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クール便の「常温配達」偽装――社内に飛び交う臆測

常温扱いで荷物を仕分け、配達まで行なっていたと報道されたクール宅急便のヤマト運輸(本社・東京都中央区、山内雅喜社長)。荷物を顧客に届ける首都圏のSD(セールスドライバー)が疲労を隠そうともせず話す。

「クール便は通常の荷物といっしょに荷台の左右にある冷凍・冷蔵エリアに入れて運ぶのだが、そのスペースに入りきらない場合がある。それなら、複数回に分ければいいと思うかもしれないが、特に朝一番の搬入要求などに応えるためには、どうしても一度に持っていかないと間に合わない。そのため冷蔵・冷凍装置のない部分にも積んでいた」

 報道直後から同社は常態化していた常温放置や配送を厳しく禁じて是正に取り組み始めた。分類専用の冷蔵・冷凍ボックスを手当し、分類にかかった時間を記録するなどして、正常化に取り組んでいる。しかし、こうした対策を取るべきだとしながらも、同社関係者の一人はこう訴える。

「センター(営業所)での常温仕分けや、SDの大口客への常温配達は、人員や設備の不足が原因。センター長ら管理職が黙認していた。つまりは会社の経費削減をドライバーやアルバイトがカバーした苦肉の策。アシスト(荷物仕分けのアルバイト)やクール便専用車のドライバーを増員しないと解決しない」

 テレビで流されている動画の撮影された場所は、カメラが設置され、部外者の出入りがほとんどない。そのため社内では、こんな噂が飛んでいるという。

「事情を知らないと、外の人にはとてもできない。クール便の増加で毎年現場がパンクするお歳暮シーズンの繁忙期を前にした“社内テロ”ではないか」(同社関係者)

 まさに猫の手も借りたいクロネコヤマトのクール宅急便といったところだが、その後、日本郵便でも「常温配達」の偽装が発覚した。

(中島みなみ・ジャーナリスト、11月15日号)

麻生邸見学ツアー訴訟で証人に――公安警部、尋問しどろもどろ

山口警部(中央)と現場を指揮した栢木國廣公安二課長(右)。(提供/国家賠償請求訴訟団)

山口警部(中央)と現場を指揮した栢木國廣公安二課長(右)。(提供/国家賠償請求訴訟団)


麻生太郎首相(当時)の邸宅を「見学」する「リアリティツアー」のために東京・渋谷を歩いていた市民三人が逮捕された事件の国家賠償請求訴訟で、最初に市民一人に体当たりして取り押さえた公安刑事の証人尋問がこのほど、東京地裁で行なわれた。

 この事件は二〇〇八年の一〇月二六日に起き、歩いているだけの市民に警察が襲いかかる現場の動画がインターネットで流され、大きな反響を呼んだ。近年、反原発デモなどで混乱なく行進している市民が突然警察に理由なく逮捕されるケースが多発しているが、国家賠償請求が起こされるのは稀だ。実際に市民を逮捕した公安が裁判で尋問される例も、珍しい。

 今回出廷したのは、現在都内高島平署に勤務し、当時警視庁公安第二課にいた山口悟警部。

 当日は「ツアー」の主催者に対し、現場で渋谷署の警備担当者が事前に「五、六人で(麻生邸に)行くだけなら大丈夫」と確約していたにもかかわらず、逮捕したことについて弁護側から追及されたが、「無届けでデモをした。都公安条例違反だ」などと答弁。

 だが弁護側が、「渋谷署側は事前にデモではないと理解していた。最初に逮捕されたAさんも人混みの中で他の参加者の前を歩き始めただけなのに、逮捕するのは不自然ではないか」と質問すると、しどろもどろになりまともに答弁できなくなった。また山口警部は、「ツアー」を主催した「フリーター全般労働組合」を以前から内偵していた事実を公判で認め、「何をするかわからない集団」「(麻生邸に)行かせたくなかった」などと、最初から政治的な予断で現場に臨んだ事実を認めている。

 傍聴したAさんは、「本人は『危険なことがあったらまずいと思った』などと逮捕を正当化しているが、ただ首相邸を見に行くだけの行動にこれだけ過剰反応する公安の体質こそ危険だ」と話している。

(成澤宗男・編集部、11月15日号)

