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1年2カ月ぶりに原発全停止――再稼働反対運動は全国各地へ

9月14日、東京・亀戸での集会後パレードに出発する参加者。(撮影/伊田浩之)

9月14日、東京・亀戸での集会後パレードに出発する参加者。(撮影/伊田浩之)

 関西電力大飯原発4号機(福井県おおい町)が九月一五日、定期検査で発電を停止。昨年七月以来一年二カ月ぶりに国内の商業用原発すべてが止まった。この日の前後、原発の再稼働に反対するさまざまな集会が全国で開かれた。

 東京都江東区の亀戸中央公園では同一四日、作家の大江健三郎さんら知識人でつくる「『さようなら原発』一千万署名 市民の会」が呼びかけた集会があった。主催者によると、労組などを通じた全国への参加要請はしなかったものの、約九〇〇〇人が集まった。

 作家の落合恵子さんは「福島第一原発の事故の責任は東電はじめ、どこも取っていない。それがこの国の現実です。しかもザルと呼ばれる新基準のもと電力会社は再稼働を申請している。命とおカネのどちらを取るかという時におカネをわしづかみする人たちがこの国を動かしていることを忘れてはならない。“倍返し”じゃない、私たちは一千倍返しをしていく。この国にきっちり落とし前をつけさせてもらおう」とあいさつした。

 大江健三郎さんは「(汚染水がコントロールされていると述べた安倍)首相のウソがどのように日本への評価にはね返ってくるか、それを引き受けていくのも次の世代。そのことを考え続けないといけない。オリンピックが終わればなにも残っていない、オリンピックが残すものはない。私たちに残っているのは、この大きな重い原発の問題。私は必ずしもオリンピックが来るなと言っていないけれど、将来の子どもたちのために生きていける社会・時代・環境を残すことで志を一緒にする人たちと行動をともにしたい」と話した。

 現在、新しい規制基準に基づき、四電力会社が計一二基の原発の再稼働を申請しており、原子力規制委員会で審査が進んでいる。

 集会では、早ければ年末の再稼働が狙われているとされる原発について地元から報告があった。泊原発は小野有五さん(北海道大学名誉教授)が、伊方原発は門田鈴枝さん(原発さよなら四国ネットワーク)が、川内原発は下馬場学さん(鹿児島県護憲平和フォーラム)が危険性を報告し、今後の反対集会への参加を呼びかけた。

 ルポライターの鎌田慧さんは「原発ゼロのしんとした安全な平和な日々がもう一度明日からはじまる。絶対これ以上再稼働を認めないという決意の日でもあります。原発がなくても何の不自由もないことを毎日明らかにしていく日々です。そのことが(みんなに)広がると原発ゼロでいいとなる。汚染水問題は世界に対する犯罪でもあるし、未来の人類に対する犯罪。絶対に再稼働を認めない思いで行進をしましょう」と締めくくった。

 再稼働を阻止する闘いは、各地域の取り組みが一層重要な新しい段階に移る。これまでの絆を生かせるかどうかがカギになりそうだ。

(伊田浩之・編集部、9月20日号)

会議傍聴者の言動を記録――都教委が異常な監視

 

傍聴人の言動を監視した都教委の監視記録。情報公開請求で判明した。(提供/永野厚男)

傍聴人の言動を監視した都教委の監視記録。情報公開請求で判明した。(提供/永野厚男)

  東京都教育委員会が七月二五日の会議傍聴者の言動を、事務局職員に監視・記録させた用紙の内容が九月四日、情報公開請求した都民への取材で明らかになった。

 都教委の定例会等の傍聴者は開始前、番号を振った申込書に氏名・住所・年齢を書かされる。都教委は「七月一一日の定例会で、ある傍聴者が議事妨害した」とし、同月二五日の定例会から傍聴席に申込番号と同じ番号を付け、職員一〇人が定員二〇人の傍聴者を背面監視、一人一人の言動(○時○分)と性別、特徴(服の色、眼鏡、ネクタイ、髪型等)をA4判用紙に記録する態勢を敷いた。

 七月二五日の記録には、(1)審議時間外に「実教出版防(ママ)害はダメ」「都教委は不公正。自分たちの考えと合わないと……」「だから育朋(ママ、「鵬」の誤字)社をとったのね」と複数の男女が発言、(2)審議時女性が「報道規制」と言った、などの記述があり、傍聴席の番号付きの紙を入室直後「持ち帰っていい?」と質問した一言や、「首を横に振った。前かがみになって資料を見ている」といったしぐさまで監視・記録していた。

