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“公約違反”の安倍首相に批判集中――各地でTPP反対デモが噴出

「TPP反対」を掲げ首相官邸前デモが行なわれた=2013年3月5日。(撮影/横田一)


 TPP(環太平洋戦略経済連携協定)反対の首相官邸前デモが三月五日に行なわれ、農業関係者や医療関係者らが参加。「TPP反対」を連呼する合間に「国民皆保険制度を守れ」などのメッセージも発していたが、特に安倍晋三首相に対しては「国民を騙すな」との怒りがぶつけられた。自民党がTPP交渉で守るべき国益として掲げていた六項目(投資家対国家間の紛争解決条項であるISD条項には合意しないこと、国民皆保険制度維持など)について「(総合政策集に掲げた項目で)正確には公約ではない。目指すべき政策だ」(二月二八日の衆議院予算委員会)と答弁したためだ。

 この発言は自民党内でも大問題になっている。同党国会議員は「六項目を公約」と認識しており、党内の部会などでは自明のことのように、「六項目の公約についてオバマ大統領に伝えたことは評価」(西田昌司参院議員)、「六項目を掲げて選挙を戦った」(永岡桂子衆院議員)、「TPP交渉の過程でなし崩しで公約の六項目を守れなくなれば、党が信頼を失う」(菅家一郎衆院議員)という発言がされている。全国の議会の九割がTPP反対決議をあげているが、主導したのは自民党の各都道府県連である。

 三月一〇日には北海道十勝地方で四〇〇〇人規模のTPP反対集会が開かれ、与野党の国会議員が参加した。参加議員の一人である地元の中川郁子衆院議員は、党内の会合などで「地元十勝は農地集約のエリート地域だが、そんな地域ですら崩壊の危機にある」「総理を信じて投票した人に説明をしてほしい」と訴えている。

 かつての盟友の故・中川昭一元財務大臣の妻が引き継いだ十勝地方をも切り捨てようとしている“冷徹”な安倍首相。交渉参加表明に踏み切れば、自民党は地方での信頼を一気に失い、支持率激減で参院選敗北という可能性が現実味を帯びてくるに違いない。

(横田一・フリージャーナリスト、3月15日号)

福井女子中学生殺害事件で前川彰司さんの再審請求棄却――立証責任回避の違法な決定

前川彰司さん(右から2人目)と父親の禮三さん(右から3人目)。(撮影/粟野仁雄)

 ポカポカ陽気だった三月六日の名古屋高裁前。「頑張れ――」。支援者の声を背に長身の前川彰司さん(四七歳)と父・禮三さん(八〇歳)、弁護団が意気揚々と庁舎に入った。だが午前一一時すぎ、飛び出した若手弁護士が開いた垂れ幕には「不当決定」の文字が……。「嘘だー」「裁判所は何やってるんだーっ」。怒号の中、現れた前川さんは支援者に手を上げ「大丈夫、大丈夫」と気丈に声を出した。しかし報道陣に囲まれると「これが裁判なんですか」と絞り出し、悔しさから裁判所と彫られた石を蹴った。開いたはずの「開かずの扉」が再び閉じてしまった。 

 一九八六年三月、一五歳の女子中学生が福井市の自宅アパートでメッタ刺し状態で殺された。翌年、前川さんは暴力団関係者の証言から殺人容疑で逮捕され、懲役七年の刑が確定し服役。出所後の再審請求を一昨年一一月に同高裁金沢支部が認めたが、検察が異議を申し立てた。名古屋高裁の志田洋裁判長はこの日、再審請求を棄却した。午後の会見で前川さんは「正義はわれわれにある。検察、裁判所の主張はすべて崩れます。最高裁ではすべての証拠を出し合って堂々とやりましょうよ」と語ったが、悔しさは抑えられない。「ひとこと言わせて下さい」とマイクを握り「裁判長に言いたい。あんた、何様なんだ」と言葉を継いだ。 

