週刊金曜日公式ブログ 週刊金曜日ニュース

原発事故の真相解明に高まる期待――「吉田調書」の開示を政府へ請求

「吉田調書」などの情報公開を請求したと報告する脱原発訴訟の原告団代表ら。(撮影/小石勝朗)

「吉田調書」などの情報公開を請求したと報告する脱原発訴訟の原告団代表ら。(撮影/小石勝朗)

「原発事故の原因究明と対策に不可欠な文書。公有財産です」

多くの脱原発訴訟や活動に携わる海渡雄一弁護士は6月5日、政府に情報公開請求をした後の会見で「吉田調書」をこう評価した。

東京電力福島第一原発で事故が起きた当時の吉田昌郎所長(故人)を、政府の事故調査・検証委員会(以下、政府事故調)が聴取した非公開の記録で、『朝日新聞』が5月20日、この調書を「入手した」と報じて反響を呼んだ。吉田氏への聴取は2011年7月~11月に13回、計28時間に及び、A4判で400ページを超すという。

情報公開請求をしたのは、東電株主代表訴訟、原発メーカー訴訟、泊原発(北海道)や東海第二原発(茨城県)の運転差し止め訴訟の原告団と福島原発告訴団の代表ら計9人で、海渡氏らが代理人を務める。吉田調書をはじめ政府事故調が聴取した計772人分の記録も開示するよう求めている。

請求理由で「原発事故の際に何が起こっていたのかを正確に知ることは、事故の刑事・民事責任を明らかにし、全国の原発の再稼働の適否について考える上での前提。政府事故調の記録は、そのための極めて重要な一次資料」とし、「社会に還元すべき」と強調している。

政府は、吉田氏が「調書を公表されることは望まない」との上申書を出していたと説明する。ただし、これは政府事故調から調書の提供を受けた国会事故調による第三者への公開を望まないとしたもので、「政府の情報公開のルールに則って開示することを拒否する意思は含まれていないとみるべきだ」と、海渡氏らは主張する。

政府事故調は12年7月に最終報告書を発表しているが、それでも調書原本の開示を求める意義を会見で問われ、海渡氏は「報告書を下書きした官僚が筆を丸めたためか、原本と報告書には微妙な違いがあるようだ。原本を精査すれば、事故原因が別の角度から見えてくる可能性がある」と指摘した。

東電の個人株主が現・元取締役27人に対し5兆5045億円を会社へ賠償するよう求めた東電株主代表訴訟では、会議録や稟議書など、社内の関連書類を見られないことが原告側のネックになっている。事故直後に福島第一原発と本店を結んだテレビ会議の録画・録音も、裁判所が保管することで東電と合意したが、内容は未開示のままだ。木村結事務局長は「真実を知りたいのは福島の、全国民の願い。(東電と)同じ土俵に乗るには生の情報が必要です」と語る。

福島原発告訴団は、東電や政府の幹部らを業務上過失致死傷などの容疑で検察に告訴した。が、検察は東電本店の家宅捜索をしないまま、昨年9月にこれを不起訴とした。武藤類子団長は「事故の責任を知るためにも調書を明らかにしてほしい。それが被害者の救済や再発防止につながる」と訴える。

今回の請求に対する政府の決定は30日以内に出る。少なくとも吉田調書については、不開示になればただちに公開を求める行政訴訟を起こすという。「公表されるまで闘う」と請求者らは力を込める。

【事故検証に新展開か】

吉田調書をめぐる『朝日新聞』の初報は「所長命令に違反 原発撤退」の見出しで、「東日本大震災4日後の11年3月15日朝、第一原発にいた所員の9割にあたる約650人が吉田氏の待機命令に違反し、10キロ南の福島第二原発へ撤退していた」と書いた。

この記事に対して『週刊ポスト』(6月20日号)は「『吉田調書』スクープは従軍慰安婦虚報と同じだ」と見出しをつけ、『FLASH』(6月24日号)は「朝日新聞1面スクープのウソ」とするなど、「誤報」「虚報」を強調して批判している。『朝日新聞』は両誌に抗議文を送り、訂正・謝罪記事の掲載を求める騒ぎになっている。

他方で、本件の報道が触媒となって民主党の細野豪志元首相補佐官らが当時の状況を語り始めており、原発事故の検証に新たな展開のきざしが出ている。吉田調書を入手できていないとみられる他紙の扱いとあわせて、今後のマスコミの動向も注目される。

