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中国軍艦のレーダー照射への日本政府の対応は整合性を欠く――海上事故防止協定では禁止せず

 小野寺五典防衛相は二月五日、東シナ海の公海上で護衛艦「ゆうだち」(満載六二〇〇t)が中国海軍のフリゲート「連雲港」(同二二五〇t)から火器管制(照準用)レーダーの照射を受けた事案が一月三〇日発生したことを発表、日本政府は五日中国に抗議した。一月一九日にも護衛艦「おおなみ」(同六三〇〇t)搭載の哨戒ヘリコプターSH60Kがフリゲート「温州」(同三九六三t)から同様のレーダー照射を受けた様子で、操縦席の警報が鳴った、という。

 水上艦は対空監視用や水上監視用レーダーのほか、砲・対艦ミサイル用、対空ミサイル用、対空機関砲用など各種のレーダーを装備している。監視用レーダーは遠方に届くよう、波長が比較的長い電波を、幅広のビームとして出すのに対し、砲やミサイルの照準用レーダーは目標の方位、距離の精密な測定のため、波長の短い電波を細いビームで出し、目標が移動してもアンテナが向きを変えて目標に照射を続けるから、「火器管制レーダーに捕捉されたな」とわかる。軍用機では警報が鳴り、電波がきている方向も表示される。速度違反取締り用レーダーに対する警報器はこれの応用だ。

 幸いすでに六七年も戦争や軍事的対決を経験していない日本では、照準用レーダーの照射を受けただけで、まるで武力紛争が始まったように一面トップで報じられたが、冷戦時代の米ソ海軍は格段に激しい嫌がらせや威嚇行動を日常的に続けていた。公海上で海軍が対峙すれば自ずと意地の張り合いになるものだ。米海軍は強力な空母群をウラジオストク前面などに出し、艦載機の大編隊による攻撃演習を行ない、ソ連海軍はそれに対抗して駆逐艦等に空母の前方を横切らせ艦載機の発着艦を妨害した。海上衝突予防法と同様、国際的規則でも二隻の艦船の針路が交差する場合、相手の左舷を見る船が舵を切って衝突を避ける義務がある。だが空母は風に向かって直進を続けないと発着艦は困難だから、護衛の米駆逐艦はソ連艦の前方に出て針路を変えさせようとする。空母の周囲で多数の艦がせり合ううち、一九六七年には日本海で米駆逐艦「ウォーカー」がソ連駆逐艦と衝突、七〇年には地中海で英空母「アーク・ロイヤル」がソ連駆逐艦と衝突した。

 まるで暴走族のような突っ張り合いはエスカレートし、夜間にサーチライトを相手の艦橋に向けて眩惑したり、失明しかねないレーザー光線を当てたり、砲を向けて脅すとか、はてはソ連爆撃機が機体下面の爆弾倉の扉を開けて米空母の直上を通過することも起きた。この状況下では双方の火器管制レーダーも警戒と威嚇のために相当働いたはずだが、武力行使には至らなかった。湾岸戦争後、米英が宣言したイラク上空の飛行禁止地帯で、イラク軍のレーダーによる照射を受けたとして、米軍機が攻撃した事件があり、「火器管制レーダーの照射は武力攻撃とみなし反撃できる例だ」との論も出るが、この場合、米軍機は攻撃の機会をうかがって、レーダー破壊用の空対地ミサイルを搭載してイラク領空に入っていたもので、公海上の突っ張り合いとは全く異なる。

 米ソの海上でのチキンゲームは一歩誤ると核戦争にもなりかねないため、両国は七二年に海上事故防止協定(INCSEA)を結び、英、仏、独、伊、加などもこれに続いた。日本も九三年にロシアと同様な内容の協定に調印した。この協定は互いの監視行動を認め、衝突防止の方法や事故の場合の情報交換、危険な行為の禁止を定めている。艦船が他方の艦船、航空機に「砲、ミサイル発射装置、魚雷発射管、その他の武器を指向することによる模擬攻撃」や艦橋などへの探照燈の照射、乗員、装備を害するレーザーの使用、意図的通信妨害などが禁じられたが、火器管制レーダーの照射は禁じていない。対決に慣れた米ソはさほど危険と認識しなかったのだろう。

