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検察審査会、東電元会長ら3人「起訴相当」──福島第一原発事故の責任問う

東京第五検察審査会は7月31日、東京電力の勝俣恒久元会長(74歳)ら3人を業務上過失致死傷罪で「起訴相当」と議決したと公表しました。議決は7月23日付です。

東京電力福島第一原発の事故は東電が津波対策を怠ったために起きたとして、福島県の住民や避難者でつくる「福島原発告訴団」は当初、当時の東電幹部や菅直人元首相など政府関係者ら計42人を告訴・告発していましたが、東京地検は2013年9月9日、全員を不起訴としたのです。このため、「福島原発告訴団」は同年10月、勝俣元会長ら6人に絞って審査会に審査を申し立てていました。

他に起訴相当とされたのは、武藤栄・元副社長と、武黒一郎・元副社長の2人です。小森明生元常務は不起訴不当、別の元副社長ら2人は不起訴相当としました。

「起訴相当」の議決を受けて検察が再捜査しますが、仮に再び不起訴としても、別のメンバーによる検察審査会が再び起訴相当と議決すれば強制起訴されます。

議決はA4判18ページに及ぶ詳細なものです。ここに掲載します。

検察審査会の議決書

また、福島告訴団の主張については、『これでも罪を問えないのですか!──福島原発告訴団50人の陳述書』をぜひお読みいただければと思います。

(伊田浩之・編集部)

 

国立競技場建て替えでJSCが立ち退き要請――「野宿者の人権守れ!」

国立競技場(東京都)軒下で野宿者への工事説明の打合せをするJSC職員。(撮影/小川てつオ)

国立競技場(東京都)軒下で野宿者への工事説明の打合せをするJSC職員。(撮影/小川てつオ)

独立行政法人・日本スポーツ振興センター(JSC)は7月9日、今年8月から始める下水道管工事についての説明会を国立競技場の軒下で開いた。来秋着工予定の新国立競技場(東京都新宿区)建設に先立って行なわれる工事で、説明会には該当区域と周辺に住む野宿者や支援者約20人が集まった。

「説明会場」は薄暗く、時折、風雨も吹き込んでくる。JSCの職員は模造紙に描かれた図面を工事用の板囲いに貼り、工事区域と予定を説明、「ホームレスの方々はご移転いただきたい」と述べた。

この対応に出席者からは次々と異論が出た。そもそも、(1)工事区域には3軒のテント小屋があり、人が住んでいることをJSCは知りながら区域を定めている。また、(2)野宿者の移転先は考慮されておらず、事前の説明もなく、野宿者の了解も得られていない状況で、(3)移転の期限すら通知されていないことなどが指摘された。出席者は野宿者の生活が脅かされないよう、工事区域を再検討し、改めて説明会を開くよう求めた。だが、JSCは「8月から工事をやらせていただく」として拒否。

出席者は口々に抗議し、午後7時から12時近くまでやり取りが続いた。その結果、JSCは野宿者への説明が不十分だったこと、テント小屋がある限り着工できないことなどを認め、野宿者への対応は、工事現場は都有地なので都と相談、2週間後をめどに再度説明会の場を設け、結果を報告するとした。最後に、野宿者の小川てつオさん(43歳)が「(JSCは)人権に配慮しているから野宿者の追い出しはしないと表明していただけないか」と要請。齋藤孝博総務部長は「人権に配慮しない工事はしません」と応じた。

国立競技場周辺には数十人の野宿者が生活しているが、昨年3月のIOC(国際オリンピック委員会)委員視察の際は一時的に強制移転させられた経緯がある。

(永尾俊彦・ルポライター、7月18日号)

自衛隊「訓練」中の死亡事故が多発――10年で69人、「人命軽視」か

陸上自衛隊真駒内駐屯地(札幌市)でのスキーの光景。訓練中の急死が多発している。(撮影/三宅勝久)

