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SLAPP訴訟が山場に――白川氏の本人尋問へ

「大物フィクサー」といった表現は名誉毀損だ、などとして原発警備会社ニューテック会長・白川司郎氏がジャーナリスト・田中稔氏に六七〇〇万円の賠償を求めた訴訟の第八回口頭弁論が五月二七日、東京地裁(吉田徹裁判長)であり、白川・田中両氏の本人尋問の実施が事実上決まった。尋問期日は八月一九日午後二時から東京地裁六一五号法廷で行なわれる(予定)。

「原告(白川氏)本人の尋問を申請するつもりですか」「私はそのつもりですが……(本人に確認したうえで決断する)」。吉田裁判長の質問に、原告筆頭代理人の土屋東一・元東京地検特捜部検事はそう答えた。本人が拒まない限り、白川氏は法廷に現れるものと思われる。批判的な報道を不当に抑制する不当提訴だ、恫喝訴訟(SLAPP)だ――などと批判を集めてきた「原発フィクサー」訴訟が山場を迎えた。

 この日の法廷では原告・被告双方から計五本の陳述書が提出された。原告からは白川氏本人の陳述書。「SLAPPではない」「記事は不当である」といった主旨が書かれている。被告側からは、田中氏本人の陳述書のほか、森功(ノンフィクション作家)、段勲(ジャーナリスト)、平井康嗣(『週刊金曜日』編集長)の三氏が陳述書を寄せた。それぞれ、白川氏の「フィクサー」としての知名度の高さをうかがわせる内容だ。

『泥のカネ』の著作もある森氏の陳述書には、ゼネコンと政界の癒着を取材する過程で、白川氏―水谷建設―東京電力の関係が浮かんだという話が生々しく記述されている。また平井氏の陳述書には、郵政民営化に伴う資産売却に関して白川氏が買い付け交渉に現れた、との証言を得た旨紹介されている。森氏ら三人の証人申請・採否が行なわれるかどうかは、白川氏側の反論をみて決められる。次回弁論は六月一九日午後一時三〇分、東京地裁五三〇号法廷で。 

(三宅勝久・ジャーナリスト、5月31日号)

今週の憲法審査会――大震災に便乗し緊急事態条項改憲論

五月二二日午後、参議院憲法審査会が一カ月半ぶりに今国会で三回目の審査会を開き、ひきつづき「二院制」について議論。参議院では自公も含め八党が二院制の堅持を主張し、みんなの党、日本維新の会が「決められない国会」などと二院制を批判、一院制への改憲を主張した。次週は「新しい人権」の議論をするなど、今国会であと数回開催するという。

 衆議院憲法審査会は五月二三日午前、「緊急事態と憲法をめぐる諸問題」「裁判官弾劾裁判所及び裁判官訴追委員会等」について議論した。

 前回、「前文」の討議で「諸外国の例」などの調査を衆院法制局に要求した土屋正忠委員(自民)が、法制局の報告時になっても出席しておらず批判が噴出。相変わらず自民の委員席は空席が目立つ。

 現行憲法にない緊急事態条項の審議というテーマ設定自体が、「憲法のレビュー」をするとして審査会の審議を始めた申し合わせと異なるとして、共産党の笠井亮委員が厳しく抗議。笠井委員が指摘するように、議論は憲法のレビューではなくて、各党の改憲案の開陳の場になりがちだった。「基本的人権の抑圧につながるおそれ」などを指摘しながら反対した共産、「党内に両論」とあいまいにした公明を除く自民、民主、維新の会などが東日本大震災を引き合いに、憲法に緊急事態条項の創設(改憲)を主張した。

(高田健・許すな!憲法改悪・市民連絡会、5月31日号)

「市場化テスト」で担当会社が混乱か――赤字必至の防衛省警備請負

中庭にPAC3を配備しているため厳重警戒中の防衛省正門。(撮影/本誌取材班)

中庭にPAC3を配備しているため厳重警戒中の防衛省正門。(撮影/本誌取材班)

「東京・市ヶ谷にある防衛省の警備体制が混乱しかねません。民間警備会社の入れ替えが五月末にあるのですが、新たな警備員確保に手間取り、強引な引き抜きも横行しているようなのです」――ある防衛省関係者がこう打ち明ける。

 にわかには信じがたい話だ。防衛省は現在、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の弾道ミサイル発射に備えた政府の破壊措置命令によって、防衛省中庭にも地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を配備。正門の一方を閉じるなど厳重な警備を続けている。そんななか警備そのものが混乱しかねない事態が本当に生じているのだろうか。