 同日は「君が代強制問題に触れた実教出版教科書の選定は不適切」とした全都立高校長宛通知撤回を求める請願を、教育委員会が審議なきまま実質不採択にした。(1)はそのことをめぐる発言。(2)は不採択決定直後、警察官僚出身の竹花豊委員が傍聴席横の報道陣に「権限なき者がモノ言うのが『介入』。都教委がその権限と責任で採択を行なうのに、一部メディアが通知を『都教委の介入』と報じたのは極めて不適切」などと“説教”したことに起因する。

 神奈川県教委や東京の区市教委にこういう監視態勢はなく、傍聴者有志が「都個人情報保護条例に基づき都教委自身が作成した『個人情報取扱事務届出事項』にない傍聴者の個人情報収集は違法だ」と抗議した。都教委教育政策課の神山直子担当課長は「客観的事実・状況を記録しただけ。会の円滑な運営上、必要だ」と回答した。

(永野厚男・教育ライター、9月13日号)

アマゾンの“値引き販売”に待った!__再販制度が崩壊すれば出版文化は危機に(高須次郎)

 大手インターネット通販サイトのアマゾン社(Amazon.com Int’l Sales, Inc.)が二〇一二年八月から学生を対象に書籍の定価の一〇%をポイントとして還元することは、出版社が決定した定価での販売を書店に義務づける再販売価格維持契約に違反する値引き行為にあたるとして、中小出版社九七社が加盟する日本出版者協議会(出版協)は昨年一〇月以来、三度にわたり同社に中止を求めてきた。

「(出版協は)契約当事者ではない」との理由で同社は回答を拒否。現在までサービスを継続しているため、出版協加盟社のうち五一社は同社に対し問題の「Amazon Studentプログラム」から自社商品を一カ月以内に除外するよう求める申入書を八月七日までに送付した。除外しない場合には再販契約に従い、取次店に対し自社出版物の同社への出荷停止を指示することもある旨の警告をしている。除外を求めた五一社の点数は四万一七四〇点、アマゾンデータベース約七〇万点の六%だ。

米アマゾン社CEOが『ワシントンポスト』買収へ。アマゾンによるメディア支配の始まりか。(提供/AP・AFLO)

 読者にとって、ポイント制による値引き販売は歓迎すべきことで、出版社がなぜ反対するのか理解に苦しむ向きも多いだろう。だが、学問芸術といった人間の知的創造物である著作物を書籍・雑誌などによって伝達する行為は、一国の学問芸術、文化の普及ないし水準の維持に欠かせないものだ。多種多様な著作物が普及し、国民に均等に享受されること。離島・山間・僻地などを含め全国どこでも同じ値段で購入できることが、社会の公正・公平な発展に役立つ。

 その意味で、書店による値引きを禁じた再販売価格維持制度(再販制度)は、著作物の普及という文化的、公共的、教育的役割を果たすのに適しているとされ、独占禁止法制定後も著作物については例外的に許されてきた。そして再販制度のもとに、出版社、取次店、書店は再販契約を結び、その遵守を約している。

 再販制度=定価販売によって、本の定価は物価の優等生といわれるほど安定し、返品可能な委託販売制度と相俟って、出版物の安定的な再生産を確保し、出版物の多様性と読者の知へのアクセスを保障、言論・表現の自由という私たちの社会のもっとも基本的な価値を守ってきた。

 また出版物は、生鮮食品などの商品と違い、同じテーマ(例・原発)を扱ったとしてもそれぞれで内容が異なる“非代替性”が強い商品で、一人の読者が同じ本を反復消費することが少ない。したがって多種多様な出版物が生産供給されることで読者は利益を得られる。

 著作者の収入となる印税は、本の定価と印刷部数で支払われているが、再販制度が崩壊し、寡占取次によって買い叩きが行なわれるようになれば、印税も不安定かつ減少することが予想される。結果、企画は売れ筋に集まり、“売れない”とされる硬い本は排除され、そういった出版物を多く出す中小出版社の経営は苦しくなるだろう。

「Amazon Studentポイント」は学生に限定されているが、一〇%という高率のポイント還元がすべての読者に拡大されることになれば書店への影響は決定的になる。すでに書店間のポイントサービス合戦を誘発しつつあり、その原資は結局、出版社に転嫁され、本のカバープライス(定価)が上がる。