 その言葉通り、志田裁判長は司法界が過去、冤罪被害をなくすために築き上げた判例すら無視する異常とも言える決定をした。

 金沢支部は弁護側の「(血のついた前川さんを見たなどとする)元暴力団員らの供述は信用できない」「新鑑定で被害者宅の包丁ではできない刺し傷」などを認めたが、高裁の志田裁判長は「供述は信用できる」「凶器とされた包丁でも遺体の傷はできる」とした。

「決定書を見て目を疑った」と怒る弁護団の吉村悟事務局長は「再審開始決定への異議申し立てを審理する異議審は事後審と言われ、最高裁判例でも『経験則、論理上著しく不合理な時だけ原審(開始決定審)を覆せる』とされる。(志田)裁判長は金沢支部決定への判断でなく一から独自判断している。さらに昭和五〇年(一九七五年)の『白鳥決定』などで『検察側にある』とされた立証責任を弁護側に求める違法な決定」と指摘した。

 吉村氏は「(前川さんが血だらけで乗っていたという)車からルミノール反応が出ないことなどは『(検察立証に)合理的疑いを差し挟む余地』とすべきなのに『そういう可能性もある』とするなど論理が偏頗している」と批判。

「前川さんが真犯人と思っているのは裁判所と検察だけ。裁判史上例がないほど関係者供述が激しく変遷したのは捜査側の誘導。新証拠も豊富にある」と最高裁での闘いへ決意を語った。

 駆け付けた布川事件の被害者桜井昌司氏は「裁判官は何をやってもいいのか」と怒り、小島峰雄弁護団長は「前川さんが一貫して否認した中、証言した元暴力団関係者らは自分の刑を軽くしたい思惑で警察に迎合したことや、起訴に値しない証拠で起訴したことにも触れていない。木を見て森を見ない決定です」と締め括った。

 前川禮三さんは市長候補にも推された人物で事件当時、福井市の幹部職員。自宅に踏み込んだ警察に立ちはだかった。「犯行時間帯は息子と自宅で食事していた」と証言した妻はすでに他界した。

「信頼したものをすべて失った感じです」と絞り出したが、衝撃で会見に出られなかった。一〇代からのシンナー中毒などの後遺症で二年前の再審開始決定時には福井市の病院で会見した彰司さんはかなり回復し、通信制高校の卒業証書を手にしたばかりだった。

 誰もが再審開始を信じて疑わなかった中、駆け付けていた里見繁・関西大学教授の「名古屋高裁は名張ブドウ酒事件で再審開始決定を取り消した。厭な感じもあるんですよ」という不吉な予感が当たってしまった。一一日、弁護団は最高裁へ特別抗告した。父子の雪冤の闘いは続く。禮三さんの長寿を願うばかりだ。

(粟野仁雄・ジャーナリスト、3月15日号)

東京都の積み立て基金は約4000億円――五輪開催よりも雇用や福祉を

「プレゼンテーションの質が高かった。強い政府のサポートや経済界の支持があることも分かった」――IOC(国際オリンピック委員会)評価委員会のクレイグ・リーディー委員長は三月七日、二〇二〇年オリンピック招致を目指す東京の現地調査を終え、会見の場でそう語った上で、「オリンピックは数十億ドル(数千億円)規模のビジネス……。われわれが来日したことでIOCも東京もメリットを享受し、オリンピック運動に役立った」と悪びれず応えた。

 ちなみにNPO法人・東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会は、三月四~七日のIOC評価委来日の「おもてなし」で約六億円かかったと公表した。

 その後、猪瀬直樹東京都知事が会見。「オールジャパンで一丸となって臨んだ結果、良い印象を与えたと思う」と自信を見せたが、一方で評価委は福島第一原発事故の影響について詳細なデータの提出を招致委に要求した。

 猪瀬知事は昨年一二月の都知事就任直後からオリンピック招致のために動いている。一月にはロンドンに出向き「豊かな財源とおもてなし」をアピール。巨額の招致活動費(都などで七五億円。今年度予算でさらに三一億円加算)をかたわらにPRマンに徹する様子は、オリンピック招致のために都知事になったのではないかと錯覚するほどだ。

