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ハンセン病国賠訴訟判決から10年――沖縄で市民学会開催

「いま、ぬけだそう! 手をつなぎ共に生きる社会へ」を掲げ、第七回ハンセン病市民学会が五月二〇~二三日、沖縄県名護市および宮古南静園で開催され、沖縄内外から一〇〇〇人余が参加した。

 今年は、らい予防法廃止一五周年・ハンセン病国家賠償請求訴訟勝訴一〇周年の節目の年に当たる。差別・偏見の元凶であり、苦難の歴史を強いた隔離政策=らい予防法は一九九六年に廃止され、人権回復を求めて国を提訴した裁判は原告が勝利した。しかし社会に深く染み込んだ差別意識を払拭するのは容易ではない。

 ハンセン病市民学会は、隔離政策の検証と、社会との交流や提言を通じてハンセン病問題の真の解決を目指すことを目的に発足。全国一三カ所のハンセン病療養所のいずれかを主会場に、年一回の総会と交流集会を行なってきた。療養所入所者の平均年齢は八二歳となっており、残された時間は限られている。

 二一日、名護市民会館で行なわれた交流集会で、沖縄愛楽園退所者で園のボランティアガイドを務めている平良仁雄さんは「らい予防法は廃止されたが、心の中ではまだ生きている。ほとんどの退所者は隠れてしか生きられない。私がカミングアウトできたのは、皆さんの温かい心に触れたから」と話し、全国ハンセン病療養所入所者協議会会長の神美知宏さんは「厚生労働省は(高齢化している)入所者がいなくなったら療養所を閉鎖しようと考えている。差別の連鎖を絶つことが究極の解決。問題が解決しないうちに閉鎖させてはならない」と訴えた。

 第二部では、ハンセン病、薬害エイズ、精神障がい、身体障がいなどそれぞれの当事者たちが、差別と偏見を超え、「共に生きる社会」へ向けて語り合った。

(浦島悦子・フリーライター、6月3日号)

【香港】最大の電力会社・中電控股――「CO2排出削減のため原発必要」

「二酸化炭素(CO2)の排出削減目標を達成するには、原子力発電を推進するしかない」

 香港最大の電力会社、中電控股(CLPホールディングス)のマイケル・カドーリエ会長は五月一二日の株主総会で、香港政府などに向けてこう訴えた。

 香港政府は二〇一〇年九月、二〇年を目処に、域内総生産(GDP)に占めるCO2排出量を表す炭素強度を〇五年比で五〇~六〇%削減する計画を発表している。その通りに実行するには「原子力発電に頼らざるを得ない」とカドーリエ会長が “警告”した形だ。

 香港政府は二〇年には発電量に占める原発の割合を五〇%に高める計画だったが、福島第一原発の事故を受けて原発の安全性に対する懸念が高まっており、今後の対応が注目される。目標が達成できればCO2の年間排出量は〇五年の四二〇〇万トンから二八〇〇~三四〇〇万トンまで減るという。

 中電控股の要求に対し、グリーンピース香港は同日、株主総会会場の前で「原発への投資は未来を賭けの対象にするようなもの」と書いた横断幕を掲げて批判し、香港政府の計画に協力しないよう求めた。

 中電控股は「香港のエネルギー戦略は自社で決められるわけではない」と反論したが、グリーンピースは「電力会社は自社の見解に基づく専門的な見解を持つべきであり、無責任だ」としている。

 中電控股は世界各地で発電会社の買収や投資を進めている。豪州ニューサウスウェールズ州最大のエナジー・オーストラリアを昨年一二月に買収したほか、三菱商事などと共同でタイに建設中の世界最大級の太陽光発電所(発電容量七三メガワット)が年末に稼動する見通し。インドで手がける風力発電所も年内に運転を始める予定だという。

 一方、広東省陽江市の陽江原子力発電所の権益一七%の取得を昨年決めていたものの、中国の国務院(内閣)が福島第一原発の事故後、国内での新規原発建設計画の承認を凍結しているため、出資を見送るべきか検討を続けている。