 アマゾンが高率のポイント還元ができるのは、日本の法人税や消費税を払ってないからという指摘もある。書店の営業利益が〇・三%程度しかない現在、ポイント合戦に耐えられない書店は消えるしかない。長期の出版不況で書店数はピーク時の二万三七七六店(二〇〇〇年一二月)から約四割減少し、一三年五月には一万四二四一店になった。丸善、ジュンク堂書店、リブロ、ブックファーストなど有名な全国書店が経営危機に陥り印刷資本や取次店の傘下となり、アマゾンの独り勝ちが続いている。消費税値上げはアマゾンをさらに有利するだろう。

 回答期限の八月二〇日、アマゾン社は回答を拒否。今後、アマゾン社への卸元である取次店の回答次第では出荷停止に踏み切る予定だ。
(たかす じろう・一般社団法人日本出版者協議会会長。緑風出版代表。9月6日号)

 

「君が代」不起立・不伴奏処分訴訟――最高裁が全員一致で上告棄却

「君が代」不起立・不伴奏処分取り消しなど四つの訴訟の最高裁判決言い渡しが九月五、六の両日あり、高裁判決を不服とした教職員らの上告がすべて棄却された。

司法記者クラブで会見する原告ら。左から2人目が筆者。(提供/レイバーネット)

司法記者クラブで会見する原告ら。左から2人目が筆者。(提供/レイバーネット)

 訴えていたのは筆者を含む小中高校・特別支援学校教職員と元教員ら計七四人。最高裁判決は「主文 本件上告を棄却する。上告費用は上告人らの負担とする」などというもので、これによって東京高裁判決が確定。二四人・二八件の減給・停職処分は違法とされ取り消されたが、五一人・五二件の処分が確定することになる。

 処分が違法か否かの判断基準は、(1)「思想および良心の自由」への一定の制約はあるものの最も軽い戒告処分は違法ではない(2)原則、戒告を超える重い処分は違法(3)ただし過去の処分歴等、学校の秩序などを壊した具体的事情が「処分の不利益」を上回れば重い処分も許容される、というもの。これは二〇一二年一月一六日の最高裁判決を踏襲しており、筆者に対してのみ(3)を適用して減給・停職一カ月の処分を妥当とする不当な判決だ。

 最高裁の判決文は、「裁判官全員一致の意見」と明記。退官した宮川光治裁判官(昨年一月の最高裁判決で「すべての処分を取り消すべき」との反対意見)と交替した弁護士出身の山浦善樹裁判官は自己の意見を表明していない。

 吉峯啓晴弁護士は「判決全体は評価できないが、戒告処分以上は問題だという基準はかろうじて立ちつつあり、それはゼロではなく第一歩」としつつ、「司法が政府に追随するがゆえに、結論先にありきの判決なのだ」と批判した。

 上記(3)の判断基準は、処分者側(東京都教育委員会)にフリーハンドで累積加重処分をしてよいとのお墨付きを与えた。今春、不起立四回の田中聡史さんに減給処分を出した現実は、それを実証している。今回それがより固定化されてしまったことを懸念する。

(根津公子・被処分者、9月13日号)

無意味な「集団的自衛権行使」__無理に解釈改憲しても米国は喜ばず(田岡俊次)

 安倍首相は八月八日、元外務省国際法局長、前駐仏大使の小松一郎氏を内閣法制局長官に任命するという異例の人事を行なった。国際法は知っていても、法制局の経験皆無の人物を長官に据えたのは、何としてでも「集団的自衛権行使」を認めるように憲法解釈を改めたい、という首相の執念の表れだろうが、それが日米関係の強化に役立つとは思えない。

「集団的自衛権はあるが行使はできない、というのがおかしい」と右傾メディアや政治家は言ってきたが、実は日本は六〇年以上それを行使してきた。一九五一年に結ばれた日米安保条約(旧安保)の前文は、「国連憲章はすべての国が個別的及び集団的自衛権の固有の権利を有することを承認している。これらの権利の行使として」、日本が米国の駐留を認めることを明記している。同盟条約を結んで、外国軍に基地を貸すこと自体が集団的自衛権の行使だが、法制局は「自衛権は国際紛争解決の手段としての武力行使はしないから合憲」との論理を補強するため「集団的自衛権行使」を「海外での武力行使」と狭く解釈して使ってきた。

