週刊金曜日公式ブログ 週刊金曜日ニュース

ワタミ過労自殺で遺族が提訴――渡邉氏の責任も問う

美菜さんの遺影を前に会見する森豪・祐子さん夫妻。(撮影/片岡伸行)

美菜さんの遺影を前に会見する森豪・祐子さん夫妻。(撮影/片岡伸行)

 大手居酒屋チェーン「和民」の正社員だった森美菜さん(当時二六歳)が入社二カ月後の二〇〇八年六月に自殺し、昨年二月に過労による労災と認定された問題で、当時のワタミ社長だった渡邉美樹氏(現・参議院議員)ら五者を相手取り、美菜さんの両親である森豪さん(六五歳)と祐子さん(五九歳)夫妻が一二月九日、美菜さんの死亡は会社と経営者らの安全配慮義務違反に原因があるとして約一億五三〇〇万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。

 入社後一カ月間の残業が一四一時間という過酷な労働実態に加え、勤務時間外に渡邉氏の『理念集』と称する分厚い印刷物の暗記テストや研修会への参加を義務づけられ、心身に変調を来した末に自ら命を絶った美菜さん。会社側は昨年一一月に名古屋簡易裁判所に「損害賠償確定」の調停を申し立て。五回の調停が行なわれたが、ワタミ側は責任を認めず、謝罪もないことから一一月二五日に決裂した。

 今回の提訴では、自殺に追い込むほどの過酷な労働を強いたのが、「二四時間働け」など全従業員に自らの価値観を強制した渡邉氏個人の経営方針にあるとして、日本の過労死裁判で初めて「懲罰的(制裁的)慰謝料」も請求に組み込んだ。渡邉氏のほか、美菜さんを直接雇用したワタミフードサービス(株)の栗原聡代表取締役(当時)、ワタミ(株)の小林典史・人事部統括本部長(当時)の法的責任も問う。

 厚生労働省記者クラブで会見した森さん夫妻は「訴訟を通じて、娘の死の責任を明らかにするとともに、こういう働かせ方を許さない社会、若者を使い潰すのではなく育てる社会になってほしい」と話した。代理人の玉木一成弁護士は「美菜さんの辞令には当時のCEO(最高経営責任者)渡邉氏の名前がある」とし、会社法四二九条一項(役員の第三者に対する損害賠償責任)は免れないとした。

(片岡伸行・編集部、12月13日号)

みずほ銀行の闇を知る元行員とは――暴力団への融資は氷山の一角

「事件の奥にある真実を探ろうとすれば死人が出ますよ」

 関係者からそう警告された。

 みずほ銀行が暴力団組員に融資し、金融庁の検査に虚偽報告をしていた件は、九月二七日に金融庁が行政処分を発表して発覚。国会でも問題にされ、一一月一三日に衆院財務金融委員会で、二一日には参院財政金融委でも佐藤康博頭取が参考人招致され、「関係各位に迷惑をかけ、社会を騒がせたことを深くお詫びしたい」と陳謝した。

 反社会勢力への融資の担当者は、及川幹雄氏という元行員。及川氏は、みずほ銀行の裏の仕事を担当し、闇社会から“ワシらのATM”と認識され、常時二億円の金を動かしていたという。国会で問題にされた二億円は、氷山の一角にすぎないということだ。

 また及川氏は、銀行の顧客には有利な投資商品を勧誘して集めた金を不正流用していた。暴力団には返済される見込みのない融資を行なう一方、顧客の金を騙し取っていたわけだ。 

 一二月三日に東京地裁で、銀行の顧客がみずほ銀行を訴えた裁判が二件行なわれた。出資者が及川氏とみずほ銀行に損害賠償を求めた裁判ではすでに、九月二四日に東京地裁が及川氏に全額支払いを命じる判決を下している。及川氏に対してのみ責任が認定されたのだ。同裁判では月利三%の金融商品だったが、別の被害者には月利八%という常識外れの高金利で勧誘していたという。銀行としては、及川氏の単独による犯行にしたいようだ。

 一方で及川氏は、銀行を辞める時に「銀行は絶対に俺を切り捨てることはできない」と彼と親しかった関係者に言っていたという。及川氏が握っているみずほ銀行の闇は深く、それを知ろうとすれば、冒頭のように「死人が出ることになる」と言われたのだ。

 この事件についての報道は少ないが、『週刊新潮』一一月二一日号が「みずほ行員が闇社会に流した詐欺の50億円」と掲載している。取材を受けた関係者によれば「『新潮』の記事は連載予定だと聞いていたのだが、なぜか一回で打ち切られてしまった」という不可解さも残っている。

 次回の東京地裁の期日は、来年一月二一日と二八日。みずほ銀行の闇が暴かれるのか注目したい。

(高田欽一・ジャーナリスト、12月13日号)

ファッションショーで表現――女性への暴力NO!

