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小保方研究に関与する企業の株価が急上昇――STAP細胞騒動に株価操作疑惑

STAP細胞の真偽をめぐる騒動で、理化学研究所の小保方晴子ユニットリーダーの共同執筆者である大和雅之・東京女子医科大学教授の上司が取締役を務めるベンチャー企業の株価が、英科学誌『ネイチャー』電子版がその存在をトップ記事で載せたあと、急上昇していたことがわかった。株価は、STAP細胞への疑義が浮上した後は徐々に下降している。ある関係筋は「STAP細胞の記事を出すことで株価をつりあげ、その後、売り抜けたのではないか」と指摘している。

STAP細胞が『ネイチャー』に掲載されたのは1月29日。その後、バイオ系ベンチャー企業の(株)セルシード(長谷川幸雄代表取締役、本社東京)の株価は急上昇し、31日には年初来高値の2400円をつけていた。

注目すべきはSTAP細胞に使われた細胞シートがセルシード社製である点と、その制作者である大和氏の上司、岡野光夫・東京女子医科大学先端生命医科学研究所所長が、セルシード社の社外取締役を務めている点だ。大和氏は今回の論文の共著者であり東京女子医大時代の小保方氏の指導者でもある。本誌が東京女子医大に問いあわせると「本日は休み」(先端生命医科学研究所)、「長期入院」(広報部)と、部署で回答が異なった。行方をくらませているという情報もある。

伏線もあった。2011年、『ネイチャープロトコル』誌にセルシード社の細胞シートに関する論文が載った。執筆者には小保方氏、岡野氏、大和氏が名を連ねている。岡野氏は細胞シートの利害関係者であるにもかかわらず、論文の「COMPETING FINANCIAL INTERESTS」(金銭的利害関係の有無)の欄には「The authors declare no competing financial interests.」(筆者らは競合する経済的利益はないと宣言する)と記していた。

(本誌取材班、4月18日)

原発再稼働、核燃料サイクル維持、新増設も含み――「エネルギー計画」が大転換

国の中長期的なエネルギー政策の指針を示す「エネルギー基本計画」が4月11日、閣議決定された。民主党政権下で掲げられた「原発ゼロ」の方向性と決別し、原発推進路線へと180度転換した。

再稼働のほか核燃料サイクルの推進も明記し、原発の新増設にも含みを持たせるなど、経済界の意向を重視する安倍政権の姿勢が鮮明になっている内容だ。

閣議決定後の記者会見で、茂木敏充経産相は「(基本計画は)原発の依存度を低下していくということを明確に示している」と言い放った。日本世論調査会の世論調査で7割が脱原発を求める回答を示している中、原発推進路線への転換に対して、不安や反発を抱く人や関係自治体は少なくない。そうした意見に、政府はどう説明していくのか。

会見で、記者の質問に対し茂木経産相ははぐらかしに終始した。記者の「原発推進」という言葉には「原発を活用していくと書いてありますか、これ?」と反論。原発依存度を軽減させる具体的な道筋について問うと「読めばわかることは、わざわざ繰り返す必要がない」と、傲慢な態度を崩さなかった。ちなみに、会見の時点で基本計画の全文は経産省から配布されておらず、茂木経産相の「読めばわかる」という答弁は、記者たちを唖然とさせたという。

こうした原発推進への転換という印象を薄めようとする思惑は、政府全体からにじみ出ている。菅義偉官房長官は会見で、基本計画について「原発事故を受けて、被災された方々の心の痛みとしっかりと向き合い、福島の復興再生を全力で成し遂げる」と説明し、政策転換については「震災前に描いてきたエネルギー戦略は白紙に見直す」との言い回しで、原発についての説明は避けた。その上で、再生可能エネルギーの導入を「最大限加速させる」とし、関係閣僚会議を開くなど積極的な取り組みを行なっていることを強調している。だが、この説明を正面から信じるわけにはいかない。

政府が4月3日、自民党と公明党による基本計画の与党協議に示した基本計画の案では、序文に当たる「はじめに」から、2月に決定した政府原案には記載されていた東京電力福島第一原発事故への「深い反省」が削除されていた。これに代わって基本計画の策定経過を説明する内容が加えられていたが、自民党内からも批判が出されて、土壇場で復活するという経緯があった。

