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スウェーデン最高裁が判決――児童ポルノ所持は無罪

 漫画の児童ポルノを規制する東京都条例が物議を醸しているが、注目すべき判決がスウェーデンで出ていた。

 漫画からのイメージ・ファイルをパソコンに持っており、児童ポルノ所持で有罪判決を受けていたスウェーデンの漫画専門家に最高裁判所が無罪判決を出したと、英国・BBCやスウェーデン・The Localなど複数のメディアが報じた。

 日本の漫画『ネギま!』や『ナルト』のスウェーデン語版翻訳をするなど、スウェーデンの漫画界で有名なシモン・ルンドストロム氏(三七歳)は二〇一一年、パソコンにあった漫画のイメージ・ファイルの三九点が児童ポルノ所持に当たるとされ、地域法廷で二万五〇〇〇クローナ(約二九万円)の罰金が科せられた。二審では五六〇〇クローナ(約六万五〇〇〇円)と減ったものの有罪は変わらなかった。

 ところが、ルンドストロム氏の上訴に対し、最高裁判所は六月一五日に無罪判決を出した。裁判で検察側は「実物の児童の写真であるか描かれたものであるかにかかわらず、児童は性的対象として描写されてはいけない」と主張。これに対しスウェーデン漫画協会長のフレデリック・ストロンバーグ氏は「ヨーロッパの基準で児童と判断してはいけない」と訴えた。

 同氏によれば「日本人は年齢を問わず『可愛い』という感覚」を持っていて、「漫画のキャラクターは小さくて可愛く、若く描かれる傾向があり、これは年齢を示すためではない」からだという。

 法廷では大型スクリーンが用意され、問題となった三九点のイメージ・ファイルが公開された。

 最高裁は「イメージとしては子どもを描いたポルノではある。しかし漫画は想像の図形を表すもので、実際の子どもと間違えられる可能性はない」とした上で、「ただし三九点のうち一点については十分に現実的な描写であり、児童ポルノとも言えるものだが、個人所持は認められる」と判決を下した。

(金成河・立教大学生、8月10日号)

原告団266人が提訴――東海原発の廃炉を

「収束していない福島事故で地元住民は切り捨てられた。同じ痛みとして感じながらともに生きていけるのか、それを問う裁判です。原告らの顔つきを見てほしい」

 東海第二原発(日本原子力発電、以下原電)運転差し止め提訴の原告共同代表である常総生活協同組合副理事長の大石光伸氏は提訴後の会見で述べた。七月三一日、茨城県水戸地裁に原告団二六六人が東海第二原発運転差し止めを求め提訴した。現在、弁護団は七一人、賛同会員は四九二人に達している。

 訴訟の特徴は(1)東海第二を運転する原電に運転停止を求める民事訴訟であること(2)国に対して原子炉等規制法に基づく原子炉設置許可処分に対し処分の無効確認を求める行政訴訟(3)改正後の原子炉等規制法に基づいて運転停止の義務付けを求めること――の三点だ。

 原電には運転停止を求め、国には福島事故を念頭に今までの安全指針には効果がないことを認めさせ、新しく作る原子力規制委員会に運転停止を命じさせることを訴える。原告団は問題となっている規制委員会人事案に対しても原子力委員会設置法の趣旨に反するとして国に人事撤回の要請書を提出した。

 3・11で放射能汚染の影響を受け、地元原発も事故一歩手前だった茨城県ではこれまで、一七市町村の首長と議会が東海第二の再稼働に反対する意見を採択。

 訴状提出前の集会で原告団共同代表の相沢一正氏は「3・11以降、東海第二の廃炉を考える運動と連携して、裁判が準備され今日に至っている。脱原発運動を広げることで裁判を盛り上げ闘っていきたい」と話し、弁護団共同代表の河合弘之弁護士は「原発訴訟は全部負けてきた。なぜか? それは原子力ムラが四〇年間大金をかけてやってきた原発安全キャンペーンが国民だけでなく裁判官にも染みわたっていたからだ」と述べた。