陸上自衛隊真駒内駐屯地(札幌市)でのスキーの光景。訓練中の急死が多発している。(撮影/三宅勝久)

教育訓練中に死亡した自衛官の数が、過去10年間に少なくとも69人を数え、警察官や消防士の6倍にも達することがわかった。照屋寛徳衆議院議員(社民)の質問主意書に対して安倍内閣が6月27日付で答弁した。

他省庁と比べて突出して高い自殺率(10万人あたり35~40人)とあわせて、隊員の人命が軽く扱われている実態があらためて浮き彫りとなった。

答弁書によれば、2004年度から14年度までの約10年について、訓練中の死亡と認定された件数は、陸上自衛隊が47件(49人)、海上自衛隊9件(11人)、航空自衛隊6件(9人)の計62件で、69人が死亡している。

警察官(9件)や消防士(10件、ただし12年度までの8年間)と比較して6倍以上の高率だ。

【“不要な危険”を強要か】

訓練の種類別にみると、陸自は「持続走訓練」や「体力検定」「スキー訓練」中に心筋梗塞などを起こした例がもっとも多く、47件中26件。レンジャー訓練や登山、「武装走訓練」「徒歩行進」といった肉体的に過酷な訓練中に起きた同様の事故を含めると30件と大半を占める。このほか、車の横転や接触、転落など車両事故によるものが8件(10人)、テントやシェルターでの野営や、有毒ガスの出る壕内での窒息死が2件、落下傘降下中の墜落死が2件、燃料補給中の事故が1件、「格闘訓練」中に死亡に至る事故が1件起きている。

格闘訓練の事故は06年11月に真駒内駐屯地(北海道札幌市)で起きた。格闘技経験がない素人同然の1等陸士を、「試合」のための訓練だと称して先輩隊員と取り組ませ、繰り返し転倒させられた結果、激しい脳出血によって死亡した。隊員の体力の許容範囲を軽く考えた、とても訓練とは言いがたいものだ。

遺族が起こした国賠訴訟で札幌地裁は13年3月、国の責任を全面的に認める遺族勝訴の判決を言い渡している。

海上自衛隊の訓練中の死亡者11件の内訳は、潜水訓練中の死亡4人、ヘリコプターの墜落による死亡が3人。航海中の行方不明が3人。格闘訓練中が1人。

12年4月に起きたヘリの事故は、幹部を乗せた護衛艦を見送る“儀式”として、艦船側すれすれの位置を低空飛行しようとして接触、墜落したという“不要な危険”を冒したことによるものだった。

行方不明の3人は「事故」とされているが、自殺の可能性は否定できない。行方不明者を出した護衛艦「しらゆき」は、新人2等海士が先輩から日常的に虐待を受け、精神疾患を発症する事件が起きた。(1)当直を終えてベッドで寝ていたら突然引きずり落とされ、殴られたり蹴られたりする暴行を受けた、(2)金属製の大型懐中電灯で殴られた、(3)暴力はあまりにも日常的だったのでいちいち覚えられないほどだった――などという陰惨な実態が、本人が起こした国賠訴訟で明らかになった。札幌地裁は12年9月、150万円の賠償を命じる原告側勝訴の判決を下し、確定している。格闘訓練でも無謀なやり方で1人が死亡している。

航空自衛隊は、訓練事故の死亡者9人中4人が「持久走」や「3キロメートル走」中に意識を失って死亡した。墜落事故は、05年に起きた新潟救難隊の救難機MU-2Aの墜落、11年7月のF-15戦闘機の2件で、計5人が死亡している。

このほかにも、トラックのタイヤに空気を入れていた女性陸自1士がタイヤの破裂で死亡した事故(13年)、潜水艦「そうりゅう」で行方不明になった3曹が、艦橋の水没部分で死亡していた事件(12年)、ダンプカーの周囲を点検していた2曹が、突然動き出したダンプカーにひかれて死亡した事件(11年)。さらにソマリア沖に出動中の護衛艦「ゆうぎり」のトイレ内で3曹が有毒ガスの発生により倒れ、死亡した事件(10年)など、「教育訓練」以外の死亡事故も多数あり、事故死の実数はこれよりも多いものとみられる。