政府が強調する太陽光や風力、地熱などの再生可能エネルギーについても、公明党が与党協議で具体的な数値目標を入れるよう強く求めたのに対し、経産省が強く抵抗。最終的には、過去の政府目標値を示した上で、これを「さらに上回る」導入を目指すという、実質的な中身のない玉虫色の表現で決着した。経産省の幹部は「再生可能エネルギーだけ数値目標を出すのは原発を動かしていくことへの足かせになりかねなかった」と話し、抵抗の背景に、再稼働を虎視眈々とねらう意図があったことをうかがわせる。

さらに、懸念されるのが原発新増設の可能性だ。安倍晋三首相は11日の衆院本会議で、新増設に関する質問に「現在のところ想定していない」と答弁し、明確な否定を避けている。基本計画も、原発について安定供給やコスト低減などの観点から「確保していく規模を見極める」とし、新増設への解釈をあいまいにした。一方で、次世代原子炉である高温ガス炉の研究開発を進めるという一文を明記。「研究開発と新増設に関連はない」(資源エネルギー庁)としているが、原発を今後も手放したくないという意図が色濃くにじむ。

政府の方針転換を見据えるかのように、衆議院は4日、トルコやアラブ首長国連邦(UAE)への原発輸出を可能にする原子力協定締結の承認案件を賛成多数で可決した。福島の経験を忘れ去ったかのように、原発推進の路線へばく進する安倍政権。基本計画には、その前のめりさと、ちぐはぐさが凝縮されている。

(北方農夫人・ジャーナリスト、4月18日)

航空業界の規定バラバラ――電動車いす搭乗拒否

航空業界には電動車いすに関する統一規定がないらしい。ある航空会社の航
空機には電動車いすで搭乗でき、別の航空会社では搭乗拒否される。さる3月
27日、関西空港からLCC(格安航空会社)エアアジアXでマレーシアの首都
クアラルンプールに出発しようとした大久保健一さん(38歳)=兵庫県西宮市
在住=はチェックインの際、「マレーシアの規定で荷物は32キロまで」とされ、
搭乗を拒否された。大久保さんの電動車いすの重さは80キロだった。

大久保さんは航空チケットを予約する際、電動車いすの寸法や重さを事前に
知らせてあり、エアアジアXも約2カ月前に了解の上で予約手続きを完了して
いた。「当日になっていきなり重量制限のことを持ち出すのはあまりにひど
い」と大久保さんは憤る。

エアアジアXの運送約款第8条によれば、手荷物は「重量32キロ超」のもの
は預かることができないとされているが、「歩行補助器具には適用されない」
との記述もある。大久保さんが「自分の足」と言う電動車いすは「歩行補助器
具」ではないらしい。また、32キロを超えてはダメということであれば、電動
車いすの使用者はすべて搭乗不可能となる。

大久保さんによると、エアアジアXからはおわびのメールは届いたが、これ
らの疑問にはまったく答えていないという。また、3月末には国土交通省航空
局航空事業課に改善を申し入れたが、同課は「エアアジアXに実態を聞く」と
答えるにとどまったという。

昨年6月に障害者差別解消法が成立(施行は2016年4月)し、日本政府は今
年1月20日に国連障害者権利条約を批准、2月19日からその効力が発生してい
る。今回の搭乗拒否はこの条約の精神および条項に反する可能性がある。

各国の運送約款の壁はあるものの、国土交通省はこうした差別をいつまで放
置するのだろう。

(片岡伸行・編集部、4月11日号)

東京メトロ駅売店の女性たち――メーデーに終日スト

5月1日にストに立ち上がるメトロコマース支部の女性たち。(撮影/須田光照)

5月1日にストに立ち上がるメトロコマース支部の女性たち。(撮影/須田光照)

5月1日のメーデーに、東京メトロ(東京地下鉄)駅売店で働く非正規労働
者の女性販売員たちでつくる全国一般東京東部労組メトロコマース支部は全日
ストライキに入り、東京メトロ本社前での抗議アピール行動に立ち上がる。