 集会後、原告らは訴状を携え水戸地裁までデモ行進。福島事故で避難を余儀なくされた人、JCO臨界事故(一九九九年、作業員二人が死亡)を体験した人などさまざまな背景を持つ人がデモに参加した。

(中村ゆうき・ライター、8月10日号)

新型核兵器開発を進めるオバマ政権――「核なき世界」より「核の優位」

 今年で一期目を終えるオバマ大統領が、「核兵器近代化」と称した新たな核軍拡に拍車をかけている。これは二〇〇九年の「核なき世界」というプラハ演説に反するものだ。

 昨年二月に発効した米国・ロシア新「戦略兵器削減条約」は、二〇一八年まで両国が配備する戦略核弾頭数を一五五〇発までに削減することを決定。さらにAP通信が七月三日に報じたところでは、大統領は将来の戦略核弾頭の削減目標として、(1)約一〇〇〇~一一〇〇(2)約七〇〇~八〇〇(3)約三〇〇~四〇〇という三つの選択肢を構想しているとされる。

 だが「量」が減らされる一方で、軍縮問題を専門とする米ジョージタウン大学のカイル・リーバー教授らの試算によれば、オバマ政権は今後一〇年間で一八五〇億ドル(約一四兆五〇〇〇億円)を投じた核兵器体系の近代化を計画している。国防総省予算全体では二〇一二年から一〇年間で四八六九億ドル削減される予定だが、核兵器の開発・製造・管理を担うエネルギー省の分などを含めると、同政権の核兵器重視の姿勢は明白だ。

 例として、以下の新型の核兵器運搬手段開発計画が挙げられる。

●戦略ミサイル搭載オハイオ級原子力潜水艦に代わる、新型艦SSBN―X。

●戦略爆撃機B52、B1に代わる、新型長距離核爆撃機(LRNB)。

●爆撃機搭載用の、新型長距離核巡航ミサイル(LRSO)。

●ミニットマンⅢに代わる、空・海軍共用可能な新型大陸間弾道戦略核ミサイル。

 これらの開発計画はすでに二〇一三会計年度(二〇一二年一〇月~二〇一三年九月)の国防総省予算とエネルギー省の予算に盛り込まれており、一部で遅れが生じているが、基本的に各兵器は二〇二〇~三〇年以降配備される。

 またこれら以外にも、核弾頭生産施設の近代化や、貯蔵されている核弾頭の寿命延長、核兵器製造の基盤であるウラン処理施設の建設等も含まれる。オバマ政権は発足後、七回も核実験を実施してきたが、長期的に米国の核弾頭の破壊力と精度を向上させることが目的と見られる。オバマ大統領は今後、より質的に強力な核兵器体系を築き、世界支配のための「核の優位」を維持しようとしているのは間違いない。

(成澤宗男・編集部、8月10日号)

「龍基金」ワタミ過労自殺遺族が受賞

あいさつする森豪さん(左)と祐子さん。(写真/片岡伸行)

 第6回「過労死をなくそう!龍基金」中島富雄賞授賞式が8月5日、東京都内で行なわれ、居酒屋「和民」に入社しわずか2カ月後に過労自殺した森美菜さん(当時26歳)の両親、森豪・祐子さん夫妻に贈られた。ご両親は今年2月に労災認定を勝ちとり、ワタミ(株)(渡邉美樹会長)に謝罪などを求めて交渉中だ。

 同基金(中島晴香代表)は飲食店チェーン大手「すかいらーく」店長で2004年8月に過労死をした中島富雄さんの遺志を継ぎ、過労死をなくすために貢献した団体・個人を表彰している。

 同賞の選考委員の一人で過労死弁護団全国連絡会議事務局長の玉木一成弁護士は「過労死は増加傾向にあり、とくに若い世代の精神疾患による自殺が増えている」と指摘。過労死を生み出す社会の土壌を変えるため「過労死防止基本法」の制定を呼びかけていることにも触れた。