 日中の間でも海上事故防止協定の締結が望ましいが、ロシアとの協定と同一では今回のような事案は防止できない。だがロシアとの協定で禁じていないことを、日中間では危険とするのは整合性を欠き、少々難しい議論になりそうだ。

(田岡俊次・ジャーナリスト、2月15日号)

東京都府中市のガソリンスタンド――組合が自主営業開始

「職場を守ろう」と声をあげる組合員たち。(撮影/清水直子)

 東京都府中市のガソリンスタンドで、労働組合が職場を占拠し、自主営業を行なっている。同労組は二〇一一年七月、時間外労働の割り増し賃金支払いなどを求めて、調布市と府中市内のガソリンスタンドで働く従業員で結成。従業員二〇人の過半数が加入している。

 二カ所の事業所を経営するのは(株)柴田商店(柴田昌克代表取締役社長)。同労組によると、柴田社長は、店長や工場長など「名ばかり管理職」であった組合員の職務手当を残業代に含める計算方法で算出し一方的に振り込み、一二年一一月には営業時間を二四時間から半日に一方的に短縮するなど、問題のある対応に終始。

 そこで、組合の中心メンバーである管理職の組合員が東京管理職ユニオンに二重加盟し、同ユニオンの支援を受けて一二年一二月、会社に交渉を申し入れた。すると柴田社長は年末の賞与を支払わず、車検など収益率のよい業務を中止するよう指示。今年一月三〇日には、ガソリンスタンドの破産手続きに入り、従業員全員に解雇を通告したため、労働組合が自主営業を開始した。

 東京管理職ユニオン書記長の鈴木剛さんは「経営者の失策や身勝手な都合による偽装倒産・偽装破産が増えている。事業は黒字であり、経営者一族は駐車場やマンションの賃貸事業を行なう地元の大地主。債務超過といっても経営者一族からの会社への貸し付けがほとんど。組合員は、車検整備工場も運営し、長年顧客からの信頼を得ていい仕事をしてきた。経営者の責任を追及しながら、労働者自身の手で職場再建したい」と語る。

 自主営業中のガソリンスタンドは、京王線飛田給駅近くの「府中白糸台SS」(府中市白糸台六ー八ー三)。ガソリンの供給が停止されたため、現在は車両整備などを中心に運営している。問い合わせは東京管理職ユニオン 電話番号 03-5371-5170。

(清水直子・ライター、2月8日号)

金稔万さんが訴訟で敗訴――日雇いへの差別意識

 二〇〇九年、日雇いで働く際に会社から通名使用を強制されたとして、映像作家の金稔万さん(五二歳)が国と大林組、その下請けと孫請けを相手取り慰謝料一〇〇万円を求めた訴訟で、大阪地裁(久留島群一裁判長)は一月三〇日、「原告は了解していた」として請求を棄却。金さんは控訴した。

 厚生労働省は特別永住者を除く外国人を雇用する事業者に対し、氏名や在留資格の届け出を義務づけている。それに倣った大林組が下請けに、本来不要な書類の提出を求めたことが問題の発端だった。

 裁判上の大きな争点は、密室における強制の有無だった。労使の力関係下で強要されたと主張する金さんに対し、孫請け会社側は「今日から働きたい」との意を汲んだ社長が本社に金さんを呼び、通名使用で手間を省く“抜け道”を提案、金さんも了解したとした。

 弁論では孫請け会社の社員2人が社の言い分に沿って当日の時系列を述べたが、その証言は金さんの現場への入場記録で覆された。筋書きの土台が崩れたにもかかわらず、判決は何ら根拠も示さず会社側の主張を「事実」とした。