(三宅勝久・ジャーナリスト、7月18日号)

東海第二原発再稼働めぐり原電――対応に住民は怒り

東海第二原発(茨城県東海村)の再稼働に向けて原子力規制委員会へ適合審査申請中の日本原子力発電株式会社(以下、原電)は、東海村を30地区に分けた住民説明会を7月4日から実施している。9月頃まで続くというが、住民からは不満の声が続出している。

住民説明会に申し込むには身分証の提示が必須とあり、個人が特定される。同村船場地区の岡本孝枝さんは「細かく地区も分けられていて住民は出席しづらい」と話す。相沢一正さん(脱原発とうかい塾代表)ら茨城県23の市民団体は今月9日、公開質問状を原電へ提出。適合審査の内容のほか説明会について、住民が出席しやすい場所や時間帯を示し、参加資格を東海村民に限定しないことなどを求めている。22日期限だが、回答はまだない(7月14日時点)。

一方で、本誌7月11日号に掲載した「原電が適合審査申請で説明会も」の記事について発行当日、同社の広報担当者から「抗議」があった。「われわれの意向が反映されていない」として、本文中の〈説明会で準備された席は30人分〉の表記を〈30人程度〉に「訂正」し、「人数を限定しているわけではない」ことや「30人程度」としたことの「趣旨」を踏まえた訂正記事を出すよう求められた。趣旨とは、(1)丁寧な説明と住民の意見をうかがうため、(2)住民に施設内を案内するバスとの兼ね合いもあり、(3)30人を超える場合は別途、日程を設ける予定――といったもの。

だが、原電が同村白方地区の約1600世帯に6月23日時点で配布した案内文に「定員は先着30名」と明記されており、広報担当にその点を問うと一転、「(案内文が)手元になく確認していなかった」との答えが返ってきた。同地区の川野弘子さんは、「参加者を限定する点を事前に抗議したがあしらわれた」とも話す。「訂正」されるべきは原電側の対応ではないか。

(中村ゆうき・フリーライター+内原英聡・編集部、7月18日号)

川内原発再稼働手続き進むも避難弱者は……――施設管理者に避難計画丸投げ

再稼働中止を求めて署名とともに陳情した鹿児島県いちき串木野市の住民。(撮影/満田夏花)

再稼働中止を求めて署名とともに陳情した鹿児島県いちき串木野市の住民。(撮影/満田夏花)

「施設管理者に避難の策定が丸投げされるのは、行政の責任放棄ではないか」――九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働手続きが進む中、寝たきりの高齢者や心身の障がい者など、援護を必要とする人びと(以下、要援護者)の避難時の対策が、個々の施設に押し付けられている実態が明らかになってきた。川内原発から半径30キロメートル圏内の9市町はそれぞれ防災計画を策定しているが、要援護者の避難については、具体策が決められていない。

伊藤祐一郎鹿児島県知事は6月13日、「10キロ圏外の、要支援者(要援護者)の施設については避難計画を策定する必要はない」と発言。実際、10キロメートル圏外の社会福祉・医療関係の227施設については、施設管理者が避難計画を策定するとのみ定められている。

川内原発に隣接するいちき串木野市内で社会福祉施設を経営する江藤卓朗さんは、「在宅の要支援者(要援護者)は他の避難者と一緒に体育館や公民館に避難する計画だが、これも非現実的」として、「医療を必要としている人や、パニックを起こす人もいる」と懸念する。

