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脱原発に五輪招致・築地移転・新銀行東京の見直し掲げ――宇都宮氏が都知事選出馬表明

会見で原発事故の被災者への思いを語る宇都宮健児氏。(撮影/横田一)

 日本弁護士連合会前会長で本誌編集委員でもある、宇都宮健児弁護士が一一月九日、衆議院第一議員会館で記者会見し、東京都知事選(一二月一六日投開票)への立候補を表明した。「都民と一緒に『人にやさしい都政』を取り戻すために全力を尽くしたい」と切り出した宇都宮氏は長年、サラ金問題や貧困問題に取り組み、一昨年四月からは日弁連会長として東日本大震災や原発事故の被災者救済活動に尽力してきた。宇都宮氏は「脱原発政策」を主要政策に掲げて出馬するきっかけも紹介した。

「被災地の司法書士から『大熊町の双葉病院に入院していたご主人が亡くなった時、会津若松市の温泉旅館に避難していた奥さんが死に目にあえず、今でも宿泊客に気がねをして遺影も飾れずに線香も上げられない』という話を聞きました。こういう惨いことを強いている事故だと知って憤りを感じざるを得ません。被災者と向き合いながら脱原発政策を進めないといけないと考えています」。

 質疑応答では、「大阪以上の脱原発政策を進める」「二〇二〇年の五輪招致や築地市場移転や新銀行東京については、都民の声を聞きながら見直していきたい」と、石原慎太郎都政からの転換を強調した。

 宇都宮氏の出馬表明で、脱原発などで連携する「オリーブの木構想」(小沢一郎氏が提唱)が、次期総選挙の前哨戦の東京都知事選で一足早く実現する可能性が出てきた。脱原発を掲げ始める「国民の生活が第一」「共産党」「社民党」などが脱原発統一候補として宇都宮氏を推すというわけだ。

 前日に出馬表明した松沢成文氏は「二〇三〇年の脱原発は困難」「五輪招致は見直さない」との考えを表明。宇都宮氏との違いが明確になった。「石原都政を継承する猪瀬直樹副知事と松沢氏 対 脱原発の宇都宮氏」という都知事選の構図が明らかになってきた。

(横田一・フリージャーナリスト、11月16日号)

政府がモニタリングポスト675台を改修工事――数値が低く出た原因は鉛?

福島県福島市内のモニタリングポスト。(撮影/Greenpeace・Jeremie Souteyrat)

 国際環境NGOグリーンピース・ジャパンでは海外から放射線専門家であるスタッフを招き一〇月一六日から一九日まで福島県福島市と飯舘村で、それぞれ三一五カ所、九五カ所の放射能調査を行なった。調査は今回で一三回目。

 福島市に関しては「市民と科学者の内部被曝問題研究会」が福島県内のモニタリングポスト周辺を計測して「文部科学省のモニタリングポストは意図的に低線量を提示か」と問うていたのを受けたもの。モニタリングポストから〇メートル、五メートル、一〇メートルの各地点を計測した。結果、計測した四〇カ所のモニタリングポストの七割以上で、設置地点より周辺のほうが高い数値が出た。明らかにモニタリングポストのごく周辺のみを除染しているところや鉄板やコンクリートを「台」にしてある例もあり、それが数値が低く出る原因だという可能性があると思われた。これでは住民に誤った安心感を与えることになる。グリーンピースは一〇月二三日に記者会見を開き、政府にモニタリングポストの再評価を求めた。

 こうした市民の動きに応えたのか、一一月七日になって政府が、モニタリングポストの表示線量が低いのは、装置脇の鉛のバッテリーが原因として、六七五台について改修工事の実施を明らかにした。

 しかし、「そこだけ除染」や他の「遮蔽物」については検証されておらず、何よりも大事な意図は解明されていない。

 放射線防護の基本は、汚染源から離れることであり、本来こうした地域では、避難・移住がサポートされるべきなのである。

「汚染を過小評価し、賠償額が増えてしまうので避難する人々の増大を防ぎたい」――という意図が政府になかったのかを問うべきだ。

 今回の放射能調査の計測データは http://www.greenpeace.org/japan/monitoring/13th/

(鈴木かずえ/グリーンピース・ジャパン エネルギー・核問題担当、11月16日号)