 さらに判決は、原告側が訴えた本名(民族名)を名乗る思いと困難さも無視。狭義の「強制」に問題を矮小化しているが、そもそも絶対的力関係下での強制に露骨な言動は不要だ。承認があれば問題ない、としたこの判決は、今や新定住者の間にも横行する通名「強制」にお墨付きを与えるものだ。

 原告側の証拠と証言を全て無視する一方、「結論ありき」で会社側の主張を認めた不実な判決。没論理の文章の決まり文句は「たやすく信用することができない」。行間に滲むのは「日雇いは信用できない」との差別意識である。判決後、金さんは語った。「頑固に通名で生きてきたアボジが、墓は本名です。死んでからしか本名を使えないのか? 生きている間に本名で生きられる社会にしたい」。

(中村一成・ジャーナリスト、2月8日号)

2020年まで完成しない八ッ場ダム――猪瀬知事「答えない」

 国土交通省関東地方整備局は二月一日、八ッ場ダムの上位計画である利根川水系河川整備計画原案のパブリックコメントと公聴会を行なうことを発表した。同計画は一九九七年の河川法改正で住民意見を反映して策定するものとされ、未策定だったが、民主党政権下で同ダム本体着工の条件となり、手続きが始まった。

 同日は猪瀬直樹・東京都知事の定例会見日。この日、知事は二〇一八年の国際水協会(IWA)世界会議を東京に招致すると明らかにした。二〇年の東京オリンピック招致とともに、今年九月に結果が出ると期待を込めて語った。

 そこで筆者は会見で「IWAは『統合的水資源管理』(IWRM)による計画づくりを推奨しているが、利根川水系河川整備計画にはこの考えをどう位置づけるのか」また、「八ッ場ダムは本体着工から完成まで七年三カ月を要し、完成が二〇年になるが見解を」と質問。猪瀬知事は、計画へのIWRMの位置づけについて「考える」ということだったが、八ッ場ダムについては「答えない」とした。

 今回、国交省の河川整備計画(原案)は計画期間を三〇年とし、ダムがなければ毎秒一万七〇〇〇トンが基準点(群馬県伊勢崎市)を流れるところ、ダムで毎秒三〇〇〇トンを貯留して一万四〇〇〇トンを流下させる想定だ。

 この想定は過大であると長年批判されてきた。昨年秋に開かれた有識者会議では、「氾濫していないところまで氾濫したことになっている」(大熊孝・新潟大学名誉教授)、雨の一部しか流出しないはずの地質から「一〇〇%川へ流出する計算となっている」(関良基・拓殖大学准教授)と問題視され、以後、会議が開かれなくなっている。

 東京都の足下の川で国際標準の計画作りが行なわれなければ恥をかく。八ッ場ダムの完成予定は早くとも二〇年。それは招致中のオリンピック年だ。会見では、猪瀬知事の認識の甘さが露呈された。

(まさのあつこ・ジャーナリスト、2月8日号)

『週刊朝日』問題で佐野氏が講演――「橋下氏をタブーにはしない」

公の場で連載中止について初めて語る佐野眞一氏(左)。右は高山文彦氏。(撮影/赤岩友香)

 橋下徹大阪市長の出自を探った記事で起きた『週刊朝日』問題から約三カ月半。連載記事の筆者でノンフィクション作家・佐野眞一氏が公の場で連載中止について初めて語った。

〈「『週刊朝日』連載中止問題と出版ジャーナリズムのあり方」を考える〉(主催=憲法と表現の自由を考える出版人懇談会)と題する勉強会が二月一日、東京都内で行なわれ、メディア関係者など約一〇〇人が参加した。

 佐野氏は自らの記事で差別を助長したことについて詫び「他人の作品を評価する資格はない」として、石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞と開高健ノンフィクション賞の選考委員を辞退することを明らかにした。

