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「橋下徹前府知事に賠償請求せよ」――府民82人が橋下氏の無駄遣い訴え

 橋下徹大阪市長が大阪府知事在任中、府庁舎移転用に購入したWTC(ワールドトレードセンター)ビル等への公金支出は違法だとして、松井一郎現知事に、橋下氏に損害賠償約九六億三〇〇〇万円を請求するよう求める住民訴訟が一月一二日、府民八二人によって大阪地裁に起こされた。

 訴状によると、橋下氏は大阪城近くの府庁舎を、埋め立ての人工島である咲洲で、事実上の破産状態に陥っていたWTCビルへ全面移転させようと二〇一〇年六月、同ビルを約八五億円で購入。改装・一部移転経費など約一一億三〇〇〇万円も支出したが、昨年の東日本大震災で同ビルは(震度3にもかかわらず)三五〇カ所以上の補修を要するなど、耐震性への不安を露呈した。府民や専門家からも安全性・利便性・防災拠点としての問題点などが相次いで指摘され、同年八月に全面移転は断念された。

 この間、府議会は二度にわたって移転案を否決しており、原告でジャーナリストの西谷文和氏は「耐震性など科学的調査もせず、議会を軽視した橋下氏の強引な手法は、首長の資質として大いに問題。被告席に座るべきは橋下氏だ」と批判。同じく原告で「おおさか市民ネットワーク」の藤永延代代表も「府市二重行政を省くための大阪都構想と言いながら、当人がこんな無駄遣いでよいのか。(WTCが立地する地は)軟弱地盤で災害対策本部も置けず、一部移転で府庁舎が交通不便の地との二カ所に分断され、非効率で、今後も巨額の赤字を生む」と強調する。

 昨年一二月に住民監査請求を棄却した府の監査委員でさえ「大阪府は非常に厳しい財政状況にあり、今後も長期にわたり財政再建の取組みが必要であることに鑑み、府民目線に立った経費執行を徹底されたい」という意見を付け、苦言を呈している。

 住民訴訟の第一回口頭弁論は三月頃と想定されるが、原告らは他の都道府県の在住者にもサポーター参加を呼びかけ、運動を全国的に広げる。

 三月二日には「WTCビルの購入と庁舎移転に費やされた巨額の税金を橋下前知事から取り戻す会」(略称=WTC訴訟の会)の正式発足総会を兼ねた記念講演・決起集会を開催する方針だ。

(たどころあきはる・ジャーナリスト、1月20日号)

「君が代」不起立処分に最高裁判決――減給・停職は「裁量権の範囲」逸脱

 卒業式等の「君が代」斉唱時の不起立等を理由に、東京都教育委員会に懲戒処分された都の公立学校の教職員らが処分取消しなどを求めた訴訟で、最高裁第一小法廷(金築誠志裁判長)は一月一六日、「減給以上の処分の選択には慎重な考慮が必要」とし、一部の処分を取り消す判決を出した。

 都教委は一〇・二三通達発出(二〇〇三年)後の卒業式等で、校長に起立等の職務命令を出させ、不起立やピアノ不伴奏の教職員を「地方公務員法違反」で、「一回目は戒告、二・三回目は減給、四回目以降は停職」と、累積加重処分。

 判決はまず、〇四年春までの都立学校の被処分者中、一六七人が処分取消しを求めた訴訟で、特別支援学校教諭だった渡辺厚子さんについて、通達前の入学式での服装問題等による戒告に、通達後の不起立を加重した減給処分を、「重きに失し社会通念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を超え違法」と判じ、取消しを命じた。しかし、戒告については「学校の規律や秩序保持等の見地からその相当性が基礎付けられる」との理由で、取消しを認めなかった。

 だが、弁護士出身の宮川光治裁判官は「職務命令は憲法第一九条違反の可能性がある。不起立行為等は教育上の信念に起因するもので、その動機は真摯であり、いわゆる非違行為とは次元を異にする」などの理由で「戒告も是認できない」という反対意見を付した。 また、行政官出身の櫻井龍子裁判官は「給与本体の減額に留まらず退職金・年金等にも影響する減給」や「教壇に立てず生徒への影響大の停職」を「機械的に加重するのは、法の許容する懲戒権を逸脱する」との補足意見を付した。