 同原発は発電容量一〇〇万キロワットの原子炉を計六基設置する予定だ。第一期の四基が一三年に稼動する見通しで、完成後は中国最大の原発となる。

(志村宏忠・ジャーナリスト、6月3日号)

飯舘村の青年ら避難実現目指し結成――「負げねど!飯舘!」

 福島県飯舘村の青年グループ「負げねど!飯舘!」の佐藤健太さん(二九歳)は憤っていた。

「原発爆発直後に、村で大学教授が『マスクがなくても、子どもを外で遊ばせても安全』と講演し、私たちは安心しました。だが四月一一日、いきなり計画的避難区域に指定され、被曝していたことに苛立ちました。なのにこの二カ月間、避難は一向に進んでいません」

 五月一九日、「原発依存社会からの脱却に向けて」と題したセミナーが衆議院第一議員会館で開催され、原発事故の関係者数人が講演した。佐藤さんもその一人。

 飯舘村は高い放射線値の検出から、今月末までに全村民の避難を目指す「計画的避難区域」に指定された。

 護岸ブロック製造業の佐藤さんの工場敷地でも毎時三〇マイクロシーベルトという通常の六〇〇倍もの放射線が検出されたのに、村が子どもや妊婦への避難を促さないことから、佐藤さんら青年たちは、避難を実現するために「負げねど!飯舘!」を立ち上げた。

 今、村では誰も今月末までの避難完了を信じない。村が確保した避難先は、人口の半分以下の二七〇〇人分しかないからだ。それも、車で四〇分の福島市周辺だけだ。

 なぜか? 佐藤さんは続ける。

「村は、村の基盤を維持するため大手事業所や老人ホームを残し、そこに通勤させるためです。これは国も認めた特例措置。被曝を怖れる職員は怒っていますよ」

 最も問題なのは「選択肢が与えられないこと」と佐藤さんは語る。
 
「福島市でも放射線値は高いから、僕は県外避難したい。でも、県外自治体からの『村民を受け入れる』との申し出を、通勤にこだわる村は蹴っています。すでに二カ月経ち、内部被曝した人もいるはず」

 最優先課題は子どもたちを守るための県外避難だ。

(樫田秀樹・ルポライター、5月27日号)

クラスター爆弾製造への関与リスト――日本の5金融機関が投融資

 オランダとベルギーのNGOがこのほど、クラスター爆弾を製造している企業に投資・融資している世界の金融機関のリストを公表した。日本からは、大和投資信託、三菱UFJフィナンシャルグループ、みずほ銀行、野村、住友信託銀行の五機関がリストの中に含まれている。
 
 これは金融機関と兵器産業や人権問題等の関係について調査しているベルギーの「ネットワーク・フランデーレン」とオランダの「パックス・クリスティ」が合同で二〇〇九年より発表している報告書『クラスター爆弾への世界の投資:共通した責任』で明らかにされたもので、今回は一〇年度の改正版。
 
 同報告書によると、世界では一六六の金融機関が製造企業に投融資を行なっており、その総額は三九〇億ドル(約三・二兆円)に上る。国別では、米国(七三)、韓国(二六)、中国(二一)、英国(一二)となっており、日本はフランス、ドイツと同じ五機関。

 報告書では、製造企業への関与の度合に基づき「名誉リスト(投融資を禁止)」、「次点リスト(取り組みが不十分)」、「不名誉リスト(投融資している)」と格付けしているが、日本の五機関は不名誉リストに入っており、名誉、次点リスト入りした機関はない。

 クラスター爆弾は、不発弾も多く長期間にわたって民間人の生命を脅かす無差別兵器で、その製造、使用、貯蔵、譲渡は一〇年八月に発効した条約で禁止されている。同条約には投融資を明確に禁止する条項はないものの、アイルランドやニュージーランド、イギリス、ベルギー等一四カ国が投融資は禁止されていると解釈し、国内法で禁止している国もある。