 一方で同氏は「これで橋下氏がタブーになってはいけない」とし、橋下氏について書く気持ちがなくなったわけではないことを述べた。

 勉強会では、被差別部落の地区名を出すこと自体の是非や、表現方法などについて議論が交わされた。ノンフィクション作家の高山文彦氏は「密度の濃い取材ができていれば『ハシシタ』というタイトルにはしないはず」と記事を批判。参加したノンフィクション作家の多くは地区名を出すことについては肯定的だった。

 また、佐野氏は本誌昨年一二月一四日号掲載の記事「『週刊朝日』記者が犯した罪と忘れられた被害者の存在」(筆者・平野次郎氏)に誤りがあるとして、『週刊朝日』の当該記者が本誌に対し「抗議した」と紹介し、「アンフェアな取材はしていない」と話した。

 だが、実際は当該記者と本誌担当編集者との“話し合い”があり、取材に応じた人が話した当該記者の年齢など細部に実際との齟齬はあるものの、本誌記事については「訂正」をするような間違いはないことを確認している。

 なお、勉強会には『週刊朝日』編集部からの参加はなかった。

(赤岩友香・編集部、2月8日号)

原子力規制委に市民団体が緊急要請――「名雪審議官事件」の調査を

原子力規制庁に署名を手渡す市民団体。(提供/原子力規制を監視する市民の会・阪上武)

 看板にした「中立性と独立性」は嘘だったのか。原子力規制庁の名雪哲夫審議官(五四歳)が日本原子力発電(日本原電)の常務らと面会し、敦賀原発活断層調査をめぐる公表前の文書を渡して訓告処分(二月一日付)を受けた問題で、「原子力規制を監視する市民の会」とグリーン・アクション、美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会(美浜の会)は二月五日、緊急に集めた三六〇二人の署名を東京・永田町の参議院議員会館で原子力規制庁側に提出。(1)第三者機関による調査・公表(2)名雪審議官が関与した「再稼働の新安全基準」骨子など策定作業の中止(3)原子力事業者との「面談」「あいさつ」の資料公開――などを求めた。

 名雪審議官は一月二二日に東京・六本木の同庁審議官室で日本原電の市村泰規常務ら三人と、内規で禁じられている単身での面会をした上、六日後(同月二八日)に公表予定の敦賀原発の活断層評価報告書案を手渡したという。面会翌日には本人が申し出たものの、規制庁は敦賀原発活断層評価会合や「原発新安全基準の骨子」公表(一月三一日)後の二月一日になって会見を開き、処分を発表した。

 規制庁側は会見で「内規違反(単身面会の禁止)」を処分理由とし、公表前の文書手渡しは守秘義務違反に当たらず「個人的な軽率な行為」(森本英香次長)とした。しかし名雪審議官は「地震・津波の新安全設計基準」や「原発再稼働の新安全基準」の策定に関与。その立場にある者が試験解答を事前に漏らすように原子力事業者に文書を渡していた構図は深刻だ。実際、日本原電は敦賀原発敷地内の断層が「活断層」と認定された当日の一月二八日、反論をまとめた見解を手早く表明している。

「市民の会」などは、今回の問題を「原子力事業者への利益供与」とし「原子力ムラの体質が変わっていない」と批判、規制委としての責任を明らかにするよう求めた。

(片岡伸行・編集部、2月8日号)

「尖閣購入」意見広告で日本語原文にない文章が――軍事同盟を重視する東京都

東京都が2012年7月27日付で米紙に掲載した「尖閣諸島」購入計画の意見広告。(撮影/三宅勝久)

 石原慎太郎・前東京都知事の「尖閣諸島」購入発言を受けて都が昨年七月二七日、米紙『ウォール・ストリート・ジャーナル』に出した意見広告をめぐり、日本語原文にない「日米同盟」に関する文言が英語文に混入するなどうさん臭い事実が発覚した。