 警備業界に詳しい関係者が打ち明ける。「残念ながら事実です。防衛省市ヶ谷地区の警備業務は二〇一一年四月からの三年契約で、複数の企業などが共同で施設管理全体を請け負っています。そのうちの警備を担当していた会社が、『単価が安くて赤字の垂れ流しになる』と音を上げたと聞いています。七〇人規模で警備をしていたようで、施設管理を共同で請け負っている別の企業が替わりを務めようとしているのですが、防衛省は機密保持のために条件が厳しく、警備経験三年以上で六〇歳未満かつ平均年齢四五歳未満などを満たさなくてはならないので、新しい人材確保に苦戦しているようなのです」

 そもそも「赤字にしかならない金額の発注」などあり得るのか。防衛省資料によると、管理業務は「防衛省市ヶ谷地区施設管理業務共同体」が六九億五〇一六万円(三年間、税込)で落札している。契約時の代表企業は山武(現アズビル)で、ほかに株式会社六社と財団法人「防衛弘済会」が共同体に名を連ねている。

 別の関係者が憤る。「設備管理や警備、清掃などの各業務を受託する共同事業体をつくっているのですが、受注額の配分は代表企業が握っているようなのです。だから確証はないのですが、一部が甘い汁を吸っているという噂もあり、不満も漏れ聞こえてきます」

 取材を進めると、小泉純一郎政権時に導入された「公共サービス改革(市場化テスト)」が根本原因だとの指摘を聞いた。内閣府のホームページによると、市場化テストとは〈官民競争入札・民間競争入札(いわゆる市場化テスト)を活用し、公共サービスの実施について、民間事業者の創意工夫を活用することにより、国民のため、より良質かつ低廉な公共サービスを実現〉するのが目的だという。

「質の維持と価格の引き下げは両立しません。防衛省の要求する警備の品質と引き合わない支払いでは、どの民間会社でもいずれ大幅な赤字に直面することになりそうです」(先の警備業界関係者)

 冒頭の防衛省関係者は次のように話す。

「五月末で手を引く警備会社は、共同体の代表企業を通して警備員の個人情報や勤務シフト計画を防衛省に提出していたようですが、新しい警備受託会社が四月上旬ごろから転職の勧誘を行なっているようです。警備員が防衛省から帰宅するときなどに声をかけているとのことで、引き抜きに遭っている会社は『防衛省という高度な機密施設の安全を担当する業者が、個人情報を流用して引き抜きをするのか。防衛省の警備を受託できる資質が疑われる』と怒ってます」

 代表企業アズビルからは期日までに回答がなく、新警備受託会社は勧誘の事実はないと回答した。

 ただ、防衛省の現役職員も勧誘に携わっているとの情報もある。防衛省警備班の副班長や組長などが「移籍の話をしてあげる」などと声を掛けているというのだ。もし事実だとすれば、異常な事態と言わざるをえない。

 防衛省広報課はこう話す。

「施設管理業務を一体として契約しているため警備業務のみの契約金額を抜き出して把握することは困難です。(引き抜きの)事実関係は承知していないが、防衛省会計課警備班の職員は民間企業に所属する警備員に転職を勧める職務にはないと考えている」

 適正な受注によって民間企業を“防衛”することも、防衛省の重要な任務だと思うのだが……。

(本誌取材班、5月31日号)

安倍首相の歴史認識が根本問題 東京で抗議集会

「質問趣意書を出してきっちり真相を明らかにしていく」と話す辻元清美議員。(写真/宮本有紀)

「質問趣意書を出してきっちり真相を明らかにしていく」と話す辻元清美議員。(写真/宮本有紀)

 橋下徹大阪市長の発言に対する抗議集会が5月22日、東京都内で開かれた。

 梁澄子・日本軍「慰安婦」問題解決全国行動共同代表が「〈日本だけが非難されるのは暴行、脅迫、拉致をして性奴隷にしていたと思われているから。これは間違いでそのような特殊性はない〉というのが橋下さんの暴言の要旨。でも、数多くの被害者が名乗り出て被害回復を求めてきたことこそが『特殊性』。にもかかわらず政治家が責任逃れの発言をしてきた。日本が非難されているのはそのためだ」と述べると万雷の拍手が起きた。また「背景に安倍首相の価値観がある。橋下市長だけ批判してトカゲのしっぽ切りになってはいけない」と指摘。同様に「彼の発言は安倍さんへのラブコール」(上野千鶴子氏)など、安倍晋三首相の歴史認識が根本問題との指摘が続いた。