「服からはじまるレジスタンス 靴からはじめるレボリューション……『もう、この服キツいんです』」という長いタイトルのファッションショーが一二月一日、東京・中野で行なわれた。主催はアジア女性資料センターの一〇~二〇代若手グループ。

おむつで作ったウェディングドレスと髪飾り。ケア労働が女性の役割とされていることを表している。(撮影/宮本有紀)

おむつで作ったウェディングドレスと髪飾り。ケア労働が女性の役割とされていることを表している。(撮影/宮本有紀)

 発案者の濱田すみれさんは「女性に対する暴力の問題を、本など言葉で伝える方法以外でより幅広い人たちに伝えたくて、ファッションという切り口で訴えることを思いついた」と言う。三回目の今年は、DV・デートDV、痴漢やセクハラ、レイプなどの暴力と、職場・学校・家庭などで押し付けられる「女性」の役割に対して「私たち、もうホントにキツいんです! こんな服ならもういらない。こんな靴なら脱いでやる!」という思いを表現した。

 ショーは主題ごとに展開。「女性ゆえに押しつけられるキツさ」を表現するセクションでは、掃除やお茶くみ、酒席でのお酌を強いられる女性社員やキャラ弁を作らないといけない母親などが登場する。「身近な暴力」セクションでは、仲良く歩いてくるカップルが背中を向けると一人の背中が血で染まっていたり包帯で巻かれていたりと一見わかりにくいDVを象徴。「沖縄」セクションでは、基地のフェンスをマスクにした女性やオスプレイが登場し、その後、無惨に撒かれた女性の下着で深刻な性暴力被害を訴えた。

 今年は「ナショナリズム」のセクションを創設。「ヘイトスピーチ(憎悪表現)の問題もあり、愛国心が排外主義につながり最終的に軍事主義に利用されていくということを表現したかった」と濱田さん。「日の丸」を軽く振っていた人たちが軍服を着るようになる様子など、どれも見る側が考えさせられる。

 カンパが目標の五〇万円に達したら実施という方式で実現したショー。年々支持者が増えているという。「来年もやります!」(濱田さん)とのこと。

(宮本有紀・編集部、12月6日号)

阪急グループのバス運転手らが宣伝行動――勤務時間“偽装”を改めて!

阪急グループの勤務時間“偽装”を訴えるバス運転手ら。(撮影/たどころあきはる)

阪急グループの勤務時間“偽装”を訴えるバス運転手ら。(撮影/たどころあきはる)

「偽装はホテルの食材だけではない。阪急グループは“偽装だらけ”を改め、安全・安心を最優先せよ」――。阪急グループのバス運転手らが相次ぐ違法行為に抗議して一一月二六日、大阪の中心街・梅田で宣伝行動に立ちあがった。

 バス運転手らによると、阪急電鉄はバス部門を一〇〇%子会社の阪急バス(大阪府豊中市)に分離、さらにその一〇〇%子会社の阪急田園バス(兵庫県宝塚市)に委託して、近畿圏の路線バスをグループ運営しているが、法定労働時間の超過が日常化し「低賃金のブラック職場」となっていると訴える。

 法定の運転時間(出庫から入庫まで)は一日九時間・週四〇時間以内で、拘束時間も週六五時間・月二六〇時間以内と規定されているが、同グループでは基本勤務の作成時点から、この法的制限を無視しており、「現在も違法状態のまま、運行がされている」という。

 これに対して労働基準監督署は昨年来、相次いで大阪、兵庫の五事業所に是正勧告を出し、近畿運輸局もバスを一部使用停止とするなど改善を指導してきた。が、いっこうに実質的な改善が見られず、年内には近畿運輸局、大阪労働局の合同監査も取りざたされている。

 親会社の阪急電鉄も、駅や車掌の業務などを阪急レールウェイサービスに分社し、コスト削減を図ってきた過去を持ち、その雇用形態が「偽装請負」と批判されて四年ほど前に本社復帰させたものの、労働条件などは改善されず、今も “偽装”と問題視されている。