自治体への聴き取りによると、避難先の床面積は一人当たり2平方メートルに限られるのが実態だ。ケアマネジャー協会いちき串木野支部会長の馬塲添司さんは、「1993年の水害の際には、ある施設から30人の入所者を7カ所に分けて避難させた。それがどんなに大変だったか」と振り返る。「100人の入所者を1カ所では受け入れられない。行政は現状を調査して計画するべきだ」(馬塲さん)。

社会的弱者への配慮を怠るなど多くの課題を抱えながら進む再稼働手続きについて、6月24日には同市の市民らが「市民の生命を守る避難計画がないままでの再稼働に反対を」という趣旨の陳情を同市議会および田畑誠一市長に対して行ない、賛同する1万5464筆の署名を提出している。

(満田夏花・FoE Japan、7月18日号)

「水俣病幕引きへの地ならし」と被害者が怒り――原因企業チッソ優遇法が成立

水俣病の原因企業・チッソ(株)を優遇する規定を盛り込んだ「会社法改正案」と「同法施行に伴う関係法整備法案」が6月20日、参議院本会議で可決され、成立した。会社法改正で企業が子会社の株を売却する際の条件が厳格化される(株主総会で3分の2以上の賛成が必要となる)が、チッソだけは例外にするという内容だ。

これについて水俣病の被害者からは「チッソの役割と責任を免責し、水俣病幕引きへの地ならしをするものだ」という怒りの声が上がっている。

怒りの理由を理解するには、第二の政治解決とされた「水俣病特別措置法」(2009年成立)にさかのぼる必要がある。

この特措法は、未認定被害者への一時金(一人210万円)の負担をチッソに求める一方で、チッソの「分社化」を認める内容だった。チッソはこれに基づいて11年4月、JNC(ジャパン・ニュー・チッソの頭文字)という100%出資の子会社を設立して全事業を移し、本社は水俣病補償業務だけを行なう体制にした(新会社は補償関係を引き継がない)。

将来JNCを上場させ、その株の売却益を認定患者の補償金や公的債務の返済金などに充て、本社は清算して消えてしまう――というのがチッソの筋書きだ。JNC株売却には環境相の承認が必要だが、さらに株主総会の特別決議も必要となれば面倒になる。そこでチッソだけは例外にしたわけだ。

チッソ優遇規定は政府案にはなかったが、園田博之衆院議員(熊本4区)が中心になって日本維新の会が修正を議員提案した。園田議員は「与党に頼まれた」と説明しているが、本社清算によって「水俣病の桎梏から解放される」(後藤舜吉前会長)ことを悲願にしているチッソの働きかけがあったのは間違いあるまい。

チッソの分社化には、新会社だけでなく、チッソ本社自体の水俣病に関する責任をも実質的に免除してしまう危険性がある。

戦後最大の産業公害を生んだチッソが「原因者責任」をまっとうするには、(1)認定患者の補償と(2)公的債務の完済のほか、(3)未救済の潜在患者への補償なども果たすことが必要だ。ところが、JNC株の売却によって(1)と(2)に必要な金額が調達できるかどうか定かではなく、(3)にいたってはその扱いが不明確で、患者の切り棄てにつながりかねない。

そんな欠陥をもつJNC株売却の促進に与党など多数の議員が加担したのである。

【新救済策を拒む環境省】

未救済の被害者たちはいまなお何万人もいる。水俣病の症状は、数カ月で死亡してしまうこともある「劇症型」から、感覚障がいを中心とする「慢性型」まで幅が広いが、慢性型の場合、その多くは公式に認定されていない。

環境省は1977年に厳しい判断基準を決め、多数の被害者を切り棄ててきた。これに対して被害者たちは司法に救済を求め、昨年4月、環境省の基準は法に適合しないという趣旨の最高裁判決を勝ち取った。しかし環境省は新しい救済制度の策定を拒み、認定のハードルをむしろ高くした「新通知」を今年3月に出している。

