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さいたま市の自治会で回覧――拉致署名を事実上強要か

六月上旬、自宅のあるさいたま市の自治会の回覧で、「北朝鮮による拉致問題解決のための署名用紙」とお願い文が回ってきた。すでに回覧を終えた世帯が家族分の署名をしていた。署名した家族構成や名前はもちろん、署名しなかった世帯も容易にわかった。

 署名活動の主体はいわゆる「家族会」(北朝鮮による拉致被害者家族連絡会)と「救う会」(北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会)だが、回覧のお願い文にある問い合わせ先はさいたま市の総務課となっており、市が実施しているようにも見えた。

 これは、北朝鮮による「拉致被害者を救出する知事の会」会長を務める上田清司埼玉県知事の肝いりで、県が今年二月に公文書で各市町村に依頼文書を送ったことが発端だった。文書には、県が署名活動を推進していること、署名は県に提出することが明記してあった。そのため、県の推進する署名活動に非協力的と思われないよう多くの自治体が協力した。

「家族会」代表の地元上尾市でも島村穰市長が積極的に協力し、四月の区町会長会で市の担当者が回覧の要請をした。約九四〇世帯の区長をしている北村千代樹さん(六七歳)は、行政が特定の団体の活動を推進することに違和感を持ったことや、在日外国人もいることから、回覧での活動に異議を唱えたという。北村さんは区の班長とも話し合い、回覧で集めるのではなく、署名した人は自分で役所に届けることにした。ところが、今年の同地区の運動会に市長が初めて欠席したという。北村さんは「メッセージも代理出席もないのだから、署名と関係あるのは明らか」と怒りをあらわにした。

 小島延夫弁護士は、「署名した場合はもちろん、しなくても、誰が署名しなかったかという、容易に識別可能な情報が、多くの人の目に触れる状態に置いたわけだから、プライバシー権の侵害にあたるのではないか」と話す。

(坂本洋子・フリージャーナリスト、7月19日号)

国有地を50年間近く駐車場に――自民党の不法占拠を告発

自民党が周囲を柵で囲み、党本部敷地として使用している国有地。(撮影/成澤宗男)

自民党が周囲を柵で囲み、党本部敷地として使用している国有地。(撮影/成澤宗男)

自民党が衆議院の管理する国有地を五〇年近くも無許可・無支払いで駐車場に使用しているのは「悪質な政官癒着だ」として、東京都内の男性ら三人が七月三日、同党の安倍晋三総裁や衆議院の鬼塚誠事務総長ら五人を背任の容疑で東京地検に告発した。

 告発状によると、この国有地は自民党本部の敷地内にあり、約四〇〇坪の広さ。だが一九六六年に本部が建設されて以降、自民党は衆議院との間で賃貸契約も締結せず、賃料も支払わないで駐車場として使用し続け、今日まで至っている。原告側の主張では、正規に賃料を支払った場合、付近の地代で換算すると遅延損害金も含め計約一五億円相当になるという。

 二〇一一年一一月に民主党の調査でこの事実が発覚し、鬼塚事務総長は同年一二月の衆議院予算委員会で、自民党が国有地を無断・無償で使用しているのを認め、「今後土地管理の適正化をはかる」と答弁していた。だがその後、国側が地代を自民党側に請求した事実はなく、自民党側も国有地と隣接地の境界に仕切りコーンを設置しただけだ。

 このため原告側は、鬼塚事務総長を「第三者の利益を図りその任務に背く行為をした」として、背任容疑で告発。安倍総裁を含めて二年前の発覚以来同党の要職を務めた谷垣禎一前総裁と石原伸晃前幹事長、石破茂現幹事長の四人を、背任罪の共同正犯として告発したもの。自民党側は「問題ない」(石原氏)、衆議院側は、「告発状を確認していない」としているという。

 告発後、国会内で記者会見した原告代理人の河合弘之弁護士は、「経済産業省は脱原発のために闘っている市民が省の敷地内に建てたテントの明け渡しを求めて訴訟まで起こしながら、衆議院は五〇年近くも自民党の国有地無断使用を黙認している。これは、政・官の悪質な馴れ合いだ」と述べ、裁判で追及する意義を強調した。

(成澤宗男・編集部、7月19日号)

都教委が特定の教科書排除――事実なのに「不適切」

国旗国歌をめぐる記述が問題とされた実教出版の『高校日本史A』『B』教科書。(同社HPより)

国旗国歌をめぐる記述が問題とされた実教出版の『高校日本史A』『B』教科書。(同社HPより)

