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福島原発告訴団の思い(4) 片岡輝美さん

〈思いを「告訴状」と「陳述書」に〉 会津若松市在住 片岡輝美さん(50歳)

 昨年3月15日、会津若松市から三重県鈴鹿市の義弟宅に、末息子や甥、姪を連れて一時避難しました。翌16日、会津若松市の教育委員会と、息子が卒業したばかりの中学校に電話を入れ、懇願したんです。

「お願いですから、屋内退避、または休校にしてください」

 しかし、返答は次のようなものでした。「片岡さんの気持ちはよく分かりますが、そのようにするだけの証拠がありません」

 この頃、教育委員会には、私と同じ気持ちの保護者から数多くの電話があったと、後に知りました。

 原発事故前の会津若松市の空間放射線量は毎時0.06マイクロシーベルト。しかし、3月15日の夜から16日の未明にかけては最大で毎時2.57マイクロシーベルトもの放射線が観測されていました。この事実が同市の市政だよりに掲載されたのは3カ月後の7月のこと。もはや「証拠がありません」とは言わせません。

 この告訴は、原発事故によって私の大切な日常が壊された悲しみ、悔しさから、一歩前に踏み出すためのものです。

「このくらいの生活ができるなら、告訴しなくても……」

 と、歩みを止めた時、それは原子力ムラに丸め込まれたことを意味するのだと、自分に言い聞かせています。

 この思いを「告訴状」と「陳述書」という言葉に変えていく作業を、原発から100キロメートルの会津の地で始めています。

(まとめ・明石昇二郎〈ルポライター〉、5月18日号)

自立へ向け動き出す東海村――東海第二原発の行方

 東海村の将来を考える会は五月八日、茨城県東海村の舟石川コミュニティセンターに商工会、主婦、原子力関連業者などを集め、東海第二原発(日本原子力発電、以下原電)を廃炉にした場合の村の財政などについて、副村長を交えて議論をした。

 挙がった意見は「村は補助金づけ。原発がなくなった場合、商工・サービス業者らは生活していけるのか」「自立できる村づくりのために、村民が話し合いできる仕組みを作りたい」といったもの。

 一九七八年に営業運転を始めた東海第二原発。九九年にはJCO臨界事故も起きたが、村民の間では、原発の是非について口にすることは憚られていた。「3・11」によって声が出始めたのだ。

 村上達也村長は四月四日に経済産業省に赴き、原発廃炉の意見を具申した。一方、議会は再稼働反対の住民請願を授受。原子力特別調査委員会も審議を続けている。

 この住民請願を受けた際、脱原発を訴える相沢一正村議が「東海村で子育てをするお母さんが、『まず原発を止めてから原子力について考えていこう』と提案をしたことは、非常に積極的なこと」と発言すると、地元主婦らで結成されたリリウムの会は「隣県の福島で起きたことは決して他人事ではない。すべての人が自分に置き換えて考えることが必要」と応じた。

 調査委員会には村議ほぼ全員が参加。脱原発派と推進派は拮抗し、六月議会の前哨戦となっている。

 一方、原電は六月に予定していた東海第二原発の燃料装填を、四月になって突然「未定」と発表。今後の審議の推移とともに、原電の対応も注目される。

(中村ゆうき・ライター、5月18日号)

読売新聞の「理屈にならない理屈」――「清武班」潰しの不可解

 巨人の球団代表を解任された清武英利氏が、『読売新聞』社会部時代にキャップとしてまとめた著書の復刊をめぐり、読売新聞社は四月一一日付で、出版社「七つ森書館」への出版契約無効確認請求訴訟を東京地裁に提起した。

 本書は、金融不祥事の闇を浮き彫りにした連載記事で、一九九八年には『会長はなぜ自殺したか――金融腐敗=呪縛の検証』(新潮社)として刊行された。

「七つ森書館」は昨年九月から刊行している『ノンフィクション・シリーズ“人間”』(監修・解説は評論家で本誌編集委員の佐高信氏)に本書を入れるべく、二〇一〇年一二月から読売新聞社と交渉を始めていた。交渉は順調に進み、著者名を「読売社会部清武班」とすることにも合意。一一年五月九日に出版契約を結んだ。

 しかし同年一一月、清武氏が代表取締役会長である渡邉恒雄氏を告発したことで同社は態度を一変。「七つ森書館」によると、昨年一二月、読売新聞社の法務部部長と同主任が来社し、「出版契約の解除をしたい。補償はお金でする」と申し入れた。が、「七つ森書館」は同社の申し入れを拒否。出版の意思に変わりはないことを伝えた。読売新聞社は、合意に至らなかったため提訴に踏み切ったとしている。

