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厚労省は副反応の症例に「対応の必要はない」――子宮頸がんワクチン被害訴え

ワクチンによる副反応を示す子どもの説明をする東京都日野市の池田利恵市議。(撮影/野中大樹)

 子宮頸がんを予防するワクチン「サーバリックス」と「ガーダシル」について、接種した中高生らに全身の痛みや頭痛が起きているとし、全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会は四月八日、田村憲久厚生労働大臣宛に嘆願書を提出した。

 HPV(ヒトパピローマウイルス)によって起こる子宮頸がんは、子宮がんの約七割を占めるとされ、若年層に発症者が多い。

 連絡会は、(1)ワクチン接種の中止(2)情報提供体制の確立(3)症状の追跡調査(4)相談窓口の設置(5)補償体制の確立――などを求めている。

 約五万円(三回分)と高額だった同ワクチンの接種は、三月二九日に参議院で予防接種法改正案が可決したことで、定期接種対象になった。四月一日からは多くの自治体で自己負担ゼロになっている。

 一方で、法案可決前の三月二五日には被害者連絡会が発足。同ワクチンを接種した娘が副反応を示し、現在も体調不良がつづいている松藤美香さん(四六歳)が会長についた。同日の会見で松藤さんが「被害に苦しむ少女が多数いる。厚労省は追跡調査してほしい」などと訴えると、二〇〇件以上の悩みが同会に寄せられたという。

 八日の会見では、男性(四二歳)が高校二年生の娘の症状を報告。娘は二〇一一年六月に一回目のサーバリックスを打った後、体調が悪化しはじめたという。

「二度目(同年九月)の接種後、全身の痛み、激しい頭痛に見舞われた。三度目(昨年四月)の接種後は歩くことも寝返りを打つこともできなくなった。難病と診断され、二カ月間入院した。サーバリックスを打つ前は元気だった」

 娘は小中学校では皆勤で、スポーツにも打ち込んでいたという。

 厚労省は副反応の症例について専門家による検討会議を設けているが、本誌の取材に「失神などの副反応は報告されているものの、他のワクチンと比べ異常は少ない。対応の必要はない」と断定した。

(野中大樹・編集部、4月12日号)

安倍首相のお膝元での参院山口補選――自民、民主が事実上の一騎打ち

安倍首相のお膝元である山口で補選に立候補した江島潔氏。(撮影/横田一)

 今夏の参議院選挙を占う前哨戦となる参院山口補選(四月二八日投開票)が一一日、告示された。安倍晋三首相のお膝元で安倍政権発足後の初の国政選挙であることから「何としても勝たないといけない選挙」(山口二区の岸信夫衆議院議員)。しかし、安倍首相の指示で自民党公認候補となった江島潔・元下関市長(公明党推薦)が、地元の大票田・下関で不評。その結果、「民主党不戦敗か」との報道も出る逆風下で出馬した平岡秀夫・元法務大臣(民主党とみどりの風推薦、社民党支持)との実質的な一騎打ちとなりつつある。

 江島市政(一九九五~二〇〇九年の四期一四年)を追及してきた田辺よし子市議はこう話す。

「江島市政時代、安倍首相がかつて勤務していた神戸製鋼所が『奥山工場焼却施設』(一一〇億円)や『リサイクルプラザ』(六〇億円)を落札するなど、安倍氏の関連企業が市の大型公共事業を受注。官製談合疑惑が浮上して裁判になったこともありました。そのため、『江島市長は安倍氏と癒着しているのではないか』という批判が噴出、安倍系企業優遇に反発した地元中小企業経営者と市民派らが連携して現・中尾友昭市長を誕生させたのです。談合・癒着疑惑だけでなく、報告がきちんとされない海外・国内出張も多く、さらに自らが妻を訴えた離婚訴訟問題も明らかになり、女性層も離反。結局、江島氏は五選出馬を断念した経緯があります」

 神戸製鋼所の奥山工場焼却施設はプラズマ溶融炉を後工程に組み込んだ方式で「焼却灰がリサイクルできる」のが売りだったが、実現せずに頓挫。それでも維持管理費を神戸製鋼所の関連会社に支払い続けてきた。中尾市政になって同溶融炉を停止したところ、「電気代などが浮いて年二億円弱の経費削減となる見通し」(同工場)。