イスラム教徒になったら公安が……

アップされた岩重さんの画像。

 内戦が続くシリアに取材に行き、イスラム教徒になったところ、シリア反体制派の兵士になったかのように報じられ、直後には公安が家族の元に……。シリア・ラタキア県北部の村で7月28日、広島県出身のカメラマン・岩重光義さん(28歳)は自由シリア軍兵士らの立ち会いでイスラム教に入信。その際の動画が複数を経由し、誰かの手でYouTubeにアップロードされた。それを元に7月30日、NHKと共同通信が「シリア反体制派に日本人?」との見出しで報じた。いかにも参戦しに行ったような記事になっていた。

 その直後、岩重さんの実姉の元に外務省から「(シリアから)早く帰るように家族から伝えてほしい」と連絡が入り、8月下旬には広島に住む母親の職場に「法務省公安調査局」の統括調査官が訪れ、「この状況なら(息子さんは)死んでいる可能性もある」などと言って、母親の心配を募らせた。

 日本国内のイスラム教徒は「テロ勢力」扱いされ、平和運動に関わる市民団体や政党、ジャーナリストとともに自衛隊情報保全隊の監視対象に。自衛隊の国民監視差し止めを求める裁判(一審は国に賠償命令)も続いているが、岩重さんは「まさか自分も監視対象に?」と当惑気味だ。ちなみに誤報を流したメディアは訂正も謝罪もなし。この国のメディアと公安は何をやっているのか。

(片岡伸行・編集部、11月9日号)

むらさきロードパレードに100人――「暴力は愛じゃない」

各々自分の思いを書いて掲げる。「ぼう力は、はんたいだー」と書いた子どもも。(撮影/宮本有紀)

 ドメスティック・バイオレンス(DV)、性暴力などの被害当事者と支援者らが、暴力根絶の象徴である紫色のものを身に着け、子どもと女性への暴力根絶を訴えて歩く「あるこうよ むらさきロード」パレード(主催/同実行委員会、後援/内閣府男女共同参画局、UN Women〈国連女性機関〉)が一一月四日、東京で行なわれた。

 今年でパレードは四回目。五歳から一二歳までの子ども九人を含む約一〇〇人が参加した。支援者だけでなく当事者が自ら声をあげるのがこのパレードの特徴。仮面やかつらなどで仮装した参加者らが、青山通りや表参道を歩きながら、「暴力は嫌だ」「暴力は愛じゃない」「携帯チェックは人権侵害だ」「出かける先をいちいち聞くな」などと訴えた。

 参加した当事者のJさん(四四歳)は「最初は不安で怖かったが、支援者の人たちに守られ、暴力は嫌だと声に出して言えた。青空の下で自分の言いたいことを言えることが気持ちよかったし、言えたということで励まされ自信もつきました。暴力を受けていたということが恥ずかしくて隠していたが、受け入れてもらえ、気持ちを共有できたことがうれしい」と話す。

 ただ、重度のPTSD(心的外傷後ストレス障がい)を抱え外を歩けない状態の被害当事者も多い。Jさんは同じ当事者として「自分の頭と心によく聞いて、本当はどうしたいか決めてほしい。いつでも一緒に歩ける。一人だと思わないでほしい」とエールを送る。

 むらさきロード実行委員会の鈴木あうらさんは「被災者のトラウマは報道されているが、DV被害者のトラウマはニュースにもならない。社会の暴力構造は変わっていない」と指摘。パレードは来年以降も続けると話した。問合せなどは arukoumurasaki@yahoo.co.jp まで。

(宮本有紀・編集部、11月9日号)

反原発デモ取材の妨害禁止を求め――フリー記者が申立て

 国会記者会と佐賀年之事務局長による国会記者会館での「取材妨害」の禁止を求め、フリーランス記者の、寺澤有、佐藤裕一、畠山理仁の三氏が一〇月三一日、東京地裁に仮処分を申し立てた。三氏は今年七月以来、官邸前の反原発抗議活動の撮影許可を求めて、同会館の土地や建物への立ち入りを「フリーランス連絡会」として文書、電話、面談などで再三申し入れたが拒否された。同月一二日にも取材を申し入れ、「取材を妨害しないでください」「妨害しますよ」と事務局長と押し問答となり、その収録DVDも証拠として提出した。一一月六日には東京地裁で三記者と国会記者会の面談が行なわれた。