 同社は出版契約無効を訴える根拠の一つとして「出版契約の交渉をしていたのは、権限のない社会部次長だった」(東京本社広報部)としている。しかし「一会社の『内規』を社会一般の常識に当てはめることはいかがなものか」(「七つ森書館」)という疑問の方が正当だろう。

 そもそも、最大手マスコミである読売新聞社で「権限のない人間が契約交渉をする」ということがありうるのか。清武氏は「ありえない。知財部や法務部などと協議しながら進めていたはず」と話す。

 清武氏は、読売新聞社の行為について「理屈にならない理屈をつけ、出版させまいとするのはきわめて残念。私のことが憎いにしても、出版とは無縁の話」と批判。また、「おかしいという人が『読売新聞』の中からも出てこなくてはいけない。それが新聞記者、とりわけ社会部の精神」だと話している。

 出版流通対策協議会(高須次郎会長)も五月一四日、読売新聞社に対し「訴訟を取り下げ、七つ森書館に対して謝罪、補償をすべき」という抗議声明を出している。

(本誌取材班、5月18日号)

野田首相は「規制庁がなくても再稼働可能」と発言――原子力規制庁ではなく廃炉庁を

 日本消費者連盟や原子力資料情報室、グリーンピース・ジャパンなど全国四三のNGOがこのほど、政府が四月の発足を目指しながら現在まで設置されていない「原子力規制庁」について、原発の運転継続を目指さない「廃炉庁」とし、原発存続が前提ならば設置に反対するとした共同声明を発表した。

 さらに声明は、政府が一月に提出した原子力規制庁設置関連法案で示された「原子力規制庁」の在り方について、原発推進を掲げる環境省の外局とされており、「規制機関の独立性が担保されていない」として「他の政府機関や国会からも完全に独立した組織とすべきである」と要求。

 また、仮に同「規制庁」が発足した場合でも、これまでの「原子力推進の立場の人間を職員としないルール」を適用すべきだと主張すると共に、法案では「公聴会」という用語すらなく、「住民への情報公開」や「住民参加プロセス」が抜け落ちていると批判している。

 一方国会では、自民・公明両党などが提案した法案では、内閣からの「独立性が高い」行政組織(3条委員会)である「原子力規制委員会」を設置し、「原子力規制庁」をその事務局組織として位置付けるよう求めている。

 これに対し民主党が自・公側の「原子力規制委員会」設置要求を受け入れ、「環境省の外局として『原子力規制庁』を設置するとした政府案を大幅に修正することで大筋合意」(『東京新聞』五月一一日付朝刊)という報道も。だが、両党は参議院で問責決議を受けた二閣僚交代を修正協議の条件とし、今後の話し合いの展望は見えない。

 民主党原発事故収束対策プロジェクトチーム事務局次長の平智之衆議院議員は、「『規制庁』の在り方は、今後の原発政策の根幹に関わる。国会で作成が進められている福島原発事故の『調査委員会』の報告書が出るのを待ち、米スリーマイル原発事故の検証も取り入れるなど、時間をかけて論議を深めるべき」と求めている。

 だが野田佳彦首相は一一日の記者会見で、「原子力規制庁の発足がなくても関西電力大飯原発の再稼働があり得る」などと発言。こうした「政治判断」が優先されるなら、どんな規制機関を設置しようが意味はない。問題は、政府の原発政策そのものにありそうだ。

(成澤宗男・編集部、5月18日号)

匿名活動家に「覚悟」はあるのか――在特会に「もの申す」集会

 ジャーナリスト安田浩一氏の近刊『ネットと愛国――在特会の「闇」を追いかけて』(講談社)の出版記念シンポジウム「この本に異議あり! 安田浩一(朝鮮人?)にもの申す!」が、五月一二日、東京都内で開かれた。主催は主権回復を目指す会(西村修平代表)。

 本書は、街頭で「ゴキブリ朝鮮人は国に帰れ!」などと罵る「在日特権を許さない市民の会」の桜井誠(本名・高田誠)会長や会員の生い立ち、行動の動機などに迫ったルポルタージュ。同シンポは、書いた安田氏と書かれた在特会らが激しく意見をぶつけ合うことが予想されたが、実際は「本書に寄り添うような内容になり驚いた」(参加者)ものになった。  