(小石勝朗・ジャーナリスト、6月20日号)

 

村井嘉浩宮城県知事の“暴走”か――“エセ住民合意”で進む防潮堤

土木計画学研究発表会で発言する防波堤見直し派の阿部正人氏。仙台、6月7日。(撮影/横田一)

土木計画学研究発表会で発言する防波堤見直し派の阿部正人氏。仙台、6月7日。(撮影/横田一)

「首相発言に耳を傾けずに防潮堤建設に邁進する村井知事は、総理大臣を超えるほどの存在なのか?」

こんな疑問の声が、被災地の防潮堤見直し派から上がっている。

5月24日、防潮堤問題に取り組む安倍昭恵さんが発起人代表を務めるシンポジウムが宮城県仙台市内で開かれ、気仙沼市小泉地区の防潮堤計画(事業費230億円、高さ14・7メートル)が問題視された。昭恵さんが「海が見えなくなって若者が出て行く」と訴えると、安倍晋三首相もビデオメッセージで景観や環境、住民合意への配慮を求めた。

しかし村井嘉浩宮城県知事は5月26日の会見で「計画どおり造る」と見直しを拒否、6月6日に開かれた同地区の防潮堤に関する「検討会」(座長は東北大学災害科学国際研究所今村文彦所長)でも、「平成25年11月27日の説明会において合意」と資料に明記し、「現行案固執」の姿勢を打ち出した。検討会参加者はこう話す。

「小泉地区は高台移転をするため、防潮堤が守る背後地はほとんどが農地です。ある研究者が『費用対効果が低い(0・2程度)』と指摘する場面が『NHKスペシャル』(5月30日放送)で流れましたが、今村氏は、座長の立場上、問題にせず、代替案と比較する議論もなかった。100年程度に1回の『L1津波』と1000年程度に1回の『L2津波』をすり替えて代替案を切り捨てる県の説明に対しても、有識者は現行案前提の意見しか出せなかった」

見直し派の代替案は、少し陸側に盛土をして建設される「国道45号線」と高速道路「三陸自動車道」に防潮堤の機能を兼用させるもの。海岸の防潮堤は建設しない。地元見直し派の阿部正人氏は「道路の盛土強化で防潮堤ができてしまうので、工事費が削減されて工期も短縮、海岸の景観や環境破壊も回避可能」と説明。「推進派は『見直すと復興が遅れる』と言うが、代替案なら完成時期も早く、確実に復興が進みます」(阿部氏)。

先の「NHKスペシャル」では、阿部氏が手を上げても発言を許されないまま説明会が終了する映像が流れた。それでも村井知事は、代替案を排除した “エセ住民合意”を根拠に防潮堤建設に邁進中だ。

【異論は排除か】

仙台市内の東北工業大学で6月7日に開かれた土木計画学研究発表会で、「巨大防潮堤は人々を守れるか――国土強靱化の意義とは」と銘打つセッションがあった。

「国土強靱化」を提唱した内閣官房参与の藤井聡氏(京都大学大学院教授)が登壇し、「国土強靱化は、災害に強い復元力をもつ国民を作ることが核心」と強調。谷下雅義氏(中央大学教授)は「地元の若手や女性が意見を言いにくい」「地域の長老は異論を排除。それで『行政にお任せ』『事業を早く進めて復興・復旧からの解放』が優先される」などと現状を憂えた。

「村井知事の暴走を国としてどう止めるのか」との私の質問に対して、藤井氏は「国土強靱化で、まずやることは脆弱性の評価」と切り出し、「思考停止のまま思い込みでやってしまうと予算も無駄になる」と指摘。各地域の実情に合わせて計画を立てなければ「かえって被災者を増やすことになってしまう」と懸念を示し、それでは「国土強靱化の理念から大きく乖離」することになると語った。

さらに、「脆弱性評価は、危険性を相互に見合って理解することが出発点。そういうこと(十分な議論なしの思考停止状態)で突き進むことがないようにして下さいというのが(国土強靱化の)ガイドラインです」と強調した。

セッションに参加した先述の阿部氏が「(被災地で意見を出し合う)理想の場を作られているところが一体あるのか。その場を作るために国が何か努力をされているのか」と訊ねると、藤井氏は「内閣官房が行政に考え方を伝えている」と回答。だが、「それがまだ浸透していないのですね」と司会の林良嗣氏(名古屋大学大学院教授)がセッションをまとめた。

