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増えるギャンブル依存症――予防策の必要性訴え

安倍政権の推進する「カジノ法案(統合型リゾート推進法案)」が秋の国会で本格審議されようとしている中、「ギャンブル依存症問題を考える会」の設立記念フォーラムが8月3日、東京・目黒区内で開かれ、学校や企業での予防教育の必要性を訴えた。

競輪、競馬、競艇などの公営ギャンブルや風俗営業としてのパチンコなど「ギャンブル大国」と言われる日本は、同時に「ギャンブル依存症大国」でもある。2009年の厚生労働省の調査によると、ギャンブル依存症の生涯有病率は米国1・4%、英国0・8%、スウェーデン1・2%に対し、日本は男性9・6%、女性1・6%と異常に高くなっているのが現状だ。

フォーラムでは、今年2月に発足した「考える会」の田中紀子代表が会の活動方針と内容を報告。「ギャンブル依存症はWHO(世界保健機関)でも認められている病気で、10人に1人ほどが発症。脳内の神経伝達物質ドーパミンが関わっているとされます」と定義し、「ギャンブル依存症はその人と家族の人生を狂わせるだけでなく、社会的な損失を生む」と指摘。「ベネッセの情報を流出させた派遣社員もパチンコで借金があったとされ、ベネッセに200億円という巨額の損害を与えた。大王製紙や伊藤忠商事などギャンブルでの借金をめぐる事件は後を絶たない」とし、「カジノを導入するというなら、アルコールやタバコ、薬物のように学校での予防教育や職場での従業員教育など依存症対策制度の導入が必要」と訴えた。

基調講演では筑波大学の森田展彰准教授(精神保健学)が、不利益になるとわかりながらも自らコントロールし止めることのできないアディクション(嗜癖)について解説。「依存症は病気だとの観点が必要で、道徳や罰則を持ち出してもダメ」とし、その特徴や職場での対応などを説明した。

(片岡伸行・編集部、8月8日号)

「大間原発」訴訟で鈴木裁判長――意見陳述認めず閉廷

「鈴木尚久裁判長は薄ら笑いを浮かべていました。原告住民側の森越清彦弁護士が、笑うところじゃないでしょ、とたしなめたほどです」と原告の一人は語気を強める。7月18日、北海道・函館地裁で開かれた口頭弁論での出来事だ。

電源開発大間原発(青森・大間町)の建設差し止めなどを求め、函館の「大間原発訴訟の会」(竹田とし子代表)が国と電源開発を相手に起こした訴訟で、提訴以来12回の口頭弁論すべてで行なわれた原告による意見陳述を、鈴木裁判長が認めず、傍聴席が騒然とするなか弁論途中で閉廷した。

森越弁護士らによると、鈴木裁判長が冒頭「意見陳述の機会は設けない」と通告、原告住民側が理由を再三尋ねたが、鈴木裁判長は「回答の必要を認めない」などと拒否した。原告側は「裁判長による裁判の進め方は違法かつ不当だ」とする異議などを10回近く申し立てたが、鈴木裁判長らは却下。約1時間の予定だった口頭弁論を約20分で打ち切ったという。

大飯原発の運転を差し止める判決を出した福井地裁では、原告住民の訴えに真摯に耳を傾けていたという。前出の原告は「鈴木氏は、裁判途中の2012年4月に東京地裁から赴任。住民の訴えを切るために送り込まれた、との憶測すら流れています」と話す。

『裁判官の品格』(現代人文社)の著者、池添徳明さん(ジャーナリスト)は「鈴木氏は千葉地裁時代、検察寄りで有名な上司に仕えていたので、その影響を受けている可能性は高い。訴訟指揮と判決内容はもちろん一致しませんが、栄転するかどうか、次の異動先が決まる正念場だと思います。最高裁事務局や地裁所長らの目は気になるでしょう」と分析する。

函館地裁で揉めた時間があれば意見陳述は十分可能だったはずだ。福島第一原発による深刻な被害を経てなお、住民の声に耳を貸さない裁判官はどこを見ているのか。

(伊田浩之・編集部、8月1日号)

「ヘイトスピーチを煽動する本」を売ることの責任――出版関係者がシンポジウムを開催

加藤直樹氏による講演の様子。日本と韓国の書店棚の比較などを行なった。(写真提供/出版労連)

加藤直樹氏による講演の様子。日本と韓国の書店棚の比較などを行なった。(写真提供/出版労連)