 国会記者会館での取材をめぐってはNPO法人OurPlanet-TV(代表・白石草さん)が「取材権の侵害」による損害賠償を求めて国会記者会と衆議院を訴え、公判は一一月五日に行なわれた。

 そもそも国会記者会による国会記者会館の使用目的は、一九六九年の公文書によると「国会関係取材のための新聞、通信、放送等の記者事務用室」と管理範囲が限定されている。その際、「国会記者事務所の使用について」「管理をお願いする」(原文のまま)と衆議院事務総長の手書き文書で任された。国会記者会が管理人を雇い入れ管理を任せているうちに、範囲が事務用室から廊下、屋上、敷地へと拡大解釈が進んだと考えられる。

 フリーランス連絡会は政府・東京電力統合対策室共同記者会見から一部のフリーランス記者が締め出されそうになった際、交渉の枠組みとして設立された。仮処分に至った記者会の対応について畠山氏は「記者出身の事務局なのに理解に苦しむ」、佐藤氏は「同業から侵害を受けるとは」、寺澤氏は「時代的に合わない」と会見で語った。

(まさのあつこ・ジャーナリスト、11月9日号)

成田空港反対派の建物撤去は10年ぶり――11月28日に横堀で強制執行

強制撤去が決まった千葉県芝山町にある横堀団結小屋。(撮影/赤岩友香)

「当時は“戦争”だったよ」

 千葉県芝山町にある横堀団結小屋に向かうタクシーの中、運転手は一九六六年から始まった成田空港建設反対運動「三里塚闘争」についてこう語った。

 千葉地裁八日市場支部(執行官:栗原昇)は一〇月二九日、横堀団結小屋の居住者と三里塚・芝山連合空港反対同盟元熱田派に対し、退去と土地の明け渡しを催告した。これは空港会社が七月一二日に千葉地裁へ提出した「工作物収去命令申立書」に基づくもので、人が住んでいる反対派の建物撤去は二〇〇二年一一月以来一〇年ぶりとなる。

 団結小屋への道中で複数の機動隊の車とすれ違った。小屋に着くと「三里塚空港粉砕! 団結小屋破壊阻止! 一坪共有地強奪を許さない!」という看板が掲げられていた。草地の奥へ歩を進めて目にしたのは千葉地裁による公示書。一一月二八日午前七時に強制執行される旨が記されていた。

 そもそも三里塚が空港建設地に選ばれたのは、宮内庁下総御料牧場と県有地が合わせて約四二四ヘクタールあり、空港敷地の約四〇%を占めていたことが理由の一つだという。残りの約六〇%の敷地は中農以下の開拓農民が多く、地元住民の反対を押し切り空港の建設は進められた。

 今回の横堀団結小屋とは別に、今年八月九日、東京高裁第五民事部(大竹たかし裁判長)が、建設反対派の柳川秀夫さん持分裁判と横堀共有地裁判に対し、控訴棄却の判決を出した。これは空港会社の単独所有を認めるもので、元熱田派は上告。横堀団結小屋以外にも空港周辺には元熱田派の団結小屋が二つある。

 三里塚大地共有委員会(Ⅱ)の加瀬勉代表は本誌に対し「今回の三里農民に対する強制代執行は、三里農民の財産権、居住権を破壊する国家犯罪である」として、国との対決姿勢を強めている。

(赤岩友香・編集部、11月9日号)

維新とたちあがれ日本は“水と油”――石原氏の一本釣り狙う橋下氏

 一一月三日、日本維新の会代表の橋下徹大阪市長らと、石原慎太郎前東京都知事やたちあがれ日本の平沼赳夫代表らは京都市内で会談、日本維新の会と石原新党の連携に関する政策協議を行なった。