東京メトロの子会社メトロコマースに雇用されている販売員は正社員、契約
社員A、契約社員Bの三つの雇用形態に分かれ、同じ仕事をしていても労働条
件で大きな格差がつけられている。同支部の組合員は全員、もっとも劣悪な処
遇の契約社員B。月の手取りは13万円台で貯金する余裕はない。高齢になって
も年金がもらえない、あるいは年金だけでは暮らせない。正社員には支給され
る退職金も、1円も払われない。が、65歳定年制だけが正社員と同じである。

同支部は昨年3月、非正規労働者への定年制に反対して初めてのストライキ
と抗議行動を闘った。その結果、当事者であった組合員・瀬沼京子さんは6カ
月の雇用延長を勝ち取った。

ところが、会社側は6カ月の延長後に雇用継続を一切認めず、昨年11月には
瀬沼さんのクビを切り、今年3月末には同じく組合員の加納一美さんを65歳定
年制に基づき解雇した。正社員の定年制を非正規労働者に適用するのなら、ま
ず正社員と同じ賃金、ボーナス、退職金を支払うべきではないか。東京メトロ
の非正規労働者に対する差別こそが問題の根源にある。

同支部は再びストライキ闘争を決意。この闘いは同支部だけの闘いではなく、
全国の非正規労働者の生活と権利をかけた闘いである。

「皆さんのよってたかってのご支援を」と呼びかけている。

5月1日(木)の抗議アピール行動は午後1時から東京メトロ本社前(東京
都台東区東上野3-19-6・東京メトロ上野駅1番、2番出口すぐ)で。連絡先
は全国一般東京東部労組メトロコマース支部(TEL 03・3604・5983)。

(須田光照・全国一般東京東部労組書記長、4月11日号)

住民の反対無視する江ノ電の「安全理論」――津波避難路を強行工事で閉鎖

強行工事で閉鎖された江ノ電稲村ヶ崎駅付近の線路横断路。(撮影/きゆなはれる)

強行工事で閉鎖された江ノ電稲村ヶ崎駅付近の線路横断路。(撮影/きゆなはれる)

桜満開の3月31日。神奈川県を走る江ノ島電鉄(江ノ電)によって、住民の
生活道路であり、「稲村ケ崎津波避難路」でもある稲村ヶ崎駅(鎌倉市)付近
の線路横断路が、強行工事で閉じられた。

ことの始まりは2月21日。「線路横断箇所」の入り口に突然、「通路閉鎖工
事」を知らせる一枚のお知らせが貼られた。住民が60年にわたって使ってきた
道路だ。

江ノ電は成り立ちが路面電車だったため、線路をまたがないと家に入れない
住民も多くいる。単線で、12分に一本。電車が通ったあとは安全に、人も猫も
渡れる。100年続いた鎌倉の特殊事情だ。

その歴史をかなぐり捨てて、「安全対策」という名目でフェンスを張り巡ら
し「自社の土地だから工事する」というのだ。住民への説明会では「安全理
論」を振りかざし、住民の声は「問答無用」。「工事に入ります」の一点張り
だった。

海側住民からの「1秒が生死を分ける津波時に、山に逃げる一番の近道を、
フェンスで閉ざさないで」との声にも、「住民の非常時の安全より(江ノ電
の)日々の安全」と言って無視した。日常生活が一変する重大事項であること
から、江ノ電の強行工事中止を求める署名は、3週間で300筆を超えた。しか
し、工事は強行された。

長嶋竜弘鎌倉市議会議員は、「私は安全対策工事をすることは否定しません
が、なぜ住民を無視して工事をするのか疑問です。トラブルになる話ではない
のに、江ノ電さん一体どうしたのでしょうか?  今後同様に住民無視で強引
に工事をやれば必ずトラブルになります。そうならないようにするためにも、
今回の件については強く是正を求めます」とブログに綴った。

「地元住民に支えられ100年続いた江ノ電が、今住民を切り捨てた。今後、住
民無視で100年続くのか」と、住民女性は憤る。

今後、まだ164カ所の道路閉鎖が予定されているという。

(きゆなはれる・避難路を守る会、4月11日号)

牛久入管施設で帰室拒否の抗議も――長期収容の外国人2人が死亡

2人が相次いで死亡した茨城県牛久市の入管施設。(撮影/牛久入管収容所問題を考える会)