 六月二七日、来年度に東京都立高校で使う教科書のうち実教出版の「高校日本史A」と「B」に、東京都教育委員会は「都立高での使用が適切ではないことを各高校に周知する」との見解を示した。

「一部の自治体で、国旗掲揚、国歌斉唱など公務員への強制の動きがある」(概要)との記述が、「都教委の考え方と異なる」との理由で「不適切」とされたのだ。

 これは、特に、東京都と大阪府の公立学校での式典で、国旗に起立し君が代斉唱を義務付けていることを説明したものだ。

 琉球大学の高嶋伸欣名誉教授は「その説明は事実じゃないですか。文部科学省の検定でも認められている。この見解は出版社への営業妨害です」と憤る。同時に、「四人の教育委員が一言も発言しなかった」ことが大問題だと訴えた。

 六月二七日の都教委定例会を傍聴した元教員の根津公子さんは以下のように報告している。

 まず、木村孟教育委員長が「都教委の方針と異なる記述があることについて、指導部に指示して教育委員会の見解をまとめさせた」と言ってから、指導部長が冒頭の「見解」を読み上げた。

 つまり、議論の前に決定ありきだった。だが、読み上げの間もそのあとも、教育委員の一人で、『五体不満足』などの著者、乙武洋匡氏は「顔を上げずにうつむいているだけだった」。全日本柔道連盟の暴力事件に、「理事会はどんな議論をしているのか!」と理事会に厳しい態度を見せる元柔道家の山口香教育委員も無言だった。

 根津さんは「教育委員は、定例会での議題に発言する義務がある。議論前の決定ならば批判をすればいいし、わからなければ質問すればいいのに、責任放棄としか思えない」と失望を隠さなかった。

 木村教育委員長は「決定は委員の総意」としたが、その経緯を問う都教委高校教育指導課への回答要請に対する反応はなかった。

(樫田秀樹・ジャーナリスト、7月19日号)

国会議員関係政治団体の指定受けず――支出不透明な佐藤正久後援会

京都市東山区の「佐藤正久京都後援会」。国会議員団体の指定を受けていない。(撮影/三宅勝久)

京都市東山区の「佐藤正久京都後援会」。国会議員団体の指定を受けていない。(撮影/三宅勝久)

「ヒゲの隊長」こと陸自元1佐で防衛大臣政務官・佐藤正久参議院議員候補(自民)の後援会「佐藤正久後援会」(総務大臣届出・代表は元陸幕長の森勉氏)が、パーティ券の売り上げなど年間五〇〇〇万円を超す収入(繰越金込み)を得ていながら国会議員関係政治団体の指定を受けていないことがわかった。国会議員関係政治団体は、支出に関して詳細な説明義務がある。説明義務をかわすため、意図的に「指定はずし」を行なった可能性は否定できない。

 佐藤氏の事務所は「法律の定める要件からして、『その他の団体』に指定された」と釈明する。しかし「その他の団体」を国会議員団体にするかどうかは議員の選択に任されており、説得力を欠く。政治資金規正法により、国会議員は自身を支援する団体を「国会議員関係政治団体」に指定できる。指定を受ければ、寄附金控除など税制上の優遇と引き換えに、事務所費など一万円以上の支出の使途など詳細な支出の報告や小額領収書の開示、監査の義務を負う。「政治とカネ」の透明化を目指す法制度だ。

「佐藤正久後援会」も国会議員団体の届出をすることはできるが、あえてしないという選択をした。結果、同後援会は細かい支出についての説明をいっさいしていない。二〇一一年分収支報告書によれば、事務所費や人件費、「その他」など領収書のない支出が約八八三万円あるが、これらの具体的な使途報告はなく、監査もされていない。同様の「不透明」な支出は、一〇年分が五七二万円、〇九年分七一三万円。過去三年で二〇〇〇万円を超す。

 佐藤氏の後援会団体は、「佐藤正久京都後援会」など都道府県選管届けのものも多数ある。やはり国会議員団体の指定はない。「責任力」と自民党はかつて叫んでいた。その真意とは「説明責任逃れ力」だったのか。

(三宅勝久・ジャーナリスト、7月19日号)

フィリピン人75人を強制送還――人権・人道上問題と抗議

 法務省は七月八日、「不法」滞在のフィリピン人七五人を、チャーター機を使って六日に強制送還したと発表した。法務省は、一般の旅客機で一人ずつ送還する従来の方法と比べ、今回の送還方法は「費用」「安全」両面で利点があるとする。今年度予算ではマニラと北京にそれぞれ一〇〇人ずつ送還するための三〇〇〇万円が確保されており、この「数値目標」に沿って送還した形だ。非正規滞在外国人の当事者団体「仮放免者の会」(PRAJ)では、東京入国管理局や東日本入国管理センターなどへの抗議を呼びかけている。