 日本は条約の締約国であることから、条約発効直前に三大メガバンクが内規で投融資を禁じた他、一〇年一〇月には全国銀行協会がクラスター爆弾の製造を資金使途とする与信を行なわない旨を発表した。

 しかし、報告書の名誉、次点リストに含まれた金融機関がないことからも明らかなように、情報開示、説明責任等を含め日本の金融機関の取り組みは十分とは言えない状況にある。

(目加田説子・中央大学教授、6月3日号)

「東日本大震災女性支援ネットワーク」発足――復興計画にジェンダーの視点を

 大災害時、女性は身体的・精神的暴力に晒されやすく、養育や介護、不安定雇用などさまざまな問題を抱えることが指摘されてきた。東日本大震災でも同様の課題があるとして、女性の視点が尊重される支援や避難所の運営の確立と、被災した女性たちが主体的に復興に関われる環境作り等を目指す「東日本大震災女性支援ネットワーク」がこのほど、発足した。

 ネットワークは国内外の災害支援・復興に関わった経験のある個人や団体、女性支援団体や学識経験者、メディア関係者などで構成。

 竹信三恵子・和光大学教授と中島明子・和洋女子大学教授が共同代表を務める。被災地の女性への聞き取り調査や女性への支援活動をする団体への人材派遣など後方支援を行なうほか、復興計画にジェンダーの視点を反映するよう政策提言を行なう予定だ。

 同ネットの世話人を務める正井礼子氏と赤石千衣子氏は「これまで、災害時に性暴力にあった事例を挙げても信じてもらえず、海外の事例を挙げて暴力からの保護の必要性を述べても、日本ではそういうことは起きないと言われる。客観的に性暴力被害があったという記録を残すためにも調査が必要」と意義を説明。

 竹信氏は「間仕切りがなく着替えもしにくい避難所や、女性トイレの入り口が丸見えで大か小かもわかってしまう避難所がある。恥ずかしいのに、わがままは言えないと我慢している。避難所の運営責任者は多くが男性だが、女性が自分でこれが必要だと言える環境づくりが必要」などと述べ「多くの報道関係者にも加わってもらい、問題を共有して報道してほしい」と呼びかけた。

 神本美恵子参議院議員(民主)は「ジェンダーの視点を持たずに現地に入った人もいるかと思う。こういうネットワークはとても必要。政府に対してジェンダーの視点が足りないと要求していく」、福島選出の金子恵美参議院議員(民主)は「地元に行ったら女の人に声をかけてもらったのは初めてと言われた。女性のニーズをゆっくり聞く人間がいない。ジェンダーの視点が普段の生活でもあれば非常時にもその視点があったはず。今後はそういう視点のある社会づくりをしていきたい」などと話し、連携と協力の姿勢を見せた。

(宮本有紀・編集部、6月3日号)

山口組系幹部の逮捕で愛知県警に激震――浮上する弘道会との癒着疑惑

 四月二八日、二九日の二日間は、名古屋に本拠を持つ指定暴力団弘道会と愛知県警捜査四課にとっては、まさに激震の日となった。

 二八日、同県警四課は弘道会ナンバー2の竹内照明若頭と会社役員の佐藤義徳、無職の女性の三人を住宅融資制度を悪用してマンション購入代金六一八〇万円を詐取したとして逮捕。翌二九日、中村警察署合同捜査本部は昨年九月三日に名古屋駅裏の風俗街で起きたキャバクラ放火殺人事件の容疑者として弘道会傘下の稲葉地一家の元幹部組員ら六人を逮捕した。この二つの逮捕劇は、表面的には、警察庁の安藤隆春長官が陣頭指揮する弘道会壊滅作戦の成果とみられているが、しかし一連の逮捕とは別に、より重大な疑惑が浮上してきている。以前から指摘されていた弘道会と愛知県警捜査陣との癒着関係の疑惑だ。