村井知事“暴走”を安倍政権が是正するのか、注目される。

(横田一・ジャーナリスト、6月13日号)

 

核のゴミ押しつける「中間貯蔵施設」計画――説明会で地元住民が反発

いわき市(福島県)で6月1日に開かれた住民説明会の様子。(撮影/藍原寛子)

いわき市(福島県)で6月1日に開かれた住民説明会の様子。(撮影/藍原寛子)

「国は住民を馬鹿にしている。地元住民を無視した形で国が中間貯蔵施設の建設を一方的に決めるなら、何のための説明会か」

福島県大熊町からいわき市に避難している猪狩松一さん(67歳)は憤懣やるかたない様子で語った。

猪狩さんは6月1日にいわき市文化センターで、「中間貯蔵施設」建設計画の説明会に参加。同県双葉・大熊両町の福島第一原発(東京電力)周辺に除染などの廃棄物を貯蔵する施設だが、説明会は時間も短く、住民の疑問にこたえていなかった。県内外で同様の説明会が開催されているが、会場では不満の声が爆発する。

計画では総面積を16平方キロメートルと設定。減容化(焼却)、貯蔵などの施設が整備され、最大で約2200万立方メートル(東京ドームの18倍ほど)の汚染土壌や焼却灰が約30年間貯蔵されるという。国側は、あくまでも「中間」貯蔵施設であり、「30年以内には福島県外で最終処分する」としているが、その最終処分場がどこになるのかは未定だ。「最終処分場を決めてから中間貯蔵施設に着手すべき」「トイレなきマンション化」「なし崩しの最終処分場化」を危惧する声が住民から上がる。

国側の代償は用地買収による「損失補償」で、買収価格は「個別に評価・算定する」という。これについては「地権者とそうでない人と、地域を二分する」「住民の意見が反映されないなら計画を白紙に戻すべき」といった意見がある。町や町議会は態度を明らかにしておらず、住民の心は揺れる。

計画では「施設への廃棄物搬入は来年1月開始」とされており、稼働は間近だ。福島では除染を求める「中通り」とその廃棄物を引き受ける「浜通り・原発立地町」の県民で、利害対立する恐れもある。環境省は「施設がないと福島県全体の除染、復興が進まない」の一点張りだが、住民不在のままの「復興」路線には懸念が高まる。

(藍原寛子・ジャーナリスト、6月13日号)

 

家族のいる大多数の自衛官も反対――集団的自衛権の行使を許すな

後遺症の痛みで一日の大半を横になって過ごす池田頼将さん。(撮影/たどころあきはる)

後遺症の痛みで一日の大半を横になって過ごす池田頼将さん。(撮影/たどころあきはる)

安倍首相が解釈改憲で「戦争する国づくり」へと暴走する中、自衛隊関係者の間でも「集団的自衛権の容認反対」の声が高まっている。かつてイラク戦争への自衛隊派兵推進の実務責任者だった元内閣官房副長官補の柳澤協二氏をはじめ、現地での事故、ストレスなどで心身に後遺症が残る元自衛隊員には、とくにその思いが強い。

「家族持ち隊員の8、9割は海外での戦争に反対」と話すのは、元航空自衛官の池田頼将さん(42歳)。2012年9月、池田さんは国(防衛省)を相手取り、国家賠償請求の訴訟を名古屋地裁に起こした。

米軍主導のイラク戦争(03年)で日本政府は海外への派兵を進め、航空自衛隊は物資空輸を担った。空自小牧通信隊(愛知県)に所属していた池田さんは06年4月、クウェートへ赴任。しかし同年7月、米軍車両に基地内で跳ねられ、顎や上半身に大怪我を負った。

現地で適切な治療をされず早期帰国も許されなかったため、現在も後遺症を患っている。口はほぼ開かず、右手には神経系の震えがあり、流動食(栄養剤)を強いられるなど重篤な症状だ。

原告代理人の川口創弁護士は、「当時、政府は密かに武装米兵らのバグダッドへの輸送計画を進めていた時期であり、対米支援のための事故隠しは否定できない」として、「池田さんは軍事的な意図による犠牲者」と話す。

本件では防衛省側が公務災害の認定を渋り、診断書に治癒と書くよう医師に圧力をかけたほか、池田さんに無理な配転やパワハラで退職を強要した手口が判明。身体障害者手帳取得の際は中度の4級としたことも裁判の争点とされる。