「小松法制局」が集団的自衛権行使容認の憲法解釈をしても、「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」との憲法九条の条文がある。ほぼ同じ規定は自民党の改正憲法草案にも、国連憲章、対日講和条約、日米安保条約にもあり、イラク戦争のような戦争に協力は本来できないはずだ。

 集団的自衛権で日本が共同防衛行動を取れるのは同盟国である米国、または自国の安全保障上密接な関係がある国(韓国)が攻撃を受け、自衛への協力を求めてきた場合だが、米国は第二次大戦以降、自衛戦争はしたことがない。韓国も通常戦力では北に対し圧倒的優位を保つし、日本に対する反感も強く、派兵を求めることはまずありえない。将来可能性があるのは、米軍艦が世界のどこかで攻撃を受けた場合、「軍艦は領土と同然。米国は自衛行動を取る」と、日本に共同行動を求める場合だ。

 だが、米国のベトナム本格参戦の契機となったトンキン湾事件(一九六四年八月二日と四日)は、米駆逐艦が南ベトナム工作員の潜入を援護するため二日に北ベトナム沖で行動中、北ベトナム魚雷艇と交戦したもので、四日の「北ベトナム海軍の攻撃」は全くの捏造だった。米国の主張を鵜呑みには危うい。

     首相は「米国の厄介者」?

 いま論じられる集団的自衛権行使の四類型の1は、「公海上で行動中の米軍艦の防護」だが、その場合に海上・航空自衛隊が米軍艦を守る目的が日本の防衛ならば、個別的自衛権の発動だろう。類型の2は「米国に向うと見られる弾道ミサイルの迎撃」だが、北朝鮮から米国西岸に向かうミサイルはロシア沿海州上空からカムチャッカ半島上空を通過し、米国東岸へはほぼ真北に飛び北極圏を経由する。日本のイージス艦がロシア上空のミサイルを迎撃するのはほぼ不可能だ。グアム、ハワイを攻撃するなら日本上空を通るが、それと引き換えに北朝鮮は米国の報復攻撃で滅亡するから、抑止は十分効いている。類型の3、4はPKOでの武器使用規制の緩和、広範な後方活動だが、これは本来集団的自衛権とは別の話だ。自民党の改正憲法草案では、国防軍が「国連等の」とか「国際的な」活動ができるとし、国連と無関係な多国籍軍への参加を狙っている。

 だが米軍は二〇一一年末にイラク撤退を完了、今年六月にアフガニスタンの治安権限も地元に委ねて撤退を急ぐ。イラク戦争批判で成立したオバマ政権にとって、失敗した前ブッシュ政権の要請にいまどき日本が応じると言っても、苦い思いだろう。二月の安倍首相の訪米前、米側が「集団的自衛権は議題にしない」と通告し、会談後の共同記者会見も行なわず、六月の北アイルランドのG8サミットでの日米首脳会談も拒否した。米国の国家目標は「共産圏封じ込め」から「テロとの戦い」を経て、「財政再建、輸出倍増」となった。安倍氏は、「米国の厄介者」の地位を固めようとするかに見える。

(田岡俊次、8月30日号)

排外主義デモにカウンター攻撃――新宿大久保公園でデモ隊が激突

排外主義デモに抗議に来たカウンターデモのメンバーが、機動隊に囲まれる。(撮影/武馬伶子)

排外主義デモに抗議に来たカウンターデモのメンバーが、機動隊に囲まれる。(撮影/武馬伶子)

日本侵略を許さない国民の会、通称「日侵会」による排外主義デモが九月八日に行なわれたのに合わせ、その中止を求めるカウンターデモ参加者が、出発点となる新宿区の大久保公園に集まった。

「オリンピックが決まってるやろ。恥ずかしいことすんな」。男性が声を荒げて機動隊に詰め寄っていた。デモが始まる数時間も前から一〇〇人以上の群衆が、公園近くで通行止めをしている警察関係者と押し問答を繰り返し、あたりは物々しい空気に包まれた。

「日侵会」デモが出発する時には、機動隊が封鎖していた道だけではなく、通りを挟んだ向かい側の道路にも群衆が膨れ上がり「ヘイトデモ中止!」と口々に叫んだ。

 栃木県から来た男性(四二歳)によると、カウンターデモは「ツイッターで自発的に集まった人がほとんど。主催者がいるわけではない」という。

「おーい、ふざけんなよ、お前ら」

「だれがこの国をつくったんだ」

「うそつきー帰れ!」

 機動隊を挟んで向かい合う排外主義デモとそれに抗議する人々。罵倒に対して罵倒を返す。異なる意見のぶつかり合いはほとんど言葉として聞き取れず、じきに、通路に出るカウンター側は押し戻された。