 東京オリンピックに「ノー」を唱える市民団体「反五輪の会」は巨額の税金を「被災地支援と貧困対策に」と訴えている。「異議あり!二〇二〇オリンピック東京招致集会」は四日夜、都内で集会を開き「オリンピック招致は大型開発計画を進めるため」であり「開発による貴重な自然破壊は許されない」。そして「被災地復旧・復興が最優先」と反対をアピールした。都と日本政府が続ける朝鮮学校差別も招致にはそぐわないと指摘する声もある。

 そもそもなぜ今、東京でオリンピックなのか。都スポーツ振興局招致推進部の担当者は「ああ、予算は三八億円(実際は三七億円)、詳しい企画意図とデータ? そんなのありませんよ。取材には口頭でお答えしています」。あげく「詳しいことはNPO法人へ」と。

 そこで、同推進部と同じ都庁四一階にある前述のNPO法人・東京オリンピック招致委員会へ。プロモーション活動を一手に引き受けているのが同委員会で、オフィシャルスポンサーは現在、ANA(全日空)、JAL(日本航空)など一六社。イベントポスターからパンフレットまですべてを制作しており、「電通の受注?」と問うと、「お答えできません!」。「なぜ東京で?」と問うと、一冊の冊子を渡された。「今、ニッポンにはこの夢の力が必要だ!」とある。これも意味不明。開催意義は「巨大マーケットの創出」で、経済効果三兆円に一五万人以上の雇用創出、とある。新卒の人たちの働き口さえままならないこの時代にたった一五万人? 東京都の完全失業者だけでも三十数万人もいるというのに。

 気になるのはイベントに登場する澤穂希選手など何人ものメダリストたち。「招致アンバサダー(大使)」と称して八人が任命されている。「一部報道で『謝礼は一〇〇〇万円くらい』とありましたが?」と問うと、「そのようなことはお答えできません!」。選手たちへの謝礼金の額については口を閉ざす。

「特定非営利活動法人のため、一般への収支報告の開示義務はありません。四月以降、都には報告しますので開示請求を」(同招致委員会戦略広報部)というから、NPO法人を隠れ蓑にして情報開示を制限しているように見える。

 オリンピック実現に向けて都はすでに都民税を原資に約四〇〇〇億円の基金をプールしている。雇用や貧困、医療や福祉の分野でこれだけのおカネが使われたら多くの人が救われるはずだ。

 猪瀬知事は著書『解決する力』で「強者が弱者を扶け、金持ちが貧乏な人を……」と記している。当たり前の生存と尊厳が脅かされている中、派手な招致運動で一体誰が救済されるのか。

(これひさかつこ・ジャーナリスト、3月15日号)

ドイツで反人種差別の行進――「過去の克服」を

ホロコーストメモリアル前でも被害者への差異なき対応をアピール。(撮影/矢嶋宰)

「記憶の喚起・アフリカ・奴隷制度・植民地支配そして人種差別」と称した行進が二月二三日、ドイツの首都ベルリンで行なわれた。 

 国連会議関連では謝罪と賠償責任を旧宗主国が有することを初めて盛り込んだダーバン宣言の採択(二〇〇一年)にもかかわらず、ドイツでは植民地支配に対する責任問題は一貫して棚上げ状態のまま放置されていることを受け、“行進”を七年前にスタートした。

 主催者である「植民地アフリカを記憶する碑・ベルリン建立委員会」は謝罪と賠償に加え、植民地主義者の名を冠した通りの名称変更や、実験研究材料として使われた遺骨の祖国返還なども関係者や行政に求めているが、当事者が納得できるような回答はこれまでのところほとんどない。

 また欧米列強によるアフリカ分割を決定付けたコンゴ会議(一八八四~八五)が当時の首相ビスマルクの呼びかけでベルリンで開かれたことをはじめ、黒人との間に生まれた子どもらに対する強制断種や絶滅収容所での殺害・人体実験、国防軍への強制徴用などナチス政権下で繰り広げられたこれらの出来事はほとんど知られておらず、歴史の清算をめぐる「過去の克服」の取り組みからもすっぽり抜け落ちている。