 森さん夫妻は、美菜さんが過労自殺した経緯と、ワタミの誠意のない言動への怒りを示し「ワタミ全社に、娘の思いをわからせたい。理不尽な長時間労働にNOと言える社会に、企業に改善させる取り組みをみなさんと一緒に」と声を詰まらせた(関連記事13ページ)。

 授賞式後、NPO自立生活サポートセンター「もやい」代表理事の稲葉剛さんが「生きる権利が守られる社会へ」と題し講演した。

(片岡伸行・編集部、8月10日号)

海水浴場で「痴漢」職質中に転落死――愛知県警証言に疑問

「頭を上にしてバランスよく落ちた。手を伸ばしたが届かなかった」(趣旨)と警察官は証言した。だが別の男性は「前に倒れるようにバランスを崩して落ちた。手が触れたようにみえた」(同)と異なる証言をする。真相は――。

 二〇〇八年八月三日、高木勇吾さん(当時二五歳)は妻子・友人とともにバーベキューをするために愛知県の千鳥ヶ浜海水浴場を訪れていた。友人と浜を散歩していたところ、見知らぬ男女グループから「痴漢した」と言いがかりをつけられる。一人の男が殴りかかり、もみ合っているところへ半田署員が登場。高木さんは近くの建物に連行され、二階に閉じ込められる。半田署の臨時詰所だった。

 そこで高木さんは「職質」を受ける。人違いであることは、彼が泳げなかったことからも明らかだが、ふいに高木さんは開いていた窓から外に飛び出す。窓の外には幅一・三五mのベランダがあり、さらに外側に鉄製階段があった。高木さんはベランダ越しに二mほど落下、階段に設置された防犯柵に首を貫かれて死亡した。

 遺族は裁判を起こし、訴えた。

〈勇吾の痴漢容疑は人違いだ。警察は勇吾を突き飛ばすなど乱暴な態度で接した。それを不快に感じて窓から飛び出した際、警官二名が手を出して体をつかんだ。結果、バランスを崩して落下、死亡した。愛知県には責任がある〉

 この訴えを、今年三月、名古屋地裁は切り捨てた。警察の主張を鵜呑みにした遺族敗訴判決。警官の手は触っていないというのだ。

 納得しない遺族は今年七月、ボールを落とす再現実験をして検証した。結果、疑問はさらに濃厚となる。「頭を上にしてバランスよく落ちた」ならば、高木さんの首が鉄柵に刺さるはずがない。警官の手は確実に高木さんの足をつかんだ。高木さんはバランスを崩し、階段にぶつかった。そう考えるのが合理的ではないか。遺体の損傷状況とも合致する――。

 控訴審弁論は一〇月二日午後二時半、名古屋高裁一〇〇三号法廷。

(三宅勝久・ジャーナリスト、8月10日号)

原発問題を取り上げてきた「たね蒔きジャーナル」――“打ち切り”に存続の声相次ぐ

 原発問題を積極的に取り上げるなど、良心的なラジオ報道番組として評価の高い「たね蒔きジャーナル」(毎日放送=大阪)の打ち切り問題が表面化し、存続を求める運動が活発化している。

 七月二八日朝、ツイッターでのつぶやきが発端となってインターネットなどで広がり、三一日にはリスナーらが大阪・茶屋町の放送局前に集まって存続を訴え、八月に入るとライヴドアニュースや一部新聞なども取り上げ、さらに署名運動も始まっている。

 毎日放送視聴者センターでは「秋の番組改編の時でないと、お話しできない」としつつも、「相当数の存続要請が来ているが、その数は言えない。趣旨は必ず担当者に伝える」と答えている。

「たね蒔きジャーナル」は二〇〇九年一〇月、地域新聞「うずみ火」事務所(大阪)からの中継を皮切りに、平日午後九~一〇時に放送継続中のラジオ報道番組。毎日放送のアナウンサーをリード役に、ジャーナリストやさまざまなゲストを招き、沖縄基地問題や大阪維新の会の“暴走”など、時事問題を中心に幅広く取り上げてきた。