 そのため、阪急グループのバス運転手らが個人加盟する建交労(全日本建設交運一般労組)阪急統合分会では、職場からの告訴・告発なども視野に入れ、「ブラック企業を社会的に包囲」していく方針。西日本バス労働者連絡会(濱田卓司会長)でも「賃下げなく、労働時間を法定内にし、安全・安心の職場環境を」と、全面支援の構えだ。

(たどころあきはる・ジャーナリスト、12月6日号)

焦点となるJAL四〇〇〇億円の法人税未払い――自民党税調の議論が大詰め

 膨大な利益を上げながら日本航空(JAL)が税金を一円も払っていない問題で、来年度の税制改正に向けた自民党税制調査会の検討が大詰めを迎えている。消費税増税時の軽減税率導入や自動車関連税の見直しなどが俎上にあがったが、特に焦点となっているのがJAL法人税未払い問題に直結する会社更生法の特例「繰越欠損金制度」だ。

 同制度上では、黒字(課税所得)が出ても前期以前での赤字(欠損金)があればその数字と相殺できることになっている。そのため、かつて約一兆円の債務超過に陥ったJALは、二〇一〇年度に一八八四億円、一一年度に二〇四九億円(史上最高益)、一二年度にも一九五二億円の営業利益を上げているにもかかわらず、法人税を払わずに済んでいる。JALの場合、この繰越欠損金を一八年度まで利用できるため、そのかんに免除される法人税の試算総額は四〇〇〇億円にものぼる。

 羽田空港の国際線発着枠(来春から拡大)について全日空(ANA)は一一、JALが五と「傾斜配分」することを国土交通省が決めたことで一時訴訟までちらつかせたJAL。だが、今年九月中間期ですでに九〇〇億円の連結経常黒字を出しており、これはANAの約三倍にもなる。

 一一月七日の財政金融委員会で、自民党税制調査会幹事の西田昌司参議院議員は、麻生太郎副総理に対しこう詰め寄った。

「事実上倒産した会社がなぜ圧倒的黒字なのか。(中略)毎年二〇〇〇億円入ってきているのに(法人税を)払わないというのは再生計画でも想定していなかった。会社更生法と公的支援のダブル適用を受けた企業については損金算入させない(制度にすべきだ)」

 また、一一月二〇日に自民党本部で開かれた航空政策特別委員会でも、西田氏はこう訴えた。

「(JALは)企業再生により大きな利益を上げる会社になるも、『超過利潤』と言わざるをえない状況だ。国民負担分を返してもらわないといけない」

 西田氏のいう「国民負担分」とは、JALに投入された公的資金を指している。JAL再生の“立役者”として京セラ元会長の稲盛和夫氏がもてはやされているが、JALの好業績は果たして同氏の手腕によるものか。二〇一〇年末の大量解雇は正当なものだったのか。

 通常、会社更生法を申請する航空会社は燃料の調達も困難になるほど“死に体”と化す。しかしJALは公益性が高いという大義の下、国が支援する形で再生されることになった。企業再生支援機構が三五〇〇億円の出資をし、銀行団は約五二〇〇億円の債権放棄を受け入れた。さらに、公益性が高い事業にもかかわらず、JALは地方の不採算路線を切り捨ててきた。

 これらのことについて稲盛氏は、『朝日新聞』(六月一八日付)のインタビューで、本人がかねがね主張している競争の大事さと、政府の厚すぎる支援は矛盾しないかと問われ「政府が決めました」と答えている。切り捨てた地方路線については「余裕がある時には、お引き受けすることもあるかもしれません。ただし、ずるずるいってしまうと体力を消耗する」。

 企業再生支援機構は官民出資ファンドだが、その主な目的は地方の中小零細企業を後ろ支えすることで国民の雇用を守ることにある。ところが同機構の最初の事案がJALであり、その次が京セラの関連会社ウィルコムだった。同機構は今年四月から地域経済活性化支援機構へと衣替えしているが、事業の実態が公益性に適っているのか注視が必要だ。

 JALは今年六月、新たな株主に一株一九〇円で計約三二四億円の配当を出した。被災地へ向けた復興法人税の廃止が前倒しされようとするなか、好業績をつづけるJALが法人税未払いのままでよいのか。少なくとも国民が負担した分は国庫に返納すべきだろう。

 自民党税調は年内にも税制改正の検討結果をまとめる。過度な規制緩和でJALを倒産に追い込んだ国交省のオープンスカイ政策も含めて、再検討が必要だ。

(野中大樹・編集部、12月13日号)

「がれき裁判」の不当判決に支援者ら抗議――大阪市民二人に有罪判決

大阪地裁の正面玄関で、有罪判決に抗議する支援者ら。(撮影/真野きみえ)