「『嫌中憎韓』本とヘイトスピーチ――出版物の『製造者責任』を考える」をテーマに7月4日、東京都内でシンポジウムが開かれた。

ヘイトスピーチと排外主義に加担しない出版関係者の会(以下、反ヘイト出版会)と日本出版労働組合連合会(以下、出版労連)の共催で、当日は110名が参加。会場には立ち見の姿もあった。

メイン企画として講演を行なった加藤直樹氏は、今年3月に『九月、東京の路上で』(ころから)を上梓した。1923年の関東大震災時に朝鮮人や中国人が虐殺された現場などを丹念に取材・調査した労作で、現在3刷、1万部を超える売れ行きを見せている。

加藤氏は、韓国の大型書店ではベストセラーなどの書棚に、いわゆる「反日」的な書名がほとんど見当たらないことなどをスライドを交えて紹介。日本の現状と比較して、参加者からも「恥ずかしい」といった声があがった。

質疑応答では書店員・元週刊誌編集長・新聞記者・フリー編集者らが出版関係者の「製造者責任」について意見を交わした。これに伴い参加者の関心を引いたのは、反ヘイト出版会が書店員を対象に実施した〈嫌中・嫌韓本〉に関するアンケート結果の報告だった。今年5月下旬にフェイスブックやツイッターを通じて協力を呼びかけた調査には、依頼数13件のうち10件が回答。内訳は大型店5件、中型店4件、小規模・個人経営店1件となっている。要約した質問と回答の一部を紹介する。

《「嫌中憎韓本」ブームはいつごろから? その理由は?》

・従前に比べられないレベルで1冊1冊が売れるため、存在感が増している。顕著になったのは2013年末から。(社会科学書担当)

・『嘘だらけの日中近現代史』(扶桑社新書、13年発刊)が何の宣伝もしていないのに勝手に売れ続けたあたりから、異変の予兆を感じていた。(雑誌・ムック担当)

・わかりやすいストーリーを組み立てて、刺激的に書かれている。読者は安心して読めるのでは。(法律・政治・経済・経営担当)

・竹田恒泰『日本はなぜ世界でいちばん人気があるのか』(PHP新書)のロングセラーが伏線として重要。〈日本肯定論〉の自己愛が普及するに伴って、堂々と〈嫌中憎韓〉を表明することができるようになった。(雑誌・ムック担当)

・(差別意識を抱く対象が)力をつけて国際舞台で存在感を増していることが許せない読者もいるのでは。(法律・政治・経済・経営担当)

・差別感情を巧妙に〈正当化〉する手段や方法論がインターネットを通じて確立され、負い目を感じることなく〈差別を声に出していいんだ〉という空気が醸成された。(芸術・雑誌・コミック担当)

《購入する客層や特徴は?》

・曾野綾子の読者層(60代後半以降)とほぼ一致する。(店長)

・圧倒的に50歳前後の〈日本の中核〉を担っているような男性サラリーマン。(雑誌・ムック担当)

・(最近は)中高年の女性も多い。普段は書店にこないのか、大抵が広告記事を片手に書名で問い合わせの目的買い。(社会科学書担当)

《「嫌中憎韓本」がブームと言われるような状況に対して。》

・配本があれば仕方なく棚に並べるが補充発注は決してしない。(雑誌・ムック担当)

・〈嫌韓嫌中〉が極端に多い現在の書店の棚には危機感を拭いきれない。(芸術・雑誌・コミック担当)

「愛国」という言葉を他の民族を排除し貶める意味で使用しているみたいで恐怖を感じる。(法律・政治・経済・経営担当)

太平洋戦争末期、「アメリカ兵をぶち殺せ」という「柱(キャッチ・コピー)」を配した某婦人雑誌があった。現在も街中では「朝鮮人を殺せ!」の罵声が響き渡り、「戦争のできる国」づくりを進める人びとが政治や経済を牛耳っている。シンポでの様々な発言を聞きながら、いざ他国と交戦状態になったら、「国策」に逆らえず、編集者として憎悪を煽るタイトルをひねり出す、自分の姿を想像した。

(真鍋かおる・反ヘイト出版会事務局、8月1日号)

日本政府のイスラエル支援に抗議のデモ

イスラエルによるガザ地区への無差別殺戮に抗議する集会・デモが7月25日に東京都内で行なわれ、平日夜の緊急呼びかけに約450人が集まった。

集会では、イスラエルを支援し関係を強化する日本政府への抗議要請書が読み上げられた。日本はイスラエルを支援することにより虐殺に加担しているのだ、との発言も多くあがった。