練馬区民が閲覧制限請求に抗議の署名提出――『はだしのゲン』を隠すな

「腹が裂け、腸が垂れ、眼球が飛び出し顔に垂れている」。講談中の神田さん。(撮影/編集部)

「腹が裂け、腸が垂れ、眼球が飛び出し顔に垂れている」。講談中の神田さん。(撮影/編集部)

東京の練馬区教育委員会に「『はだしのゲン』の教育現場からの撤去を求める陳情」が提出されたことに抗議し、市民団体が一一月五日、自由閲覧の継続を求める八五五〇筆の署名を同会に提出した。

 反戦漫画として知られる『はだしのゲン』をめぐってはこの八月、松江市教委が市内の小中学校に閲覧制限を求めたが、多くの抗議を受けて撤回。だがその後、一〇月一日に発売された雑誌『正論』が「『はだしのゲン』許すまじ!」と題した特集を組み、「反日的なイデオロギー」などと攻撃した。

 神奈川県議会では一〇月三日、自民党議員が「発達段階に応じた教育的配慮」などと実質的に閲覧制限を求める質問をし、県側が「検討する」と回答している。練馬区の「撤去を求める陳情」はこうした右派の動きの一環と見られるが、これに対し「『はだしのゲン』の自由閲覧を求める練馬区民の会」が反対の署名運動を始めた。

 署名では「有害図書」としてこの作品を撤去するのは、「表現の自由」などの侵害で、「『非核都市宣言』を有する練馬区にあってはならないこと」と強調。作品が「未来に生きる子どもたちが、再び戦争に突入することのない、平和な社会を築くことを、マンガを通して訴えたもの」とし、自由な閲覧を守るよう訴えている。

 練馬区教育委員会では一一日現在、「教育現場からの撤去を求める陳情」は継続審議になっているが、「練馬区民の会」側は引き続き署名を呼びかけている。

 この中、一九八六年から二七年にわたって『はだしのゲン』の講談を行なってきた講談師の神田香織さんが八日、憲法行脚の会主催の講演会「はだしのゲンをなぜ消そうとしたのか」に出席し、同作の講談を披露した。その後の佐高信・本誌編集委員との対談では、「『はだしのゲン』を隠して、どんな子どもを育てたいのか、どんな社会にしたいのか」と訴えた。

(編集部、11月15日号)

国家公務員の宿舎使用料値上げに防衛省が反対――「即応態勢が悪化」は本当か

 国家公務員宿舎(官舎)の使用料(家賃)引き上げをめぐり、それを阻止しようという防衛省および自民党国防部会(部会長・中山泰秀衆院議員)と財務省との綱引きが続いている。防衛省側が「引き上げ阻止」を求める理由は「即応態勢が著しく悪化する」とのことだが、本当にそうなのか。

 官舎の家賃値上げは昨年一一月の民主党政権時に国会で可決。全国に一万六八四カ所(約二一万八〇〇〇戸)ある国家公務員宿舎を二〇一六年度末までに半減させ、二〇一四年度からは家賃と駐車場代を段階的に引き上げて、平均二倍弱に値上げする――というのが財務省の計画だ。

 これに異を唱えるのが防衛省と自民党国防部会で、家賃据え置きを財務省に要求。現在、不定期で密室協議を続けている。

 そもそも自衛官は「指定場所に居住する義務」が自衛隊法五五条で定められている。全自衛隊員二三万六二四五人のうち、駐屯地などの営舎内に居住する義務のある隊員が全体の三割近く、約七万人いる。家賃値上げの対象は営舎外の官舎に住む二割近くの約四万七〇〇〇人だ。防衛省側の言い分はこうだ。

 官舎の家賃が引き上げられた場合、官舎に居住する自衛隊員四万六九三四人のうち、約五四%に当たる二万五二一〇人が民間住宅への「転居」を希望していることがアンケート調査で判明。その希望者が実際に転居すると、「緊急招集」をかける際、参集状況は〈表〉のように“悪化”するという。

 つまり、一時間未満で参集できる隊員が現状二万九四一六人いるのが値上げ後は一万六七一六人になり、一万二七〇〇人も減る。同じく参集まで三時間以上かかる隊員が現状七六一一人から一万九三九八人に増える――との推計だ。