 次に、〇六年に停職三カ月の処分を受けた根津公子さんと同一カ月とされた河原井純子さんは、「分断判決」。河原井さんについては「過去二年度の三回の不起立のみを理由に停職にした都教委の判断は違法」と判じ、損害賠償請求は高裁に差し戻した。一方、根津さんは「通達前、校長の国旗掲揚強行に対し、引き降ろしたこと」などが「妨害行為だ」との理由で、停職を是認し、上告を棄却した。

 判決後の記者会見で、河原井さんは「『不起立三回で分限免職』という大阪の条例化を踏みとどめる力になれれば……」と語った。

(永野厚男・教育ライター、1月20日号)

新年から労働組合の「正当な」街宣始まる

年初、本社前で宣伝再開する北港バス分会。(写真/田所明治)

 大阪地裁による街頭宣伝禁止の不当仮処分決定を運動で打ち破り、会社側に仮処分申請自体を取り下げさせた建交労(全日本建設交運一般労働組合)北港バス分会(喜多幸男分会長)は、1月5日から大阪市旭区の本社前で、宣伝行動を開始した。

 解雇・賃金差別など計5件を提訴した労組の宣伝活動に対し、大阪地裁民事一部が宣伝禁止の仮処分決定を出したのが昨年5月。これに対して組合側が保全異議を申し立て、審尋の進行中に会社自らが12月15日付けで仮処分申請そのものを取り下げた。

「労組の正当な宣伝活動を認めよ」という世論が広がり、不当決定を見直さざるを得なくなった大阪地裁は、逆転決定を回避する策として、会社側に「取り下げ」を働きかけたものと見られている。

 これによって先の不当決定は取り消され訴訟自体がなかったことになるわけだが、解雇事件などを扱う地裁民事五部からも、労使紛争の一括解決をめざす和解提案が出されている。第1回和解交渉は1月17日の予定。

 一方、東京地裁の街宣禁止不当決定と闘ってきた埼玉女子短大事件は昨年11月、東京都労委で双方取り下げの和解が成立し、これを受けた東京地裁も和解を提案。一連の宣伝紛争は労働基本権を守る形で終結した。東西とも、解雇撤回などの闘いは続いている。

(田所明治・ジャーナリスト、1月13日号)

セブン-イレブンの「地位乱用」問う――東京地裁、店主らの訴え棄却

 コンビニエンスストア大手の「セブン-イレブン・ジャパン」(東京都千代田区)の加盟店店主らが同社に対し、公共料金・税金の収納代行業務や二四時間営業などのサービスを強要するのは独占禁止法の「優越的地位の乱用」に当たると訴えていた裁判で、東京地裁は二〇一一年一二月二二日、原告の請求を棄却する判決を言い渡した。

 福井章代裁判長は、セブン-イレブンの加盟店は「公共料金等の収納代行サービスを提供」「二四時間営業」といった認識は一般的に広まっており、業務内容についても「事前説明が為されている」等の判決理由を示した。

 訴えていたのは宮崎や群馬など五県のフランチャイズ加盟店の経営者九人。原告の一人である永尾潤さん(四六歳)は判決について「労働現場の実態を抜きに、(コンビニの)イメージだけが先行してしまっている」と異議を唱えた。

 本件の原告ではないが、群馬県でコンビニオーナーを務める男性はかつて、夜の勤務中にコンビニに入ってきた男から「殺すぞ」などと脅され、暴行をうけるなどの被害を受けている。永尾さんは「こうした例も現実にある。業務の改善を求めたい」と話した。 

 本件の結審後ではあったが、牛丼チェーン「すき家」を経営するゼンショーに対しては、警察庁が昨年、深夜の一人勤務態勢を改めるよう行政指導をしている。

 原告らは控訴し、「すき家」などに見られる状況の変化について訴えていく方針だ。

(本誌取材班、1月13日号)

反対市民は年越し座り込み――防衛局「アセス」提出の失態

 米国に普天間基地の辺野古移設計画が進捗している様を見せるため、野田佳彦政権が「年内提出」に固執した環境影響評価書(アセス評価書)。その山場となった昨年一二月二六~二八日、「基地の県内移設に反対する県民会議」は、沖縄県庁における評価書提出阻止行動を呼びかけた。

 市民団体や県議団、沖縄選出国会議員を含む三〇〇人以上が庁舎内外で監視行動を行なう中、沖縄防衛局は郵送で送付したと発表した。しかし二七日、民間運送会社にアセス評価書を運ばせたものの、庁舎入口で県職員らに説得され、引き返さざるを得なかった。