2人が相次いで死亡した茨城県牛久市の入管施設。(撮影/牛久入管収容所問題を考える会)

法務省管轄の東日本入国管理センター(茨城県牛久市)で3月29日にイラン
人男性(33歳)、翌30日にカメルーン人男性(40歳代)が相次いで死亡した問
題で、牛久入管収容所問題を考える会は4月2日、(1)6カ月以上の長期収
容はやめる(2)外部病院の受診を希望する者には早めに実現すること――な
どを求めた抗議申し入れを法務省などに提出した。

2人は難民申請中で、イラン人は1年以上の長期収容、カメルーン人は成田
で上陸拒否になり牛久に移送され、一歩も日本の地を踏むことなく自由を束縛
されたまま収容6カ月で死亡した。

イラン人G・Sさんは睡眠導入剤、抗うつ剤、痛み止めを大量に処方されて
いた。同室の人の証言によると、当日も30錠もの薬を飲んでおり、意識朦朧状
態で夕食時一気にご飯を飲み込み、のどにつかえさせたという。同施設では収
容者が不眠や不安などを訴えるとすぐに薬を出す対応をしており、1年以上の
長期収容が薬に対する依存を助長させた可能性がある。心身の健康を著しく害
する長期収容はやめ、仮放免を適用すべきだ。

カメルーン人のW・F・Lさんは糖尿病を訴えており、入管施設内医務室脇
の個室から緊急搬送された。2カ月前に外部病院での診察を希望する申請書を
出していたが、27日にはトイレで立ち上がれなくなるほど病状が悪化、同じ収
容棟の人たちが彼を外部の病院に連れて行くよう要求して居室に戻ることを拒
否する抗議行動を起こしていた。警備責任者が「俺が責任もって病院に連れて
行く」と約束したが、鍵のかかる個室で金曜午後5時過ぎから日曜朝まで医師
も看護師もいないまま放っておかれ危篤状態で発見されたという。

30日に被収容者たちは帰室拒否の抗議行動をしたが、うち2人が懲罰房に入
れられた。「人権に配慮した収容」はどこにあるのか。

(田中喜美子・牛久入管収容所問題を考える会、4月11日号)

国際司法裁が調査捕鯨を違法と判決――日本は「勝ちたくなかった」

調査捕鯨船から運び出される加工済の鯨肉=2006年4月15日、金沢港。(C)Greenpeace / Masaya Noda

調査捕鯨船から運び出される加工済の鯨肉=2006年4月15日、金沢港。(C)Greenpeace / Masaya Noda

南極海での日本の「調査捕鯨」は国際条約に違反するとオーストラリアが訴
えていた裁判で、オランダ・ハーグの国際司法裁判所は3月31日、日本の調査
捕鯨は科学的ではなく違法であると判決を下した。これを受けて水産庁は4月
3日、2014年度の南極海での調査捕鯨を中止すると発表した。敗訴の報告を受
けて安倍晋三首相が事務方を叱責したそうだが、実は外交ではマイナス面でし
かない日本の捕鯨をカードに使い、オーストラリアとのEPA(経済連携協
定)を優位にすすめようとしたというところが本音だろう。ただ、かつての代
表的な捕鯨拠点である山口県下関を地盤とする首相としては「叱る」という演
出が必要だったのだ。

さて、多くの人は日本政府がこの裁判に「勝ちたい」と意気込んでいたと思
うだろう。しかし私は実際そうではないと考える。勝訴していれば、困るのは
日本の調査捕鯨事業そのものだからだ。

第一に、国内での鯨肉需要は低迷している。南極海での調査捕鯨の捕獲枠は
合計で約1000頭程度。国の委託を受ける一般財団法人日本鯨類研究所(鯨研)
が南極海の船上でクジラを解体・商品用に箱詰めし、日本に帰港後にそのまま
食肉として販売し、次年の捕鯨の財源にしている。

これが国際的に「商業捕鯨だ」と批判される理由だ。しかし、12年9月末の
段階で在庫は5637トンまで膨れ上がった。年間3000トン前後が国内の鯨肉消費
量とされていることから、在庫が年間消費量の2倍近くまで増えたことがわか
る。この在庫が鯨研の資金繰りを悪化させ、11年9月末、鯨研は8億7000万円
の債務超過に陥った。