 なぜ大票田の地元下関で不評の江島氏が候補者になったのか疑問に思う県民は少なくなく、「神戸製鋼所の連続受注など江島市政の“実績”を安倍氏が評価したのではないか」という憶測が流れるほどだ。

 これに対し江島氏は「自民党は参院選の候補者として市町村長ら首長経験者を多く出す方針。それで私が選ばれたのだろう」と話す。

 全国的には高支持率を誇る安倍政権だが、地元・下関では三月の下関市長選で安倍系市議が現職の中尾市長に敗れ、同時に行なわれた市議選補選でも安倍系候補が市民派に敗れて二連敗を喫した。

「勝機十分」とみてか、民主党は総動員体制を取っている。三月三一日には細野豪志幹事長が山口県に入り、下松市の事務所開きで「全国会議員に一度は現地入りするように指示した」と全面支援を宣言。急遽集まった約一五〇人の支持者を前に「参院選で自民と維新で三分の二をとれば、憲法が改正されて国防軍もできるかもしれない。もう一度、立ち止まって考えてもらいたい」と支援を訴えた。

 続いて平岡氏は「日本の政治は右翼化する世襲政治家集団の自民党が一強の状況で、対抗すべき政治勢力が必要。穏健保守から中道・リベラルまでの庶民的政治勢力を結集するために無所属で出馬した」と強調。「自民党の幹部たちは『参院選までは安全運転』と言っているが、参院選後は危険運転をするということ。その一つが『上関原発』の工事再開だ」と危機感を露わにした。

 三月三一日には菅直人元首相が上関町の祝島を訪問。中国電力上関原発に反対する島民らと座談会を持ち、「参院山口補選と次の参院選で自民が勝ったら、原発を順次再稼働させ、着工中の(原発)工事をまた始める。安倍さんに方向を変えさせられるか、ギリギリなんです」と訴えた。

 東京でも四月二日、脱原発派が「平岡秀夫さんを応援する脱原発市民の会」を結成。脱原発基本法成立を目指す河合弘之弁護士や、去年七月の山口県知事選で善戦した環境エネルギー政策研究所・飯田哲也所長らが名を連ねた。

 原発推進や憲法改正が主要争点となるため、平岡氏が脱原発派や憲法改正慎重派の受け皿となる可能性は十分ある。参院山口補選が安倍政権の暴走を止める国政選挙として注目を集めるのは確実だ。

(横田一・フリージャーナリスト、4月12日号)

阪急トラベルサポート塩田さん解雇事件――三度にわたり勝利

 本誌の取材に応じたことで、(株)阪急トラベルサポートから「アサイン停止」(事実上の解雇)を受けた全国一般東京東部労組HTS支部の塩田卓嗣委員長に三度目の勝利判決が出た。同社は東京都労働委員会(都労委)、中央労働委員会(中労委)から二度にわたり「アサイン停止は不当労働行為」と断罪されたにもかかわらず、塩田さんを職場に戻さず、命令の取り消しを求め行政訴訟を提起。一方で組合も、都労委命令より大幅に後退した中労委命令の是正を求め中労委を提訴。この裁判の判決が三月二七日、東京地裁であり、中労委命令に続いて塩田さんへのアサイン停止の違法性が認定された。

 判決で東京地裁民事一一部(白石哲裁判長)は、会社・組合双方の請求を退け、「アサイン停止を解除せよ」「一年分のバックペイを支払え」との趣旨の中労委命令を維持した形に。また、中労委が申し立てていた「緊急命令」についても、東京地裁は申し立てどおりに認容する決定を下した。

「緊急命令」とは、労働委員会命令を不服として使用者が裁判所に行政訴訟を提起した場合、裁判所が使用者に対し、行政訴訟の判決が確定するまでの間、救済命令を履行するよう命令する制度。緊急命令の決定に対して使用者は原則として異議申し立てはできないとされている。これにより、たとえ阪急トラベル側が控訴したとしても同社は塩田さんのアサイン停止を解除し、バックペイを支払わなければならず、同命令を履行しない場合、会社には命令不履行の日数一日につき一〇万円以下の過料の制裁が科される。