 竹内容疑者とともに逮捕された佐藤容疑者は、名古屋の風俗業界に君臨している人物。現職の捜査員は「佐藤は、ずっと前から弘道会と愛知県警のつなぎ役をしていたし、今も県警内部には彼のスパイがかなりいる」と言い切る。数年前に退職したある警察署の署長をはじめ数十人もの現職の警察官が佐藤容疑者から提供された〈カネとオンナ〉に堕ちているという疑惑が広がり、その一端が判明した事件も起きた。

 二〇〇七年に県警の捜査で押収された一枚の借用書。四課のWという警部が佐藤容疑者から借りた八五〇万円の借用書である。当時Wは監察の調べに対して「俺を逮捕するなら全部ぶちまけてやる」と、逆に警察内部の腐敗の全容を表面化させると居直った。その結果、Wは処分されるどころか所属を移っただけで栄転した。Wは愛知県警内部の腐敗を知る一人であり、佐藤容疑者のスパイだった。つい最近まで佐藤容疑者は弘道会とのつながりを全否定していたが、竹内容疑者とともに逮捕されたことで、逆にそのつながりの深さを証明してしまった。

 一方のキャバクラ放火殺人事件は、暴力団が要求する用心棒代(みかじめ料)の拒否を続けている風俗業者を脅す目的で放火殺人まで引き起こした。店を壊した暴力行為で逮捕された六人のうち二人は、近く放火殺人容疑で再逮捕されるだろう。

 現行の暴力団対策法からいえば、稲葉地一家は、山口組弘道会の若頭補佐をつとめる幹部組織。犯行に及んだ稲葉地一家の元幹部組員たちは起訴され死刑が求刑される公算が強い。被害者遺族が稲葉地一家、弘道会、山口組の三者を相手に使用者責任賠償を問うのはその先である。この稲葉地一家と愛知県警の癒着ぶりもまた常軌を逸した関係にあった。

 昔から博徒として有名な稲葉地一家。二〇年以上も前からこの一家のM組長は違法カジノの運営で巨万の金を稼いでいた。その最盛期、名古屋市内には二〇カ所以上の違法カジノが県警に摘発されることもなく、白昼堂々と営業を続けていた。最近まで違法カジノ摘発に専従していた保安課の刑事によると「ことごとくガサ入れ(の情報)が洩れている、それもどうやら幹部から抜けている」と、警察内部と暴力団との驚くべき実態を証言した。金も動く。違法カジノの場合、刑事がヤクザにガサ情報を漏らしてやると、一回当たり一〇〇万円とも二〇〇万円ともいわれる見返りを渡している、と証言する関係者もいるのだ。

 警察庁の安藤長官は全国の警察本部に対して徹底した弘道会壊滅を指示している。「弘道会の弱体化なくして山口組の弱体化はなく、山口組の弱体化なくして暴力団全体の弱体化はなし」という訓示は訓示として、弘道会と愛知県警の内部、特に捜査四課、生活安全課、組織犯罪対策課の一部には間違いなく犯罪的癒着関係を続けている現職の警察官がいる。暴力団の解体は社会的にも重要だが、暴力団の影に隠れて腐敗する警察組織の方が、比較にならぬほど重大ではないのか。弘道会が短期間に山口組の最大勢力になることができたのは、皮肉にも汚辱にまみれた警察官の存在があったからだ。冒頭の激震とは、愛知県警の激震のことだ。

(成田俊一・ジャーナリスト、一部敬称略、5月13日号)

音楽家も委託契約も「労働者」――最高裁が個人事業者の団交権認める

「音楽家も業務委託契約者も、労働組合法上の労働者に当たり、使用者側は団体交渉に応じるべき」

 契約を結んだ仕事をする個人が労働法上の労働者にあたるか否かが争われた訴訟二件の上告審で、最高裁第三小法廷(那須弘平裁判長)はこのほど、個人事業主にも団体交渉権を認める判決を出した。二件とも中央労働委員会まで組合側が勝利。これを不服として行政訴訟に持ち込んだ使用者側は、東京高裁で勝ったものの、最高裁での再逆転で決着がついた。