 というのも、当の在特会からの参加者数はゼロ。参加を呼びかけた西村氏によると、桜井氏はシンポ前日に代理人を通して「不参加」を告げてきたという。西村氏は「拒絶されるのは非常に残念」と肩を落としたが、安田氏は「ボイコットも表現の一つ」と理解を示した。

 当然ながらシンポは拍子抜けし、歴史認識や「在日特権」についての議論は多少あったものの、主題は「言論の覚悟」に移った。

 新攘夷運動排害社代表・金友隆幸氏は「既存の右翼保守は建前と本音を分けている。それでは現実は動かない」と、街頭で過激な行動をする意義を語った。また、「脱原発ハンスト」などを決行してきた我道会会長の山口祐二郎氏は「公安が右翼と飯を食うことも、在日が生活保護を不正受給することもすべて無駄金」と、社会の不条理にものを言う姿勢を強調した。

 西村氏は「桜井氏はじめ在特会は通名を使い、自分を安全圏に置きながら運動をしている」と批判。ロート製薬を脅したとして五月一〇日付で逮捕された元在特会幹部の西村斉氏についても「愛国者としての責任を感じているのか」と疑問を呈した。

 安田氏が「在特会を育てたのが西村さんでは」と投げかけると、西村氏は「若い活動家たちを養子にしたつもりだったが、実際は“発達障害児”だった」と述べた。

(野中大樹・編集部、5月18日号)

大阪府「教育基本条例」を正面批判の特集掲載――『福音と世界』が橋下氏を問題視

新自由主義による「弱さ」の排除を問題視する『福音と世界』。(撮影/編集部)

 プロテスタント系牧師などを主な読者とする月刊誌『福音と世界』(新教出版社)が、五月号で大阪府の「教育基本条例」を正面から批判する特集を組んだ。

 特集の巻頭では、広く社会を揺るがした同条例について〈「子どものため」という名の下、「子どもの思想を統制したい」という特定の大人の思惑が見え隠れする〉と問題提起。日本バプテスト連盟堺キリスト教会の平良仁志牧師は、「教育基本条例および職員基本条例案の撤回を求めます」との声明を同連盟が総会で採択したことを紹介し、次のように批判する。

〈君が代は「天皇教」の賛美歌のようなもの、日の丸は「天皇教」のシンボルマークである。その天皇教は戦前「軍国主義」と密接不可分の関係にあった。真の神だけを神とし、「平和をつくり出す人たちはさいわいである」と言われた主イエスに従おうとする自覚的キリスト者であれば、君が代の伴奏や斉唱などとても耐えられない〉〈信教の自由、思想良心の自由は、全ての自由、全ての人権や平和を守る防波堤である。防波堤は小さな穴から崩れる。だから、防波堤の穴は、たとえ針のように小さくても、気づいた者が警鐘を鳴らし続け、修復せねばならない〉

 さらに同志社香里中学校・高等学校聖書科教員の富田正樹さんは橋下徹・大阪府知事(当時)の政策で〈府内の全ての私学が経営危機に陥り、教員の労働強化やリストラといった形で対応せざるを得なかった〉実情を紹介している。

 同誌編集長の倉田夏樹さんは「橋下氏の新自由主義的な政策が教育や貧困の問題に及ぼす影響をきちんと精査し、批判する必要があります。発行部数は二二〇〇部(実数)で、最近はカトリック信徒や非信徒の読者も増えています。五月号は関西を中心に大好評でした。今後、思想・信教の自由を侵す動きがあれば、断固抵抗したい」と話している。

(伊田浩之・編集部、5月18日号)

スペインの5・12世界一斉行動――広場を埋めつくす99%の声

マドリードのソル(太陽の意)広場に集まる人々。(撮影/篠田有史)

 失業率二四・四%。この一年で失業者数が約七三万人も増えたスペイン。人々は、政治・経済界の意図ではなく、市民の意思で社会のあり方を決められる世界を築こうと、行動を続けている。

 一二日午後四時半、街外れの公園を出発した時、集団は六〇人余りだった。首都マドリード中心のプエルタ・デル・ソル(太陽の門)広場まで約六キロ。行進するうちにデモ隊は膨らんでいく。

 歩きながら人々は歌う。「民主主義って言うけど、そうじゃない」「そこのあなた、(政治家や銀行家は)あなたからも盗んでる」

 掲げる横断幕やプラカードには、民意を無視した政策の拒否と、政策転換の要求が躍る。「銀行への公的資金投入反対」「教育・社会福祉予算カット反対」「すべての国民に住む家を」等々。