デモ隊は市ヶ谷駅前を出発してイスラエル大使館近くを通過したが、このところ、同大使館への抗議は「過剰」に規制されている。当日も大使館へ向かう交差点は鉄柵と二重に並んだ警官隊が封鎖しており、抗議のために立ち止まる参加者を警官隊は怒鳴ったり押したりするなど威圧的な態度で制圧した。

その反面、「虐殺やめろ」「ガザに自由を」「パレスチナに平和を」のシュプレヒコールは一段と大きくなった。

デモには雨宮処凛本誌編集委員も参加し、「日本政府に人々の怒りを伝えるためにも声を上げ続けることが大事。イスラエル企業への抗議や、不買運動なども有効」と語った。

呼びかけ人のひとり植松青児さん(安倍のつくる未来はいらない!人々)は「殺戮が起きてから始めたデモなので辛い思いだが、参加者の怒りと熱気には企画側も圧倒された」と話した。

(白田真希 川越・ふじみ野読者会、8月1日号)

国連勧告受けてNGOが会見――「排外デモ禁止せよ」

特定秘密保護法は問題あり、ヘイトスピーチ(憎悪表現)の排外デモは禁止を――6年ぶりに出された国連自由権規約委員会の勧告を受け、アムネスティ・インターナショナル日本などNGO(非政府組織)諸団体による会見が7月25日、東京・永田町の衆議院第二議員会館で開かれ、「日本政府は国連勧告に誠実に向き合い、自ら批准した条約の遵守を」と求めた。

24日に公表された同委員会の審査総括は人権機関の創設、ジェンダーと平等、ヘイトスピーチと人種差別、特定秘密保護法、福島原子力災害など20案件に勧告および現状への懸念を表明。このうち、▽袴田巖さんなど冤罪の温床となっている代用監獄の廃止▽死刑制度は廃止をめざす▽従軍「慰安婦」(性奴隷)問題は公式の謝罪と加害者の訴追・処罰を▽技能実習生をめぐる制度改変――の4分野は1年以内に具体的な対応を求める「フォローアップ」案件となり、くり返し対応の遅れを指摘されてきた日本政府、とりわけ安倍政権にとって厳しいものとなった。

今回初めて取り上げられたのが特定秘密保護法、ヘイトスピーチ、福島原発事故、そして「日の丸・君が代」強制問題。会見では各団体が、「特定秘密保護法は定義が曖昧で知る権利への萎縮効果が懸念されるなど自由権規約19条の要件を満たしていないとされ、反対の声が世界に届いた」、「ヘイトスピーチの排外的デモを禁止すべきと明確に書かれた。包括的な差別禁止法の制定が必要」、「福島については許容被曝限度が高いなどの懸念が表明された」、「公共の福祉を理由とした(「日の丸・君が代」の)制約と押しつけに懸念が表明された」などと指摘。また、「慰安婦」問題をめぐっては自由権規約委の議論終了後、「強制連行されていない」と主張する団体のメンバーが委員の一人を取り囲むなど「恥ずべき事態も起きた」との報告もあった。

(片岡伸行・編集部、8月1日号)

原発事故で東電元幹部の責任めぐり検審が判断――検察は再捜査・処分再検討へ

福島県庁内で会見する告訴団長の武藤さん(中)、副団長の佐藤さん(右)ら。(撮影/藍原寛子)

福島県庁内で会見する告訴団長の武藤さん(中)、副団長の佐藤さん(右)ら。(撮影/藍原寛子)

民意は検察の判断に「NO!」を突きつけた。

東京第五検察審査会は7月31日、福島県民が東電元幹部役員を業務上過失致死傷などの疑いで告訴・告発し、東京地検が不起訴とした処分に対して、勝俣恒久元会長ら3人を「起訴相当」とする議決を出したと発表した。「起訴相当」となった残りの2人は、武藤栄、武黒一郎、両元副社長だ。東京地検はこの3人について再捜査を行ない、改めて起訴あるいは不起訴の判断をすることになった。

告訴・告発された残りの3人、小森明生元常務は不起訴不当、鼓紀男、榎本聡明、両元副社長はいずれも不起訴相当となった。

「(告訴・告発した)6人全員でないのは残念だが、特に重大な責任を負う4人が起訴相当・不起訴不当となったのは妥当な判断。議決は一般市民、国民の想いであり、検察審査会は被害者に寄り添った判断をした。検察はこれを重く受け止めて、直ちに強制捜査を開始し、厳正な捜査のもと、必ず4人を起訴してほしい。今も被害は拡大しており、被害者の救済がなされるべきだ」