このため熊本、鹿児島両県では認定審査が止まり、900人を超す申請者が未審査のままだ。

未認定患者たちの訴訟も広がっている。胎児性水俣病患者と同じ世代の被害者が国・県・チッソに損害賠償を求めた「第二世代訴訟」、特措法で「非該当」「対象外」とされた被害者が補償を求めて提訴した「特措法訴訟」に続き、今年になって、新通知の取り消しを求める訴訟なども起こされた。

そうしたなかで6月19日、「水俣病被害者とともに歩む国会議員連絡会」(11議員、会長・辻元清美民主党衆院議員)が発足した。

初めての超党派議員による組織は、水俣病と、新潟水俣病(原因企業は昭和電工〈株〉)を対象に、まず現地調査を実施。新しい救済策なども検討していくという。

(岡田幹治・ライター、7月11日号)

「議会での差別発言許さない」緊急集会――“セクハラヤジ”は氷山の一角

ヤジ問題について「幕引きを許さない」と語る、右から西崎光子、陣内やすこ、広瀬めぐみ、細谷実の各氏。(撮影/渡部睦美)

ヤジ問題について「幕引きを許さない」と語る、右から西崎光子、陣内やすこ、広瀬めぐみ、細谷実の各氏。(撮影/渡部睦美)

6月18日の東京都議会で塩村文夏都議(みんなの党)に対して「早く結婚しろよ」などの“セクハラヤジ”が飛んだ問題で、「都議会・性差別やじ問題の幕引きを許さない緊急集会」(同実行委主催)が7月7日に東京都内で開かれ、約90人が集まった。

ヤジ発言を聞き、すぐに議長室へ抗議に行ったという東京都議で生活者ネットワークの西崎光子幹事長は、「これは単なるセクハラ問題ではなく、女性への人権侵害」だと強調。2010年に都条例改正を話し合う場で、「おまえは痴漢されて喜んでるんだろ」などと“罵倒”された体験も語った。

全国フェミニスト議員連盟所属の陣内やすこ八王子市議は、地方自治法129条をもとに「基本的に議会の統制(の責任)は議長にある」として、「発言者を制さなかったことは大きな問題」と述べた。

細谷実関東学院大学教授(男性学)は、「女性は外での活動はほどほどに、結婚して家庭にいて、子どもを産み育てるのが良い」といった“保守”的な両性の風潮が今回のヤジ発言の背景にあると分析。

「公人による性差別をなくす会」の中野麻美弁護士は、都議会議員に対して実施したアンケート(21人が回答)の結果として、ほとんどが今回のヤジは「人権侵害」にあたると回答したと報告した。

さらに第二東京弁護士会の広瀬めぐみ「両性の平等委員会」委員長は、「ヤジを批判する男性の中にも、『か弱い女性を公的な場で辱めてはならん』という一種の上から目線」があると指摘した。

来場者からは、調査委員会を設置し、解職請求を行なうべきなどといった意見が出た。会の最後には澁谷知美東京経済大学准教授がヤジの発言者の特定と、セクハラ発言をした鈴木章浩議員への厳正な処分などを求める要請文を読み上げ、満場一致でこれを採択した。澁谷さんはさらに、今後もやじ問題を追及していく姿勢を示した。

(渡部睦美・編集部、7月11日号)

香港で民主派が大規模なデモ――「普通選挙」めぐり対立激化

返還から17年の7月1日、香港ではデモに参加した多くの市民がビクトリア公園を埋めた。(撮影/楢橋里彩)

返還から17年の7月1日、香港ではデモに参加した多くの市民がビクトリア公園を埋めた。(撮影/楢橋里彩)

「2017年には真の普通選挙を! 民主化を!」――主催者発表51万人(警察発表9万8600人)の大規模なデモが、英国から返還されて17周年となる7月1日、香港で繰り広げられた。最大のビジネス街である中環(セントラル)地区では500人超が当局に拘束され、4日には5人が逮捕される事態に。