 新国立劇場で、合唱団員としての契約更新を二〇〇三年七月に拒否・解雇された八重樫節子さん(日本音楽家ユニオン)について判決は、運営財団の指揮監督下で歌唱の労務を提供し、報酬は労務提供それ自体の対価とみて、総合考慮すれば労働者に当たる、と明言。ただ、その上で八重樫さん本人への契約更新拒否が、組合活動を理由とした不利益扱い(不当労働行為)に当たるか否かについては判断せず、東京高裁へ差し戻した。そのため、今後は団交と高裁の ”二本立て” の運動に移る。

 八重樫さんは、「技量審査も不明朗で身分が不安定すぎる。今後は海外のように、オーディションに組合を立ち会わせるなど、民主的な新システムによる採用にしてほしい」と話している。

 一方、INAXメンテナンス(IMT、愛知県)との間で委託契約を結び、製品の修理などに当たってきたカスタマーエンジニア(CE)でつくる組合が二〇〇四年九月、労働条件変更の際には事前協議を、と申し入れた団交をIMTが拒否した事件については、CEを労働者と認めなかった二審の東京高裁判決を最高裁が就労実態を重視して破棄。組合側の勝訴が確定した。

 CEらが加盟する全日本建設交運一般労働組合(建交労)大阪府本部は、判決日の声明で、「委託、請負など偽装雇用の ”名ばかり自営業者” は一〇〇万人を超え、あらゆる産業に広がっている」と指摘。無権利状態に置かれてきた彼らが、「憲法二八条が保障する労働基本権の主体であることを明確にした」と、判決を高く評価した。

 IMTの関西圏のCEらは、個人加盟が特徴の建交労大阪府本部建設一般合同支部に駆け込み、全国支援で闘ってきた。

(たどころあきはる・ジャーナリスト、4月22日号)

原発産業と最高裁の不適切な関係――元判事が東芝に天下り

 四国電力伊方原発一号炉と東電福島第二原発一号炉に対する設置許可処分取り消しを求めた二件の裁判(一九七二~七五年にかけて提訴)で、最高裁第一小法廷が「国の設置許可に違法性はない」として住民側敗訴判決を下したのは九二年一〇月。その時の判事のひとり、味村治氏(故人)が、原発メーカー東芝の社外監査役に天下っていたことがわかった。

 味村氏は東京高検検事長や内閣法制局長官を経て九〇年に最高裁判事となった。そして退官後の九八年、東芝社外監査役に就任する。

 東芝は沸騰水型原子炉の開発元である米ゼネラル = エレクトリック社(GE)と明治時代から深い関係にあり、事故を起こした福島第一原発や訴訟対象の福島第二原発一号炉を含めて多数の原発設備工事を受注してきた国内有数の原発メーカーだ。問題の判決があった九二年頃は、チェルノブイリ原発事故(八六年)の影響で脱原発の世論が高まっていた時期。だが「原発は安全」とする判決がお墨付きを与えた格好となり、その後の原発ラッシュを後押しした。

 伊方と福島の原告団はそれぞれの裁判でこんな指摘をしている。
(1)「想定外」の災害が起きる危険、
(2)圧力容器や格納容器が壊れる可能性、
(3)耐震設計が甘すぎる、
(4)使用済燃料プールの脆弱性――。

 現在福島で起きている現象を的確に予言しているが、裁判官はこれらの警告を無視同然に扱った。

「原発は安全」判決を下した最高裁判事は、味村氏のほか小野幹雄、大堀誠一、橋元四郎平、三好達――の各氏。また東芝役員に天下った高級官僚や大学幹部は、現職取締役の平林博・元外務省フランス大使、佐々木毅・元東大総長など過去六〇年間で二〇人。司法・警察官僚では、筧榮一・元検事総長、清水湛・元広島高裁長官、新田勇・元大阪府警本部長がいる。

 東芝は取材に「法律の専門家としての幅広い実績と識見に基づき、当社の経営に適切な監査を行なっていただくことができるため(採用した)」「裁判官はその良心に従い独立してその職権を行なっており監査役就任に当たって問題はない」(広報室)と応えた。