 争いを長引かせてきた阪急トラベルサポートだが、今回の判決と「緊急命令」の決定は同社に塩田さんの職場復帰を迫る決定的なものだ。二〇〇九年三月の事実上の解雇から四年。塩田さんの職場復帰を実現するため、組合側は緊急命令の履行を阪急側に求めていく。

(菅野存・全国一般東京東部労組執行委員長、4月5日号)

「徒手格闘」で死亡の元自衛官――遺族側が勝訴

 陸上自衛隊真駒内駐屯地(札幌市)で二〇〇六年一一月二一日、「徒手格闘」の練習中に1等陸士・島袋英吉さん(享年二〇)が意識不明となり、翌日死亡した事件をめぐり、両親が起こした国家賠償請求訴訟(佐藤博文弁護団長)の判決が三月二九日、札幌地裁であった。石橋俊一裁判長は安全配慮義務違反を認め、六四九五万円の支払いを国に命じる遺族側勝訴を言い渡した。

 島袋さんは入隊歴一年半の新隊員で、運動競技の経験はなし。「徒手格闘」の訓練を始めたのは事故の一〇日ほど前で、一一月末の試合に出るためだったとされる。事故発生日まで練習は数回、突き技や蹴り技と初歩的な受け身をやっただけだった。事故のあった二一日、島袋さんは、教官F3曹の指導のもと、先輩A士長と二人で練習を行なった。島袋さんがA士長を足技で倒し、さらに拳で胴を突くという「約束練習」の途中、A士長が不意に投げ、島袋さんは背中から落ちた。「約束」にない行動だが、F3曹は「受け身がおおむね取れた」として続行。数回目に意識を失い、死亡した。

 国側は、頭に衝撃を受けたのは一度だけだと主張、判決もそう認定した。ところが投げた本人であるA士長は、島袋さんは最初から受け身が取れていなかったと法廷で証言。カルテにも頭部を四回ほど強打したとの記載があった。また訓練発令者の輸送隊長・黒田耕太郎2佐は試合時間やルールを明答できなかった。不自然さは残り、虐待の可能性は否定できない。

 徒手格闘は空手と柔道を合わせた格闘技で数年前に導入。殺傷力が高く事故が多発、海上自衛隊の隊員が死亡する事件も起きている。導入の中心人物は元陸上幕僚長の森勉氏だ。元陸自1佐・佐藤正久氏の参議院選出馬で全国の基地を巡回させたり著書を大量購入するなど防衛省ぐるみで応援、退官後は三菱電機顧問となり「佐藤正久後援会」代表を務めている。

(三宅勝久・ジャーナリスト、4月5日号)

スラジュさん死亡は「殺人事件」ではないか

講演する弁護団の飯田健太郎弁護士。(写真/原田成人)

 ガーナ人男性アブバカル・アウドゥ・スラジュさんが2010年3月22日、強制送還中に亡くなった事件で、支援団体APFSは3月31日、東京・豊島区で報告集会を開いた。

 事件をめぐっては昨年7月に入管職員10人が不起訴処分となり、一昨年8月、遺族が国賠訴訟を起こしている。国はスラジュさんの死因と職員による制圧行為の因果関係を認めず、タオルの猿ぐつわや結束バンドを利用した腕の固定などもスラジュさんの抵抗を理由に例外措置だったとしている。

 集会では、弁護団の飯田健太郎弁護士が、事件の経過と概要を説明。エジプト航空機内の座席に座らされるまで、スラジュさんが入管職員9人がかりの激しい制圧をうけていた事実を、改めて指摘。新たに入手した事件当日の記録ビデオの映像(撮影が義務づけられているが、機内での映像部分だけがない)からは、スラジュさんが入管側の証言にあるような激しい抵抗をしていた形跡が見られないことを報告した。

 APFS相談役の吉成勝男さんは「この事件が状況からみて明らかな殺人事件と言えるものであるにもかかわらず、誰も責任をとっていない」と指摘し、真相究明のためにさらなる支援を訴えた。次回の国賠訴訟口頭弁論期日は5月13日(月)東京地裁706号法廷。事件当日の記録ビデオが上映される予定。