同日、福島県庁記者クラブで記者会見した告訴団長の武藤類子さんは告訴・告発人が求めている強制捜査による真実の解明と被害者救済を、改めて求めた。

議決は、地震調査研究推進本部(以下、「推本」)の長期評価(マグニチュード8クラスの津波地震が30年以内に20%の確率で発生)や、原子力安全・保安院、原子力安全基盤機構(JNES)や電力会社の「溢水(水の氾濫)勉強会」で、試算で15メートルを超す津波の可能性と、津波による「全電源喪失、炉心損壊にいたる危険性」が検討され、事故は予見できたと指摘。起訴相当の3元幹部役員については、津波に関する手書きメモや発言記録に津波対策の議論や報告の証拠が残されていたことや、現地調査を実施した記載などを具体的に挙げ、「適切な対応策を取らせることが可能な立場にありながら、それを講じなかった」――などとした。

【無責任体質は変わらず、被曝線量限度引き上げも】

会見で副団長の佐藤和良さんは、「いまだに14万人が避難生活を送り、1700人が災害関連死と認定され、汚染水やがれき処理の問題もある」と指摘した上で、「これだけの大事故・公害事件で、まったく責任が問われない異常な事態にあって、国をただすということを市民が判断したのは、画期的なことだ」と述べ、東京都内でも同日、弁護団の河合弘之弁護士らが会見し、同様の見解を示した。

告訴団長の武藤類子さんは会見後、2012年6月からの告訴・告発に加わった福島県民ら1万4716人のなかで、告訴後に亡くなった人がいることに触れ、責任追及も、被害者救済もされないままに時間が過ぎてしまっている問題を改めて強調した。

今回の議決は福島県民には朗報だが、すでに事故から3年5カ月が過ぎている。これまでの時間は長く、しかも国は、被災者に鞭打つ政策を次々と打ち出している。

地元住民が多く含まれる緊急時の作業員に対して、原子力規制委員会は被曝線量限度引き上げの検討を始めた。また、国・環境省はいくつかの県内自治体とともに、一般市民の被曝防護を「徹底した除染による面的防護」から、「個人線量計による被曝管理」へと移行しようとしており、被曝の「自己責任」化・「個人責任」化が加速している。

真の責任者が免罪されるような「無責任体質」に加え、被害者のみが実害を上乗せされ、結果として、その尻拭いをさせられる不条理が福島ではさらに強まろうとしているのだ。

東電側は議決に対して、「検察審査会が検察の処分に対してなされたものであることから、当社としてはコメントを差し控えさせていただきます。いずれにしても要請があれば捜査に真摯に対応して参ります」とコメントした。

(藍原寛子・ジャーナリスト、8月8日号)

コンビニ・ユニオンと連合岡山が会見――「セブン本部の不当契約」告発

日本外国特派員協会での会見に臨む(左から)三井、中野、高橋の各氏。(撮影/渡辺仁)

日本外国特派員協会での会見に臨む(左から)三井、中野、高橋の各氏。(撮影/渡辺仁)

「セブン-イレブン・ジャパンは加盟店オーナーの経営の自由を奪っている。同社のフランチャイズ商法は不当である」――コンビニ加盟店ユニオンの三井義文副執行委員長と顧問の中野和子弁護士、連合岡山の高橋徹会長は7月30日、日本外国特派員協会(東京)で会見を開き、セブン-イレブン・ジャパンが加盟店オーナーに強いる契約内容の不当性を訴えた。

三井副執行委員長は「店の売上金はセブン本部に握られ、契約書ではスケールメリット(経営規模が大きいことで得られる利点)で仕入値が安いと書かれているが、実際の仕入原価は、街のスーパーの店頭価格より高い」などと、生々しい取引実態を告発した。

中野弁護士も「セブンのオーナーは年間、3000時間も働かされ、報酬は昨日(29日に)政府が発表した最低賃金ぐらいだ。両者は偽装された雇用関係だ」と指摘し、今年3月に岡山県労働委員会が下した「セブンのオーナーは経営の自由のない労働者だ」との判断を強調。高橋会長も「オーナーは圧倒的に弱く、経営が著しく制限されている」と指摘。同ユニオンを支援する考えを表明した。