摂氏30度を超える猛暑の中、ビクトリア公園には民主派とつながりのある団体を中心に多くの市民が結集。「将来、香港が完全に中国化し自由がなくなるのでは」と不安を口にする若者が多かった。

1997年の返還後も「50年間は社会制度を変更しない」とする「一国二制度」を敷いている香港だが、中国政府が6月10日に発表した初めての『一国二制度白書』では香港への管轄統治権を強める姿勢を示した。また、香港のトップを決める17年の行政長官選挙でも、民主派が「立候補の自由」を求めているのに対し、中国は従来通りの「候補者の事前審査」(つまりは、反中国派の立候補の排除)が必要だとしている。

こうした「白書」の内容が「反中」感情をより高める要因になっており、参加者も過去10年で最多に膨らんだ。中国の経済的、政治的な影響力が広がる中、香港では「自由と民主」「香港人というアイデンティティ」を守る動きがいっそう強まっているようだ。

一方、特別行政区政府側は「民主派の望む選挙制度改革は受け入れられない」との姿勢を変えていないが、選挙制度については「中央政府との間で改革案をまとめていく」とする。これに対し、民主派の大学生らは17年の選挙で立候補の制限をやめない限り、「セントラル地区を占拠する」と警告しており、年内にもまとめられるとされる選挙制度改革案をめぐり、対立はより深まる可能性がある。

(楢橋里彩・香港在住ジャーナリスト、7月11日号)

沖縄防衛局が「辺野古工事に着手」――民意無視の強行に地元は猛反発

名護市辺野古では6月28日、新基地建設に反対する海上デモと抗議集会が行なわれた。(撮影/本誌取材班)

名護市辺野古では6月28日、新基地建設に反対する海上デモと抗議集会が行なわれた。(撮影/本誌取材班)

沖縄は6月30日、1959年に米軍嘉手納基地を飛び立ったジェット戦闘機が石川市(現うるま市)の宮森小学校に墜落した事故から55年の節目を迎えた。宮森小では犠牲者18人を追悼する集会と慰霊祭が開かれるなど、その悲惨さを語り継ぐ営みが続いている。

だが同日、沖縄防衛局は米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に伴い、県環境影響評価条例に基づく工事着手届出書を県に提出。当局はこれを受けて7月1日、名護市辺野古米軍キャンプ・シュワブ内の飛行場建設予定地にある既存の兵舎や倉庫などの解体工事に着手した。これまで施工区域の水域生物調査や設計業務などを進めてきたが、工事業務の着手は今回が初めて。昨年12月に仲井眞弘多県知事が埋め立てを承認したことで、新基地建設事業が本格的に動き出した(工事完了予定2019年10月31日)。埋め立て工事に伴う護岸建設については別途、着工届出書を県に提出するという。

当局が一連の手続きを進めることで、名護市辺野古のキャンプ・シュワブ内で普天間飛行場代替施設建設事業の工事が加速すると見られるが、名護市民の民意を踏みにじり工事を強行する政府の姿勢に、県民の反発は強まっている。

政府は7月1日、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設をめぐり閣議決定を行ない、翌2日、キャンプ・シュワブ沿岸域の立ち入り禁止水域の拡大を官報に告示した。告示された水域の変更は日米地位協定に基づく「臨時制限区域」の設置と、漁船操業制限法で常時漁船の操業を禁止する第1種区域の拡大の二つ。防衛省は今月中旬にも現場海域で進入を規制するためのブイ設置作業に着手する方針だ。

過去に同調査が移設に反対する市民の抗議行動で中止された経緯を踏まえ、政府は今回、立ち入り制限水域内での抗議行動を「海上犯罪」として認定し、徹底的な取り締まりを行なうよう海上保安庁に指示している。