 会談では、橋下氏が「石原氏とは一緒にやれるが、たちあがれ日本とはカラーが違う」と批判した。永田町ウォッチャーはこう解説する。「橋下氏の狙いは、ズバリ石原氏の一本釣りです。第三極連合の代表のような存在に祭り上げて首班指名、日本維新の会主導による石原政権誕生を目指しているのは確実。石原氏は橋下氏らとの連携しか活路がなく、維新の会の神輿に乗って“客寄せパンダ”になるしかない。そうした事情を見透かして、たちあがれ日本のメンバーを排除しようとしているのです」。

 橋下氏のブレーンである竹中平蔵氏は、新自由主義路線の郵政民営化を進めた人物だ。当時、竹中氏を支えていた元財務官僚の高橋洋一氏も大阪市の特別顧問で橋下氏のブレーン。両氏ともTPP(環太平洋戦略経済連携協定)参加に賛成の立場だ。こうした新自由主義的親米派に“指導”を受ける日本維新の会と、「郵政民営化は対米追随」と批判して自民党を離党し反TPPの平沼氏らは水と油のような関係で、基本政策が一致して連携できるはずがない。

 ただし原発政策も消費税も「些細な問題」として、持論を捨て去ることにこだわりはない石原氏だけは例外的な存在で、橋下氏はこれを「現実的」と称賛している。

 同じく橋下氏のブレーンの「環境エネルギー政策研究所」所長・飯田哲也氏は一日、前出の高橋氏からこんな話を聞いたという。

「石原さんは政策を何も理解していないから『原発ゼロ』でも平気で言う可能性がある」「国政の中で大きな役割を果たせば、(維新の会の政策を)何でものむ、あの人は」

 石原氏の原発政策に関する言動が注目される。

(横田一・フリージャーナリスト、11月9日号)

東京都が公園使用を不許可――反原発集会を封じ込め

会見する首都圏反原発連合のミサオ・レッドウルフさん(右から2人目)ら。(撮影/野中大樹)

 毎週金曜日の首相官邸前デモなどを主導してきた首都圏反原発連合が一一月一一日に予定している「11・11 反原発1000000人大占拠」は、東京都が日比谷公園の一時使用を不許可としているため開催が危ぶまれる状況となっている。

 二日、衆議院第一議員会館で行なわれた会見で反原連のミサオ・レッドウルフさんらが経緯を説明した。これまでと同じやり方で日比谷公園の指定管理者に使用許可書を提出した際、「東京都から、デモの一時使用受付はしないよう言われた」という。反原連は一〇月二六日、都に対し使用許可の申請をしたが、都は三一日、「公園管理上の支障となるため」として不許可の通知を出した。

 主催者らは「(実現できなければ)運動全体にとってかなりのダメージになる」「(圧力に屈して)できなくなるという前例はつくりたくない」として東京地裁に申し立てる決断をしたという。しかし二日夕刻、東京地裁は主催者らの主張を却下。主催者側は即時抗告を出したが、五日には東京高裁が地裁判決を支持したことで一一日の日比谷公園でのデモは不可能となった。

 東京都は八月より従来の方針を切り替え、日比谷公園をデモの出発地点とする場合、日比谷公会堂や日比谷野外音楽堂の使用を条件につけることにしている。国際政治学者の五野井郁夫氏は「大きな場を借りなければ集会ができないとすれば、お金がない人間は集会ができなくなる」と訴えた。

 中東の民主化デモ「アラブの春」などを取材してきたジャーナリストの田中龍作氏は「独裁政権下にあるエジプトでもタハリール広場の使用を認めてきた。東京都の実態は異常としか思えない」と話す。

(野中大樹・編集部、11月9日号)

七つ森書館の訴えを棄却――『読売』主張を鵜呑み

 知的財産高等裁判所第二部(塩月秀平裁判長)は一〇月一五日、『会長はなぜ自殺したか――金融腐敗=呪縛の検証』(刊行:七つ森書館、著者:読売社会部清武班)の出版差し止め決定に異議を申し立てていた七つ森書館の抗告を棄却した。同書の著作権を主張していた読売新聞社側を全面的に支持した形となった。棄却理由として、知財高裁は「(著作権は)個々の執筆者の総称ではなく、法人名を表示したものと認めるのが自然」とした。