海外メディアからは「なぜ、日本にフランチャイズ法がないのか」「米国や韓国でも酷いのか」「会計情報が開示されないというが、国税との関係はどうなっているのか」「加盟前の説明はどうだったのか」などの質問が相次ぎ、関心の高さを示した。

今年4月には米国セブン加盟店協会のハシム・サイード氏(シカゴ代表)が来日し、日本の実態を批判。これに続き今回も、同社の加盟店オーナーに対する不当性が世界に知られるきっかけとなった。

同社の問題については昨年8月、見切り販売妨害事件で東京高裁がセブン本部に「違法」判決を下している。しかし、日本の主要メディアは現在に至るまで、詳細に踏み込むような報道をしていない。

(渡辺仁・ジャーナリスト、8月8日号)

政調費で靖国参拝の杉並区議――国連報告を“曲解”

国連自由権規約委員会は7月24日、「従軍慰安婦」の責任逃れをはかる日本政府を批判する見解を出した。これに対して東京都杉並区の吉田あい区議会議員(自民)が、同委員会が日本政府を擁護しているかのように「曲解」し、公表していることがわかった。

「慰安婦」問題に関する同委員会の最終見解はこうだ。

〈締約国(日本)は、慰安所の女性に関する「募集、移送及び管理」は、軍又は軍の協力者により、脅迫的・強圧的に、総じて本人たちの意に反して行なわれた事例が数多くあったとしているが、一方で軍による「強制連行」はなかったと述べるなど矛盾した立場をとっている。委員会はこれに懸念を表明する。被害者の意思に反して行なわれたそうした行為は、いかなるものであれ、法的責任を伴う人権侵害とみなすのに十分であると委員会は考える〉(筆者抄訳)

「強制」の否定は「矛盾」した態度だとして、戦時中の重大な人権蹂躙について日本政府は責任を取るように迫っている。ところが、吉田議員の7月25日のブログではまったく違う話になっている。

〈今日の産経新聞によると、国連の日本の人権状況に関する審査の最終見解が公表され、「慰安婦」に関する矛盾が指摘されました。

強制連行を示す資料が発見されていないにもかかわらず、河野談話が慰安婦の強制性を認めたことが矛盾している…と言うのです〉

7月24、25日の『産経新聞』を確認したが、記事中に吉田氏が指摘するような文脈はなかった。

吉田議員は2012年8月15日、政務調査費で靖国神社を「タクシー参拝」したほか、靖国を参拝しない閣僚は日本から出て行ってほしい――という趣旨のことも公言している(本誌8月1日号)。国連委の報告を読んだのか、または報告を伝えた記事を正確に読んだのか――吉田議員に質問したが締め切りまでに回答はなかった。

(三宅勝久・ジャーナリスト、8月8日号)

理研“STAP細胞”騒動――副センター長が自死

理化学研究所ユニットリーダーの小保方晴子氏がSTAP細胞について英国科学雑誌『ネイチャー』に投稿した論文の共著者で、同研究所発生・再生科学総合研究センター(CDB・神戸市)の笹井芳樹副センター長(52歳)が8月5日朝、隣接する先端医療センターの建物内で首を吊っているのを警備員が発見。神戸市内の病院に搬送されたが死亡が確認された。兵庫県警の調べでは小保方氏や研究関係者宛ての遺書が残されていた。

STAP細胞に疑義が出た後、小保方氏は4月9日に大阪市で「STAP細胞はあります」と会見したが、理研の調査委員会は「小保方氏に不正があった」として、小保方氏や上司の笹井氏らの懲戒処分を検討していた。笹井氏は小保方氏への指導の不十分については謝罪したが、STAP細胞の存在については自信を見せていた。4月からの再現実験では途中から小保方氏も加わっており、8月中には中間発表されるはずだった。

兵庫県生まれの笹井氏は京都大学医学部卒、1998年に36歳で同大学の教授となり、理研に入った。胚性幹細胞(ES細胞)の研究で世界的に知られる。今年1月の「STAP細胞成功」の会見では小保方氏と同席し、“華やかな会見を演出した”と言われたが、一部ではiPS細胞の山中伸弥京都大学教授に先を越されて功を焦っていた、との報道もあった。

竹市雅俊・CDBセンター長は5日午後、「3月には副センター長を辞めたいと申し出ていた。苦しい状況にあったはずだが、もう少し我慢してほしかった。本当にショックです」と語り、再現実験には「影響しないと思う」と述べた。