 行進参加者で今年九月に行なわれる連邦議会選挙でドイツ史上初のアフリカ系議員誕生かと呼び声の高いカランバ・ディアビー候補(セネガル出身・社民党)は「ドイツは被害者に対しても順位付けをしており、アフリカ出身者はさまざまな場面で常に最下位に置かれている」と筆者に語った。同候補は移民の子どもたちの教育環境の改善にも意欲を見せる。「教育を受ける意欲を失っている子どもが多いが、植民地支配の残したしこりも原因の一つ。しかし知識を身につけなければ現状はさらに困難なものになる。ドイツ社会に迎合しなくてもいい形での共生の道を探る機会を多く作っていきたい」。

(矢嶋宰・フォトジャーナリスト)

偽装請負を告発した非常勤講師――高校と派遣会社を提訴

 非常勤講師を違法な偽装請負で働かせ、昨年九月に東京労働局から是正指導を受けた埼玉県深谷市の私立正智深谷高校と渋谷区の派遣会社イスト(本誌二月八日号「アルバイトで生活費かせぐ派遣教員」で既報)。三月四日、これを告発した二〇代女性の非常勤講師が両者を相手取り、自らの正規職員としての地位確認と約四五〇万円の未払い賃金支払いなどを求めてさいたま地裁に提訴した。同日会見した原告側弁護士によると、偽装請負で働かされた教員が高校を訴えたのは日本で初めて。

 〇八年にイストに登録した原告は、同社と業務委託契約を結び、一〇年四月から正智深谷高校に勤務。業務委託の場合、請け負った側が自己の裁量で仕事を進めるのが前提となるが、原告ら同校の業務委託講師は、授業の進め方などを学校から直接指揮命令されていた。また試験問題の作成や採点など契約外の業務も課される一方、「コマ契約」ゆえにこれらの対価はゼロ。「直接雇用の人たちとまったく同じ働き方だった」(原告)にもかかわらず、年収は一六〇万円だった。

 原告によれば、昨年一月にこうした働き方に疑問を覚え、当時の校長に直接雇用の非常勤講師として採用するよう打診。学校側もいったんは受諾し契約書も交わしたものの、のちに「イストとの信義に反する」などの理由で反故にし、次いで業務委託の契約更新も拒否したという。

 同校ではこの後、業務委託の講師を派遣契約に切り替えたが、その時点で学校から排除されていた原告自身は今も救済対象となっていない。

 なお全国私立学校教職員組合連合が昨年行なった調査では、全国の私立高校で少なくとも一四〇人の派遣や請負の講師がいることが判明している。これを踏まえ原告側は、裁判を通じて「派遣は合法とされているが、学校の先生まで派遣でいいのかを問題提起したい」という。

(古川琢也・ルポライター)

「ナヌムの家」側は告訴を検討――日本から人権侵害のCD送付

 元従軍「慰安婦」の女性たちが共同生活している韓国・広州市の「ナヌムの家」にこのほど、「売春ババア殺せ チョン切れ」などという歌詞の入った日本のロックバンドのCDが何者かから送り付けられ、現地で怒りを呼んでいる。

 韓国の「聯合ニュース」などの報道によると、届いた包装物の差出人は「東京都千代田区 桜乱舞流」とあり、中に「チョン斬る!桜乱舞流」と書かれたCDと、曲の歌詞のハングル訳を記したA4判の紙一枚が入っていた。

 この「桜乱舞流」と称する女性ボーカルを交えたロックバンドは実態が不明だが、演奏が公開されているインターネットの You tube で「愛国バンドです。朝鮮人を殲滅せよ!」とだけ、自己紹介されている。