集団的自衛権の行方を示す訴訟の期日は6月20日と8月29日となっているが、「自分のような犠牲者が二度と出ないよう、集団的自衛権の行使は絶対に許さない」と、池田さんは怒りを滲ませる。

(たどころあきはる・ジャーナリスト、6月13日号)

 

「オール沖縄の象徴」翁長那覇市長へ自民新風会が出馬要請――沖縄県知事選へ向け動き加速

那覇市議会6月定例会で答弁する翁長雄志那覇市長。6月6日午前。(撮影/本誌取材班)

那覇市議会6月定例会で答弁する翁長雄志那覇市長。6月6日午前。(撮影/本誌取材班)

沖縄県那覇市議会の与党最大会派自民党新風会11人(金城徹会長)は6月5日、那覇市役所で翁長雄志市長(63歳)と面談し、今年11月に投開票(予定)の沖縄県知事選への出馬を正式に要請した。公の場で出馬要請が行なわれたのは今回が初めて。

金城会長は「県民の信頼を広く集め、県民の心を結集し、県民の負託に応え得る最適の候補者として、ぶれない政治家翁長那覇市長を決定した」と要請書を読み上げ、翁長市長に手渡した。

要請後、翁長市長は記者団に対する明確な回答を避けたものの、「那覇市の街づくりと同時に『沖縄建白書』のような県全体の枠組みづくりもやってきた」と述べ、基地問題の解決に向け“オール沖縄”の維持に強い意気込みを表明。要請自体については検討する旨を示し、知事選出馬の可能性に含みを持たせた。

さらに翌日(6日)の那覇市議会定例会の代表質問で、金城会長は翁長市長の基本姿勢について「辺野古移設を認めることは、新たな基地の建設に自ら加担することになる。これから後の世代に大きな禍根を残すことになる」と質問。これに対して翁長市長は、「地元の理解の得られない移設案を実現することは事実上不可能」と答弁した上で、「基地問題で県民の心を一つにできる政治体制の実現。これが私の政治の原点だ」と述べた。

翁長市長が正式に出馬表明した場合、自民党県連は事実上、分裂した状態で県知事選挙を戦うことになる。

この事態を避けるため、県連側は「党の方針に相反する」として、同党所属の那覇市議17人に要請中止か、要請行動への不参加を事前に求めていた。だが、結果として出馬要請は行なわれた。

翁長市長に近い関係者は、「前向きに検討している。そのためにも公明党の協力が絶対に必要で、諸懸案事項をクリアできれば正式に出馬を表明する」という。さらに周辺では経済界も抱き込む形で支援の取り付けが進んでいる。

県内ホテル大手「かりゆしグループ」CEO(最高経営責任者)の平良朝敬氏、建設・小売業大手「金秀グループ」会長の呉屋守将氏らは「オナガ雄志知事を実現する同志会」を設立、6月12日に会合を開き、翁長市長への要請を正式に決定する方針だ。

連携した強力な「仲井眞県知事包囲網」ができあがる。

【「オール沖縄」再生か】

一方、名護市では「米軍普天間飛行場移設問題に係る訪米報告会」(主催・沖縄県名護市)が6月4日、同市民会館で開催された。この報告会には主催者発表で約850人が参加。同行した玉城デニー衆院議員(生活の党)も出席し、訪米の成果をアピールした。

稲嶺進名護市長は、5月15日から24日の訪米スケジュールの全日程を、パワーポイントを駆使して市民に分かりやすく紹介。

具体的にはコロンビア大学などでのトークイベントが4件、上・下両院議員との面談12件(うち本人対応4件、補佐官対応8件)、政府機関要請4件、シンクタンク・有識者面談が16件、さらに国内外のメディア取材が13件あったという。

稲嶺市長は面会先で、仲井眞弘多知事の辺野古埋め立て承認について「公約違反により県民に失望感を与え、内外に誤ったメッセージを送った」と強調、問題が解決していないことをくり返し訴えたと述べた。さらに民主党のジム・ウェッブ元上院議員が「新基地建設に否定的な意見を聞くことができた」と発言したことも紹介した。

訪米報告会の後、稲嶺市長は記者団に対し、沖縄県知事選で新基地建設を白紙に戻すため、「保守革新の垣根を超えて戦える人を擁立しないといけない」と述べた。

「オール沖縄の象徴」とされる翁長市長が正式に立候補を表明すれば、辺野古への新基地建設は困難を極めることになる。政府与党はその現実を、真正面から受け止めなくてはならない。