 意見広告の翻訳・掲載の契約先は「(有)デスティネイション・ウエスト」(東京都渋谷区・鈴木直子社長)で、費用は一六七六万円。

 疑問の第一点は「アメリカ人のみなさんへ」ではじまる冒頭の段落部分だ。

〈東日本大震災の折りには、皆様から温かいご支援をいただき本当にありがとうございました〉

 日本語原文はそれだけなのに、掲載された英語文には次の一文が続く。

〈It reflects the commitment of the United States to a strong and enduring U.S.-Japanese alliance.〉〈(支援は)強力で永続的な日米同盟に対するアメリカの関わりを反映したものです〉=筆者抄訳

 なぜ唐突に「日米同盟」という軍事同盟が出てくるのか。知事本局はこう説明する。

「デスティネイション社のコピーライターから『この一文を追加したほうが意見広告の趣旨が伝わる』との提案があり採用した」

 翻訳を請け負った代理店からの提案だという。だが、情報公開請求をしたところ妙なことがわかった。追加した英語文に対応する日本語原文が存在しないのだ。

 日本語がなくてどうやって検討したのだろう。ためしに知事本局の職員に「U.S.-Japanese alliance」の意味を尋ねた。職員は「アメリカと日本の友好的な関係」と説明。「軍事同盟である日米同盟のことではないのか」とただすと「たしかに日米同盟だが、軍事に特化したわけではない……」と歯切れが悪い。

 二つ目の疑問点は「尖閣諸島」という言葉の使い方にある。肝心の島の数が明確ではない。

 英語文の意見広告全体を通じて「the Senkaku Islands」(尖閣諸島)の言葉は四回登場する。総称としての「尖閣諸島」が二回、都が購入対象にされている島という意味での「尖閣諸島」が二回。尖閣諸島の定義は都のホームページで明らかにされている。すなわち八島(五島三岩礁)――魚釣島・南小島・北小島・久場島・大正島・沖ノ北岩・沖ノ南岩・飛瀬の総称である。このうち石原前都知事が購入を口にしたのは、魚釣島・南小島・北小島の三島。ところが、八島も三島も区別せずに「尖閣諸島」と書いているのだ。

 このあいまいな表記とあわせて、意見広告に掲載された「尖閣諸島」の地図にも島影は三つだけ。なぜ「尖閣諸島のうち三島を購入……」と正確に書かないのか。都は「紙面に限りがあった」と言うばかりだ。

 島の数をズサンに扱っている一方で、専門的な軍事用語が使われている点も不自然だ。「東半球における米軍の最重要拠点である沖縄に所在する尖閣諸島の購入」(を石原知事が表明した)という部分では、日本語原文は「東半球」とあるのに、英語文になると「geostrategic」(戦略地政学的)といった軍事用語が使われている。

 軍事色は意見広告全体に漂っている。論旨は次のとおり。

〈尖閣諸島は沖縄県にある。沖縄県は米軍にとってもっとも重要だ。最近中国が日本の領土である尖閣諸島に圧力をかけている。中国と対峙する国を支援しなければアメリカは太平洋を失う。だから、どうか都の購入に理解と支援を〉

 米軍へのおもねりさえ感じさせる内容だが、米国に三島購入に関する「理解と支援」を呼びかけるのは意味不明というほかない。米国政府は、久場島(現在も民有地)と大正島を米軍の射撃・爆撃場として管理下におく一方で、尖閣諸島の領有権については中立を堅持している。日本の領土だと認めない相手に「購入に理解」を求めているのだ。

 米軍よ、沖縄にいつまでも――石原氏が税金を使って米国に届けたかったのは、そんな卑劣なメッセージではなかったか。

(三宅勝久・ジャーナリスト、2月8日号)