 さらに北原みのり氏が「守るべき女と犯していい女に分けてきた歴史がある」、性暴力禁止法をつくろうネットワークの周藤由美子氏が「自分の娘が性犯罪にあうくらいならプロの女性に任せたほうがいい、という人がいる」と述べ、橋下発言を許容する土壌を変える必要性を説いた。集会を呼びかけたアジア女性資料センターの本山央子氏は、「うやむやにしてはいけない。短時間で400人強、235の賛同団体が集まった事実を意思表明としたい」と述べた。

(宮本有紀・編集部、5月31日号)

抗議の来日をした元「慰安婦」2人が被害を証言――「橋下大阪市長に審判を!」

大阪市内のシンポジウムで講演する金福童さん(中央)と吉元玉さん(左)。(撮影/真野きみえ)

大阪市内のシンポジウムで講演する金福童さん(中央)と吉元玉さん(左)。(撮影/真野きみえ)

 二人の元従軍「慰安婦」が五月二五日、大阪市内で被害者証言のシンポジウムを行なった。金福童さん(一九二六年、慶州南道梁山生まれ)と吉元玉さん(一九二八年、平安北道生まれ)である。

 二人は一三日の橋下徹氏(日本維新の会・共同代表、大阪市長)の「銃弾が雨嵐のごとく飛び交う中で命をかけて走っていくときに、精神的にも高ぶっている猛者集団をどこかで休息させてあげようと思ったら、慰安婦制度が必要なのは誰だってわかる」などの発言を受け、抗議の意思を示すために来日した。

 二四日に予定された橋下氏との面談は元「慰安婦」側が「政治パフォーマンスに利用されたくない」との理由でキャンセルした。このことを、維新の会の中山成彬衆議院議員は「(元「慰安婦」の)化けの皮がはがれるところだったのに残念」とツイートするなど、維新の会の政治家からは資質が問われるような発言が相次いでいる。

 二七日、日本外国特派員協会の会見で橋下氏は、普天間の米軍司令官へ「風俗を活用してほしい」と伝えたことについて、米軍並びに米国民に対し発言を撤回、謝罪した。しかし戦時であれば「慰安婦」制度が必要との発言の撤回や、元「慰安婦」への謝罪はなかった。さらに「国家の意思で女性を人身売買した点を裏付ける証拠はないというのが政府の考え方だ」と述べた。

 しかし一九九三年の河野談話は、調査の結果「軍当局の要請で慰安所が設営されていた」ことを認めている。また九八年のマクドゥーガル報告書(国連人権小委員会)では、「慰安婦」は性奴隷制度であり、女性への人権蹂躙となる戦争犯罪であるとしている。

 金さんは一五歳で広東の慰安所に、吉さんは一一歳でハルピンの慰安所に連れて行かれた。日常的に暴力を受け、性行為を強制された。吉さんは、性病治療と言われ手術で子宮を取られた。二人とも工場で働くだけだと騙されて慰安所に入れられている。二五日のシンポジウムで中央大学の吉見義明教授は「強制連行があるかないかではなく、騙して慰安所に入れた時点で詐欺罪、誘拐罪を構成する」と指摘した。

 橋下氏や、米国二紙に日本軍の「強制性」を否定する意見広告を出した安倍晋三首相は、事実を認めるべきである。来日した二人の元「慰安婦」は「橋下市長は審判の対象だ」と抗議した。参議院選で審判が下るか、国民もまた一票の行方が問われている。

(真野きみえ・ライター、5月31日号)

『ブラック企業にご用心!』渋谷で上映イベント

監督の土屋トカチさん(右)と川村遼平さん。(写真/渡部睦美)

監督の土屋トカチさん(右)と川村遼平さん。(写真/渡部睦美)

「社員は100円乾電池程度の扱いさ」

 長時間労働などの違法労働を強いる「ブラック企業」をテーマにした映画『ブラック企業にご用心!-就活・転職の落とし穴ー』の上映イベントが5月10日、東京・渋谷UPLINKで開かれた。

 監督は、現代の労働問題を追った作品を多く手がける土屋トカチさん。「ブラック企業という言葉は有名だが、テレビでは企業名が実名報道されない」と指摘し、企業名の公表と就職活動をする若者への啓発活動が必要と訴えた。