(原田成人・業務部、4月5日号)

朝鮮学校の無償化適用外問題で全国集会――「差別しないで!」

集会の後に行なわれた東京・銀座でのパレード。“街宣右翼”が妨害する場面も。(撮影/星徹)

「朝鮮学校はずしにNO! 全国集会」が、三月三一日に東京都の日比谷野外音楽堂で行なわれた。寒空の下、朝鮮学校の生徒を含めて約六〇〇〇人(主催者発表)が詰めかけ、会場は超満員となった。

「高校無償化」制度は民主党政権下で三年前の四月にスタートした。しかし政府は、適用の可否に際し「個別の教育内容は判断材料にしない」「外交上の問題は考慮しない」としながらも、朝鮮高校生徒については「検討中」「審査中」として先延ばしにしたまま下野した。そして、安倍自公政権は今年二月二〇日付で文部科学省令を改正し、無理やり適用外とした。

 集会で千葉大学文学部の三宅晶子教授は、朝鮮学校への差別的対応が、日本も加入する子どもの権利条約や人種差別撤廃条約に違反する、と指摘。政府の対応が日本人に「差別してもいい」というメッセージを与えた、と批判した。

 また、全国の朝鮮高校の生徒一〇人が登壇した。神奈川朝鮮中高級学校の男子生徒は「この制度は、生徒個人への支援ではないのか。先輩たちは悔しい思いを胸に卒業していった。自分たちは差別され除外される存在だ、と考える生徒も少なくない」などと語った。

 全国の朝鮮学校「オモニ(母親)会」の代表ら二二人も登壇した。神奈川県の女性は、「私たちは、差別やイジメの対象として日本にいるわけではない。在日の基本的人権が踏みにじられることが当たり前になってしまえば、これからの日本はどうなるのか」と熱く語り、会場は大きな拍手に包まれた。

 集会終了後、参加者らは銀座の街を「朝鮮高校の生徒にも無償化を!」「差別しないで!」などとアピールしながらパレードをした。拍手して賛同の意を示す市民も多くいたが、“街宣右翼”らは「こーろせ! 殺せ! 朝鮮人」「日本から出ていけ!」などとマイクでがなり立ててパレードを妨害した。

(星徹・ルポライター、4月5日号)

兵庫県小野市で生活保護受給者の通報条例が成立――給付金の使い道は誰が決める?

条例案を発表後、兵庫県小野市役所には多くの意見が寄せられた。写真は蓬莱務市長。(撮影/粟野仁雄)

 生活保護費や児童扶養手当の受給者がパチンコや競馬で浪費していることを知った市民に通報を促す条例案が三月二七日、兵庫県小野市議会で共産党以外の賛成多数で可決された。

 条例は、生活困窮者の存在の情報提供を市民に求める一方、「市民及び地域社会の構成員は、受給者に係る偽りその他不正な手段による受給に関する疑い又は給付された金銭をパチンコ、競輪、競馬その他の遊技、遊興、賭博等に費消してしまい、その後の生活の維持、安定向上を図ることに支障が生じる状況を常習的に引き起こしていると認めるときは、速やかに市にその情報を提供するものとする」との一文がある。義務や強制ではなく、通報を元に警察OBなどの適正化推進員が調査し、有識者らの適正化協議会が指導、指示などを行なうが、兵庫県弁護士会は「福祉制度による給付金の使い道は受給者自らが決定すべき。監視・干渉することは憲法や生活保護法の趣旨に反する」と反対する会長声明を出した。

 不正受給と浪費は別問題だが、条文ではワンセンテンスで書かれており、同会は「賭博等」という曖昧な条文が拡大解釈される恐れも危惧する。兵庫県保険医療協会も「常習的なギャンブルで生活を維持できないのはギャンブル依存症」と抗議した。

 こうした抗議の声に対し、提案者の蓬莱務市長は「作文の世界で勝負するのではない。憲法に違反するのなら提訴すればいい。依存症なら生活保護者は医療費もタダなのだから医者に診てもらえばいい。条例は『お金は大事に使いなさいよ』と自立支援を促すもので監視ではない。小都市だからできる見守りですよ」と強調。「まずはやってみなはれ、の先手管理です。問題なら修正すればいい。憲法とかではない、条例なんですから」と意に介さないが、悪意の通報者がいれば取り返しのつかない人権侵害が起きる可能性も消えない。