教育再生実行会議メンバーからの献金も――塾業界と癒着する下村大臣

 塾経営者から政界入りし、小泉政権時代には教育分野の規制緩和で旗振り役を務めた下村博文文部科学大臣。その下村大臣が支部長を務める自民党東京都第一一選挙区支部(板橋区)が、学習塾、予備校を中心とする教育関連企業から多額の政治献金を受け取っていたことが判明した。

 献金者の中には、一月二四日に始動したばかりの教育再生実行会議のメンバーである「成基コミュニティグループ」の佐々木喜一代表の名前も。露骨な政・業の癒着が問題視されている。

 献金の事実を報じた一月二一日付の『しんぶん赤旗』によると、業界からの献金額は二〇〇五年から一一年までの七年間で総額一二八九万円に上る。

 政治資金収支報告書は〇八年以前のものは破棄されているが、過去三年分(〇九~一一年)は現在も公開されている。ここには「田島教育グループ」「英進館」「木村教育研究会」「代々木進学ゼミナール」「リソー教育」など塾運営企業がズラリと並ぶ。大半は一年ごとに六万~一二万円程度の小口献金だが、進学塾「みすず学苑」も経営する神道系宗教法人「ワールドメイト」(教祖:深見東州氏「本名:半田晴久」)は、〇九年だけで三〇〇万円を寄付していた。

 中には具体的な“見返り”を疑わせる企業も存在する。かつて学校法人にしか認められなかった学校の設置・運営は、〇二年施行の構造改革特別区域法で株式会社にも解禁。この時「教育特区」の担当者として文科省と交渉したのが下村氏だ。規制緩和を機に「ウィザス高等学校」(現「第一学院高等学校」・茨城県高萩市)を設立した「ウィザス」(大阪市中央区)は、過去三年間で計四八万円(『赤旗』によれば七年間で八四万円)を献金している。

 また、一一年に一二万円(同六〇万円)を献金した佐々木喜一代表について、下村大臣は筆者に対し「教育再生実行会議のメンバーに入って頂く際に(中略)頂いたご寄付は全て返納」していると述べているが、だとしても佐々木氏が文科相にかけた恩が、委員の人選に有利に働いた疑いは残る(内閣官房の教育再生実行会議担当室は「ノーコメント」とだけ回答)。

 下村大臣が塾業界との癒着を指摘されたのも今回が初めてではない。日本で初めての株式会社立大学「LEC東京リーガルマインド大学」の法令違反(東京都と文科省からの是正勧告を経て、一〇年に学部生の募集を停止)が国会で問題視された〇七年一月にも、『アエラ』『サンデー毎日』が業界からの多額献金を報道。この際に大臣はブログで、「(献金は)いずれも政治資金規正法に則って、その枠内の中で応援をしてもらっていることであり、適正である。そもそも私は大学在学中に学習塾を開きその縁で全国の塾経営者の方々から広く浅く支援をいただいている。(中略)かつての仲間を皆で応援しようという私に対する好意の表れであり、そこに何ら問題点があるわけではない」と反論している。だが、いくら「広く浅く」であろうと、特定の業界からこれだけの額のカネを集め、結果的に業界への利益誘導が実現している以上、“適正”な関係とは到底言い難い。

 なお、下村大臣は〇四年と〇六年にLEC東京リーガルマインドの広報誌『法律文化』で、同社の会長と対談。そこでの発言によれば大臣の思い描く「究極の教育改革」とは、既存の公立小中学校を民間委託し、最終的に独立行政法人化(民営化)することのようだ。

「教育分野では、私立学校が増えるよう新規参入できるようにすることが大切であり、公設民営も進めて当然ということになります。公立学校の経営を民間の事業者に委託することでサービスアップが可能だと分かれば、任せればよい」(『法律文化』〇四年九月号)

「私が提唱する究極の形態は、(教育委員会ではなく)現場の学校にマネジメントを任せるべく、公立の小中学校を独立行政法人に移行させること」(同誌〇六年三月号)