新基地建設に反対する稲嶺進名護市長は7月2日の定例記者会見で、政府が埋め立て工事のために辺野古沖で立ち入りを常時禁止する水域を拡大したことについて「正当性を欠く」と一刀両断。キャンプ・シュワブ内で実施されてきた兵舎立て替え工事についても、「名護市側へは詳細な説明がなかった。知事の埋め立て承認後、新基地建設が進展していることをアピールしている」と批判した。今後、法令や条例に基づき「肝心なところで止める運動を展開する」と決意を語っている。

名護市では今年9月7日に投開票される市議会議員選挙に向けて、稲嶺市長を支持する与党側と新基地建設を推進する野党側が、過半数獲得をめぐる支持拡大の神経戦に入った。その結果は今年11月16日に投開票の県知事選挙にも大きな影響を与えると見られている。

【「市民弾圧」抗議の声】

米軍普天間飛行場の代替基地建設に伴うボーリング調査を前に、移設反対派の運動拠点となっている辺野古テント小屋では6月28日、新基地建設予定地とされる名護市辺野古の海で、ボーリング調査と新基地建設反対の海上デモと抗議集会が開かれた。主催者(ヘリ基地反対協議会)発表で県内外から約300人が参加。海上デモには県選出の国会議員や県議会議員と市民約60人が4隻の船と20隻のカヌーに乗りこみ、基地建設に反対を訴えてシュプレヒコールを繰り返した。

集会では、米軍提供水域として「公有水面」で漁業者の立ち入りを制限するのは不当であり、「県民の正当な抗議行動を取り締まるために恣意的に拡大することは、日米地位協定の5・15メモにも反する基地の拡大であり、言語道断」との決議文が読み上げられた。

主催した安次富浩共同代表は「政府の制限水域の拡大に法的根拠はなく、われわれの市民運動を弾圧するのが目的だ」と語気を強め、新基地建設に反対する市民・県民の当然の権利である抗議行動を徹底排除しようとする政府の動きに対して、危機感を募らせた。

(本誌取材班、7月11日号)

 

フリージャーナリストらが訴訟――「秘密保護法は違憲」

フリージャーナリストら総勢43人が国を相手取り、特定秘密保護法の違憲確認と施行差し止めを求める裁判の第一回口頭弁論が6月26日、東京地裁で開かれた。

憲法が保障する基本的人権のうち、特定秘密保護法により報道・取材の自由や国民の「知る権利」、学問の自由などが広範囲に侵害されるなどとして提訴したもの。第一回弁論では於保清見、丸田潔、安田浩一、寺澤有の4氏が原告団を代表し、それぞれの取材経験を踏まえて意見を陳述した。

警察など公務員の不祥事を長年追及する寺澤氏は、日本の役所が記者クラブ加盟社の記者に便宜を図る一方、フリーランスを差別している具体例を列挙。こうした現状と照らし合わせても、「出版又は報道の業務に従事する者」による「専ら公益を図る目的」での取材は処罰対象としないとする条文(特定秘密保護法第21条2項)に「フリーランスも含まれる」とした岡田広内閣府副大臣の見解は、「とうてい信じられ」ず、フリーランスの取材・表現活動は壊滅的な打撃を受けると主張した。

不当な差別や排外主義をテーマにした著作で知られる安田氏は、特定秘密を取り扱う公務員や民間業者を対象に実施される適性評価制度に言及。本人のみならず家族や配偶者、その親族のプライバシーまでも調査対象とする同制度が、「社会全体に差別と偏見、さらには分断を持ち込む」と批判した。

また原告は、安倍晋三首相、森まさこ特定秘密保護法担当相、谷垣禎一法務相、北村滋内閣情報官、渡邉恒雄・情報保全諮問会議座長(読売新聞グループ本社会長)の5人に対しても、法の立案などに関わった当事者であることから証人としての出廷を請求している。

52席しかない傍聴席を求めて、約70人の傍聴希望者が集まり抽選になったこの裁判。第二回口頭弁論は9月17日、同じく東京地裁で行なわれる。

(古川琢也・ルポライター〈原告〉、7月4日号)