【「即応態勢」の定義なし】

「いくら家賃が二倍近くになると言っても、官舎に住む隊員の半分以上が民間の賃貸に転居するなど、まずありえない話です」

 そう話すのは元自衛官のAさん。

「官舎より高い家賃を払って、わざわざ通勤に時間のかかる所へ誰が行きます? 自分の負担が増えるだけじゃないですか。危機管理や即応態勢が大事ならなおさら遠くへなど引っ越しませんし、上司も許すはずがありません。この数字はそうした前提を無視したものですね」

「即応態勢」とは具体的に何を指すのか。防衛省に聞くと、「明文化された定義はない」(防衛省内局報道室)と言う。

「ローテーションで回っているので、全員が一時間以内に参集せよということではありません。たとえば、初動対処部隊のローテに入っている人は一時間以内をメドに参集できる態勢を組む。あとは部隊ごとに災害派遣計画を定めており、それぞれ参集時間を決めています」(同)

 どこに住もうと、ローテに入れば緊急招集の対象者になる。となると、定義なしの「即応態勢」と「転居」はそもそも直接的には関係ないことになる。しかも、Aさんの言うように隊員の居住場所についてはなるべく勤務地の近くに住むよう個別に指導されるため、かりに転居しても勝手に遠くに住めるわけではない。

 官舎から民間の賃貸に転居した場合、上限二万七〇〇〇円の「住居手当」が隊員に支給される。防衛省としては転居で官舎の家賃収入が減る上、新たにこの手当分の経費が増えることになる。じつは「即応態勢」は体のよい口実で、こちらが最大の懸念材料ではないか。

 財務省側は、「今回の計画は元々、国家公務員の宿舎使用料が民間に比べて低すぎるという批判に応えるのが目的。特定の省庁だけを特別扱いできないが、業務を円滑に進められるよう協議中」(国有財産調整課)と渋い口調で話す。

 災害時に緊急招集されるのは自衛隊員も一般の公務員も変わりがない。なお、防衛省にアンケートの質問内容など詳細の明示を再三要望しているが、本稿締め切りまでに返答はなかった。

(片岡伸行・編集部、11月15日号)

新潟県で東電の福島原発事故検証がスタート――地震か津波か、原因に切り込む

面談をする泉田・新潟県知事(右)と廣瀬・東電社長=9月25日、新潟県庁。(撮影/横田一)

面談をする泉田・新潟県知事(右)と廣瀬・東電社長=9月25日、新潟県庁。(撮影/横田一)

 東京電力・福島第一原発の事故原因は地震か津波か――。

 事故当初から議論され、いまだ結論が出ていないこの問題に、「新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術委員会」(新潟県技術委員会)が切り込む。一〇月末から始まっている事故検証課題別ディスカッションでは「シビアアクシデント(過酷事故)対策」「地震動による重要機器の影響」など六つの課題を順次検証するが、ここでの議論が全国の原発再稼働に大きな影響を及ぼすのは確実だ。

 東京電力の廣瀬直己社長と県庁で面談をした翌日(九月二六日)、泉田裕彦・新潟県知事は東電の「柏崎刈羽原子力発電所」(新潟県)の規制基準適合審査申請を条件付きで承認。マスコミは、まるで再稼働が規定路線となったかのように報じたが、実態は全く違う。

 東電社長面談後で初めての県知事会見(メディア懇談会)が開かれた一〇月六日、泉田知事は「(今回の承認は)条件付きの仮承認」にすぎず、「再稼働申請の了承ではない」と強調。「『(県民の)健康に影響がある被曝をしうる』ということになれば、『仮了承』は無効、フィルターベントは使用できなくなる」と説明した。

 原発の新規制基準では、沸騰水型炉(BWR)は、原子炉容器の圧力を下げる「フィルター付きベント」の設置が義務づけられている。東電が一〇月二二日、この設備の本格工事に入ったのはこのためだが、新潟県技術委員会での議論の結果、「ベント使用不可」(=再稼働不可)という結論になることもあるのだ。

 泉田知事は「福島原発事故の検証が先」という立場を貫いてもいる。原発事故が津波ではなく、地震で配管など重要機器が損傷したことが原因とする「地震説」について聞くと、こう答えた。

「国民の多くの方が(福島第一原発で)一体、何があったのかを知りたがっている。そのポイントの一つなのだろうと思います。今度、ディスカッションという形で専門家の委員の方々に深堀をしていただいて事故原因に迫ってほしい」