 塾業界にビジネスチャンスをもたらす「改革」を一貫して志向・推進してきた下村氏。業界「代理人」のような人を大臣にして、教育行政の公正さは保たれるのか。

(古川琢也・ルポライター、2月8日号)

高知白バイ事故捏造事件――内部告発警官が続々

 二〇〇六年三月、高知市内で暴走白バイに激突されたスクールバスの運転手だった片岡晴彦氏(五九歳)が業務上過失致死罪で禁固刑となり、出所後に再審請求している事件。高知県警の捏造工作が疑われる中、県警が隠蔽に躍起になっている。

 昨年一一月、高知市に住む土地改良換地士の小松滿裕氏(六三歳)が軽犯罪法違反容疑で起訴された。内容は同年八月、小松氏が同市鷹匠町の加藤晃久県警本部長宅の周囲で「加藤、恥を知れ」などと歌い、警官から制止されると大声を出して近隣に迷惑をかけたというもの。

 今年一月二一日、高知簡裁での初公判後の会見で小松氏は「制止などなかった。加藤本部長をなじる『よさこい節』を歌って通行しただけ」と怒った。不自然な起訴には理由がある。白バイ事故で県警が過失責任を片岡氏に押し付けようとバスのタイヤのスリップ痕跡を捏造していた疑いがあることを知った小松氏は事件に対する怒りから、監査請求や公文書開示請求などを実施。小松氏の元には警察から内部告発の手紙が多く届いているという。「多くの良心的な警察官が支援してくれている」と打ち明ける。

 会見では、これらの内部告発の手紙を元に作成された資料を配布。それによれば、捏造にかかわったとされる警察幹部の一人のA警部は採用試験で親しい女性を特別扱いし公安委員会で監査請求されているが、監察課長に対し「自分を処分するなら、事故の全貌をばらす」と話しているという。公用車を好き放題使っているというB警部に対しても県警は注意処分(一二年一二月一八日)しかしておらず、定年退職したC警部も再雇用して守秘義務で縛っているという。

 片岡氏と小松氏の弁護人を務める生田暉雄弁護士は加藤本部長と本部長宅前で制止したと主張する警部や、捏造工作をしたとみられる警視一人、警部二人も証人申請した。

 小松氏は会見で「白バイ事故のでっち上げ事件は高知県民の恥です」と訴えたが、各新聞はまったく報道しなかった。

(粟野仁雄・ジャーナリスト、2月1日号)

「より多くの人がヤギになればいい」

排外主義について講演する森達也氏。(写真/林克明)

 先月26日、「差別・排外主義に反対する連絡会」主催で、森達也氏(作家・映画監督)の講演集会が東京都内で行なわれ、約80人が参加した。生活保護差別や在日朝鮮人差別などにみられる“バッシング現象”の本質を語った。

「日本社会が変質する転機だったオウム真理教事件は、あれだけの大事件なのに麻原の裁判は一審で終わり。なぜサリンをまいたかが解明されていない。たとえるなら、深夜の帰宅途中で暴漢に襲われ入院。犯人は捕まったが、怨恨なのか、金目当てなのか、理由がわからないと不安と恐怖が増幅し、武器を持った人に守ってもらいたい、集団なら安全だと考えるようになります」

 その結果は、4年後に明確に表れた。「1999年の国会で、国旗国歌法、住民基本台帳法(改正)、通信傍受法(盗聴法)などが次々に決められ、集団化と異物排除の傾向が強まり、3・11後に加速した」

 暗く沈む聴衆に森氏はこう言った。「モンゴルに行ったとき羊100匹の群れにヤギが1匹の割合でいた。なぜかと聞くと、食べる草がなくなっても羊は群全体が動かず止まったままでやせ細ってしまう。しかしヤギが勝手に移動するとそれについて羊が移動して助かる。より多くの人がヤギになればいい。そのためには視点を変えること」とし、全体主義に流れやすい日本社会に警鐘を鳴らした。

(林克明・ジャーナリスト、2月1日号)