(粟野仁雄・ジャーナリスト、4月5日号)

岐阜県東濃三市・核融合科学研究所が合意締結――「調印ありきの背信行為」

核融合科学研究所の実験開始に対する岐阜県庁への申し入れ行動。(撮影/樫田秀樹)

 岐阜県で多くの市民団体が抗議の声を上げる中、東濃三市(多治見市、土岐市、瑞浪市)と県は三月二八日、核融合発電の実験を目指す核融合科学研究所と、実験実施に合意する締結式を行なった。

 原発は核分裂利用の発電だが、核融合発電とは、超高温(一億度前後)と超高圧のドーナツ型真空容器で、バラバラのプラズマ状態にした重水素とリチウムの原子核同士を強制的に衝突させ(核融合)、生まれる熱エネルギーが水蒸気でタービンを回す発電システム。

 ところが、核融合では多量の中性子とトリチウム(三重水素)が発生する。市民団体「多治見を放射能から守ろう!市民の会」の井上敏夫代表は「トリチウムは、金属が熱するほど、すり抜けて外界に流出。内部被曝すると遺伝子を傷つけます」との怖れを語る。

 県内の住民が計画の存在に慌てたのは昨年一一月。研究所が、三市と県とで実験開始への同意協定を結ぶ方針を明らかにしたのだ。すると、「子どもたちを犠牲にできない」と、若い母親たちが動いた。一軒一軒を回り約二万九〇〇〇筆の反対署名を集めたのだ。

 三月二六日には一〇〇人以上の住民が県庁を訪れ、井上さんが「推進派も反対派も論議を尽くす検討委員会の設置を」との要請書を県知事宛に提出。ところが、その翌日、県は実験への同意を明かし、翌々日の二八日に冒頭の通り締結した。井上さんは「調印ありきの背信行為」と憤りを隠さない。

 実験では一年間で五五五億ベクレルのトリチウムが発生するが、「トリチウムは九五%が回収できる」と安全性を主張する研究所は、今後三年をかけて実験の準備を進めてから、九年間の実験に入る。

 安全か危険かの判断以前に「研究所や自治体とは徹底して話し合っていない」ことが住民には不満だ。ある女性は、「実験が始まる前に、赤ちゃんがいる私は引っ越します」と決めている。

(樫田秀樹・ルポライター、4月5日号)

原発ゼロノミクスキャンペーン立ち上げ――「下からのエネルギー革命を」

キャンペーンキャラクターのゼロノミクマ(中央)と金子勝氏(左)と飯田哲也氏。(撮影/赤岩友香)

 

「株価を上げインフレにすれば生活はよくなる」というアベノミクス。さらに原発を動かさなければ経済に悪影響を及ぼすという風潮がある中、脱原発こそ経済成長のチャンスだと社会に訴えるため、脱原発・新しいエネルギー政策を実現する会(eシフト)とさようなら原発1000万人アクション、そしてエネシフ・ジャパン有志が「原発ゼロノミクスキャンペーン」を呼びかけた。

 その立ち上げシンポジウムが三月二七日、東京・参議院議員会館で開催された。講演で慶應義塾大学教授の金子勝氏は、選挙の前に経済政策を実施し、中身のないスローガンだけでバブルになっている現状を指摘。不良債権化している原発を、アベノミクスが隠していることに懸念を示した。

 環境エネルギー政策研究所所長の飯田哲也氏は原発を戦艦大和にたとえて、時代遅れであることを強調。エネルギーの転換は人類史の第四の革命であり、日本が乗り遅れている状況を述べた。しかし、生協のパルシステム東京が自然エネルギー事業に乗り出すなど、多くの事業者も生まれて地域社会が活性化している例もあり「もっと多くの人が参入してほしい。下からのエネルギーデモクラシー革命を」と訴えた。