 新潟県技術委員会の委員の一人は、国会事故調の委員を務めた元原発技術者の田中三彦氏である。検証課題別ディスカッションでは「地震動による重要機器の影響」を担当、この議論には東電も参加する予定だ。ちなみに、田中氏はいち早く「地震原因(損傷)説」を提唱し、地震による重要機器の損傷はなかったとする「津波原因説」を主張してきた東電と対峙。今回も「地震原因説 対 津波原因説」の激論となるのは間違いない。

 ちなみに廣瀬社長は泉田知事との面談で、地上に配管がある「第一ベント」に加えて、地中に配管がある「第二ベント」の設置を新たに提案した。これが評価されて、翌日の承認となったが、それでも津波原因説の東電は、地上に配管がある「第一ベント」が完成すれば、「柏崎刈羽原発の再稼働可能」という考えを取っている(九月二六日の原子力規制委員会への申請後の記者会見での回答)。

 しかし、地上の配管が地震損傷する可能性が無視できなければ、第一ベントだけでは不十分で、地中に配管があることから地震に強いとされる「第二ベント」完成までは再稼働が不可能になる。工事に入った第一ベントと違い、第二ベントは設計に入ったばかりで完成時期は数年遅れる。「来年の再稼働」を前提に、金融機関からの融資も受けている東電の経営計画が崩れてしまうことになるのだ。

 〇七年の新潟県中越沖地震の際に発生した火災は地震による配管損傷が原因。だからこそ、泉田知事は「第二ベントの設置」(配管地中化による耐震性強化)を東電に求め、「原発事故原因の検証が先」との立場を崩さず、課題別ディスカッションで事故原因についても議論する場を設けた。

 この議論が今後、注目を集めるのは確実で、再稼働に突き進もうとする安倍政権の障壁になる可能性もある。地震原因説に軍配が上がれば、耐震性強化が必要となることから、県内の柏崎刈羽原発はもちろん、全国の原発再稼働に影響を及ぼすことになるためだ。

(横田一・ジャーナリスト、11月15日号)

日本国憲法の源流と改憲論議への“気がかり”――「五日市憲法」に触れた皇后

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五日市憲法「国民ノ権利」の項目。(撮影/野中大樹)

  天皇に手紙を渡した山本太郎参議院議員の言動が「(天皇の)政治利用」ではないかと物議をかもしている。そんな中、この一〇月に七九歳の誕生日を迎えた皇后が言及した「五日市憲法草案」について、発見者の一人で専修大学教授の新井勝紘氏が取材に応じた。 新井氏は「政治利用されるのはよくない」とした上で、「皇后という地位には関係なく、ごく普通の人間があの憲法草案を読んで感じる、素直な反応だと思う」と話した。

 明治期の自由民権運動期に生み出された五日市憲法草案。東北に生まれ、後に神奈川県(現東京)西多摩の五日市に移り住んでいた千葉卓三郎が、地元の青年たちと議論をかさねて練りあげた。全二〇四条におよぶ条文は、民権運動期に生まれた多くの憲法のなかでも、とりわけ民主主義の色合いが濃いことで知られている。

 その「国民の権利」の項目には、「日本国民は各自の権利自由を達すべし、他より妨害すべからず、且つ国法これを保護すべし」とある。国の法律は国民の権利を守るためにこそあるのだという考え方は、現行日本国憲法の「国民主権」に通ずる。

 また、「日本国に在居する人民は、内外国人を論ぜず、その身体生命財産名誉を保固す」という文言もある。ヘイトスピーチ(差別扇動表現)など排外主義が吹き荒れる現代を見越したような文言だ。

 皇后が宮内庁記者会の質問に寄せた回答文書には、こうある。

〈今年は憲法をめぐり、例年に増して盛んな論議が取り交わされていたように感じます。(中略)「五日市憲法草案」のことをしきりに思い出しておりました。(中略)当時これに類する民間の憲法草案が、日本各地の少なくとも四〇数か所で作られていたと聞きましたが、近代日本の黎明期に生きた人々の、政治参加への強い意欲や、自国の未来にかけた熱い願いに触れ、深い感銘を覚えたことでした。(中略)市井の人々の間に既に育っていた民権意識を記録するものとして、世界でも珍しい文化遺産ではないかと思います〉