 詰め寄るカウンターデモに、ある機動隊員は「あなた方の気持ちはわかる。しかし、すべてデモとして申請されたものをいい悪いと判断することはできない」と苦しげに答えていた。

 憲法で保障された「表現の自由」に則ったデモを、警察が止めることはできない。

 日侵会デモは機動隊に守られる形で公園の外に出ていった。「差別を許す国にしてどうする。警察はレイシストを守るのか」(カウンターデモ参加者)。 

 この国では七年後、世界のスポーツの祭典「オリンピック」が開かれ、世界の注目を集める。

(武馬怜子・フォトジャーナリスト、9月13日号)

東京五輪開催決定と放射能汚染水問題――世界に嘘をついた安倍首相

 二〇二〇年夏季オリンピック・パラリンピックの東京開催が決まったが(九月八日早朝)、翌九日の東京電力での会見では、ブエノスアイレスで開かれたIOC(国際オリンピック委員会)総会での安倍晋三首相の発言に質問が集中。事実に反するプレゼンテーション(説明)だとの批判が噴出している。

 安倍首相は「(汚染水の)状況はコントロールされている」「健康問題については、今までも現在もそして将来もまったく問題ないということをお約束します」などと国際社会にアピールした。

 発言終了後、汚染水について質問された安倍首相は「結論から申し上げると、まったく問題ありません。どうか新聞のヘッドライン(見出し)ではなく、事実を見ていただきたいと思います。汚染水による影響は、福島第一原発の港湾内の〇・三平方キロメートル範囲内の中で完全にブロックされています」と明言。

 しかし、事実誤認をしているのは安倍首相の方だ。八月二三日付『読売新聞』夕刊は「港湾外に汚染水強まる」とのヘッドラインで、タンクの汚染水が排水溝を通じて港湾外に漏れ出ている可能性を指摘。他紙も同じ内容の記事を出し、東電も会見で「漏れた汚染水が排水溝を通して海に出た可能性は否定できない」と認めていた。

 この「港湾外」への汚染水漏れの可能性を安倍首相は無視し、「港湾内」だけを取り上げる“視野狭窄的な説明”でIOC委員を騙したのと同じではないか。

 そこで東電に「(安倍首相は)嘘を言っているか、正確に説明しなかったのではないか」と聞くと、「コメントできない」と回答。「大問題になるのではないか」とも聞いたが、東電はノーコメントを繰り返し、安倍首相の明確な事実誤認を認めようとしなかった。

 また、「完全にブロックされている」と断言した根拠について、安倍首相は次のように説明した。

「福島の近海で私たちはモニタリングを行なっています。その結果、数値は最大でもWHO(世界保健機関)の飲料水の水質ガイドラインの五〇〇分の一であります。これが事実です。そして、わが国の食品や水の安全基準は世界でも最も厳しい、厳しい基準であります。食品や飲料水からの被曝量は日本のどの地域においても、この基準の一〇〇分の一であります」

 海水を淡水化して飲む人などいないのだから、飲料水の基準を持ち出すこと自体がナンセンス極まりない。海洋への汚染水漏れの影響は、魚など海洋生物中の放射性物質濃度が増え、それを食べてしまうリスクが高まるという形で現れる。福島沖では基準値を超える魚が見つかり、汚染水漏れで試験操業が延期された事態も招いている。だが、安倍首相はまったく問題ないように印象づけた。

 そこで「福島沖の基準を超える魚が流通ルートに乗ったら健康被害を起こす可能性があるのではないか。とても安全基準の一〇〇分の一に収まらないのではないか」とも東電に聞いたが、これについてもノーコメントだった。

 一方、「安全」を強調された原発事故被災者たちは怒りが収まらない。双葉町出身で首都圏に避難している六〇代の女性は「なんで今、国を挙げてやらなきゃいけないの? 今やらなければならないのは被災地対策でしょう。二年半も経っているのに何もできていない。そんなに福島が“安全”なら福島でオリンピックをすればいい!」と怒る。また五〇代の女性も「東京は安全だ、日本は安全だと強調したが、私たちの街はもう住めないのです。私たちは日本人じゃないのでしょうか?」。同じく避難者で子育て中の三〇代の主婦は「健康への問題はない? すでに数十人の子どもに甲状腺がんが発生しているのに」と憤る。