大阪地裁の正面玄関で、有罪判決に抗議する支援者ら。(撮影/真野きみえ)

 大阪市の震災がれき処理住民説明会(二〇一二年一一月)の会場で抗議した市民二人が、建造物侵入の容疑で逮捕された裁判の判決が一一月二八日、大阪地方裁判所(長井秀典裁判長)であり、Pさん、Uさんの二人に懲役八カ月、執行猶予二年の有罪判決が下された。Pさんは未決算入五〇日、Uさんは一四〇日がつく。法廷にいた支援者からは「不当判決ではないか」と声があがり、閉廷後も正面玄関でシュプレヒコールが続いた。Pさんは即日控訴した。

 二人は一年前、大阪市主催の住民説明会会場で逮捕され、その後、容疑を威力業務妨害に切り替えられ起訴された。同説明会は、参加者が大阪市民に限定され、危惧する近隣住民や安全性の説明を求める反対派を排除して行なわれた。担当弁護士の一人、位田浩弁護士は「大阪市による説明会の問題性を立証し、抗議の正当性を主眼においたが、裁判所はそこに触れなかった」とする。

 Pさんは「私たちが抗議に至った背景がバッサリ切り捨てられた」と悔しさを滲ませた。Uさんは「また別の闘う現場で皆さんと繋がりたい」としながらも、かりに今後逮捕されれば、執行猶予二年に加え未決算入の一四〇日がつく点を、実刑を上回る重さと捉えている。

 ただ、自身も懲役一年、執行猶予三年とされた東京の市民運動家、園良太さんは、「裁判は権力の土俵の中での闘い。だからこそ、その外に出てのデモやアピールが重要になる。福岡では脱原発派の市民に求刑通り一年六カ月の有罪。大阪の量刑がやや軽いのは、関西の衰えない救援活動が権力への圧力となっている」との見解を示した。

 自民党は特定秘密保護法案を強行採決し、「共謀罪」を来年の通常国会に提出する構えだ。市民運動への影響が懸念される中、運動で勝ち取るものがあることを再認識したい。

(真野きみえ・ライター、12月6日号)

生活困窮者の支援団体が施策整備を要請――年末年始はふとんで年越し

「ふとんで年越しプロジェクト」結成の記者会見。(撮影/清水直子)

「ふとんで年越しプロジェクト」結成の記者会見。(撮影/清水直子)

 年末年始の閉庁期間中、路上で凍える人を出さないようにと、東京都内の生活困窮者支援団体、ホームレス支援団体が、「ふとんで年越しプロジェクト」を結成した。

 今年の年末年始は、土曜・日曜が重なり、一二月二八日(土)から一月五日(日)までの九日間、福祉事務所をはじめとした行政機関の窓口が閉まる。一二月二日、プロジェクトの呼びかけ人が、年末年始の生活困窮者施策を整備するよう国と厚生労働省に要望書を提出し、記者会見を行なった。

 要望書では、年末年始の閉庁期間中の生活困窮者および生活保護申請者に対して、必要に応じて宿泊場所や食事の提供、その費用の給付・貸し付けを行なうことなどを求めている。厚労省の担当者は、検討する、と回答しているという。

 新宿、渋谷、池袋、山谷地域で炊き出しを行なっている支援団体にとって、閉庁期間が長くなれば炊き出し回数が増え、負担も大きくなる。呼びかけ人代表の宇都宮健児弁護士は、「支援団体が持ち出しで生活困窮者の支援をしているが、本来、国や地方自治体が取り組むべき課題」と訴える。

 NPO法人自立生活サポートセンター・もやいの稲葉剛さんは、「年越し派遣村から五年。統計では路上生活者は減少しているというが、ネットカフェや脱法ハウス、友人宅で屋根を確保する、広義のホームレス状態にある人は増加した」と指摘。支援団体関係者は、路上で生活しているのは日雇い労働者だった人だけでなく、雇用不安定化の影響を受けた若者が増えている、と口を揃えた。

 プロジェクト関係者は、一二月二五日(水)一〇時から二二時に全国一斉電話相談(〇一二〇・七五七九三〇)を実施。年末年始にシェルターを確保するため、クラウド・ファンディング(ネット寄付)で資金を募っている。詳細はURL https://motion-gallery.net/projects/futon-toshikoshiで。

(清水直子・ライター、12月6日号)

裏切りとウソにまみれた伊方原発の再稼働は許されない(伊田浩之)