 現行日本国憲法は戦後GHQから押しつけられたものだとする主張があるが、実際はそうとも言えない。「今の日本国憲法は形としては押しつけられたもののように見えるけれども、基本的人権や国民主権という考え方の源流をたどると一八八〇年代の自由民権期の憲法草案にいきつく」(新井氏)

 皇后が東京・あきる野市にある五日市郷土館を訪れたのは昨年の一月。同館には、千葉が執筆した「タクロン・チーバー氏法律格言」も展示されている。これは当時、世界の「法律格言」(元老院蔵版)の中の王位や皇帝を中心にした箇所を、千葉が、国民を中心に据えたものに読みかえたものだ。

「国王ハ決シテ死セズ」(前述の『法律格言』)とあったところを、千葉は「国王ハ死ス国民ハ決シテ死セス」とかえている。この点は、天皇を「元首」に位置づける自民党憲法改正案の考え方とは、およそ正反対の発想だと言っていい。

 皇后が述べる「例年にも増して盛んな論議」とは、自民党の改憲へ向けた動きとみて間違いない。

 新井氏も「『象徴』が『元首』となれば、自分たちの地位にも直接かかわってくる。皇后の五日市憲法への言及は、今の憲法をめぐる状況を気がかりに感じておられるためではないか」と語る。

 五日市憲法が発見されて四五年。皇后の言及もひとつの契機に、生まれた背景や、込められた普遍的な価値を見出したい。

(野中大樹・編集部、11月8日号)

ナノテック、監視カメラ17台――異様な組合弾圧続く

組合を結成したら社内に監視カメラ一七台、放置されていた自分の手紙を回収したら“窃盗”に――。千葉県柏市に本社のある真空装置メーカー「ナノテック」(中森秀樹代表取締役)で、会社側の異様な組合敵視が続いている。

 同社では二〇一二年五月に全日本金属情報機器労働組合(JMIU)ナノテック支部として労働組合を結成。〇八年から支給されていない一時金や未払い残業代などを要求した。その半年後の同年一一月ごろから従業員三〇人ほどの社内にマイク付きの監視カメラが一七台も設置され、その数は既存のものを含めて計二三台に。組合側は不必要な監視カメラ設置を「プライバシーの侵害に当たる」として今年三月、千葉地方法務局柏支局に人権侵害救済の申し立てをし、八月末には同支局が会社への立ち入り調査を実施している。

 また、執行委員長を務める藤原眞二さん(四五歳)は今年四月と五月、柏警察署で「窃盗容疑」での取り調べを受けたが、そのいきさつも不可解だ。九年前に中森社長宛に出した自分の手紙が社員の目に触れるように社長の机の上に放置されていたため、会社役員に撤去を申し入れ。しかし一カ月半経ってもそのままだったため、藤原さんは一月ごろにその手紙を回収。ところがその後、柏署の交番勤務の巡査部長が突然同社に現れ、被疑事実を示さず社員への事情聴取や指紋採取を繰り返したという。中森社長が「会社の重要書類が盗まれた」として被害届を出していたことが後日判明。藤原さんと弁護人は「警察が労働組合弾圧に手を貸すことになる」との申し入れ書を柏署に提出している。

 こうした異様な組合攻撃に、二〇人で結成された組合支部は現在六人に。藤原さんは「村山富市元首相や地元の自民党議員ともつながりが深い中森社長だが、団体交渉には姿を見せず、組合つぶしに奔走しているように見える。健全な労使関係が築かれるよう多くの方の支援をお願いしたい」と話している。ナノテック支部の代表メールは Mail jmiu_nanotec@yahoo.co.jp

(片岡伸行・編集部、11月8日号)

日本学生支援機構の利息収入は232億円――奨学金はサラ金よりも悪質

若者に苦境を強いる奨学金の実情を知ってほしい――。反貧困全国キャラバン2013のシンポジウム「奨学金 何が問題なのか?」が一一月四日、神戸市で開かれ、同問題に詳しい中京大学の大内裕和教授が実情を紹介した。