第二に、調査捕鯨は税金頼みの事業ですでに破綻している。国際捕鯨委員会
(IWC)は1982年に商業捕鯨のモラトリアム(一時停止)を決議しているが、
そもそも日本の「調査捕鯨」とは名ばかりで、目的は「商業捕鯨の再開」であ
る。しかし前述のとおり鯨肉の国内需要は下がり続け、南極海まで大型船団を
送る莫大な経費が伴う捕鯨は商業的に成り立たなくなった。

鯨研は年間50億円程度の予算で調査捕鯨を行なってきたが、年間7億~10億
円程度の国庫補助金に加え、12年度からは約45億円(鯨類捕獲調査改革推進集
中プロジェクト)の追加補助金を受けることで事業を維持しているという。

つまり、補助金を投入して調査捕鯨を維持していることが、商業捕鯨が再開
不可能であることを証明してしまったのだ。さらに、12年には東日本大震災復
興のために使われるべき23億円もの税金が、鯨研の借金返済に使われていたこ
とをIKAN(イルカ&クジラ・アクション・ネットワーク)やグリーンピー
スが暴露した。会計検査院は13年にその使途が不適切であったと結論付けてい
る。

【クジラ肉の横流しも】

さかのぼって08年、国際環境NGOのグリーンピースは調査捕鯨のクジラ肉
が横流しされているという内部告発を受け、捕鯨船の船員たちが自宅に送って
いたクジラ肉の入った箱を証拠として確保し東京地検に告発したところ、それ
が逆に窃盗だとして逮捕・起訴されてしまった。後に水産庁はこの不正を認め
謝罪したが、仙台高裁は不正を指摘したグリーンピースの職員、筆者ともう一
人に対して青森地裁の懲役1年・執行猶予3年の判決を維持する決定を下した。
国際司法裁判所の判決後は捕鯨の経済性や外交面での問題などが指摘され、世
論が変わったことを実感している。

最後に強調したい点は、調査捕鯨をめぐる一連の議論が政治的なものであっ
て、本来必要な海洋環境とその生態系の著しい変化への対応策が置き去りにさ
れている事実だ。日本政府が科学を重視するのであれば、調査捕鯨を中止し、
国際的な協力のもとでより包括的な海洋生態系調査を南極海で行なうべきだ。
そうすれば、国際的な理解を回復できるだろう。

(佐藤潤一・グリーンピース・ジャパン事務局長、4月11日号)

被処分教職員らが決起集会――不起立処分の撤回を

10分の1の減給1カ月という今回最も重い処分を下された田中聡史さん。(撮影/永尾俊彦)

10分の1の減給1カ月という今回最も重い処分を下された田中聡史さん。(撮影/永尾俊彦)

「『日の丸・君が代』不当処分撤回を求める被処分者の会」などは3月31日、東京都内で「卒業式処分発令抗議・該当者支援総決起集会」を開いた。今年の卒業式の君が代斉唱時に起立しなかった4人の教職員に、東京都教育委員会は3月27日、職務命令に違反したとし、3人に戒告、1人に10分の1の減給1カ月の懲戒処分を決定した。

 卒業式や入学式などで「国旗に向かって起立し、国歌を斉唱する」ことを職務命令で強制する、2003年に発令された「10・23通達」以来、処分された教師は延べ461人になったことが、集会では報告された。

 今年の卒業式に関して開かれた校長連絡会で、都教委が管理職止まりの文書を配布して、「同僚に不起立を働きかけている教師がいるか」「答辞・送辞は管理職が事前に確認すること」などを細かく記録し、報告するよう指示していたことが明らかにされた。

 また、国歌斉唱の際に起立したが気分が悪かったので前かがみになった教師を副校長が都教委に「服務事故」と報告、事情聴取されるなど締め付けは増々エスカレートしている実態が報告された。

 このような状況に対し、今回の被処分者の中では最も重い10分の1の減給1カ月を受けた田中聡史さん(板橋特別支援学校)は、卒業式で副校長に3回起立を命じられたが「思想・良心の自由に基づいて」拒否、6回目の不起立に至った経緯などを語った。