 事故収束のコントロールはできず、汚染水は外海に流れ、候補会場には放射線量の高い競技場が複数ある(本誌九月六日号既報)というのが実態だ。いくら五輪を招致したいとはいえ、国際社会に嘘をつけば日本の信用が低下することは明らかではないか。

(横田一、これひさかつこ&本誌取材班、9月13日号)

汚染水漏れ東電の責任問う――公害罪容疑で告発

福島第一原発で高濃度の放射能汚染水漏れ事件を引き起こした東京電力と同社幹部らが、公害犯罪処罰法違反の容疑で九月三日、刑事告発された。

 同日、福島県警に対して告発したのは、福島原発告訴団の武藤類子団長ら三人。同告訴団は昨年六月、勝俣恒久・東電前会長ら三三人を業務上過失致死傷容疑などで福島地検に対して告訴・告発をしているが、今回の告発はそれに続くものだ。

 前回の告訴・告発は、原発事故を起こした関係者個人の刑事責任を問うものだが、今回の告発は、事故発生から二年以上が過ぎた今もなお、大量の放射能を太平洋に垂れ流し続ける東電の責任を問うもの。同社の幹部らだけでなく、法人としての東電も告発された。

 汚染水対策の責任は東京電力に課せられている。しかし、東電は汚染水管理のために必要な注意義務を怠り、汚染水タンクから高濃度の放射能汚染水を漏洩させる一方、地下水や海洋にまで汚染を拡大させていた。

 同日の記者会見で、同告訴団の河合弘之・弁護団長は、抜本的な汚染水対策を講じると一〇〇〇億円もの費用がかかり、東電が債務超過に陥り、会社が破綻するとして対策が先送りにされたとする見方を証拠とともに示しつつ、

「いまだに強制捜査すらしていない東京地検と福島地検が、東電に“何をやっても許される”という慢心を与えた。地検への告発も考えたが、前回の私たちの告訴・告発に対し、地検は“どうすれば不起訴にできるか”しか検討していないようだ。もう信用できない」

 と、福島県警への告発に踏み切った真意を語った。

 八月以降、原発事故の収束が程遠い状況にあることが明らかになる一方で、同告訴団の告訴・告発は不起訴になるとの観測記事がまことしやかに流されている。

 福島県警の対応が注目される。

(明石昇二郎・ルポライター、9月6日号)

東京高裁「値下げ禁止圧力は違法」――セブン-イレブンに賠償命令

会見で勝利宣言を行なう原告ら(前列右から4人)と中野和子弁護士(左端)。(撮影/渡辺仁)

会見で勝利宣言を行なう原告ら(前列右から4人)と中野和子弁護士(左端)。(撮影/渡辺仁)

セブン-イレブン本部が弁当や総菜・牛乳などの見切り販売(値下げ販売)をオーナーに禁止させている違法性を問うた裁判で、東京高等裁判所は八月三〇日、オーナー側の訴えを全面的に認め、セブン-イレブン・ジャパンに対して、原告オーナー四人に損害賠償金「一一四〇万円」を支払うよう命ずる判決を出した。

 斎藤隆裁判長は判決文で、加盟店オーナーを独立した経営者であると認めた上で、セブン-イレブンの指導について、見切り販売を行なうと契約更新をしないと強制したなどと指摘、独占禁止法の優越的地位の濫用にあたると判断した。

 二〇〇九年六月には、オーナー側からの告発で公正取引委員会がセブン-イレブン本部に立ち入り調査に入り、排除命令を出していた。セブン本部はそのとき、「加盟店の廃棄品の原価を本部が一五%負担する」と提案して幕引きをはかり、抜本解決を避けてきた。だが、今度の判決でもう逃げることができなくなりそうだ。

 原告オーナーと弁護団は、判決後の記者会見で、「四年前に公取委の排除命令が出ており、損害賠償が認められるのは当然だ」と勝利宣言。原告の須田康市さんは「勝訴したが、賠償額は一〇分の一にも達しておらず不服だ」と語った。

 今回の見切り裁判や「コンビニ見切り制限一一〇番」などでオーナーを支援してきた中野和子弁護団長は、「本部の判断で見切り販売を行なっているのは一万五〇〇〇店中、一%にすぎない。このフランチャイズ契約は不平等だ」と指摘、フランチャイズ規制法の必要性を強調した。