 映画には、外食産業大手のワタミで過労死した森美菜さんの遺族が登場。重労働により苦しんだ美菜さんが2008年、入社2カ月で過労自殺したいきさつを語った。このほか、激安コンビニエンスストア「SHOP99」(現・ローソンストア100)の元店長が長時間労働・残業代不払いの実態を、気象情報会社ウェザーニューズの元労働組合員が不当解雇の実態を語った。

 上映後のトークイベントにゲスト出演した若者の貧困・労働問題に取り組むNPO(非営利団体)法人「POSSE」の川村遼平さんは「働いていると、これが普通だと思ってしまう」と、ブラック企業の労働環境に警鐘を鳴らした。POSSEに相談を寄せる人の中には、ストレス性の内臓疾患や心身の変調に苦しむ人も多いという。「自分を追い詰めないでほしい」と会場に呼びかけた。

(渡部睦美・編集部、5月24日号)

小平市で初の住民投票に公開請求――5万人の民意は何か

 東京都で初の住民投票が五月二六日、小平市で行なわれた。投票率は三五・一七%。五万一〇一〇人が投票によって意思を示した。条例公布・施行後に付けられた成立要件五〇%には達せず、不成立となり開票は行なわれなかった。四月七日実施の同市長選の投票率は三七・二八%で今回の住民投票の投票率と大差ない。

 この住民投票は、ほぼ五〇年間放置されてきた東京都の都市計画道路について、「住民参加により計画案を見直す」か「見直しは必要ない」かを選択するものだった。「五〇年前の都市計画道路などどこにでもある話だ」という声も聞かれたが、だからこそ全国的に関心を集めたのだろう。投票日前には、全国規模の報道が連日続いた。

 五月一一日のシンポジウム(出演=中沢新一氏、いとうせいこう氏、國分功一郎氏)は四〇〇人の会場がほぼ満席。市内全域にチラシを二度全戸配布し、意見交換会や計画現地を歩く会を何度も開催した。毎日街頭でチラシを配布し、町の中をねり歩き、街宣車を走らせた。市外からの応援も多かった。

 投票者数が伸びなかった原因は明確ではないが、五〇%の成立要件が付いたことで「どうせ開票されないから投票に行かない」という人たちの声を、たびたび耳にした。市の事業である住民投票について、市長が二〇日の記者会見でボイコット運動を許容する発言をしたことも問題ではないか。

 市からは住民投票に関する情報提供は少なく、道路計画のメリットを示した資料が中心。市主催の説明会は一度も開かれなかった。

 今回の結果を受け「小平都市計画道路に住民の意思を反映させる会」は、二七日に投票用紙の写しの公開を求める情報公開請求を行なった。住民投票条例や規則には、五〇%に満たない場合に「開票しない」とは明記されていない。五万人の民意を明らかにすべきだ。

(尾川直子・小平都市計画道路に住民の意思を反映させる会、5月31日号)

立憲主義の破壊に警鐘――「96条の会」が発足

 憲法改正権を規定する九六条の先行改憲に反対する「96条の会」が五月二三日、東京・永田町で発足記者会見を行なった。憲法学者など三六人が同会の発起人に名を連ねた。与党自民党を中心に、憲法九六条が定める改憲発議要件を「衆参両院それぞれの三分の二以上の賛成」から「過半数」に変更しようとする動きがあり、これに危機感を強めた動きと言える。

 山口二郎・北海道大学教授(行政学・政治学)は、「九六条の先行改憲だけは立場を超えて阻止することが必要だ。そうでなければ立憲政治は破壊されてしまう、という危機感から幅広く結集した」と経緯を語った。そして「裏口から改憲を導入するこのやり方は、民主政治あるいは立憲主義を破壊することであり、この国の保守政治の劣化の表れだ」と批判した。

 同会代表で憲法学者の樋口陽一・東北大学名誉教授は、「権力を制限することが立憲主義の基本だ」とし、「九六条先行改憲は法理論的に無理な話だ」と批判した。さらに、諸外国で憲法改正条項を緩和した例は、「立憲主義を掲げた国では、私の知る限りはない」と語った。