「あと一日で年内提出を止められる。頑張ろう!」と解散した人々がまだ眠っている翌二八日午前四時過ぎ、沖縄防衛局は県庁通用口から守衛室に評価書を搬入した。

 万が一に備えて通用口の近くに停めた車の中で仮眠していた県民会議事務局長の山城博治さんが物音に気付き、飛び出していって見たのは、段ボール箱を一つずつ抱えた二〇人ほどの防衛局職員と、それを指揮する真部朗局長の姿だった。「犯す前に犯すと言うか」発言で更迭された田中聡前局長に代わり、異例の再任となったばかりの真部氏は、東村高江で夜間や早朝の「奇襲」を繰り返し行なった常習犯だ。

 山城さんらは「なんてことをするんだ、やめろ!」と叫んで止めようとしたが多勢に無勢。一六箱は守衛室に運び込まれてしまった(アセス評価書は七〇〇〇ページ。法令により二四部の提出が必要)。

 号外を出した沖縄地元紙、NHKをはじめ全国メディアもこぞってこのニュースを報道。国家機関のコソ泥顔負けの醜態は瞬く間に知れ渡り、「奇襲攻撃」「闇討ち」「恥知らず」……ありとあらゆる悪罵と嘲笑の言葉が飛び交った。

 なおも残りの評価書を運び込もうとする防衛局と県民との攻防が暮れも正月もなく続き、インターネットで情報を得た人々が自主的に集まり、守衛室前の冷たい廊下で“年越し座り込み”となった。

 一月五日、防衛局は残りの八部を県庁に運び込んだが、二四部すべてに書類の欠落が見つかり受理要件を満たさなかった。六日、欠落分が追加提出され県は評価書を受理したが、仲井眞知事は評価書への知事意見に「県外移設」の公約を反映させる考えを示した。

(浦島悦子・フリーライター、1月13日号)

【韓国】政権批判の言論封じが目的か――圧倒的人気を誇る候補者を収監

 韓国で、辛口の政権批判が人気を集めているポッドキャスト(インターネットを使った音声の配信システム)の番組をめぐり、出演していた野党の元国会議員が公職選挙法違反で収監され、番組ファンなどから「言論弾圧だ」との批判が沸き起こっている。

 公職選挙法に問われたのは、番組の出演者で元民主党国会議員の鄭鳳株氏(五一歳)。昨年一二月二二日に大法院(最高裁)で上告棄却となり、判決は確定。鄭氏は同月二六日、支持者たちに見送られながらソウル地検に出頭し、収監された。

 これに対し、番組ファンのほか野党からも一斉に反発の声が上がった。韓国では今年四月に総選挙が実施され、鄭氏も有力な候補者として立候補が取り沙汰されていた。だが、収監によって立候補は不可能になる。一二月には大統領選も行なわれるが、李明博大統領の支持が低迷し「死に体」の様相を呈していることから、民主化運動を経験した四〇歳代以上から高い人気を得ている鄭氏が政権批判の活動を強めることに、ストップをかける狙いがあったのではないかとも言われている。

 番組は「ナヌン・コムスダ(私はけちくさい奴)」とのタイトルで、昨年四月二七日に放送を開始。「私」とは李大統領を指す。元国会議員やジャーナリストら四人が出演し、李政権を批判する議論を展開。番組では軍事独裁政権時代に大統領に対して使われた呼称の「閣下」をあえて用い、李大統領を「カッカ」と言い換えて、徹底的にこき下ろす。韓国政治の問題点を指摘しながら「カッカはそんなことをする方ではありません」と皮肉るシニカルな内容で、放送開始直後から話題を集め、二〇歳代から四〇歳代にかけてファンが急増。「ナコムス」との略称で、広く知られるようになった。

 毎週一回更新される番組のダウンロード数は、約二〇〇万にのぼる。昨年八月からはitunesのポッドキャストで、ダウンロード数の一位を記録し続けている。

 鄭氏は二〇〇七年の大統領選で、当時ハンナラ党の候補者だった李大統領が、株価操作と横領に関わっていたと発言。虚偽の事実を流して選挙活動を妨害したといして公選法違反などの罪で起訴され、〇八年に一、二審で懲役一年の実刑判決を受けた(株価操作などの問題は、検察は李大統領の関与なしと結論)。