 また、シンポには野田前政権で、エネルギー戦略を担当した古川元久衆議院議員や、菅元政権で原発事故に対応した福山哲郎参議院議員ら国会議員も駆けつけた。

 原発ゼロノミクスキャンペーンの活動内容は(1)六月末までに賛同一〇万件以上をめざし、安倍晋三首相に届ける(2)経済学者等からのメッセージの提示(3)イベント開催(4)キャラクター「原発ゼロノミクマ」によるPR活動――などがある。賛同者には講演した両氏のほかに、城南信用金庫理事長の吉原毅氏ら経営者や経済学者がいる。詳細はURL http://zeronomics.wordpress.com

(赤岩友香・編集部、4月5日号)

「一票の格差」で戦後初の無効判決もどこ吹く風――抜本是正に遠い「0増5減」案

「国会によって権威を失墜させられた司法が、もう我慢ならないと出した判決じゃないでしょうか」

 昨年一二月の衆議院議員選挙をめぐる「一票の格差」訴訟の中心メンバーの一人、伊藤真弁護士は、全国の高等裁判所・支部が三月六日から二七日に出した判決をこう分析した。一六の判決には見事なまでに「違憲」が並び、うち二つは戦後初めて国政選挙を「無効」と結論づけた=一覧表参照。

 衆院選時点での一票の格差は最大二・四二五倍。二倍以上の小選挙区は七二で、二〇〇九年の前回より二七も増えた。一一年三月の最高裁判決が前回衆院選を「違憲状態」と判断していたのに、今回も同じ区割りで実施された。

「判決が確定した時点で選挙は無効」と最も厳しい裁きになった広島高裁岡山支部(片野悟好裁判長)の論理は明快である。伊藤氏が何より評価するのは、国民主権や代表民主制の本質をきちんととらえている点だ。

 判決は「国民一人一人が平等の権利でもって代表者を選出するからこそ、国民の多数意見と国会の多数意見が一致し、国民主権を実質的に保障することが可能となる」と謳い、「国政選挙における投票価値の平等は、国民主権・代表民主制の原理と法の下の平等の原則から憲法の要求するところである」と伊藤氏らの主張を受け入れた。

 そして「選挙区(国民の居住地)によって投票価値に差を設けないような、人口比例に基づく選挙区制を実現するように十分に配慮しなければならない」と求めた。伊藤氏によると、こうした論理をはっきり示した判決は初めて。

 一一年の最高裁判決から今回の選挙まで一年九カ月弱の期間が、区割り是正のために十分だったかどうかも争点だった。

 岡山支部判決は、国会議員が憲法擁護義務を負っていることを挙げ、最高裁判決を踏まえて「国会は直ちに是正措置を講ずるべき」だったと指摘。衆院選の一カ月前に成立した「0増5減」の緊急是正法を「投票価値の格差是正のための立法措置を行ったとは到底いいがたい」と切り捨てたうえで、抜本是正をしないまま選挙を実施したのは「国会の怠慢であり、司法の判断に対する甚だしい軽視というほかない」と強く批判して、区割りを違憲と断じた。

「米国では選挙区間の一九人の差が違憲とされ、判決から九日で州議会が差を一人まで是正した例がある。日本の国会にはあきれるばかりです」(伊藤氏)

 さらに、違憲の選挙を無効とするかどうかについて、岡山支部判決は「長期にわたって投票価値の平等に反する状態を容認することの弊害に比べ、無効と判断することによる政治的混乱が大きいと直ちにいうことはできない」と言い切った。「違憲だけど選挙は有効」とする事情判決の法理を適用せず、国民主権や代表民主制の原則を尊重する立場を取ったのだ。これも伊藤氏が評価するポイントだ。

 一連の判決を受けて安倍政権は「0増5減」を優先する方針で、格差は最大一・九九八倍と二倍以内に収まるとしている。しかし、伊藤氏は「民主主義が機能していないことに変わりはなく、程度の問題ではない」と手厳しい。

 最高裁の判決は今秋にも予想される。伊藤氏はこう訴える。

「違憲状態で選ばれた民主的正当性のない国会議員が国家権力を行使し、憲法改正の議論までしようとしているのは異常な事態だ。最高裁は速やかに、人口比例原則に基づいて区割りを是正するよう明確に命じる判決を出してほしい」

(小石勝朗・ジャーナリスト、4月5日号)