 改憲派憲法学者の小林節・慶應義塾大学教授も、発起人に加わった。小林教授は、九六条改正派が「憲法を国民の手に取り戻す」と訴えていることを、「嘘八百だ。憲法に縛られるべき権力者たちが、国民を利用して憲法を国民から取り上げようとしている。私は、本当に驚き怒っている。これは憲法破壊だ」と批判した。そして、「憲法改正権(九六条)の上に憲法制定権がある」とし、「上位の権限に対して下位の権限が触れること自体が矛盾だ」と語った。

 憲法九六条先行改憲の動きは、近代立憲主義への挑戦ではないか。夏の参議院選では、国民の成熟度が試されることになる。

(星徹・ルポライター、5月31日号)

横須賀の米海軍原子力空母は“約束違反”――放射性廃棄物を艦外に搬出

米海軍は五月二三日、横須賀基地(神奈川県)で改修中の原子力空母ジョージ・ワシントンから出た低レベル放射性廃棄物を米国本国に持ち帰るため艦外に搬出した。

 二〇〇八年に同空母が配備以後、艦外搬出は五回目になる。「放射性廃棄物は艦外に搬出されない」約束に米国は違反していると平和団体・市民団体が抗議した。

 一日数百隻の船舶が出入りする東京湾の入り口にある同基地は都心から四〇キロメートルしか離れていない。ジョージ・ワシントンは出力六〇万キロワットの原子炉を二基搭載。福井県の美浜原発1、2号機の出力に近い。同空母は昨年一一月二〇日に入港しすでに半年以上になる。

 事故が起これば「風下の半数が死亡する範囲は、三浦半島のほぼ全域に」(『東京新聞』〇六年六月一五日)というショッキングな記事が掲載されたのはジョージ・ワシントン横須賀配備の二年前だ。

 ジョージ・ワシントンが停泊している奥には三本の煙突と灰色の建物が見える。原子炉冷却用電源供給用の発電所だ。同発電所は岸壁から海抜三メートルしかない。津波で浸水または水没するだろう。津波がこなくても建物の崩壊、液状化、火災などで電力供給ができなくなれば冷却不能に陥り、原子炉のメルトダウンも起こる。

 原子力艦船の停泊で危険性は日常化していると言える。米軍当局は「何重にも防護しているから安全だ」と繰り返しているが、二つ目の低レベル放射性廃棄物のコンテナが運びだされている同空母の目の前を軍港遊覧船が通り過ぎていった。ほぼ満員の遊覧船からは観光客が手を振っている。ここで事故が起これば福島第一原発事故を上回る大惨事になることを予想している人はいないだろう。

(森住卓・フォトジャーナリスト、5月31日号)

共通番号法(マイナンバー法)が成立――「社会保障」の理念は立ち消え

国民一人ひとりに番号をふり、納税や年金などの情報を行政が把握できるようにする共通番号法(マイナンバー法)が五月二四日、参議院本会議で成立した。社民、共産、生活の党などは反対した。

 二〇一五年一〇月から国民すべてに一一桁以上の個人番号がわりあてられ、税務署や自治体、日本年金機構などの行政機関がそれぞれ管理していた個人情報が、ネットワークでつながることになる。個人情報の民間活用や医療情報は今回は適用外だが、三年後の法改正時には認められる公算が高い。

 マイナンバー法は民主党政権時代には「社会保障と税の一体改革」という理念のもと、低所得者対策への活用が念頭にあった。しかし自民党政権になってこの構想は立ち消えた。

 衆議院本会議の質疑では自民、民主、公明、みんな、日本維新の会などの修正協議によって、法案に「行政分野におけるより公正な給付と負担の確保をはかること」という文言が付け加えられた。

 税金未納を防ぐ狙いもあるが、預金や非公開株、不動産などの金融資産は把握できないという。

 個人情報を政府が一手に握ることへの懸念に、安倍晋三首相は五月二三日、「国民に役立つ制度にするよう全力をつくす」と語った。

 法案成立をうけ、二八日には参議院議員会館内で法案採決に抗議する院内集会が開かれた。

「監視社会を拒否する会」共同代表で上智大学教授の田島泰彦氏は、「我々の情報が手の届かないところまでいっている。御上の意のままに情報が一元的に管理され、コントロールされていく。そういう段階にきている」と指摘。「憲法改正とも連動している」とし「盗聴法の適用拡大や秘密保全法の問題など全体状況を射程に入れ今後の対策を考えていきたい」と話した。

 同会は今後、システムを導入する自治体などに働きかけ、具体的な問題点を指摘していくという。

(野中大樹・編集部、5月31日号)