 谷垣禎一法相は九日の記者会見で「すでに退去強制が決定されている帰国忌避者を送還した」と述べた。しかし仮放免者の会の調べでは、被送還者には退去強制令書取消訴訟の提訴期限となる六カ月を経ていない人、また提訴準備中の人も含まれていた。これは、裁判を受ける権利の侵害であり、司法を軽視した行政機関の暴走とも言うべき問題をはらんでいる。

 また、法務省は「夫婦や親子など家族がバラバラにならないよう配慮した」としているが、送還で引き裂かれてしまった事実婚の夫婦、婚姻手続き中の人も多数おり、人道上の問題も大きい。

 さらに、今回の被送還者の滞日歴は一〇年以上がほとんどで、三〇年近くに及ぶ人もいる。すでにフィリピンに生活基盤はないことが明らかな人々を同意なしに送還したことは人権上の問題がある。また、日本社会は建築現場や工場、飲食店等で「不法」と知りつつ彼らの労働力に依存してきた。いわば入管行政のさじ加減ひとつで、「不法」ゆえの低賃金でその労働力を利用することもできれば、「不法」を理由に強制送還もできる、という立場に非正規滞在者を置いてきた。モノを使い捨てるかのような一斉送還に道理があるのか。日本社会のあり方が問われている

(永井伸和・仮放免者の会、7月19日号)

参院選後に議員立法でカジノ法案提出か――バクチ合法化“オール与党状態”

 参院選での争点にはなっていないが、秋の臨時国会に法案提出の可能性が出てきた、いわゆる「カジノ法案」。六月七日には日本維新の会が衆院に法案を提出し、橋下徹・共同代表も参院選公示第一声(七月四日、大阪)で「カジノ解禁」を口にした。しかし、このカジノ法案を推進しているのは維新の会だけではない。社民党、日本共産党以外のほぼオール与野党の議員たちが仲良く顔をそろえ、これを推進しようとしている。

 そもそも賭博は刑法第一八五条で禁じられている犯罪行為だが、「経済成長」を名目にこのバクチを合法化しようというのがカジノ法案だ。政府の産業競争力会議(議長・安倍晋三首相)でも、メンバーとなっている楽天会長の三木谷浩史氏、慶應義塾大学教授の竹中平蔵氏がそれぞれカジノ推進発言。アベノミクス成長戦略の一つと目されている。茶番のようだが、議長の安倍首相自身が後述のカジノ議連の最高顧問に収まっている。

 議員立法でのカジノ法案提出の方針を決めた「国際観光産業振興議員連盟」(いわゆるカジノ議連)の名簿(四月二四日現在)によると、最高顧問に安倍晋三(自民)、石原慎太郎(維新)、小沢一郎(生活)ら四議員が就き、会長に細田博之議員(自民)、副会長には小沢鋭仁(維新)、柿沢未途(みんな)、佐藤茂樹(公明)、谷岡郁子(みどりの風)、前原誠司(民主)など各党から一六議員が名を連ねる(表参照)。党別では自民党八五人を筆頭に民主党二三人、維新の会一六人、公明党八人、みんなの党五人、生活の党二人、みどりの風一人の計一四〇人。

 地方でも猪瀬直樹・東京都知事や松井一郎・大阪府知事らがカジノ解禁を支持。一九九九年の東京都知事選で石原慎太郎氏が「お台場カジノ構想」をぶち上げて以降、カジノ併設のIR(統合型リゾート)などと呼称を変えたが、現在までに愛知、沖縄、千葉、北海道、市レベルでも仙台市、横浜市などが検討に入っているという。

 こうした自治体を支援するため、大手広告代理店の電通は二〇一一年一一月に「カジノ&観光プロジェクト部」を設置。どこを支援しているかは「お答えできない」(同社広報部)と言うが、東京ではフジテレビが推進の主役だ。三井不動産、鹿島、日本財団とともに「東京DAIBA・MICE/IR国際観光戦略総合特区」との名称で計画準備を進める。

 カジノ法案についてはこれまでさまざまな議論がされてきた。〇六年の自民党による「カジノ・エンターテインメント導入基本方針」、一一年の民主党による「特定複合観光施設区域の整備促進法案」などだ。それらの中身について触れる紙幅はないが、要は「賭博(競馬、競輪など)は公営、遊技(パチンコなど)は民営」と分類されてきた基本的な枠組みを変えるか変えないかという根本的な問題がある。また、射幸心を煽って「勤労の美風を害する」との最高裁判例(一九五〇年一一月)があり、ギャンブル依存症がもたらす家庭・社会問題の増加を懸念する声もあるほか、新たな警察利権になるとの指摘もある。