 特に、東日本大震災以降は、原発報道が反響を呼び、専門家の立場から、その危険性を訴え続ける京都大学原子炉実験所の小出裕章助教の解説で注目されてきた。今年三月には、これら一連の報道が評価されて、坂田記念ジャーナリズム賞特別賞を、ラジオ番組では初めて受賞。

 発言内容を書き起こしてネット配信するほか、YouTubeにつなぐなど、熱心なファン層も全国規模に広がった。聴取率も堅調とされる中での打ち切り表面化だけに、「原子力ムラの圧力」をはじめ、さまざまな見方が飛び交っている。厳しいラジオ番組の採算性を指摘する声もあるが、良心的番組を支え続けてきた熊和子ラジオ局長の定年退職を機に、「合理化」を図る局幹部の思惑も見え隠れする。

(たどころあきはる・ジャーナリスト、8月10日号)

田中氏だけでなく、更田氏、中村氏も欠格人事――原子力規制委は「違法性ムラ」

左から河合弘之、海渡雄一両弁護士(8月1日の院内集会で)。(撮影/野中大樹)

 原子力の規制を主眼とする原子力規制委員会の委員(長)候補について「違法性がある」との指摘が、八月一日、衆議院第二議員会館の院内集会で提起された。

 提起したのは脱原発弁護団全国連絡会の河合弘之、海渡雄一両弁護士。両氏が指摘しているのは、委員候補のうち更田豊志氏と中村佳代子氏。原子力規制委員会設置法の七条七項三には「原子力に係る製錬、加工、貯蔵、再処理若しくは廃棄の事業を行う者、原子炉を設置する者(後略)」については「委員長又は委員となることができない」と定めている。

 更田氏が勤める日本原子力研究開発機構は使用済み核燃料の「再処理」を事業内容の一つとしており、高速増殖炉「もんじゅ」の設置主体。中村氏が勤める日本アイソトープ協会も、原発の「廃棄」を手がけており「法が定める欠格要件にぴったりあてはまっている」(海渡氏)ことになる。

 このことを本誌が内閣官房の原子力規制委員会準備室に尋ねたところ「要件は、委員に任命される時点での話。委員に就任する時に辞職していれば法には抵触しない」と説明した。

 委員長候補に挙がっている田中俊一氏についても、同氏が勤める高度情報科学技術研究機構の昨年度の収入合計額七億一二二一万円のうち、五億二〇八九万円が、更田氏が勤める日本原子力研究開発機構からの事業収入であることが、社民党の服部良一衆議院議員の調査によって明らかになった。

 田中氏は八月一日、衆参の両院議員運営委員会で「(原発事故は)どんなに反省しても反省しきれるものではない」と述べたが、その実「原子力ムラ」との密接な関係は絶っていないようだ。

 野田佳彦首相は三日、規制委について「適任だと思う」として人選見直しの素振りすら見せていない。「脱原子力ムラ」はいよいよ字面だけの話になりつつある。

(野中大樹・編集部、8月10日号)

東電福島原発事故、東京・福島・金沢地検が告発・告訴を受理――検察は原発事故の真相解明を

告発人の明石昇二郎さん(左から2人目)と広瀬隆さん(同3人目)ら。(撮影/赤岩友香)

 東京電力福島第一原発事故に関わる刑事告発および告訴が、八月一日に福島、東京の各地検で相次いで受理された。同日には金沢地検も告発を受理した。

「福島県民のみならず、日本全土の人たちを被曝にさらしてきた人間たちが一年以上野放しになってきた」

 同日に東京地裁内の司法記者クラブで行なわれた会見で作家の広瀬隆さんはこう述べた。

 広瀬さんがルポライターの明石昇二郎さんとともに東京地検に告発状を提出したのは昨年七月一一日。一年間以上“塩漬け”されていた告発状だが、内容を補正し今年七月三一日に再提出したその翌日の正式受理となった。地検が受理した背景について明石さんは、各事故調の報告書が出そろったことが影響した可能性に触れた。