(三宅勝久・ジャーナリスト、6月3日号)

布川事件の桜井・杉山両氏らが訴え――「冤罪を許さない!」集会開催

 茨城県利根町で一九六七年、大工の男性が殺害された布川事件の再審において、仮釈放中だった桜井昌司さん(六四歳)と杉山卓男さん(六四歳)に対し、水戸地裁土浦支部(神田大助裁判長)は五月二四日、無罪を言い渡した。

 判決が出る前の一八日、本誌編集部と元参院議員の村上正邦氏が共同主宰する「日本の司法を正す会」は、東京・永田町の衆議院第一議員会館の大会議室で、「冤罪を許さない!」と題した院内集会を開催した。

 布川事件の冤罪被害者・杉山氏と桜井氏が参加したほか、狭山事件の石川一雄氏、袴田事件の袴田巌氏の姉・秀子氏や、談合容疑で大阪地検特捜部に逮捕・起訴された大阪の元枚方市長・中司宏氏らも顔を揃え、(1)なぜ無実の人が虚偽の自白に追い込まれてしまうのか、(2)警察・検察が押収証拠を独占し、無実を示す重要証拠が長期間隠されてしまうことの問題点――などについて、それぞれの立場から生々しい訴えがあった。

 特に桜井氏は「検察・警察は、個々はまじめな人々であっても、組織になると平気で嘘をつく。私たちの事件も、証拠改竄によってでっち上げられた」と指摘。杉山氏は「(杉山氏が収監された)東京拘置所にも、千葉刑務所にも、無実を訴えている人がいた。我々以外にも、冤罪に苦しみながら声すら上げられない人々はたくさんいるはずだ」と述べた。

 集会には、参院議員で社民党党首の福島瑞穂氏、自民党参院議員で弁護士の丸山和也氏、新党大地代表代行で衆院議員の浅野貴博氏らも参加し、以下の要請をまとめた決議文を採択。集会後にはこれを江田五月法務相と衆参両院の法務委員長に提出した。

一、取り調べ全過程の「可視化」を直ちに導入せよ。

一、すべての証拠を、公判前の早い段階で被告・弁護側にも全面開示する制度を導入せよ。

一、「特捜検察」の在り方について、廃止を含めた抜本的な見直しを行え。(編集部にて簡略化)

(青木理・ジャーナリスト、5月27日号)

編集部注)
「要請書」全文は下記の通り。
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 我々「日本の司法を正す会」は、二〇〇六年以来、検察や警察による歪みきった捜査、あるいは極めて恣意的な捜査のターゲットとされた人々の訴えに耳を傾け、その捜査の内実を検証し続けてきた。結果、まったく身に覚えのない嫌疑をかけられて塗炭の苦しみを強いらた「冤罪被害者」が、とてつもない数で存在することが明確となった。それは、法が支配する民主主義国家としては決して許されぬ大罪である。

 昨年来、大阪地検特捜部を舞台として発覚した押収証拠改竄事件を契機として、検察捜査の問題点を指摘する声がようやく、わずかではあるものの出始めている。ただ、その問題点は、押収証拠改竄に手を染めた主任検事や、その監督責任を持つ大阪地検特捜部幹部などにのみ矮小化され、検察内でも一部部署で起きた不祥事案として処理されてしまいがちとなっている。

 だが、我々は、はっきりと断言する。問題を孕んでいるのは当該の検事のみでもなければ、大阪地検特捜部のみでもない。法務・検察組織全体が根本的な歪みをきたしているからこそ、押収証拠改竄などという信じ難き不祥事が発生したのだ。いや、もっと正確に言うのなら、裁判を含む、この国の刑事司法全体が信じ難き腐食を起こしてしまっている。大阪地検特捜部で発覚した押収証拠改竄事件は、その腐食がほんの一部、組織の末端で噴き出した現象に過ぎない。