 流されている曲の歌詞は「竹島から出て行け」「特定アジアはいらねえ」「クソ野郎 飲み水までクソまみれ」などと、朝鮮・韓国人に対する攻撃と差別表現だらけの内容だ。曲と同時に、「日の丸」を持った若者が韓国の国旗を踏みにじったり、「朝鮮人慰安婦の大嘘 日本人の重大な人権侵害」と書かれたプラカードを掲げる動画も含まれている。

 今回、「ナヌムの家」に送りつけられたCDはこれと同じ内容と見られるが、「聯合ニュース」(日本版)が三月三日に配信した記事では、「ナヌムの家」の女性たちが「幼くして連行され、苦痛を強いられた事実を全世界が知っており謝罪すべきだと言っているのに謝罪はおろか、なぜこんなことができるのか」と、「失望と怒りをあらわにし」ていると報じられている。このため「ナヌムの家」の女性八人が四日、ソウルの中央地検に名誉毀損でこのバンドを告訴した。今回の問題の背景にあるのは、「在特会」(在日特権を許さない市民の会)など日本の排外主義者グループが、各地のデモなどで「朝鮮人殺せ」といった過激なスローガンをエスカレートさせている現状だ。『ネットと愛国 在特会の「闇」を追いかけて』(講談社)の著者であるジャーナリストの安田浩一氏は、「『桜乱舞流』は悪質な排外主義者の流れだろう。元従軍『慰安婦』の方々にすらこういう行為をする人間が出てきたということは、排外主義の高まりを示す極めて憂慮すべき事態だ」と語っている。

(成澤宗男・編集部)

ジャーナリスト、弁護士らが集結――消費税増税反対の国民集会を

左から宇都宮健児氏、山根香織氏、斎藤貴男氏。(2月27日、撮影/野中大樹)

 二〇一四年に消費税が八%に増税される可能性が高まるなか、「消費税増税は一般国民のためではない」とうったえる集会が四月一一日(木)に、日比谷野外音楽堂で開かれる。二月二七日には呼びかけ人による会見が、東京・永田町の衆議院第一会館で行なわれた。

 反貧困ネットワーク代表で本誌編集委員の宇都宮健児氏は、「消費税の税制に占める割合が高い」としたうえで、トヨタ自動車の社長と一般的な会社員との税負担の不公平さを例に挙げた。豊田章男社長の年収は約三億四〇〇〇万円で税負担率は二〇・七%。それに対して一般会社員(年収約四三〇万円)の税負担率は三四・六%になる、というもの。宇都宮氏は「日本は弱い人がより重い負担を被る不公正な社会。その象徴として消費税がある」と指摘した。

 主婦連合会の山根香織会長は、大規模な財政出動をともなう安倍内閣の経済政策に、「消費者の指標が見えない」と不安視した。

 著書に『消費税のカラクリ』(講談社現代新書)のあるジャーナリストの斎藤貴男氏は、「消費税は国やマスコミが宣伝してきたような公平なものではない。(経済的に)貧しい人間の金を吸い上げて金持ちにまわす、これに尽きる税制」だと喝破した。また、自民党憲法草案八三条(財政の基本原則)に、新項目「財政の健全性は、法律に定めるところにより、確保されなければならない」が入ったことについて、「(目的達成のためには)一般市民の生活を破壊してもよくなる」とし、命そのものにかかわる問題であると主張した。

 全国保険医団体の住江憲勇氏は、経済的な理由で受診をためらう病人・患者が増えていると指摘し、「彼らがどういう生活をしているのか、よくよく考えていただきたい」と訴えた。

 集会の実行委員会には全国商工団体、農民運動全国連合会など計二九団体が入っている。 

(野中大樹・編集部)

平和と民主主義の「根拠地であり出撃基地」――社会文化会館「三宅坂」に幕

社会党結党大会の写真(左上)などに見入る村山富市元首相。(写真/伊田浩之)

 労働運動や市民運動の拠点として約半世紀にわたって親しまれてきた社会文化会館(東京・永田町)のお別れ会が二月二七日にあり、会館に本部を置いていた社会党や社民党の関係者、ゆかりの人たち約一五〇人が別れを惜しんだ。