(本誌取材班、6月13日号)

 

東京・葛飾の運転手が提訴――固定残業手当は無効

ブラック企業の手口として広がる「固定残業手当」を無効とする訴訟が起こされた。東京都葛飾区の運送会社、多摩ミルクグループ傘下の(株)エイチ・ビー・エス(小島抄智代代表取締役)を相手取り、同社で働く佐々木義幸さん(42歳)ら3人が6月5日、「固定時間外手当と称して何時間働いても定額の残業代しか支払わないのは違法」とし、同手当の無効と未払い残業代など約4000万円の支払いを求め、東京地裁に提訴した。

訴状などによると、佐々木さんらはビールなどを配達するドライバー業務に従事しているが、3人とも過労死レベル(月80時間の残業)を超える長時間労働が常態化。佐々木さんの場合、最も多い月には206時間超の残業も。にもかかわらず、同社の給与「月30万円」は「基本給15万円プラス固定時間外手当15万円」と決められ、何時間働いても「月15万円」の残業代しか支払われていない。この15万円が何時間分の残業代に当たるのかや深夜割増賃金が含まれているかどうかも不明だという。

佐々木さんらが加盟する全国一般東京東部労働組合多摩ミルク支部(斉藤達男執行委員長、約80人)が所管の向島労働基準監督署に訴えたところ、同監督署は4月7日付で同社に対しこれら長時間労働や残業代不払いなどの是正を勧告したが、同社は従う意思を示していないという。

提訴後、厚生労働省記者クラブで会見した東京東部労組の須田光照書記長は「固定残業手当問題は労働相談でも増えている。それを指南する悪徳弁護士や社会保険労務士がいる」とした。原告代理人の吉田健弁護士も「最低賃金を下回る基本給と固定時間外手当が同額というのは異常で、勧告に従わないのも悪質。ここまでひどい固定時間外手当制度は法律上無効だ」と述べ、「こんな状況で(安倍政権が導入をめざす)『残業代ゼロ制度』などとんでもない」と指摘した。

(片岡伸行・編集部、6月13日号)

サメのヒレだけ切って捨てるフィニング――英系企業が残酷な漁法に反対

フカヒレとして食すヒレ部分だけを切り取られ、海洋に投棄されたサメ。(C)SHARK SAVERS

フカヒレとして食すヒレ部分だけを切り取られ、海洋に投棄されたサメ。(C)SHARK SAVERS

高級食材フカヒレとなるサメのヒレだけを切り取り、胴体は海に捨てる残酷な漁法「フィニング」。これに対し、英国のハンドメイドコスメ「LUSH」を販売するラッシュジャパン(本社・神奈川県)が、「残酷なフィニング反対キャンペーン」を展開している。

フィニングはなぜ起きるのか。海洋生態系に詳しい環境保護NGOグリーンピース・ジャパンの花岡和佳男さんはこう話す。「フィニングは、マグロはえ縄漁を主とする遠洋漁業で横行してきました。なるべく船の冷凍庫をマグロでいっぱいにしたいので、サメがかかると、ヒレだけ切ってあまりお金にならない胴体を捨てるんです」。

現在も、インドネシアや台湾、中国などではフィニングが行なわれているという。一方、日本や米国の一部の州、EUなど99カ国ではフィニングが禁止されている。日本では、米国ホテル大手のヒルトンが、ヒルトン東京(東京・新宿)をはじめ日本の系列10ホテルで、4月からフカヒレの提供をやめる動きもあった。フカヒレ目当てのサメ乱獲を防ぐ目的だ。

サメについての情報サイト「ノーフィニング実行委員会」によると、世界には約500種類のサメが生息する。一般的に成魚になる期間や、妊娠期間が長いのが特徴。卵も少なく、1~2年おきにのみ繁殖する種もいるため、サメは乱獲に弱いという。IUCN(国際自然保護連合)の発表では、世界のサメの約3割は絶滅危惧種または準絶滅危惧種に分類される。

ラッシュは、「日本国内ではフィニングが禁止されていますが、消費者として世界でフィニングが行なわれている事実を知ってほしい。フカヒレを前にしたとき、それがフィニングされたものであるか確認したりしてほしい」とした。