「さらなる多重債務者を生むことが容易に予想されますので、私たちは当然(カジノ法案に)反対です」と語るのは、全国クレジット・サラ金被害者連絡協議会の秋山淳事務局長。全国クレサラ問題対策協議会の中に設置された依存症問題対策全国会議が中心となって四月と六月の二回、大阪で反対集会を開き、九月には東京での開催を予定している。

 主要争点で対決姿勢を見せている各党だが、「カジノは自民党と手を組む」とは表明せずに、この法案については事実上の“オール与党状態”。その姿勢を有権者はどう見るのだろう。

(片岡伸行・本誌編集部、7月19日号)

香港で大規模な「7・1デモ」――「普通選挙」実現など求め

「香港の民主社会を守れ」などの横断幕を掲げる市民=香港セントラルで。(提供/楢橋里彩)

「香港の民主社会を守れ」などの横断幕を掲げる市民=香港セントラルで。(提供/楢橋里彩)

 日本では参議院議員選挙が始まったが、英国からの返還一六周年を迎えた香港で七月一日、「普通選挙の実現」などを求める民主団体主催の「7・1デモ」が実施された。台風警報発令中にもかかわらず若者を中心に多くの人が集まり、香港特別行政区政府のトップである梁振英行政長官の辞任を求めるプラカードを掲げている人や、不動産対策やインフレ対策への不満を背景に社会保障の充実を求める声などが目立った。

 香港の政界は親政府派と民主派に大きく分けられ、デモを主催した民主団体とは民主党、公民党などの政党や、これらと関係をもつ労働団体や女性団体などを指す。民主団体が求める「普通選挙」とは、行政長官や立法会議員を市民が直接選挙で選べるようにすること。「自分たちのリーダーを自ら選ぶことができない現行の選挙システムを変えたい」という市民の不満は増している。

 ちなみに行政長官は財界、医師、弁護士などの専門職、社会団体、議会議員などから選ばれた選挙委員による間接投票で選ばれ、任期は五年。二〇一七年から普通選挙の実施が決定しているものの、中国政府高官は民主派を長官選から排除する方針を示唆している。

 国際金融都市として大きく経済発展を遂げている人口約七〇〇万人の香港だが、日本と同様に格差や高齢化の問題が深刻化。日本と異なり生活保障が少ない香港は、退職後に最低限の生活費に窮する市民が多い。直近の選挙(昨年九月の第五期立法会議員選挙)では、議席数の拡大や直接選挙での選出枠が新たに設けられて激化。地区別の直接選挙枠では過去最高の約一八三万人が投票し、投票率は五三%だった。

「普通選挙」で実施される日本の参院選の投票率は当然、この香港立法会議員選挙を大きく上回ってしかるべきなのだが……。

(楢橋里彩・香港在住ジャーナリスト、7月12日号)

首相官邸前に2万枚の願い――「原発を未来に残さないで」

「ほうしゃのうがなくなりますように」「負の遺産である原発を未来に残さないで」――。東京永田町の首相官邸前に、色とりどりの短冊に綴られた“願い”が並んだ。

短冊に願いを託す母と子。猛暑の中、首相官邸前に2時間立ち続けた。(撮影/佐藤顕子)

短冊に願いを託す母と子。猛暑の中、首相官邸前に2時間立ち続けた。(撮影/佐藤顕子)

「原発のない世界へ・子どもたちを被曝から守ろう」と願う母たち約八〇〇人が七月七日の七夕の日、首相官邸前に集い、安倍晋三首相に脱原発の願いを訴えた。これは「100万人の母たち 七夕プロジェクト~首相に願いを~」とするプロジェクトで、今年四月から計画が進められてきた。母たちは、七夕当日までに二万枚集まった短冊を安倍首相に受けとるよう再三求めたが、何の返答もなく無視された形だ。

 同プロジェクトの呼びかけ人で脱原発を願う母子の写真集『100人の母たち』(南方新社)を出版したカメラマン・亀山ののこさんは冒頭の挨拶で、「一人の大人として、福島や他の地域でも子どもたちや大事な命が傷つけられている状況に黙っていることはできない。福島第一原発事故が全く収束していない中で、原発の再稼働がうたわれることにも黙っていられない」と述べた。

 福島から京都に避難している宇野朗子さんは「闇がますます深まっていると感じる。けれど、闇は深まれば深まるほど、一点の光が誰の目にも見えるようになる。この繋がりが希望だ。限界なく繋がっていこう」と訴えた。