 番組に出演する雑誌『時事イン』の記者、朱真吁さん(三八歳)は、鄭氏の収監について「政権批判の言論封じが目的なのは明らかだ」と語気を強めた。

 実際に、番組が実際の政治に大きな影響を与えている。昨年一〇月に行なわれたソウル市長選挙で、野党統一候補の朴元淳氏が当選を果たした背景には、番組が積極的な支援に回ったことも要素として挙げられている。

 朴市長は当選後、番組が開いた公開イベントに姿を見せ、支持に感謝を表し、会場から熱狂的な声援を浴びていた。また、世論調査機関「リアルメーター」が、市長選挙当日に番組の認知度を調査したところ、約六割が知っていると回答。市長選では、二〇歳代から四〇歳代の「反保守」の動きが朴氏当選のカギとなったとされ、民主党関係者は「反保守のムード作りに、ナコムスは絶大な威力を発揮した」と評価する。

 一方、こうした動きに政権側は敏感な反応を示している。政府関係者は「(番組によって)若者層を中心に反政権の雰囲気が醸成されたのは確か。これが(大統領選の)一二月まで続く可能性もある」と、危機感を露わにする。

 番組では、朱記者による李大統領の不正土地取得疑惑のスクープを紹介し、李大統領が批判を浴びて取引を撤回する事態に発展。政権側にとって「無視できない存在」(与党ハンナラ党関係者)となり、ソウル市長選前には同党の洪準杓代表が番組に出演し、政権や与党への批判に直接答えた。

 鄭氏の収監後も番組は続けられ、野党の重鎮らが次々と番組に出演。人気も勢いが衰えていない。朱記者は「これからも国民の知りたいことを伝えていく」と話している。

(北方農夫人・ジャーナリスト、1月13日号)

民主党離党を表明した中島政希衆議院議員インタビュー

群馬が地元の中島議員。

――離党を表明されましたが、主たる理由を教えてください。

 八ッ場ダムというのは単なる一公共事業の問題ではない。マニフェストの象徴のようなもの。それを説明もなく一八〇度変えることは、政党政治として許されるべきものではない。自分の意見を変えることはできないので、政治的な立場を変えるしかない。

 前田武志国交相は私どもに説明することなく、長野原町に行って推進派と一緒に万歳をした。既成事実を積み上げて、政治的決定を覆すというのは戦前にもよくあったが、これは政党政治の自殺行為。民主党には民主党たらしめる精神や理念があったはず。八ッ場ダムに象徴されるように、官僚が何かを作って、政治が同意を与えるような統治システムを変えていかなければならない。

 政治主導とは政治が大きな時代精神を代表して哲学理念をもって個別政策を選択していくということだ。民主党のアイデンティティが問われている。

 私たちは白い旗を掲げて闘い、政権交代ができた。多少、ホコリに汚れて見苦しくなってきたかもしれないが、洗濯すれば白い旗に戻るだろうと思っていた。ところがその旗を無造作に捨てた。野田政権が新しい旗を立てたら白じゃなくて黒。民主党が変節した。

――民主党はなぜ国民の期待に応えられなかったのか。

 一昨年の参議院選敗北や政官業の癒着など、困難な状況を打破して闘うには哲学や志や理念が必要だが、そういう大事なものを捨てて、現実に妥協しすぎたのではないか。理想主義で討ち死にする政権もあるが、現実に迎合しすぎてつぶれる政権も歴史上たくさんある。今の民主党政権はその後者の道を歩んでいる。

――軌道修正する機会はあった。

 前原誠司さんが検証を始めたときは中止を実現するための検証だった。ある意味、推進派のガス抜き。民主党の政策決定システムも随分動いた。前原さんが政調会長になり決定権を持つようになった時に八ッ場ダムを党として検証すべきだった。

 最終段階に分科会が国土交通部門会議にできたが、そのときはもう遅かった。国交省関東地方整備局の検証結果の素案が九月に出たときに危機感を覚えた。このままいけば継続になってしまう。その時は職を賭さなければならないと思い、反対活動に力を入れた。

 最終的には作らないんだと再三伝えられたし、反対運動をあおって、推進している県や自治体を刺激しないでほしいとも言われていた。ガス抜きされていたのは私どもだった。これまた不明を恥じなければいけない。

――今後については?