 また、今回の戒告処分を受けた教師は、「もはや歴史的問題。最後は歴史が裁くだろう」と述べた。

 さらに、これまでに戒告処分を2回受けた女性教師は、10・23通達発令時の最高責任者である石原慎太郎元知事が、雑誌『文學界』3月号のインタビューで、「僕、国歌歌わないもん」と発言していることに対して「私たちの苦しみは何だったのか。馬鹿にするな」と怒りをあらわにした。

(永尾俊彦・ルポライター、4月4日号)

【谷村智康の経済私考】“善意”を装った情報収集・解析アプリの実態――広告はプライバシーにどこまで踏み込むのか

 筆者はマイコン少年のなれの果てなので、パソコンやインターネットには少々詳しい。そのため知人などに買い替えやメンテナンスを請け負うことがある。先日は「漢字変換がおかしい。単語登録してあったはずの言葉が出てこない」というので、早速見にいった。

 確かに変換効率は悪いし、登録してあった単語が変換されない。調べてみると「バイドゥ(百度)」という中国製のかな漢字変換システムがいつのまにかインストールされていた。常識的なウイルス対策はしてあったが、「バイドゥ」はいわゆるコンピュータウイルスではなくアプリケーション。ウイルス対策をすり抜けていた。

 不都合なのは、変換した文字がいちいち中国の同社のサーバーに送られてしまうのだ。つまり、何を書いていたのかが丸わかりなのである。一部の役所のPCにこの「バイドゥ」が入り込んでいて、機密漏洩が懸念されたニュースを目にした人も多かろう。

 市井のユーザーに特段の機密があるわけではなかろう。が、削除しようとすると、萌えキャラが出てきて「お願いですから削除しないで下さい」と懇願してくる。かまわず削除すると、アンケートソフトが立ち上がり、ビジネスソフト然として「どのような点が不満でしたか」を聞いてくる。忍び込むだけでなく、削除されない工夫もされているのには、少々、驚いた。

 すべて削除してリスタートしたところ、今度は「グーグルプラス」のインストールの勧めが出てきた。このソフトはパソコンのデータを無料でインターネット上にバックアップしてくれるもので、パソコンが壊れた際にもデータを復旧できるのだが、無償なのには裏がある。テキストはもちろん画像データすら解析される。数百枚の写真を幾億人かのユーザーがバックアップとして登録すると、その写真の中から、同一人物を探し出して、誰がどこにいて、どういう交友関係であるかがわかるしくみである。

 同様のシステムがJR大阪駅の監視カメラに導入され、人物特定をしようとした(反対の声があがり今のところ頓挫している)ところからもわかるように、これは被害妄想でもSFでもない。「バイドゥ」の思惑はわからないが、「グーグルプラス」は広告の精度を上げるために情報を収集・解析している。商業ベースで稼働しているのである。

 こうした「スパイウェア」はいわゆるコンピュータウイルスではない。通常のセキュリティソフトでは侵入を防ぐことができないのだ。むしろ “善意”を装ってインストールを勧めてくる。無償で、出来映えもいい。グーグルが提供するかな漢字変換システムは、インターネット上の膨大なテキストに基づいて稼働するので、とりわけ固有名詞の変換には強い。『週間金曜日』といったミスタイプはまず起きない。使いようによっては市販のソフトよりも便利である。ただし、プライバシーを代償として。

 自衛するにはけっこうな知識が要る。と考えるより、個人情報を収集してまわるソフトを、善意を装って、こっそりと導入させるのが社会的公正に照らしてどうなのか、と考えるほうが筋だろう。「バイドゥ」が問題になったように、無償ソフトと広告のあり方の社会的合意が求められているのではないか。

(たにむら ともやす・マーケティングプランナー、2014年4月4日号)

これ以上の拘置は、「正義に反する」――再審決定で、袴田さん釈放!!