 夜八時、四方からソル広場になだれ込んだデモ参加者は、一〇万人を超えた。

 スペインの市民運動「15M(五月一五日)」はこの日、スペイン国内八〇の都市と世界各地でデモを呼びかけた。マドリードのほか、バルセロナで約八万人など、大勢の市民が街へ繰り出した。デモの後は三日間、街の広場が「市民会議」の場に変わった。

「マドリード学校間連合」をつくった中高生の一人、フリアさん(一五歳)は、「学校では二〇人用の教室に四〇人詰め込んだり、教師が雇えないというだけで科目が減らされたりしています。より良い世界を創るには、未来を担う私たちが行動しなければ」と語る。

 運動を通して、スペインはもちろんニューヨークなど世界へと、日常的な人と人との結びつきこそが社会変革の力だと考える人の輪が、じわじわと広がっている。

(工藤律子・ジャーナリスト、5月18日号)

公教育の質の向上を訴える中高生。(撮影/篠田有史)

「非暴力闘争の方法」のワークショップ。(撮影/篠田有史)

スペインが共和制だった時代の旗を掲げて進む。(撮影/篠田有史)

「再稼働せず」は“想定外”の東電――東電延命させる総合計画の実態

「再稼働できるよう最大限努力する」と述べる東京電力の西澤社長。(撮影/横田一)

 東京電力の新しい経営計画「総合特別事業計画(総合計画)」が枝野幸男経済産業相に認定され(五月九日)、政府(原子力損害賠償支援機構)の一兆円の資本注入と実質的国有化が決まった。

 総合計画では、東電の解体をにらんだ分社化の方向は示されているが、発送電分離に至る道筋は不明確で、東電をはじめ電力会社からの強い抵抗も予想される。最大の問題は、一般家庭の電気料金一〇・二八%の値上げと、新潟中越沖地震で稼働停止している「柏崎刈羽原発」(新潟県柏崎市と刈羽村)の再稼働をセットにしている点。再稼働を仮定した計画だけを示し、再稼働しない場合の具体的計画が抜け落ちていたことだ。

 西澤俊夫社長は会見で「再稼働ありきの計画ではない」と強調したが、「再稼働できなかった場合の計画がないのはなぜか」という趣旨の質問が何度も出た。これに対し西澤氏は、次のような希望的観測を繰り返すだけだった。

「福島の事故を検証した最終報告書を来月中には提出し、『こういう手を打ってある』と説明します。積み重ねをしていくことで(新潟県民の方に)理解していただける道は開けると思っております」

 原発再稼働に対しては嘉田由紀子・滋賀県知事をはじめ関西広域連合の知事らが反発。特に橋下徹大阪市長は、野田政権が大飯原発再稼働を決めた直後「民主党政権を倒す」と宣言した。こうした政治情勢や世論調査結果に目を向ければ再稼働できない場合の計画も作っておくのが当然だが、東電は原発事故前と同様、都合の悪い事態を「想定外」にしているのだ。

 民間銀行の支援条件との矛盾も露呈した。すでに三井住友銀行などの取引銀行団は、東電への約一兆円の追加金融支援を政府の原子力損害賠償支援機構と合意しており、政府と二人三脚で東電を支える体制になっていた。だが、民間銀行の支援の条件には、原発再稼働が入っていた。であれば、東電は民間銀行に「再稼働がない場合もあります」と支援条件の変更を伝えておかないとおかしい。

 しかし、この点を指摘されても西澤氏は「再稼働は総合計画に織り込んで(民間銀行に)見せている。再稼働できるように最大限努力をする」と答えをすり替えた。

 東電の姿勢について、金子勝慶応大学教授はこう指摘する。

「電力会社は債務超過に陥って破綻処理(法的整理)となることを避けるため、安全無視で再稼働に邁進する傾向がある。東電はすでに債務超過となって実質的に潰れている。損害賠償費用の二・五兆円に加え一兆円の公的資金(合計で三・五兆円)が投入されることになっており、このままいけば、一〇兆円を超える税金がつぎ込まれかねない。一企業をずるずると生き延びさせる意味があるのか」

 東電の延命は国民に莫大な負担を強いることに加え、再稼働によって国民生活を脅かす弊害もあるということだ。金子氏は、東電の新会長に賠償支援機構の下河辺和彦運営委員長が就任することも、問題視していた。

「公的資金注入をする原子力賠償支援機構は基本的にはレフリーであり、賠償支援機構の下河辺委員長がプレーヤーの東電の新会長となるのは非常に問題がある人事。銀行の不良債権問題よりもひどい処置体制だ」