科学組織の独立行政法人化以降、メディア(『ネイチャー』とて商業雑誌)に大きく取り上げられることが巨額の予算獲得に直結する構造が生まれている。空前の科学スキャンダルで優秀な研究者が犠牲になったことは残念でならない。

(粟野仁雄・ジャーナリスト、8月8日号)

イスラエルの兵器開発に日本も荷担――圧倒的な軍事力による抑圧

民家の壁に突き刺さるフレシェット弾(矢弾)、白リン弾で焼け焦げた家屋。どんな兵器を使ったのか、サッカー場ほどもある広大な農場一面に、吹き飛ばされた家畜の屍骸。2009年1月、イスラエル軍侵攻直後のガザを訪れた私は、まるでさまざまな兵器が「試された」かのような痕跡に驚いた。

それから5年半がすぎ、ガザは再び激しい攻撃にさらされた。8月4日現在、わずか28日間の戦闘でパレスチナ人の死者は1800人を超える。

イスラエル軍も兵士64人死亡という過去にない犠牲を払ったが、2600発以上のロケット弾が撃ち込まれたにもかかわらず、市民の犠牲者は3人に留まっている。ハマースのロケット弾を約90%の命中率で撃ち落としたという防空システム、「アイアンドーム」の性能と、自国の兵器開発能力を実証する絶好の機会となった。

この兵器は、軍とイスラエルの軍事企業「ラファエル・アドバンスト・ディフェンス・システムズ」によって開発された近接用迎撃地対空ミサイルで、11年から配備された。「命中率90%」という数字は検証が必要だが、イスラエル人に聞くと「かなり撃ち落としている実感がある」という。

日本にとっても、この国の兵器開発とは無縁ではない。5月12日、安倍・ネタニヤフ両首相が、国防とサイバーセキュリティの分野での協力推進で合意。7月6日にはイスラエルを訪問した茂木敏充経済産業大臣が、両国の企業や研究機関が「共同研究・開発」を促進する覚書を締結、署名した。この「共同研究・開発」には、兵器開発が含まれない理由はない。

日本で三菱重工業がライセンス生産するパトリオット2ミサイルの部品は、「防衛装備移転三原則」により輸出可能になったが、同ミサイルはイスラエルにも配備されている。また、F-35戦闘機の開発には、日本・イスラエルともに名を連ねる。日本の軍事技術が今後、パレスチナに対して使われないという保証はどこにもない。

【破壊と抑圧の責任は?】

ガザはイスラエルにとっての「打ち出の小槌」だ。政府が外交上、または自国民に対して、自らの存在意義を示そうとするとき、その駆け引きの材料にいつもガザが使われてきた。そこでは、日本のメディアも「イスラーム原理主義組織」と呼ぶハマースが、「実効支配」を続けているからだ。

彼らを少し挑発すれば、ガザの人々を「人間の盾」としてロケット弾を撃ち込む。イスラエルは、それで市民が巻き込まれても、「原理主義組織」を選んだお前たちのせいだ、と言わんばかりだ。

日本政府は7月25日、ガザ地区の市民に対する食料や医薬品など、550万ドルにおよぶ人道支援を決めた。大規模な破壊行為のあとには、諸外国からも緊急支援が入る。国連機関を通じて直接ガザに援助が入る場合もあるが、多くはヨルダン川西岸のパレスチナ自治政府経由であり、それがガザまで届くことは多くない。

逆に援助が人を締めつけてゆくこともある。諸外国からの莫大な援助があるがゆえに、占領地に責任を負うべきイスラエルの懐は何ら痛むことなく、破壊と抑圧を続けてゆくことができる。

イスラエル軍地上部隊の大半は撤収を始めたというが、空爆による攻撃は続いている。ガザ市民の4人に1人はまだ、長い避難生活を強いられたままだ。停戦になったとしても、人々の破壊された暮らしは容易に元には戻らない。

四方を分離壁と海に囲われた狭い土地に閉じ込められて生きる、約180万人の人々。働くべき仕事もほとんどなく、ガザを出ていく自由も与えられていない。

「戦闘では人が死ぬが、停戦でも死んだように生きるしかない」。電話の向こうでガザの古い知人が言う。「毎日毎日、同じ日が続くだけだ。描ける将来の希望など、ガザのどこを探してもない」。それでも、目が覚めたらまた一日が始まる。それは容赦なく残酷な一日だ。

(藤原亮司・ジャパンプレス、8月8日号)