パレードには、全国の原発現地で反対を続けている人たちが数多く参加、再稼働反対を訴えた。

パレードには、全国の原発現地で反対を続けている人たちが数多く参加、再稼働反対を訴えた。

国内すべての原発が止まってから約2カ月半。最初の再稼働候補とされる四国電力伊方原発の地元、愛媛県松山市で12月1日、「NO NUKES えひめ~福島を忘れない!再稼働させない!」(伊方原発をとめる会主催)が開かれ、海外を含め全国から集まった約8000人(主催者発表)が再稼働反対を訴えた。

時雨が混じるあいにくの天候だったが帰る人はほとんどいない。左は山本太郎参議院議員。

時雨が混じるあいにくの天候だったが帰る人はほとんどいない。左は山本太郎参議院議員。

 伊方原発から約一〇キロメートルに暮らし、約四〇年間反対運動を続けてきた斉間淳子さん(八幡浜・原発から子どもを守る女の会)は壇上からこう訴えた。

「一〇月二六日に伊方原発を現地調査した原子力規制委員会の更田豊志委員は『とても優秀な原発です、トップバッターです』とコメントした。でもどれほど対策をしようと原発が安全でないことは福島が教えてくれました。伊方の裁判で指摘した原発の危険性は、福島ですべて現実となってしまった。あれは本当に人災です。私は命つきるまで原発反対の声を上げる」

 ルポライターの鎌田慧さんは、四国電力に騙されたことを気に病んで一九七三年、自宅納屋で首を吊って自殺した井田キクノさん(当時七二歳)のことを紹介、「裏切りとウソとそれによる犠牲者をつくりだして伊方原発は始まった。原発は人々を弾圧し、地域社会を分断する」と再稼働を批判した。

城山公園で開かれた集会では三宅洋平さんらの演奏もあり、終始なごやかな雰囲気だった。

城山公園で開かれた集会では三宅洋平さんらの演奏もあり、終始なごやかな雰囲気だった。

 集会では、日本最大規模の活断層である中央構造線から約六キロメートルという至近距離にある伊方をはじめとする、すべての原発の再稼働に反対する決議を採択。小雨が降るなか、二コースに分かれて松山市内をパレードした。                 

(いだ ひろゆき・編集部、12月6日号)

Tシャツ文字で高裁が入庁拒否――被告を排除し判決

 廷吏の言葉に筆者は耳を疑った。一一月一九日午後三時。東京高裁四二九号法廷は、路上生活者排除に抗議したことで威力業務妨害罪に問われた園良太氏の控訴審を控えていた。傍聴席は三七。まだ一〇席ほどしか埋まっていなかった。傍聴希望者は五〇人以上いたので抽選が行なわれ、当選者に傍聴券が配られた。だから空席があるはずはない。法廷内にいるべき被告人・園氏の姿もなかった。

「傍聴させろ!」。当選券を掲げて抗議する被告本人と支持者ら。(撮影/片岡伸行・編集部)

「傍聴させろ!」。当選券を掲げて抗議する被告本人と支持者ら。(撮影/片岡伸行・編集部)

 ガラガラの法廷に制服の警備員が七人。法廷外にはおよそ三〇人もの警備員や裁判所職員がいた。ロビーには物陰に潜むような仕草の私服警官もいる。

 なぜ開廷なのか。傍聴人の戸惑いをよそに、八木正一裁判長(陪席裁判官は川本清厳・佐藤正信の各氏)は「時間ですので」と小声で開廷を告げ、「控訴棄却。懲役一年執行猶予三年」の有罪判決を読み上げた。東京都江東区役所の暴力的な野宿生活者排除に対し、同区役所に抗議を申し入れようとした行為が「威力業務妨害」にあたるという、戦後の司法試験に受かったとは思えない乱暴な判決だ。

 傍聴席がガラガラだったわけは閉廷後に判明した。園氏や傍聴券当選者らが着ていたTシャツに、一文字四センチ角ほどの大きさで「YES! 抗議 NO! 排除」とあった。それが「メッセージ」にあたるとして入庁を拒否され、自らの判決を聞く機会も奪われたのだ。多数の警備員が「人間の壁」をつくり、敷地に一歩も入れなかった。庁舎管理権者である渡部勇次東京高裁事務局長の判断だ。

 問題のシャツの柄は地味なもので、「これがダメなら“スカッと爽やかコカ・コーラ”もだめなんですか」と抽選にハズれた傍聴希望者は失笑した。衣服の柄で入庁拒否というのは前代未聞。数十人の公安警察官に見守られ、園氏らは傍聴券を掲げて「傍聴させろ」というしごく当然の権利を訴えた。

(三宅勝久・ジャーナリスト、11月29日号)

山本太郎議員への安倍首相の答弁書で発覚――秘密を53もの機関が保有?

