶)

ヘイト・スピーチ(差別扇動表現)に反対するデモ「東京大行進2014」(TOKYO NO HATE主催)が11月2日に東京・新宿区内で行なわれた。昨年に次いで第2回となる今年は約2800人(主催者発表)が参加。主題は「差別のない世界を、子どもたちへ。」で、全体を4ブロック(梯団)に分け、メッセージを発信した。

クラブ好きでもある運営スタッフの廣田奈央さん(シェフ・37歳)は、サウンドカー(街宣車)からハウス・ミュージックを流す第三梯団を担当。ハウスは黒人のゲイ・クラブを発祥とする音楽で、「街頭で曲に合わせて踊ること自体、差別反対の表現」と話す。

第二梯団では、水玉・和柄など現代風のチマ・チョゴリ(朝鮮半島の民族衣装)に身を包む“きゃわ(可愛い)チョゴリ隊”が人目を引いた。衣装はすべて趙成珠さん(朝鮮学校教員・33歳)が制作したものだ。

趙さんは中学生の頃、通学中に日本人男性から殴られた経験がある。学内で女性教員のチョゴリ(襦)着用が義務づけられていることに抵抗を感じていた時期もあった。しかし、その後学内服を自ら作り始めるようになり、現在は「差別の象徴」として語られてきたチョゴリを「可愛い普段着」へ転換することを目指している。松本春野さん(イラストレーター・30歳)は今回、デザインが「純粋にかわいい」と感じ、きゃわチョゴリ隊に加わった。だが、大行進にチョゴリを着て参加する旨を事前にツイッターで公表したところ、「ネット右翼から暴言がくるようになった」と言う。それでも当日は、チョゴリを着て参加した。「民族に関係なく、ともにチョゴリを着ることで仲良くなれる」と語る。

同日、在日特権を許さない市民の会(在特会)による300人規模(主催者発表)のデモが都内・秋葉原―上野間で行なわれた。主な行程は首都高速道路沿い(昭和通り)で、観光客などに目立つ街中は回避されたようだ。

この日は小平市(都内)の朝鮮大学校で学園祭も開催され、「朝日友好」がテーマに掲げられた。

(松岡瑛理・ライター兼社会学研究者+兼子草平・ジャーナリスト+編集部、11月7日号)