「成績優秀者などで無利子に貸与される第一種より、多くは利息付きの第二種。たとえば、毎月一〇万円借りれば利率三%で返還総額は六四六万円。毎月二万七〇〇〇円となり完済まで二〇年かかる。非正規労働にしか就けない若者に返せるわけがない。返済の順が延滞金、利子、元金なのでいつまでたっても元金が返還できない」と指摘。「ともに奨学金を借りていた大卒の二人が結婚すれば夫妻で一三〇〇万円近い借金を抱えることすらある」と話した。

 また、「年配の人があまりにも実情を知らない。いまだに『それなら国立大学に行けばいい』などと言ったりする。子どもの教育を母親任せにする日本では、これだけ重要なことをお父さんが知らないことも多い」とも指摘した。

 若者をとりまく惨状について大内教授は「一九八四年の中曽根政権での日本育英会法改正で有利子制度導入後、橋本政権で無利子枠を拡大、小泉政権で日本育英会を日本学生支援機構にした。奨学金制度の悪化はここ数年で激変し、新自由主義の深まりと同時進行」とした。元高校教師で大学へ通った息子が奨学金を借りたという新原三恵子さんは「実際はローンなのに奨学金という名前で勘違いさせられている。こんな実態を高校教師すらよく知らない」と話した。

 聖学院大学の柴田武男教授は「学生支援機構はサラ金よりも悪質とも言えるが、日本育英会が母体で国民が信用してしまっている」と指摘した。二〇一〇年の利息収入は二三二億円、延滞料三七億円。金の行き先は原資に無関係な銀行と債権回収会社なのだ。奨学金制度の闇をあぶり出すときだ。

(粟野仁雄・ジャーナリスト、11月8日号)

自衛隊が沖縄の無人島で大規模な離島奪還訓練――「中国への刺激」を懸念

 九州、沖縄を中心に自衛隊三万四〇〇〇人を動員した大規模な実働演習が一一月一日から一八日までの日程で始まった。沖縄の無人島で上陸訓練も実施される。事実上の離島奪還訓練で、尖閣をめぐる領有権で関係が悪化する中国を刺激するのでは、と懸念されている。上陸訓練は那覇市の南東約四〇〇キロにある沖大東島。米軍の射爆撃場となっている。陸自普通科連隊(歩兵)が、海自の輸送艦で島に近づいたり、空自戦闘機が射撃訓練したりする予定だ。

 自衛隊による訓練は時代ごとに変遷する。冷戦中ならソ連軍の侵攻に対処することだったし、その後は対テロ対策などが注目された。そして現在の南西諸島の島嶼防衛は中国を意識しているはずだ。

 侵攻対処、テロ対策と離島奪還の違いは何か。侵攻対処は対ソ全面戦争を想定したし、テロ対策も北朝鮮のコマンドー部隊に都市部や原発などを襲われたら、という映画のようなシーンを想像させた。いずれもリアリティに欠けた。

 しかし沖縄で離島奪還訓練となると話は違う。尖閣諸島の領有権をめぐる中国との緊張があり、一部メディアも今回の訓練が中国を刺激しかねない、と書いている。かりに中国側も対抗して大規模な演習を実施すると、沖縄周辺の海はさらに荒れ狂う。住民にとっては実に迷惑なことだ。

 そもそも「奪われた離島を地上部隊が上陸作戦で奪還する」という限定的な軍事作戦は、果たして合理的なのか。制空権、制海権を確保していれば、島は護られるというのが常識とされる。さらに日本が国土防衛の頼みとする米側も本音のところ「尖閣をめぐり日中が撃ち合うとは、ばかげた、滑稽な発想」(ジェフリー・ベーダー元米国家安全保障会議アジア担当上級部長)と見なす。米国では、上陸作戦をお家芸とする海兵隊の不要論が絶えない。自衛隊が海兵隊の真似をするのが、時代の要請なのか。

(屋良朝博・ジャーナリスト、11月8日号)

被災地の巨大防潮堤建設問題――安倍昭恵氏が見直し呼びかけ

10月31日の「東北の美しい未来を考えるフォーラム」で発言する安倍晋三首相の妻の安倍昭恵氏。夫は何を思うのか。(撮影/横田一)

10月31日の「東北の美しい未来を考えるフォーラム」で発言する安倍晋三首相の妻の安倍昭恵氏。夫は何を思うのか。(撮影/横田一)