 問われる刑事責任は、(1)地震・津波対策を怠ったこと(2)原発事故後、周辺住民への責任を果たさなかったこと――二点による業務上過失致死傷罪。明石さんは「医療過誤と同様、自らの意に添わない被曝は傷害」と指摘する。

 告発されたのは次の二六人。

▼東京電力=勝俣恒久前会長、清水正孝前社長ら八人。福島第一原子力発電所の事故で“英雄”視された吉田昌郎福島第一原子力発電所長(当時)の名前も。

▼原子力安全委員会=班目春樹委員長、久木田豊委員長代理ら六名。

▼原子力安全・保安院=寺坂信昭前院長ら歴代院長三人。

▼総合資源エネルギー調査会=衣笠義博東京工業大学名誉教授。

▼原子力委員会=近藤駿介委員長。

▼文部科学省=板東久美子生涯学習政策局長(当時)ら四人。

▼放射線健康リスク管理アドバイザー=山下俊一・福島県立医科大学副学長ら三人。

 八月六日には、原子力規制委員会委員長候補の田中俊一氏(元原子力委員会委員長代理)も追加された。

 会見の中で、広瀬さんと明石さんは「福島原発事故責任者に対する告発状受理に関する声明文」を発表した。「国会、政府の両事故調の報告書も、未解明の部分が多々ある」とし、事故調ごとに見解が一致していないことを指摘。その理由を「両事故調査には『強制捜査権』がなかったため」だとしている。再発を防ぎ、被災者救済のためにも検察に「正しい結論」を導き出してほしいと主張した。

 一方、福島地検への告訴は一三二四人の福島県民(告訴団団長・武藤類子さん)が六月一一日に提出したもので、東電役員ら三三人が対象だ。今後の地検の対応について「決して楽観視していない」と語るのは弁護団長を務める河合弘之弁護士。かりに不起訴となれば、検察審査会に異議申し立てを行ない、それでも不起訴となった場合、最終的には強制起訴を目指し、訴えを順次続けていく構えだ。

 一部報道で、今後起訴に結びつくかどうかは険しい道のりだという見方がある。「かりに検察の東電への強制捜査が入るとしても年を越す可能性がある」と語る明石さん。“隠蔽”体質の東電が証拠となる資料を隠す時間は十分ある。

 福島地検への告訴団の代理人で、薬害エイズ事件の刑事裁判で厚生労働省官僚を有罪にさせた経験を持つ保田行雄弁護士は「検察の強制捜査権を行使して、今回の事故の原子力ムラにおける癒着の問題も含めて全面的に明らかにされるべき」と述べた。

 福島地検への第二次告訴は一一月に実施予定で、全国から告訴する人を募るという。広瀬さんは、今回の告発・告訴には多くの人のカンパが寄せられていることに感謝を述べた。巨大マネーの上に成り立っている原子力ムラに対峙するには、「日本国民全体の怒りを結集させる必要がある」(河合弁護士)として、告発・告訴人はそれぞれカンパを呼びかけている。

▼東京地検への告発=三菱東京UFJ銀行 練馬平和台支店 普通口座:0162963 (株)ルポルタージュ研究所

▼福島地検への告訴=郵便振替 口座番号:02260-9-118751 加入者名:福島原発告訴団

(赤岩友香・編集部、8月10日号)

ブラック企業大賞2012――東電とワタミが受賞

 従業員に劣悪な労働を強いる「ブラック企業」を「表彰」する目的で今年から始まった「ブラック企業大賞2012」(主催・ブラック企業大賞実行委員会)の授賞式が七月二八日、東京・田町交通ビル六階ホールで行なわれ、筆者を含む実行委員一〇人の審査で東京電力が「大賞」、ウェブなどによる一般投票で居酒屋チェーン・ワタミが「市民賞」に選ばれた。