 母たちは同日、参加者全員で朗読した「100万人の母たち 七夕宣言」において、脱原発・脱被曝を求め続けていく決意を表明した。

 同プロジェクトでは集まった願いを安倍首相と国会に届けるべく、参院選立候補者や国会議員に賛同者を今後募っていく。詳細はホームページで確認できる(URL http://100millionmothers.jimbo.com/)。

 前日の六日にはカフェスロー(国分寺)で前夜祭も行なわれ、福島原発告訴団団長の武藤類子さんらも参加。約一〇〇人が集った。

(原島佳子・主婦、7月12日号)

マレーシアでHIV患者らがTPP反対デモ

マレーシア・クアラルンプールで開催された国際エイズ学会(IAS)の「HIV(エイズウイルス)基礎研究・治療・予防会議」で7月1日、HIV感染者や乳がん患者ら数十人が「TPP(環太平洋戦略経済連携協定)やFTA(自由貿易協定)に絶対反対」と抗議の声を上げるデモがあった。「TPP等により薬剤など治療費が大幅に上がるのは確実」「私たちの命を貿易の道具にしないで」と世界各地から集まった5000人のHIV感染者や医師、研究者、政府・国連関係者に呼びかけ、学会参加者から賛同する拍手が湧き上がった。

 反TPPデモにはアジア太平洋HIV感染者ネットワークのエイズ患者を中心に乳がん患者らも加わった。エイズなど多くの疾病治療薬は、多国籍製薬企業の高価な先発薬の代わりに、安価なジェネリック薬が流通している。しかし、米国主導のTPPや、米国に対抗する欧州などによるFTAにより「知的所有権」が強化されれば、ジェネリック薬などが手に入らなくなり生命の危機に直結する、との懸念が急速に拡がっている。IASのフランソワーズ・バレシヌシ理事長らは、デモをした活動家らの主張を支持すると表明した。

 同国では7月15から25日にボルネオ島のコタキナバルでTPP拡大交渉会合が行なわれる。日本は23日午後から3日間、初めて参加する予定だ。

(杉山正隆・ジャーナリスト、7月12日号)

ひげの隊長・佐藤正久氏――防衛省に向け「改憲」絶叫

佐藤正久参議院議員候補の演説を聞く勤務中と思われる自衛隊員ら。(撮影/三宅勝久)

佐藤正久参議院議員候補の演説を聞く勤務中と思われる自衛隊員ら。(撮影/三宅勝久)

エジプトで軍事クーデターが起きた翌日の七月四日、東京・市ヶ谷の防衛省正門前の路上(一部防衛省管理地)で奇妙な光景がみられた。陸自元1佐の佐藤正久参議院議員候補(自民)の出陣式がこの場所で行なわれ、佐藤氏が防衛省に向かって「憲法改正」などを絶叫した。自衛隊に大事なのは「誇りと意地」だ、軍隊化が必要だ――といった趣旨のことを、歩道上に置いたビールケースの上から拡声器の大音量で約五分間述べた。

 現場には陸自OBを含む一〇〇人ほどの支援者が集まっていた。彼らの誰も佐藤氏の正面にはおらず、両脇に集まっているだけだった。佐藤氏の視線は正門に向いていて、正門の奥には制服の陸上自衛官らおよそ一〇〇人が整列して聞いていた。演説が終わり、「勝つぞ!」と三度叫ぶと制服自衛官らは拍手でこたえた。

 佐藤氏は二〇〇七年夏の参院選に初出馬。その際、当時の陸上幕僚長や航空幕僚長ら制服組の最高幹部が続々と献金をした。佐藤氏の著書を陸海空で約四〇〇〇冊も買ったほか、旧陸軍の将校団体にルーツを持つ偕行社と自衛隊が連携して選挙を支えた。組織的に特定候補を応援した自衛隊法違反の疑いが濃厚だが、不問となった。

 このときの支援者のひとり森勉元陸幕長は、ミサイル利権を享受する三菱電機の顧問に天下りし、政治団体「佐藤正久後援会」の代表となった。出陣式には、額賀w志郎・衆議院議員(元防衛庁長官)とともに森氏の姿もあった。

 憲法を遵守する職業的義務を持つ自衛官らに対し、憲法を変えるべきだと自衛隊元幹部の候補者が訴える。日本でなければ反乱教唆と受け止められかねないきわどい行動だ。「政治的目的のために官職、職権その他公私の影響力を利用」は自衛隊法施行令八七条で禁止。制服組幹部の関与と黙認なしにこんな大胆なことができるものか。

(三宅勝久・ジャーナリスト、7月12日号)