日本では宮城県気仙沼市がサメの水揚げ量トップだが、身も肉もすべて使い、持続可能な漁業を念頭に置いたサメ漁を行なっている。

(渡部睦美・編集部、6月6日号)

規制委に「原子力ムラ」重鎮――原発再稼働の布石

原子力規制委員会の島崎邦彦委員長代理と大島健三委員が9月に任期満了を迎えるにあたり、政府は5月27日、二人を交代させる人事案を国会に提示した。原発直下の活断層を厳しく指摘してきたことで自民党など政財界の原発推進派から批判されていた島崎氏の再任はなくなった。

安倍政権が示した人事案は、田中知東京大学大学院教授と石渡明東北大学教授の二人。田中氏は元日本原子力学会会長で、東京大学「原子力教育研究イニシアチブ」の拠点リーダーをつとめるなど、推進派の重鎮であった。

超党派の議員連盟「原発ゼロの会」は30日、田中氏の起用は「原子力ムラとの決別」をうたった原子力規制委員会設置法の趣旨に反するという談話を発表。2012年に民主党政権が規制委を発足させた際にさだめた人選基準に抵触するとした。この基準は、就任前直近3年間に「原子力事業者等及びその団体の役員、従業者等であった者」または「個人として、一定額以上の報酬等を受領していた者」を欠格要件としている。

田中氏は11年~12年、日本原子力産業協会の役員をつとめ、東電記念財団から11年度に50万円以上の報酬を得ていた。日立GEニュークリア・エナジー、太平洋コンサルタントなどから100万円以上の寄付も受けている(11年度)。

井上信治環境副大臣は28日の参議院原子力問題特別委員会で、民主党政権時代の基準を適用せずに人選したことを明らかにした。「ゼロの会」は田中氏の人事案の撤回と再検討をもとめているが、政府はおし通すかまえだ。

30日には九州電力・川内原発の稼働停止を求める訴訟の原告の一部が、稼働差し止めを九電に求める仮処分を鹿児島地裁に申し立てた。規制委は同原発の審査を全国でもっとも早く進めており、田中氏の規制委就任は、再稼働への大きな布石となる。

(野中大樹・編集部、6月6日号)

『週刊金曜日』を批判する天木直人氏への反論

外交評論家、天木直人氏の「集団的自衛権行使容認で血迷った週刊金曜日」と題する記事が2014年6月18日9時5分、ヤフーニュースに掲載された。小誌記事の部分引用で誤った印象を読者に与える内容である。天木氏こそ“血迷って”いるのではないか。

小誌は一貫して集団的自衛権に反対しており、天木氏が批判する6月13日号の特集タイトルは「集団的自衛権の詭弁」。天木氏が問題視する岡田克也氏の取材記事もこの特集に含まれ、当該記事にはこの見出し「集団的自衛権の詭弁」も刷り込まれている。

天木氏は記事でこう書く。少し長いが正確に引用する。
〈憲法9条を守ることを最大の売りにしてきたはずの週刊金曜日が、この一番重要な局面で血迷った。
発売中の6月13日号に、宮崎信行という元日経新聞政治部記者の岡田克也民主党元外相へのインタビュー記事が掲載されている。
そこで岡田克也は堂々と次のように語っている。
「私の基本的考え方は、集団的自衛権として整理されている事例をすべて頭から排除するものでは必ずしもないんです」と。
「個別的自衛権、警察権で対応できなければ、憲法改正も含めて認めるというのが私のスタンスです」と。
こう、岡田氏に言わせるだけ言わせておいて、宮崎氏は次のようにそのインタビュー記事をしめくくっている。
「野党一の安全保障の論客として、総選挙に向けて、集団的自衛権の国会審議では中心に居続けそうだ」と。〉
(注)この小誌引用には2カ所ほど細かなミスがあるが、ここではおいておく。

岡田氏は確かに取材に対して〈具体的な事例で検証していく中で、個別的自衛権、警察権で対応できなければ、憲法改正も含めて認めるというのが私のスタンスです。〉と述べている。

しかし、この文言に続けて岡田氏はこう述べる。〈ただ、現時点で具体的なものは思い浮かばないです。おそらくあるとしても非常に限定されたものだと思いますが、議論をやってみないと分からないです。〉と続けている。岡田氏の主張の眼目が、議論をしてもよいが必要な事例は思いつかない、という点にあるのは明らかだ。