 これでコンビニ弁当などの見切り裁判は、福岡地裁に次ぐオーナー側の全面勝訴に。セブン-イレブンが最高裁に上告しても、最高裁では新たな証拠調べなどをしないことから、このまま確定する可能性が高い。

(渡辺仁・経済ジャーナリスト、9月6日号)

東京オリンピックの候補会場で測定――放射線量の高い競技場が複数

オリンピック候補会場の空間放射線量の測定結果を発表する「測る会」のメンバー。(撮影/桐島瞬)

オリンピック候補会場の空間放射線量の測定結果を発表する「測る会」のメンバー。(撮影/桐島瞬)

二〇二〇年夏のオリンピックの立候補都市になっている「東京」の候補会場には、空間放射線量が環境省の除染基準を上回る場所もあった――。

 オリンピック候補会場の放射線を測る市民の会(以下、測る会。筑紫建彦コーディネイター)は八月二八日、首都圏にある三七候補会場の測定結果を報告する集会を東京・文京区民センターで開き、候補会場では最高で毎時〇・五マイクロシーベルト(μSv)近い放射線量が測定されたことを発表した。結果は、国際オリンピック委員会(IOC)のジャック・ロゲ会長にも送ったという。

 測る会は今年四月から五月にかけ、東京、神奈川、埼玉の全候補地を測定した。北海道と宮城にある計二会場は省いた。

 測定メンバーは、趣旨に賛同した市民三六人。各自所有の測定器を使って一施設あたり三回ずつ測定した。誤差を少なくするために、中間の値を記録。土壌測定は民間の放射能測定所に依頼した。

 地上一メートルの空間線量が最も高かったのは、東京都臨海部にある海の森クロスカントリーコース。馬術競技が予定されるこのコースは現在造成中だが、北西の角地にある土の斜面で毎時〇・二九μSvを記録した。

 国立代々木競技場(ハンドボール)、皇居外苑(自転車ロードレース)、東京国際フォーラム(ウエイトリフティング)などでも、軒並み毎時〇・一五μSv超え。また、競技場内ではないが、東京ビッグサイト近くにある道路上では、毎時〇・二〇μSvを計測した。

 地上五センチでの空間線量も合わせて測ったところ、馬術競技を行なう夢の島競技場で毎時〇・四八μSvとなり、ホットスポット化していることがわかった。また、この場所の土壌を採取して調査したところ、三〇四二ベクレル/キログラムの放射能が検出された。

 これは突出して高い汚染度だ。福島第一原発近くの福島県相馬市で、別の市民団体が七月に川沿いの土手の土壌を調べたところ一〇万から一〇〇〇ベクレル程だった。つまり、福島に匹敵する土壌汚染が候補会場内にあると言える。なお、ほかの競技場の土壌汚染は五〇から一〇〇〇ベクレル程だった。

 環境省では年間一ミリシーベルト(mSv)以下の被曝に抑えるために、そこから割り出した毎時〇・二三μSv相当の地域を除染実施区域に指定している。局所的とはいえ、候補会場の中には、除染が必要なほどに放射能汚染されている場所があることが証明された。

 測る会が放射線量を測定したのは、問題提起をする狙いがあった。

「都はオリンピックの東京招致に熱心だが、一方で放射能のことは全く議論されていない。競技を行なう場所の放射線量を誰も知らないのは問題だと思った」(筑紫氏)

 測定メンバーの田中一郎氏は、都の対応をこう批判する。

「これでオリンピックが決まれば、海外から訪れた人たちが内部被曝する可能性を否定できない。猪瀬(直樹東京)都知事は『東京の現在の放射線量はロンドン、パリ、ニューヨークとまったく変わりがない』と発言しているようだが、事実に反する無責任な発言だ」

 結果はIOCに加え、二〇〇カ所を超える各国の国内オリンピック委員会(NOC)に日本語、英語、フランス語で送った。九月三日現時点で、IOCから調査に関する問い合わせなどはないという。

 二〇年夏のオリンピックは、東京、イスタンブール(トルコ)、マドリード(スペイン)が立候補都市に選出。九月七日に開かれるIOC総会で開催都市が決まる。

 詳しい測定結果は、同会のホームページ(URL http://olympicsokuteikai.web.fc2.com/)で確認できる。

(桐島瞬・ジャーナリスト、9月6日号)