二日夜、参議院議員会館前で開かれた秘密保護法反対集会。(撮影/成澤宗男・編集部)

二日夜、参議院議員会館前で開かれた秘密保護法反対集会。(撮影/成澤宗男・編集部)

 山本太郎参議院議員が一一月一二日付で提出した特定秘密の保護に関する法律案(以下、秘密保護法案)に関する質問主意書に対する答弁書で、安倍晋三首相は秘密指定を行なう行政機関の長について、五三もの機関名を挙げてきた。その中には外交や防衛等に関する秘密にほど遠いような機関(文化庁や公害等調整委員会、中央労働委員会、郵政民営化推進本部等)も多数ある。

 呆れたのは、答弁された「特定秘密を指定し」「(特定秘密の取扱いを業務とする者に)適性評価を実施する」行政機関の長があるものとして、今年八月に廃止された社会保障制度改革国民会議が挙げられていたことだ。答弁書のチェックを担当した内閣法制局と内閣情報調査室は、すでに誤りを認め陳謝したというが、ことはそれだけで済むものではない。全閣僚が確認のうえ、内閣総理大臣名で出される閣議決定文書が質問主意書に対する答弁書なのだ。

 まして社会保障制度改革国民会議は委員を首相自らが任命したもので、首相官邸に直属する行政機関だ。首相宛に答申書を出して任務を終えたことで八月二一日に廃止された。今回の誤りは、安倍首相自身がいかに答弁書を丹念に検討していないかを白日の下にさらすものとなった。

 答弁書を受け取った山本太郎議員は、「すでに存在しない機関が答弁されて、驚いています。答弁書は内閣法制局が細部までチェックしてから閣議決定されると聞くが、チェック機能が働かなかったとしか言いようがない。ずいぶんずさんな話で、人権制限をともなう法案の審議がまともにできているとは思えません。内閣法制局長、さらに総理大臣自身の責任も問う再度の質問主意書を提出しました」と述べている。

 誤答弁に反映されたのは、審議の不徹底にとどまるものではなく、法案そのものがきわめて不十分な検討しかされていないことをも示している。そもそも、法案の構造が自衛隊法第九六条の二(防衛秘密)と第一二二条で規定された防衛秘密を漏らした場合の罰則についての取り決め、同法別表第四(第九六条の二関係)で規定された防衛秘密の指定に関する項目を別途の法律とし、刑罰を重くしたものにすぎない。

 自衛隊法の一部分を拡大して行政機関のほとんどを拘束する法規にするものだが、その具体的あり方、問題点がまったく明らかにされていない。よりわかりやすく言うなら、自衛隊のみに適用されていた「防衛秘密」の保全とそのための「罰則」システムを行政全体に押し広げることによって生じる具体的な問題、矛盾点の検討がほとんどされた形跡がないのだ。

 答弁書が示した五三の行政機関の大部分が、身近な公共事業に関わっている。これらに適切な予算執行がされているか、官製談合などがないかについて市民やオンブズマンが情報開示制度を駆使して追及しているが、今後、個別の事業案件が「防衛」「外交」「特定有害活動(注)」「テロリズム」に影響のあるものと当局が認定すれば、情報の大部分が秘匿されてしまうことが予想される。

 実際、サイバー攻撃の対象が電力・エネルギー供給施設や交通管制システムに向けられている時代ともなり、これを口実に行政の正常な執行をチェックする市民の活動が妨げられたり、「特定有害活動」とみなされて抑圧されたりすることも、今回の法案が成立すれば十分にあり得ることなのだ。

(注)公になっていない情報のうちその漏えいが我が国の安全保障に支障を与えるおそれがあるものを取得するための活動、核兵器、軍用の化学製剤若しくは細菌製剤若しくはこれらの散布のための装置若しくはこれらを運搬することができるロケット若しくは無人航空機又はこれらの開発、製造、使用若しくは貯蔵のために用いられるおそれが大きいと認められる物を輸出し、又は輸入するための活動その他の活動であって、外国の利益を図る目的で行われ、かつ、我が国及び国民の安全を著しく害し、又は害するおそれのあるものをいう(法案第一二条二の一)。

(古是三春・軍事評論家、12月6日号)