 被災地の巨大防潮堤(総事業費八〇〇〇億円。総延長距離三七〇キロメートル)を検証する集会「東北の美しい未来を考えるフォーラム」が一〇月三一日、衆議院第一議員会館で開催され、約三八〇人が参加した。

 冒頭で主催者の一人で安倍晋三首相の妻である安倍昭恵氏が挨拶、「防潮堤はどこに必要で、どこは必要でないのかをみんなで考え直したい」と趣旨を説明。巨大防潮堤による景観破壊や、海が見えなくなることによる危機感喪失の問題点を指摘し、「『本当に防潮堤を作っていいのだろうか』『本当に美しい日本の復興なのか』ということを考え直してほしい」と訴えた。

 続いて「巨大防潮堤についての検証」と題し首都大学東京の横山勝英准教授が講演。「仙台平野とリアス式海岸の違いが(根拠となる)法に反映されているのか。一〇〇万都市を抱える仙台平野では防潮堤建設で四~五キロの(背後地の)浸水を防げるため、費用対効果は非常に大きい。しかし、リアス式海岸では守る場所が非常に狭く、しかも高台移転で法律上住めない場所になっている」と費用対効果の乏しさを指摘。高台移転と巨大防潮堤が“二重投資状態”であり、人の住めない危険区域の田畑などを守るために防潮堤建設費を投じる愚行ぶりを浮彫りにした。

 これを受ける形で「防潮堤を勉強する会」発起人の安藤竜司氏(宮城県気仙沼市)も、こう訴えた。「海とともに気仙沼を再建しようとしてきたのに、国や県の役人から『中央防災会議で決まったことだから巨大防潮堤を受け入れないと駄目』と言われる。再建に向けて努力する気持ちを折られてしまう。“復興災害”と呼んでもいいくらいで、今こそ政治の力で『巨大防潮堤はおかしい』と言ってほしい」。

 すると、昭恵氏の紹介で集会に参加した自民党の片山さつき参議院議員は「巨大防潮堤がリアス式海岸にも必要なのかは疑問。環境委員会など国会で取り上げるべき」と意気込んだ。

 気仙沼などの防潮堤の建設予定地を視察するなど、この問題に精力的に取り組む昭恵氏は一一月二日にも、東日本大震災で壊滅的被害を受けた岩手県大槌町を訪問し、碇川豊町長と意見交換。翌日は同町の住民有志による「まちづくり文化祭――おらだぢのまちはおらだぢでつぐっぺ!」に参加、ここでも挨拶をした。

 大槌町は巨大防潮堤見直しの“発祥地”でもある。「赤浜の復興を考える会」(川口博美会長)がリードする形で住民が話し合いを重ね、行政が決定した巨大防潮堤の高さを低くする計画見直しを勝ち取ったためだ。そのコンセプトは「津波に強い街づくりではなく、津波に強い人づくり」(川口氏)。巨大防潮堤に頼るハード一辺倒ではなく、防災訓練などソフトを重視する発想。この成功事例を学ぼうとして防潮堤見直しのネットワーク「海の民連絡協議会」や「防潮堤を勉強する会」などの住民団体が三陸沿岸で発足していった。

 小さい町ながら先駆的な動きが起きた大槌町では、行政主導のコンクリート(ハード)中心の復興事業から、住民と行政が協同する形に転換しようとする試みも始まった。それが、「住民まちづくり運営委員会」が呼びかけた三日の会合。約三時間半の大半が、隣の釜石市を含む地域住民のフリーディスカッションで、体育館に並べられた机を囲んで巨大防潮堤を含む街づくり全般について自由に議論をしていったのだ。

 冒頭で成功体験を話したのが、一九九九年の台湾の大地震で被害を受けた桃米里村の鐘雲暖氏。この村では震災後、住民が議論を繰り返す中で合意に達し、「観光と農業を二本柱にした地域興し」に取り組み、自然を活かしたエコツアーなどで村民の収入が増えたという。

 三時間半に及ぶ会合の最後を、昭恵氏がこんな感想で締めた。「大槌がモデルケースになって、過疎や高齢化に直面する全国の自治体を励ましてほしい。主人にも伝え、国が支援するようにしたい」。

 巨大防潮堤などの行政主導のコンクリート中心の復興事業を、安倍政権が見直すのかが注目される。

(横田一・フリージャーナリスト、11月8日号)