 私は新党さきがけ、民主党と十数年やってきた。新しい時代は新しい若い勇気と見識のある人がリーダーとなり旗を立ててもらいたい。そういう人がいればお手伝いしたい。小沢一郎さんは日本の政治構造に変化を与え、歴史的な評価は高い。しかし使命は鳩山由紀夫さんとともに政権交代をした時点で完了した。それ以後は、次の世代が出てこなければいけない時期だ。

(聞き手・まさのあつこ、1月13日号)

官房長官裁定すり替えの共犯は誰か?――八ッ場ダム工事再開決定の謎

定例会見に臨む前原誠司民主党政調会長。(撮影/まさのあつこ)

 八ッ場ダム(群馬県長野原町)建設事業の再開について野田佳彦首相は昨年一二月二四日、テレビカメラの前で語った。

「政権交代以降、四代の(国土交通)大臣の下で予断なく検証してきた結果であります。その中での苦渋の決断だった」

 ところが首相は同月二九日に、反発した議員たちに念を押されて「河川整備計画の策定」と「生活再建に関する法案の国会提出」の二要件が八ッ場ダム予算執行の前提であると、民主党の税制調査会で言い直した。

 しかし、これは二四日に離党会見を行なった民主党群馬県連会長代行の中島政希衆院議員(左ページにインタビュー記事)に続いて若手議員らが離党を始めるなど、党全体に沸き起こる反発に反応して問題を先延ばしにしたにすぎない。まして水没予定地住民の生活再建や過大な水需要予測、治水策のあり方の是正を狙った抜本的な解決策などではない。

 おとなしい国民を見くびった浅はかなガス抜きであり、時代を見誤ったマニフェスト破りである。

 野田首相が八ッ場ダム予算執行の前提として示したこの二要件は、藤村修官房長官が、予算計上を認めない前原誠司民主党政調会長と河川官僚言いなりの前田武志国土交通相の対立した見解を仲裁すべく、一二月二二日午前に示した裁定に記載されていた。

 藤村長官は二二日一五時半からの官邸会見で、「昨夕、党からの申し入れを受け、今日、判断する上で踏まえるべき事項ということで裁定事項を提示しました。政調会長、国交大臣が、それぞれが裁定を一言一句その通り受け入れるということで私の任務は終わった」と述べた。しかし問題はその解釈とその後の経緯である。

 前原氏はこれを「要件を満たさなければ予算計上を認めない」と解釈。しかし、前田国交相は同日夕方の会見で事業再開を発表した。しかも記者クラブ幹事社の協力により関連質問を二問で切り上げ、会見場から立ち去ろうとした。「午後二時前に行なわれた国交省政務三役会議で八ッ場ダム事業の継続を決定し、三時からの閣議後の閣僚懇談会で全閣僚に報告した」と重大なマニフェスト違反について発表したにもかかわらずである。

 筆者は、会見室を出ようとする前田国交相に「水の権利を地域で融通しあって無駄を省くという水基本法案の理念と八ッ場ダム事業は矛盾しないか」と尋ねたが、「これから長野原町へ行く。議員立法に期待する」と言い残して大臣は部屋を出ていった。

 その日の二〇時、前田国交相が八ッ場ダム予定地である長野原町に現れ、群馬県知事、町長、自民党議員らの万歳三唱に首を垂れる映像が流れた。

 このやり方に対する驚きを次のように語ったのは中島議員だ。

「記者会見と同じ時間に、(民主党の)国土交通部門会議があり、奥田(建)副大臣が『継続』ということを言いました。しかし、(その前に)『大臣が地元に入る』と群馬県知事や町長に連絡がいったというメールが地元の報道機関から来ていたんです。『そういう話が来ているけど事実はどうなんだ』と副大臣に聞いても何もわからない。われわれは知りませんと。おかしいと思いませんか」

12月7日「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」で挨拶する前田武志国土交通相。(撮影/まさのあつこ)

 こうした茶番劇が、国家予算の決定プロセスで執り行なわれたのは深刻だ。大きな問題が二つある。一つは政調会長と国交相が「一言一句その通り受け入れ」たと官房長官が語った裁定が書き換えられたことである。実は官房長官裁定案は二つあった。報道された裁定は八ッ場ダム本体工事について、「河川整備計画の策定」と「生活再建に関する法案の国会提出」の「二点を踏まえ、判断する」とされている。