支援者に「再審開始」を報告する西嶋弁護団長(中央)と袴田秀子さん(右隣)。(撮影/校篠実)

支援者に「再審開始」を報告する西嶋弁護団長(中央)と袴田秀子さん(右隣)。(撮影/校篠実)

 弁護団が「よくここまで踏み込んだ」と驚くほど画期的な内容だった。死刑判決が確定しながら冤罪を訴え続けていた元プロボクサー袴田巖さん(78歳)に対し、静岡地裁(村山浩昭裁判長)は3月27日、再審開始を決定した。事件発生から48年近く。ようやく開いた雪冤の扉に、弁護団や支援者は興奮と歓喜に包まれた。

 特筆されるのは、決定が再審の開始、死刑の執行停止にとどまらず、拘置の執行停止(釈放)まで認めたことだ。村山裁判長は、「拘置をこれ以上継続することは、耐え難いほど正義に反する状況にあると言わざるを得ない」と断じた。これを受けて袴田さんは同日、東京拘置所から釈放された。

 決定はその理由を、(1)再審で無罪判決が下される相当程度の確実性が認められる(2)判決確定以来、33年以上も死刑執行の恐怖にさらされてきた――などと列挙した。決定にあたっての地裁のスタンスが、ここに象徴されている。

 袴田さんが犯人とされた「袴田事件」は、1966年6月に静岡県で起きた。味噌製造会社の専務宅で一家4人が殺害され、放火された。1カ月半後、住み込み従業員だった袴田さんが強盗殺人などの容疑で逮捕される。捜査段階でいったん犯行を自白したものの、公判では一貫して否認。しかし、静岡地裁は死刑を言い渡し、80年に最高裁で確定した。

 今回の第二次再審請求審で最大の争点になったのは「5点の衣類」だった。事件発生から1年2カ月も経って、味噌工場の醸造タンクから血痕の付着した状態で見つかったシャツやズボンなどである。当初はパジャマとしていた袴田さんの「犯行時の着衣」を検察はあっさりこれらに変更。裁判所も死刑判決の拠り所にしていた。これに対し、地裁の決定が再審開始の要件となる「無罪を言い渡すべき新規・明白な証拠」と認定したのは、DNA鑑定と味噌漬け実験だ。

 再審請求審で実施されたDNA鑑定では、被害者ともみ合った際に付いたとされたシャツの血痕が本当に袴田さんのものかが焦点になり、弁護側、検察側の両鑑定人が「袴田さんの型とは一致しない」との結論を出した。殺害時の返り血とされた血痕についても、弁護側鑑定人は「被害者の血液は確認できなかった」と分析した。

 地裁決定は弁護側鑑定の信用性を重視し、「5点の衣類の血痕は、袴田さんのものでも、被害者4人のものでもない可能性が相当程度認められる」と判断した。

 味噌漬け実験は、人の血液を付けた衣類を1年2カ月も味噌に漬けるとどう変化するか証明するため、弁護団と支援者が実施。発見直後の5点の衣類は、血痕が識別できるほど着色の度合いが薄かったが、実験で長期間味噌に漬けると、衣類は味噌とほぼ同色にムラなく一様に染まることがわかった。

 地裁決定は実験結果をもとに「5点の衣類の色は、長期間味噌の中に隠匿されていたにしては不自然である」と述べた。

 袴田さんには小さくてはけなかったズボンについても「袴田さんのものではなかったとの疑いに整合する」と言及。これらを踏まえて「5点の衣類が袴田さんのものでも犯行着衣でもなく、後日捏造されたものであったとの疑いを生じさせる」と指摘し、「再審を開始すべきだ」と結論づけた。

 決定に対する弁護団の評価はきわめて高い。西嶋勝彦弁護団長は3月30日の報告集会で「素直な目で証拠を見た上での常識的な判断。司法に正義を取り戻すという強いメッセージを感じる」と話した。

【検察は即時抗告】

 ただ、これで袴田事件が「解決」したわけではない。検察は31日、東京高裁に即時抗告した。再審が開始されるまで、さらに数年かかることにもなりかねない。

 事件が示した課題に対応していくことも必要だ。西嶋氏は、冤罪を生んだ裁判所の改革や、死刑廃止の議論などを挙げた。警察や検察、発生当時に犯人視報道を展開したマスコミの責任も検証されるべきだろう。教訓をどう生かしていくかが問われている。

(小石勝朗・ジャーナリスト、4月4日号)