 同会館は、その所在地から通称「三宅坂」と呼ばれてきた。地上七階・地下一階建てで、東京五輪の一九六四年に完成。社会党・社民党が利用し、五~七階を占めるホール(六八〇席)では社会党時代の最盛期に約二〇〇人いた国会議員の党大会などが開かれてきた。

 同会館は国有地に建っているため、社民党関係者によると、五~六年前から財務省が土地の買い取りなどを打診してきたというが、結局まとまらなかった。東日本大震災後、耐震強度に問題があると東京都に指摘され、社民党本部は一月下旬に民間ビルに移転した。同会館は業者に引き渡され、解体がはじまる。

老朽化で取り壊される社会文化会館。(写真/伊田浩之)

 お別れの会で、社民党の福島瑞穂党首は「会館は私たちの根拠地であり出撃基地で、平和と民主主義と平等をここから生み出してきた党の歴史を大変誇りに思っている」とあいさつ。村山富市元首相(八九歳)は「なんとも言えない寂しさを感じている。ただ過去を振り返るだけではなく、前へ進むよう頑張ってほしい」と激励した。

 お別れの会には、社会党から分裂した新社会党や民主党の関係者なども多数出席。党の歴史を展示した写真パネルに見入ったり、会館内を見学して回ったり、思い出話に花を咲かせていた。

 リレー発言では、保坂展人世田谷区長(元衆議院議員)が「私が初めて原稿料をもらったのは(党の機関紙の)『社会新報』だった」とエピソードを披露した。

 土井たか子・元衆議院議長の秘書を永年務めた五島昌子さん(七四歳)は「安保闘争などで若い人のエネルギーが会館に渦巻いていた。政治は圧倒的に男性社会だったが、土井さんが日本初の女性党首となり、一九八九年の参院選で『山が動いた』大勝利を収め、女性議員が増えたことも懐かしい思い出です」と話していた。

(伊田浩之・編集部)

自民党「政党交付金」の使途隠しは許されるのか――一三三億円に領収書なし

一度に27億円もの支払いでも領収書はなく、銀行の振込み明細書だけだ。(撮影/三宅勝久)

 かねて憲法違反の疑いが指摘されている政党交付金をめぐり、自民党の無責任ぶりが発覚した。二〇〇七年から一一年まで過去五年分の使途のうち、少なくとも「宣伝広報費」と分類されている約一三三億円分について、支出の大半に領収書の写しが添付されていなかったのだ。

 領収書がわりに付けていたのは使途の記載がない銀行の振込み明細書だけ。公金一三三億円の具体的な使途が国民にわからないという常識ではあり得ない状態が永田町では通用している。かつて「責任力」を謳って選挙をやった自民党だが、「適正に処理している」と説明責任を果たす気配はない。

 同党が総務省に提出した政党交付金使途等報告書によれば、同党が受け取った交付金は二〇〇七年から一一年の五年間で六六七億九七三〇万円。うち一二八億八四五六万円を「宣伝広報費」として計上している。

 支払先として突出して多いのが(株)自由企画社(東京都千代田区平河町)の六八億四〇〇〇万円。次は(株)電通(石井直社長)の三〇億八九〇〇万円、三番目はNTTラーニングシステムズ(株)で二億七三五〇万円だ。

 自由企画社は自民党の機関紙『自由民主』を発行している会社で、資本金二〇〇〇万円。遠藤晋・貝洲徹彦の両氏が代表取締役。同社への支払い件数は電通など他社に比べて圧倒的に少なく、年間八件から三件(二〇〇八年度はなし)。一度に一二億円、一三億円といった支払い方をしている。

 使途等報告書を見る限り、こうした巨額の支払いも「宣伝広報費」としかわからない。そこで、総務省に情報公開請求を行ない領収書の写しを求めた。開示された領収書はわずかに一一枚(額面約八万~七〇〇万円)。あとはすべて「りそな銀行衆議院支店」などの発行する振込み明細書だった。領収書にはそれぞれ「参議院選挙マニュアル制作・印刷費」(電通)などと使途の記載がある。しかし振込み明細書のほうには支払い先の口座名義と日付しかない。