 しかし、筆者は公になっていないもう一つの裁定原案を入手した。それには、「二点が策定された後に、八ッ場ダム本体工事着工の是非について判断する」と書かれている。野田首相の二九日の発言はこの考えに沿う。しかし、いったんは原案にあった「策定された後に」という文言が二二日には「踏まえ」という玉虫色に塗り替えられ、それが前原政調会長の解釈と、それとは矛盾する国交省政務三役会議での事業継続の決定や全閣僚への報告につながった。

 二四日の正式な予算の閣議決定前の既成事実化を容易にさせた裁定に書き換える小細工を行なったのは誰か。官房副長官を務める竹歳誠前国土交通事務次官に尋ねたいものである。

もう一つは政権与党における合意形成も多数決もなく予算計上が決まったことである。治水のあり方の転換、水余りのムダ、工期延長、費用増大の諸問題の解として八ッ場ダム中止が公約されたはずが、最終段階で本質論を脇に置き、予算計上か先延ばしかの矮小化された議論に追い込まれた。幸か不幸か河川整備計画の策定には住民の意見を反映させることが一九九七年改正河川法の極意である。政府は今こそその王道に立ち戻り、国民の意見に耳を傾けるべきだ。

(まさのあつこ・ジャーナリスト、1月13日号)

「被災地支援」は名目か?――中学校で自衛隊員が授業

 現職自衛隊員が中学校の道徳の授業に招かれ、自衛隊の活動をアピールしていたことがわかった。

 東京都教育委員会は、二〇〇二年から全都の公立小中学校に年一回の「家庭・地域と連携した道徳授業地区公開講座」実施を義務付けた。この講座の一環として、東京・国立市立国立第一中学校は一一月五日、全学級ゲストティーチャー(GT)を招いた。一年生のあるクラスでは、自衛隊員二人が「東日本大震災・被災地支援の写真」を示し、「隊員の活躍はやさしさ・思いやりがないとできないこと」などと講義したという。

 一二月八日の国立市議会定例会で、上村和子議員は「参観した保護者数人が『やさしさ・思いやりという共通テーマと全く関係なかった』と言っている。また、学習指導案に明記された隊員とは別の隊員が来たのも問題」と追及。これについて是松昭一教育長は「組織の事情で変更された」と答弁。来校した隊員は東日本大震災の現場には行っておらず、「自衛隊なら誰でも」という人選だった。

 関係者に問うと、「GTのうち、福祉関係者らは町内会の人に依頼。だが自衛隊は、一年の教諭たちが東京地方協力本部・国分寺募集案内所に直接依頼し、固まった段階で久家義久校長が正式に依頼状を出した」と回答。ある教諭に「職員会議で反対意見は出ないのか」と問うと、「職員会議は議論する場でなくなりました」と答えた。

(永野厚男・教育ライター、12月23日号)

韓国水曜デモ1000回アクション

外務省前を取り囲む市民ら。(写真/竹内絢)

 日本軍「慰安婦」問題の解決を求めて1992年1月から始まった「韓国水曜デモ」が1000回を迎えた。被害女性や支援者らが毎週水曜日に韓国・ソウルの日本大使館前に立ち、問題の解決を求め続けてきた。そして12月14日の朝、1000回を記念して、少女が椅子に座り、ハルモニの影がのびる「平和の碑」が日本大使館前に設置された。

 日本でも、札幌、浜松、名古屋、大阪、広島、福岡、北九州、那覇などで「韓国水曜デモ」に連帯するアクションが開催された。東京では外務省を人間の鎖で取り囲む「韓国水曜デモ1000回アクションin Tokyo」が企画され、「在日特権を許さない市民の会」をはじめ多くの右翼、保守系団体から罵詈雑言が浴びせられる中、1300人が集結し、開始ほどなく外務省を取り囲んだ。

 午後に行なわれた院内集会で、在日朝鮮人で日本軍「慰安婦」被害者の宋神道さんが「戦争したらいいという人間が大勢いるが、みなさん、二度と、戦争はしちゃいけません」と語った。

 韓国政府は今年8月に憲法裁判所が出した決定を受け、日本軍「慰安婦」被害者等の賠償請求権に関する政府間協議を申し入れたが、日本政府は応じる姿勢を見せていない。沈黙を破って名乗り出た韓国の「慰安婦」被害者234人のうち、生存している人は63人。一刻の猶予もないことは明らかだ。

(竹内絢・ライター、12月23日号)