議論をすることで、安倍晋三首相が唱える集団的自衛権のおかしさが浮き彫りにもなろう。記事はこのあとこう続く。

〈「憲法解釈の見直し」については、自民党内で、今国会の会期中に閣議決定すべきだとの日程感が出ている、これについて、岡田氏は「法解釈の変更の閣議決定を今の会期中にするというのは論外です」とピシャリ。「国会で濃密な議論をやって、国民がこの問題の本質を理解すると。半分以上の国民がやむを得ない、というところまで持っていってから閣議決定すべきです。国民を置き去りにして一内閣が決めることはあってはならない」と国会審議を求めた。〉

残念ながらいまの国会情勢では憲法9条を守るのに、共産党・社民党など護憲政党だけでは困難なことは論をまたない。その場合、民主党で影響力をもつ最高顧問の一人がどのような考え方を持っているのかについて情報を読者に提供するのも小誌の役割だと、私は考えている。

小誌に登場する人物がすべて小誌と同一な思想信条をもっていないといけないわけではないし、小誌に登場した人物の主張に小誌がすべて賛同しているわけでもない。そんなことは当たり前ではないか。

そもそもこの記事の眼目は、集団的自衛権の行使容認に安倍首相が猛進している背景に米国の圧力があるとの見方に対し、岡田氏が外相時代の経験を語った部分である。

〈米国から集団的自衛権を行使してほしいと外相時代に言われたことはあるかとの筆者の問いには「外相時代に米国から言われたことは一度もありません。日本がやると言えば、米国はどうぞ、どうぞと言うでしょうが」と語り、米側の要求ではないとの認識を示した。〉

記事のタイトルもリードも、この部分を強調している。岡田氏が言うとおり、米側の圧力でなければ安倍首相の異様さがさらに浮き彫りになるではないか。

天木氏は記事でこう批判する。
〈笑わせるではないか。
大変な持ち上げようである。
こんな自民党の改憲論者と同じような事を言うやつを、このタイミングで登場させる週刊金曜日は血迷ったか。
いまこそ憲法9条を守らねばならないと願う者たちへの、驚くべき背信である〉

天木氏は悪意に基づいて小誌を批判しているのか。それとも、当たり前の読解力すら失ってしまったのか。天木氏は小誌になんども登場いただいているだけに、前者であろうが後者であろうが、極めて残念である。

(伊田浩之・『週刊金曜日』副編集長)

学校事故・事件を語る神戸集会――隠蔽体質の改善を!

「全国学校事故・事件を考える会」(代表世話人・内海千春他)の全国集会が5月31日と6月1日の両日、兵庫県神戸市内で開かれた。

「学校事故・事件の事後対応の過去・現在・未来」と題する2日目のシンポジウムでは、第三者委員会の意義が話題に。大津市立皇子山中学のいじめ自殺事件(2012年)で第三者委の委員を務めた渡部吉泰弁護士は、基調講演で「事務局は学校側の組織。校長はあらゆる地域行事に出席しPTAなど学校に都合のよいネットワークを作り、組織防衛のための隠蔽に走る。被害家族は学校から疎外され地域で孤立する」と指摘。「第三者委員会で言う事実という言葉は、責任を問うための裁判上の事実とは異なる。第三者委員会は裁判ではないが、その後の裁判に好影響を与えることもある」とした。

山形県立高畠高校で06年、当時2年生だった渋谷美穂さんは生徒らのいじめを苦に自死。1年後に実名公表した父親の登喜男さんは、「クラスの子のいじめの言葉を学校側は『お嬢さんの勘違い』などと言った。校長はマスコミと接触しないことを求め、県教委は『マスコミに安易な発言をするな』としながら自分たちを正当化する記者会見をした」と、打ち明ける。

兵庫県龍野(現、たつの)市で94年、小学校6年生(当時)の息子が担任の暴力を苦に自死。13年春にようやく市教委に「自殺」と認めさせた教員の内海代表は、「以前は遺書がなければすべて事故にされた」という。「学校はカウンセラーを通じて他の生徒の動揺などを口実に調査させず沈静化を図る」として、「第三者委では『家族にも原因がある』などとする専門家もいるが、家族になり代わり闘う気持ちのある委員にしてほしい」と訴えた。「年間、小中高生が300人も自殺しているがマスコミに取り上げられるのはほんの一部。事実を調査させず隠蔽する根本の流れは変わっていない」(内海代表)。

(粟野仁雄・ジャーナリスト、6月6日号)