 二〇〇八年に入社二カ月の社員森美菜さんが過労自殺をし、今年二月に労災認定を受けたワタミは、当初からウェブ投票で独走。全投票数二万一一六票のうち、約半分の圧倒的な得票で「市民賞」を受賞した。

 東電については「(同社単体で考えれば)社員が厚遇されるホワイト企業ではないか」との意見が、当初は実行委間にもあった。だが、同社が福島第一原発事故以前から各地の原発で膨大な数の作業員に危険な被曝労働をさせている点、にもかかわらずそれらを下請け会社に丸投げし、自らの責任を放棄している点は、ブラックな労働を生み出している根源との観点から、初代の大賞選出に至った。

 二社以外のノミネート企業は、「ウェザーニューズ」「富士通SSL」「フォーカスシステムズ」「すかいらーく」「ゼンショー(すき家)」「ショップ99」「陸援隊+ハーヴェストホールディングス」「丸八真綿」の八社。このうち〇八年に社員が過労死し、現在も労働時間の偽装、組合委員長の不当解雇などの疑いが持たれているウェザーニューズに「特別賞」が贈られたほか、団交や労働委員会の命令を幼稚な論理で拒み続けるゼンショーに「ありえないで賞」、若手SE(システムエンジニア)の過労死が続くIT業界を代表する形で富士通SSLとフォーカスシステムズに「業界賞」が進呈された。

 ノミネート各社には事前に招待状を届けていたが、残念ながら出席した企業はゼロ。各受賞企業への表彰状や、大賞に贈られるトロフィーや副賞の『労働六法』などは、後日郵送される。

(古川琢也・ルポライター、8月3日号)

原発事故後のテレビ会議録画――東電「名ばかり公開」

「こんな名ばかり公開を『東京電力が画像を公開』と報道した報道機関もある」と七月三〇日に行なった緊急会見で語ったのは、東電株主代表訴訟の原告と弁護士だ。同原告団は同日、枝野幸男経済産業大臣に公開対象期間の拡大、DVDによる録画提供、限定公開の条件の撤廃を要請した。

 七月二七日、東電は福島第一原発事故後に撮ったテレビ会議画像を公開すると発表。しかし「名ばかり公開だ」との批判が大きい。とにかく、条件がひどい。知る権利に制限を加え、報道機関をあざ笑うかのような「公開」である。

 公開対象は、三月一一~一五日まで本店が録画した五〇時間分(音声あり)と福島第二原発で録画された一〇〇時間分(音声なし)の計一五〇時間分に限定。これを当初は八月六~一〇日のうち三〇時間で報道機関に対してのみ本店一階視聴室で公開するとしたが、批判を受け期間を拡大する方針を示した。東電が用意したパソコンとイヤホンの使用のみを許可し、録音録画機器の持ち込みと携帯電話使用は禁止。その報道も禁止し、報道素材は別途提供。この条件に違反すれば今後の東電会見への参加はお断り――。これらの条件に同意する東電に従順な報道機関だけに入室を許可するという“踏み絵つき”公開である。

 枝野大臣も問題視し、三〇日朝、東電に対し、(1)求める者による全画像の閲覧と公開期間の確保(2)公開対象や手法に関する報道関係者の意見を踏まえた対応(3)裁判で求められる証拠保全を鑑み、画像映像を処分しないよう指示した。

 しかし、わが国には昨年施行された公文書管理法がある。歴史的に重要な記録は民間情報でも「公文書」として国立公文書館に提供し、国民の利用を可能にする法律である。法に基づく個人情報の保護が行なわれ、東電による恣意的な情報隠しを避けることも可能だ。同日夕方の会見でこの点を相澤善吾東電副社長に尋ねると「詳細に勉強させていただき検討させていただきたい」と回答した。

(まさのあつこ・ジャーナリスト、8月3日号)