 本誌五月一八日号本欄でも報じたが、同書は元巨人球団代表の清武英利氏ら取材班が『読売新聞』社会部時代にまとめた著書(一九九八年に新潮社から刊行)の復刊。二〇一一年一一月、清武氏が読売新聞社代表取締役会長・渡邉恒雄氏を告発したことを機に、読売新聞社は七つ森書館と締結した同書の出版契約書の無効確認請求をはじめ、この間二件の仮処分を申し立てている。

 今年五月、書店へ本を卸している各取次会社への納品も完了していた段階で、読売新聞社は同書の販売差し止め仮処分を申し立てた。同時に、各書店や各取次会社に対し、「七つ森書館に対する販売禁止の仮処分申し立てについて」という文書を配布し、同書の販売をしないよう要請した。

 六月には読売新聞社が申し立てた著作権仮処分が、東京地裁民事四〇部(東海林保裁判長)で認められ、七月に出版差し止めの決定がなされた。七つ森書館は同書を出庫することができなくなってしまったため、知財高裁へ保全抗告を申し立てていた。

 読売新聞社が名誉権にもとづいて申し立てた、もう一件の出版差し止め仮処分では、七つ森書館の勝訴が確定している。

 今回の棄却決定に対し、同社の代表取締役社長・中里英章氏は「『読売新聞』側の主張を『鵜呑み』にした東京地裁の決定をなぞっただけという恐るべき不当なもの」として、一〇月一八日に最高裁判所へ特別抗告した。

 なお、一一月一三日、「日本の裁判所はナベツネに逆らえないのか」と題し、東京・韓国YMCAにて清武氏、人材育成コンサルタントの辛淑玉氏、佐高信本誌編集委員らのシンポジウムが実施される。詳しくは七つ森書館まで。電話番号 03-3818-9311。

(赤岩友香・編集部、11月2日号)

歴史教科書の“盗用”めぐり――自由社と育鵬社対立

「新しい歴史教科書をつくる会」(つくる会)の自由社が、元々同じ流れを汲む育鵬社版歴史教科書に「多数の盗用がある」として、育鵬社(扶桑社の子会社)に対し、公式の謝罪と、自由社が被った被害の補償を求めた。補償額は目安として、育鵬社の市販本を含む総売上から製造原価を除いた額の五〇%としている。

 自由社版教科書の執筆者代表である藤岡信勝拓殖大学客員教授らは一〇月一九日、文部科学省に対して、育鵬社版歴史教科書には水田稲作に関する記述など盗用箇所が四七カ所あると報告。二三日には東京都内で会見を開き、「これだけの盗用は教科書史上で初。すみやかな対処を望む」と訴えた。

 つくる会は「教科書改善運動」として一九九六年に発足し、二〇〇二年に扶桑社から「新しい歴史教科書」を発行したが、編集方針の違いなどから内部分裂。その後、自由社から教科書を出版した藤岡氏らは、同会の分裂前に執筆した扶桑社版教科書の出版差し止めを求めて東京地裁に提訴したが、地裁はこの請求を棄却。判決文で藤岡氏は「(扶桑社版教科書の)執筆者の一人」とされている。

 扶桑社版教科書の記述を「盗用している」とされた育鵬社は本誌の取材に対し「藤岡氏は(扶桑社版教科書の)執筆者の一人であり、事業継続している当社の教科書の内容が似通ってくることはありうること。藤岡氏らの主張は理解に苦しむ」としている。一方、二三日の会見で、自由社の執筆者グループは「保守系言論人にはヒラメ人間がいる」と、育鵬社を痛烈に批判した。

 昨年、沖縄県八重山地区を揺るがした教科書採択問題。住民から自由社、育鵬社教科書への批判の声が高まると、藤岡氏は地元紙に「特定教科書の誹謗はやめよ」と、両社教科書を援護してみせている。

 自由社と育鵬社の対立は法的な闘争に発展する見通しだが、“ヒラメ人間”同士の闘いになってはいないか。

(野中大樹・編集部、11月2日号)