 政党助成法一七条は、報告書とあわせて領収書等の写しの提出を義務付けている。その上で「社会慣習その他の事情により」領収書が添付できない場合について、こう定めている。

〈これ(領収書の写し)を徴し難いときは、その旨並びに当該政党交付金による支出の目的、金額及び年月日を記載した書面又は当該政党交付金による支出の目的を記載した書面並びに金融機関が作成した当該政党交付金による支出に係る振込みの明細書であって支出の金額及び年月日を記載したものの写し(を提出すること)〉(カッコ内は筆者注)

 領収書の写しが添付できない場合は支出目的・金額・日付を書いた書面ならびに銀行振込み明細の写しを提出せよということらしい。

 総務省に確認すると、「支払目的書」という書類も別途出されていた。ところが実物を見ると、一枚の紙に「宣伝広報費」と大書きしただけの代物だった。

 領収書を出すのが原則ではないか。銀行振込みであれば、なぜ相手に領収書を求めないのか。自民党本部に質したところ、ファクスで返ってきたのは次の答えだ。

「わが党の政党交付金については、政党助成法に即って適正に処理し、同法に基づいて使途等報告書と添付書類を総務省に提出している。政党交付金の使途については、(中略)使途等報告書の記載のとおりだ(後略)」(自民党幹事長室)

 俺のカネに文句つけるなといわんばかりである。

 支払いを受けた各社にも取材したが軒なみ回答拒否だった。

「顧客との取引情報や関わる内容について外部からの問い合わせには答えない」(自由企画社)

「個別取り引きについては答えない」(電通)

「個別のお客様との商取引に関することなので回答できない」(NTTラーニングシステムズ)

 今回わかった自民党の使途隠しは氷山の一角にすぎない。国民への説明を嫌がるのは、後ろめたいことでもあるせいなのか。

(三宅勝久・ジャーナリスト、3月8日号)

宮澤・レーン事件の真相広める会――北大に申し入れ書

 太平洋戦争時の北海道帝国大学(現・北海道大学)を舞台にしたスパイ冤罪事件「宮澤・レーン事件」の真相を広めるとともに、法案作成・提出へ向け進行中の「秘密保全法」を考える集いが二月二三日、東京・新宿の常圓寺で開かれた。先月発足した「北大生・宮澤弘幸『スパイ冤罪事件』の真相を広める会」の主催。北大OBら約七〇人が参加し、宮澤さんらの名誉回復と謝罪・顕彰を求める申し入れ書を採択。宮澤さんの妹・秋間美江子さん(米国コロラド在住)との連名による申し入れ書は同月二六日に北海道大学(佐伯浩総長)に提出された。

 元北大生の宮澤さんは、旅行の際に見た根室飛行場のことなどを同大学講師のレーン夫妻に話したことで、太平洋戦争開戦(一九四一年一二月八日)の朝に軍機保護法違反容疑で同夫妻とともに逮捕された。容疑を否認したものの拷問の末、懲役一五年の刑を受け、戦後釈放されたが、四七年二月二二日に二七歳の若さで亡くなった。

 宮澤さんの眠る同寺で開かれた集いではまず、共同代表の一人・山本玉樹さん(北海道平和委員会理事)が札幌農学校のクラーク博士の平和思想と絡めてあいさつ。続いて自由法曹団事務局長の泉澤章弁護士が「秘密保全法阻止のために」と題して講話し、人権や思想・信条、表現の自由が侵害されるおそれのある同法の危険性を具体的に指摘した上で、多くの人に知らせていこうと呼びかけた。共同代表の一人・山野井孝有さん(元『毎日新聞』)の問題提起のあと、冤罪発生から七二年経つ現在も名誉回復されていない宮澤さんとレーン夫妻の顕彰などを求める北大への申し入れ書を採択した。

(片岡伸行・編集部、3月1日号)