 弁護士でもある下河辺委員長に東電の新会長就任を打診したのが、司法修習生時代から昵懇の間柄とされる弁護士仲間の仙谷由人氏(下河辺氏は昵懇の間柄を否定)。

 しかも原子力賠償支援機構の委員長起用も仙谷氏の抜擢人事とされる。仙谷氏自身も菅政権時代に官房副長官として、東電への公的資金の投入を可能とする賠償スキーム(通称“東電ゾンビスキーム”)の策定に尽力した。下河辺氏はまた、東電の財務状況を調べる「経営・財務調査委員会」委員長として「二〇一一年三月の財務状況は資産超過」という結論を出した。

 東電延命スキームを作り原発再稼働にも熱心な仙谷氏と、債務超過ではないとお墨付きを与えた下河辺氏が牽引役となり、莫大な税金を投入しながら東電を延命させようとしているのだ。

(横田一・フリージャーナリスト、5月18日号)

福島原発告訴団の思い(3) 人見やよいさん

「被曝は、れっきとした傷害事件」 人見やよいさん(51歳)

 恐怖感――。これが、私が福島第一原発事故によって植え付けられ、心に被った最大の被害です。

 地震が東北の大地を揺らすたび、福島第一原発の温度計がまた壊れたとの報道に接するたび、そして、原子炉や核燃料プールへの冷却水の注水が止まるたび、福島県の郡山市に暮らす私は、

「これで人生の終わりかも」

 というほどの恐怖を感じています。

 つとめて今までどおりの生活をするよう心がけてはいますが、絶望感と言い換えてもいいこの感覚は、昨年3月以降、原発事故によって日々の生活を翻弄され続けてきた私たち福島県民以外の方には、なかなか理解しづらいものかもしれません。でも、事故が起きる以前は一度も感じたことのない気持ちでした。

 原発事故による放射能汚染で、家や仕事をなくしたわけでも病気になったわけでもありません。それでも、これほどの恐怖を感じるのです。だから、福島県から避難する人が今も後を絶たないのです。

 被曝は、れっきとした傷害事件なのです。このことが明確に裁かれていないからこそ、加害企業の東京電力は、被害者に対する賠償を誠実に行なおうとしないのです。

 原発事故以降、私はすべてのことに関心と責任を持つ生き方を目指すことにしました。告訴団の結成が、“集団無責任状態”から日本が脱するきっかけになればと願っています。

(まとめ・明石昇二郎〈ルポライター〉、5月11日号)

プレカリアートユニオン結成――非正規雇用の“砦”に

 非正規雇用、若年正社員が職場で仲間を増やし、労働条件の向上に取り組むことを目指して「プレカリアートユニオン」(大平正巳委員長)が結成された。

 この数年、フリーターや水商売でも入れる労働組合があることは一定知られるようになったが、若者のユニオンは個別の労使紛争に対処する「駆け込み寺」に止まり、集団的労使関係を築いて労働条件を向上させるには至らないという限界があった。

 この状況を脱却すべく結成されたのがプレカリアートユニオンだ。雇用が不安定な有期雇用・非正規雇用も、職場のつながりが希薄な若年正社員も、在職で労働条件向上に取り組もうと、フリーター全般労働組合の役員経験者たちが中心となって設立された。

 四月九日の設立大会で、「非正規雇用、若年正社員の駆け込み寺から砦へ」「誰でも三〇歳で最低年収二四〇万円を実現しよう」などのスローガンを掲げて、ワーキング・プアからの脱却、希望すれば一人につき一人は子どもを育てられる収入の確保、生活支援の充実、雇用不安を背景とした全体主義に流されないための情報・時間・空間・収入の確保などを目指して活動していくことを決めた。

 ユニオンは、主力事業部の労働者八割が加盟して交渉した結果、社内に一部導入された有期雇用を撤回させたビルメンテナンス会社の支部などで構成し、連合傘下の全国ユニオン(全国コミュニティ・ユニオン連合会)に加盟した。

 五月二六日(土)一九時からは、湯浅誠反貧困ネットワーク事務局長を招いて、事務所のあるユニオン運動センター(東京都渋谷区代々木四・二九・四 西新宿ミノシマビル二階)で、設立記念シンポジウムを開催する。403・6276・1024(毎週金曜日一九時から二一時は集中相談日)。http://d.hatena.ne.jp/kumonoami/

(清水直子・ライター、プレカリアートユニオン書記長、5月11日号)