 刑事司法全体の腐食は、既に手の施しようのないレベルにまで達している。公訴権を基本的に独占している検察が起訴に踏み切った際の有罪率が九九%を超えるというのは、その象徴的な例である。また、容疑を否認すれば起訴後も延々と保釈を受けられぬ「人質司法」、法廷で真実を訴えても検察官作成の調書に重きが置かれてしまう「調書主義」、検察・警察が請求した各種令状を裁判所が却下する率がゼロコンマ数%以下となっていること等々、日本の刑事司法の現状はまさに「暗黒状態」に陥っているといっても過言ではない。

 いま、この瞬間も、冤罪の汚名を着せられたまま、塗炭の苦しみに喘いでいる人がいる。本日、この舞台に上がって必死の声を上げた冤罪被害者ばかりでなく、声すらもあげられずに泣き寝入りを強いられている冤罪被害者も数多いるはずだ。

 繰り返すが、それは法が支配する民主主義国家として、決して許されぬ大罪である。我々は、こうした現状を正すため、以下を直ちに実施することを求める。

一、検察・警察捜査におけるすべての取り調べについて、参考人に対するものもふくめ、取り調べ全過程の録音・録画=いわゆる「可視化」を直ちに導入せよ。

一、検察・警察が捜査の過程で押収したすべての証拠を、公判前のできるだけ早い段階で被告・弁護側にも全面開示する制度を導入せよ。

一、東京地検特捜部をはじめとする、いわゆる「特捜検察」の在り方について、廃止を含めた抜本的な見直しを行え。

一、大阪地検特捜部の元主任検事・前田恒彦氏が手がけた事件と、笠間治雄検事総長が特捜部時代にかかわった事件について全面的に検証せよ。

一、冤罪被害者である袴田巌さんへの死刑執行を停止し、袴田さんに適切な医療措置をとれ。

 なお、近年五〇%を超える再犯率を抑えるため出所者に対する就職支援などの社会復帰政策を充実させること、最高裁裁判官の役割の重要性に鑑み国民審査のあり方を検討することの必要性をあわせて指摘しておく。
                                                                                          以上
二〇一一(平成二三)年五月一八日
院内集会「冤罪を許さない!」参加者一同
                                                                      日本の司法を正す会
                                                                           村上正邦
                                                                                   月刊日本
                                                                                  週刊金曜日

東電と内閣府に署名を提出――福島原発「廃炉」求める5万筆

 五月一八日、福島原発の「廃炉」を求める有志の会が東京電力と内閣府に福島原発一〇基の「廃炉」の決定を求める署名と要望書を提出した。署名数は東京電力に対して五万四四八四筆、内閣府に対して五万四七八八筆。四月一四日の第一次提出分と合わせると、それぞれ八万一〇二三筆、八万二〇九六筆にのぼる。

 東京電力では広報部の担当者二人が一時間にわたり有志の会のメンバー七人の要望を聞いた。なかでも福島県出身者からは「情報が少なく、見えない放射能に怯え、うつ状態になっている人もいる」「自分で作った野菜を食べていた人が他県の野菜を購入しなければならず、経済的な負担が増している」といった切実な声が上がった。

 二人は終始、神妙な面持ちだったものの、四月一四日に提出した署名用紙が広報部に置いたままになっていることが判明。社長や幹部役員に要望が伝わっているのか、問いただされる場面もあった。

 一方、内閣府では大臣官房総務課の三人が、予定時間を超えてメンバーの申し入れに耳を傾けた。個人的な見解と断りつつ「東京電力だけの責任じゃない。国としてもきちんと対応しなくてはならない。広島・長崎の被爆者や水俣病患者のように息の長い補償が必要だと思う」と述べた。

 有志の会の発起人である古荘斗糸子さんは「署名をしてくれた方々は、これまで署名も市民運動もしたことのない人ばかり。それだけ放射能に対する不安が強いのだと思う。こうした人々の声を東電と国に届け、全基廃炉を実現させたい」と語った。

 有志の会では引き続き、六月一五日まで署名を受け付ける。

(佐久間真弓・フリーライター、5月27日号)

(編集部注)有志の会のHPは下記。
http://fukushimahairo.web.fc2.com/